祖父たちの零戦 Zero Fighters of Our Grandfathers (講談社文庫)

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  • 講談社
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レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062775304

作品紹介・あらすじ

「ミノル、俺たちのやりたかったことはこんなことだったのかな」――二十七機撃墜・味方損失ゼロ、奇跡の初空戦を指揮した進藤三郎。敗色濃い南太平洋でなおも完勝を続けた鈴木實。二人の飛行隊長の人生を縦糸に、元零戦搭乗員一二四名へ未踏の二〇〇〇時間インタビューを横糸にして織り上げた、畢生のノンフィクション!


この書は一代の名機「零戦」に跨り、日本のために命を懸けて戦った、そんな名もなき男たちの鎮魂の書である。

百田尚樹(作家)

空で勇猛だった零戦搭乗員が、下界へ戻ると無口で茶目ッけの多い平凡な若者に変る。
その清々しい生き方を描いた感動的物語。

阿川弘之(作家)

感想・レビュー・書評

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  • 長らくハードカバー版を積読状態にしていましたが、
    先日文庫版が出たのを機に、ようやく手に取ってみました。

    解説に『永遠の0』の百田さんと、なんとも豪華な感じです。

    ちなみに百田さん、神立さんの別の著書である『零戦 最後の証言』、
    こちらを一番の参考にして『永遠の0』を書いたとのこと。

    そう仰っているだけに、非常に読み応えがありました。
    『永遠の0』に感じるものがあった方であれば、オススメです。

    主人公は、進藤三郎さんと鈴木實さんのお二人。

    この二人の零戦パイロットの戦前、戦中、戦後の物語を軸にして、
    大東亜戦争に対する普通の日本人の感性が綴られていきます。

    ノンフィクションではありますが、目の前の出来事のように映像が浮かぶ、
    そんな生き生きとした筆致に、背筋が伸びる思いで拝読しました。

     “天皇陛下はこのこと(特攻)を聞かれたならば、
      戦争をやめろ、と必ず仰せられるであろう”

    冷徹な現実と向かい合っている現場の指揮官、
    そして、それに応えていく先人の方々。

     “日本民族がまさに滅びんとするときに、
      身をもってこれを防いだ若者たちがいたという事実と、

      これをお聞きになって陛下自らのお心で
      戦を止めさせられたという歴史の残る限り、

      五百年後、千年後の世に、必ずや日本民族は再興するだろう”

    こんな想いが込められた“戦後”を受け渡されている“私たち”は、
    先人たちに応えるだけのことをできているのだろうか。

    はてしない自問が、螺旋のように、、ただ繰り返しています。
    私も“祖父”の足跡を追いかけてみようと、思いました。

  • 最新・最強の戦闘機として登場した零戦が,数年後には苦戦を強いられ,特攻も任務となる中,多くの搭乗員のエピソードが紹介される.さんざん撃たれて落ちそうな相手を追いかけてコクピットを除くと,相手搭乗員の表情が見え,とどめが刺せなかった話など,当たり前ですが戦いは人同士が行うのだと再確認させられる.「戦力不足なのに特攻で機体を失う余裕はない」と言う英国人捕虜の話はもっともなこと.パイロットというスキルを持ちつつも,10代20代で特攻などで戦死された方々が戦後も生き続けていたら,どのようなことを成し遂げていったか.

  • 『永遠のゼロ』『大空のサムライ』、そしてこの『祖父たちの零戦』とミリオタに順番まで決められて読んでみた。
    『永遠のゼロ』で悲哀を、『大空のサムライ』でカッコ良さを、そして『祖父たちの零戦』でその真実を学べました。
    日本人なら知らなければならない、そんなことを感じさせる本。

  • 進藤三郎氏(=零戦緒戦の中国での空中戦の指揮官)と,鈴木實氏(=オーストラリア戦線でスピットファイアとの戦いの指揮官)への取材を中心とした実話.よく言われる緒戦での短期間の栄光→中盤以降の落日の現場が語られている.
    隊員同志の衝突や,海軍参謀たちの堕落,卑怯な言動なども実名で書かれている.坂井三郎氏の取材もあるが,彼も聖人君子ではなく,毀誉褒貶のある人だった.→いわば”等身大”の第一線パイロットたちを描く.
    戦後,世論は手のひらを返したように彼らを扱った.”特攻くずれ”,”戦犯”とよばれた. どちらかの人物が晩年,「自分の人生は無意味だった」ともらしたそうだが,それは①戦後,彼らの扱い・評価がきわめて否定的だった,②結果として敗れた戦争で多くの同僚が戦死したが,自分らが生き残ってしまったという罪の意識,などによるものだろう.
    お二人は88,91歳で他界されたが,晩年,からだの動かなくなくなり人生の終焉が近づいた往年の名パイロットの描写は,だれもがやがて行き着く ”老死”の現実で,無常を感じた.
    いろいろな点で,印象深かった本だ.

