- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062775519
作品紹介・あらすじ
Gカップの「おっぱい」を自分のアイデンティティとする23歳フリーター・巡谷。アパートの同居人は、「自分は臭い」と信じる「自称・手記家」の23歳処女・日田。ゴミ処理場から出るダイオキシンと自分の臭いに異常な執着を見せ、外見にまったく気を遣わない変人・日田のことを、巡谷はどうしても放っておけない。日田だけが巡谷の「男への異常な執着」や「気が触れそうになる瞬間」を分かってくれるのだ。変なことばかり考えている二人だけれど、ゴミ処理場のダイオキシンが二人の変なところを益々悪化させているような気がするけれど、二人が一緒にいれば大丈夫。情けなくってどうしようもなく孤独な毎日もなんとかやっていける――。
芥川賞候補作としても話題となった、汚くて可愛い、前代未聞の青春エンターテインメント!
感想・レビュー・書評
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奇妙な23歳女子二人の同居生活を描いた、何ともヘンな物語でした。二人の言動が、とっても痛々しく〝ぶっ飛んでる〟印象なのですが、重さ・深刻さを軽々と超越したテンポの良さで、読みやすかったです。
劇作家・本谷有希子さんの本領発揮、といったところでしょうか。2009年作品で、後に芥川賞を別作品で受賞されますが、本作も同賞候補になってます。筆力あってこそなのでしょう。下ネタ満載ですが、真剣さ故に滑稽でもあります。
自分の存在証明にこだわったり、自意識過剰でいろいろと劣等感をもってもがき苦しんだりしている状態は、ある意味(特に若者にとっては)普通だと思います。
ただ、承認要求の内容や度合い、その鬱屈さや毒の吐き出し方によって、他人からは「変」と受け止められるのでしょうね。そういう意味で、本書の女子二人に共感できるか否かは、分かれる気がします。なにせ本書の女子は特異で‥。
社会からの疎外感や孤独に向き合う辛さ、彼女たちのそれらの痛みと共闘する様子からは、不思議と疾走感と鮮やかささえ感じられる、絶妙のバランス加減でした。
ひどく痛い話だったのですが、明るい未来を感じさせるラストに救われ、二人の将来を応援したくなりました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
アイデンティティはGカップの胸しかない巡谷と、自分の体臭を必要以上に気にする日田の奇妙な友情。世間の感覚から外れている二人は、罵倒しあいながらも互いには自分を曝け出して許し合ってたりもする。ズレにズレたふたりのラストの暴走っぷりが面白くて、好みが分かれそうだけど個人的にすごく好きだった。
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変な女の子たちの、変な協奏曲。
社会とだいぶズレてるけど、それでも綺麗で生々しい友情が見えた。 -
Gカップのおっぱいをアイデンティティのよりどころとしている巡谷と、彼女の部屋に居候しており、自己臭恐怖症などの妄想に悩む日田という、二人の女性の物語です。
妄想全開の日田にくらべると、比較的常識人にも思える巡谷ですが、彼女もセフレの横ちんに執着するようすや、日田が「グルーヴ先輩」と呼んでいる躁状態に入るなど、両者ともに自分自身の生きづらさをかかえ込んでいます。二人の生きづらさの中心に存在しているのが、日田の妄想のなかでダイオキシンによってこの街に人びとを狂わせていく、清掃工場の巨大な煙突であり、いわば「不在の中心」となってストーリーが進んでいきます。
やがて日田の口から、清掃工場が移転する計画であることが告げられ、日田の妄想につきあっていた巡谷だけではなく、日田自身もまた、中心が「不在」であることに気づきいていたことが明らかになります。物語の最後で、二人は工場の煙突をのぼり、巡谷は「グルーヴ先輩」の力が消えかかっていることを自覚しながらも、日田のあとを追いかけ、煙突のてっぺんをめざします。このラストの展開は、たたみかけるようなスピード感があって一気に読ませるような力をもっています。もっとも物語の構造に目を向けるならば、コンプレックスがアイデンティティの中核になっており、そこから脱することのできない二人の女性の生きかたになんの変化ももたらされていないということになるのかもしれませんが、物語をぐいぐい推し進めていく著者の力とあいまって、彼女たちの生きかたの示す「強度」のようなものが感じられました。 -
2人ともどうしようもねえ〜
比較してどっちがヤバイとか言う問題じゃない。巡谷が自分は常識人で日野をお世話してあげてるみたいな意識もリアルで、こういう取り繕い方しちゃうよね恥ずかしいよねみたいな。共感性羞恥
でもなんか登場人物に役割を振り分けてない感じがよかった。
煙突がデカいちんこのメタファー -
2009年芥川賞候補作。
Gカップの「おっぱい」にアイデンティティを見出す女、「自分が臭い」と信じ込む女のバカバカしくも切実な一編。一方的に「あの子は変」という形で進むがもちろん主人公だって相当やばかったりする。マトモって何だろう、変な奴って何だろうと考えてしまう。本谷有希子らしい。
普段は”イケてない”男どもの本ばっか読んでいたので新鮮。ラストの”射精”のメタファーは予想通りの展開だけれど秀逸で、高井戸にある清掃工場を思い出した。 -
本谷有希子は、受信力がすこぶる高いんだろうな、と思う。
もがきもがき、剥き出し落ち込み、もがいてたった少し、プラスに指針が振り切れる。
度合いは違えど、私も走るっきゃないんだろうな。 -
ふたりともめっちゃ変。
狂おしいほどの性欲、すさまじい孤独、
我々の汚さをありのまま書いてくれる、
肯定も否定もされなくていい、
女性の中にある爆発的な感