  • 産業後進国であった当時の日本が創り出した零戦に乗る男たちの真実を記載したノンフィクション小説。
    派手なストーリー展開はないものの、等身大の零戦搭乗員の一生を描いた作品。特に戦後、彼らが「戦犯」「特攻崩れ」と罵られながら、葛藤と悔しさの中でどのように生きてきたのか、これまで全く知らなかった事実を知ることができた一冊。

  • 零戦を近くに感じることができたと思う。いつもと違う視点を学ぶことができたと思う。

  •  かつて零戦の搭乗員になれることは栄誉であり誇りであった。エリートの証でもあった。
     この本にはエースパイロットの活躍を通して、零戦の栄光の歴史が綴られている。


     ある意味、彼らの戦い方は刀での一騎討ちに近い。戦闘機同士のドッグファイトは戦闘機の性能と、それを使いこなせるだけの高い操縦技術が必要となる。そしてそれに優れている方が勝つ。
     そこだけみればF1レースと変わらない。お国のためなどそっちのけで、腕っぷしの強さを試す喧嘩のようなところがある。武術と言い換えてもいい。撃ち落とすのは戦闘機であって搭乗員ではない。パラシュートで脱出した搭乗員は攻撃しないとの暗黙のルールもある。
     
     ラバウル航空隊のエースパイロット3人が敵飛行場上空で3機編隊のアクロバット飛行を披露し、その卓越した技量にアメリカ軍パイロットからも賞讃が送られたことは有名な話。 
     地上戦で銃を構えて生身の体に向けて引き金を引かなければいけない兵士とは、どこか感覚が違う。しかもすでに戦局を左右する激しい攻防戦が展開されていた中での逸話だから、パイロットの職業意識というか、プロ意識は敵味方に関わりはなく働くようだ。


     戦後、日米双方での交流が続くのも搭乗員たちの特色だ。
     例えば戦艦乗組員などは、同じ海域で矛を交えた想い出を互いに懐かしむようなところがあっても、敵味方の垣根は越えていないようなところがある。
     でも戦闘機の搭乗員たちは、あの空戦で俺の機を落としたのはお前だったのか、と落とされた本人が落としたかつての敵を尊敬の眼差しで見るようなところがある。敵味方という垣根がなく、戦闘機乗りという職業意識が働く。これは特殊だと思う。


     また、零戦搭乗員のプライドの高さを伺わせる話もある。
     著書『大空のサムライ』が米国で大人気となり有名になった坂井一郎氏だが、坂井より俺のほうが強かったとか、誰々のほうが強かったとか、の話になり戦友会ではしばしば喧嘩になったという。もともとエースパイロットという撃墜数を競う考え方は日本にはなかったらしく、それを戦後、誰々は何機落とした、いや奴の方がもっと落とした、とか曖昧な記憶と記録しかなかったのに、誰が一番かを議論しはじめたから話がややこしくなった。
     また、元搭乗員たちが米国に招待されても、もてはやされるのは坂井ばかりで、おもしろく思わない人たちもいた。
      
     どっちが強かったで戦後に喧嘩になるなんて、どう考えても零戦搭乗員たち以外はしないと思う。
    (近代戦で個人の力でどうにかなるような戦いを、他の戦場ではするはずないから)当人たちは真剣だろうが、傍目には滑稽なところがある。


     


     一部分を取りだしただけで、こんな長くなってしまったが、もちろんこの本は零戦とその搭乗員の栄光だけを書いたものではない。
     戦中の零戦の活躍とその悲劇も綿密な取材をもとに再現している。そして他の本ではあまり取り上げられない搭乗員たち戦後の話がとくに充実している。


     ちょっと前に『永遠の0』の映画を観た井筒監督が「特攻を美化している」と発言し、物議を醸したが、自分も映画を観たので何となくだが同意する。主人公がプロトタイプ化されている気がした。


     この本には様々な方が登場する。元搭乗員124名に取材し、2000時間を超えるインタビューをもとに書き上げた力作だ。去年NHKスペシャル「零戦〜搭乗員たちが見つめた太平洋戦争」で放映された内容も、この本がネタ元になっている。 


     彼らにも多様な人生があったことを知って欲しいと思う。 

  • これはスゴイ。一級資料だ。
    神立さん渾身の力作とお見受けしました。

    進藤三郎・鈴木實、両氏の証言を軸に、神立氏が零戦搭乗員に地道にインタビューを重ね蓄積した証言を加えて構成されています。
    零戦デビュー前後から真珠湾攻撃、南方戦線、本堂防空戦、そして終戦から戦後までの内容となっています。
    さらに、これまで神立さんの本に登場していない(たぶん)「大空のサムライ」坂井三郎氏のインタビューや記事もあります。

    この本にも登場する元パイロットのみなさん、現在ではほとんどの方が亡くなられているとのこと。今となっては貴重な証言の数々です。

  • 零戦搭乗員の物語。個々人の努力に頭は下がるが、そこに教訓は無い。

  • 物語は、中国大陸上空で零戦の初空戦を指揮下進藤三郎少佐。
    オーストラリア上空でイギリスの誇る戦闘機「スピットファイア」を相手に一方的勝利を収めつづけた鈴木實中佐のふたりを軸に書かれている。
    実際に零戦に搭乗した者、特攻として出撃したもののさまざまな事情で戻ってきた者。
    生き残った人たちが語る戦争は、やはり生々しい。
    いまさら思い出したくないという人も多かったようだ。
    ただひたすらにインタビューに答えてくれる人たちに真摯に向き合った結果が、この1冊には詰まっている。
    第7章では坂井三郎を取り上げている。
    彼には自著した「大空のサムライ」という作品がある。
    何故ここで坂井三郎を神立さんが取り上げているのか。
    ※「大空のサムライ」は当初は高城肇との共同執筆だった。
    戦時中、海軍では「零戦」よりも国民に広く親しまれた「隼」という戦闘機があった。
    では、戦後これほどまでに「零戦」人気が高まったのか。
    坂井三郎が大きくその理由にかかわっているからだ。
    戦後まもなく刊行された「坂井三郎空戦記録」は予想外の反響を呼ぶ。
    しかし出版社は突如倒産してしまい、坂井へわたるはずの印税の一部も不渡りとなる。
    「坂井三郎空戦記録」は、AP通信社の記者だった日系二世によって翻訳され、アメリカの出版関係者の手にわたる。
    1957年「SAMURAI!」のタイトルでアメリカにて出版され、大きな話題を呼んだ。
    世界十数ヶ国語に翻訳され、世界中で売れたという。
    ブームの中で「ゼロ戦」はどんどん搭乗員だった者たちの思いとはかけ離れたイメージだけが定着していく。
    他の搭乗員たちとの軋轢もあり、ある時期を境に坂井との交流は途絶えてしまったようだ。
    戦争はけっして良いことではないし、許されるものではないと思う。
    けれど、実際にその時代中で懸命に生きていた人たちの姿がここにあった。
    筆者である神立さんが、妙な先入観を持たずに取材相手の話に耳を傾けている姿勢がとてもいいと感じた。
    丁寧な描写で語られていく搭乗員たちの思い。
    読み手であるこちらも真摯に向き合わなければならない・・・そんな気がしてくる一冊だった。

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著者プロフィール

ノンフィクション作家・写真家。1963年、大阪府生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、1986年より講談社「FRIDAY」専属カメラマンを務め、主に事件、政治、経済、スポーツ等の取材報道に従事。1995年、元零戦搭乗員の取材を開始、以後25年の間にインタビューした旧軍人、遺族は500名を超える。1997年からフリー。著書に『零戦の20世紀』(スコラ)、『零戦最後の証言1/2』『零戦隊長宮野善治郎生涯』『零戦隊、発進! 』『撮るライカI/II』(いずれも潮書房光人新社)、『祖父たちの零戦』『証言・零戦』シリーズ全4巻、『零戦~搭乗員たちが見つめた太平洋戦争(NHK取材班と共著)』『図解・カメラの歴史』(いずれも講談社)、『戦士の肖像』『特攻の真意(旧版)』(いずれも文春文庫)、『一生懸命フォトグラファー列伝』(日本写真企画)など。映画やテレビのドキュメンタリー番組の監修も手がける。

「2020年 『特攻の真意』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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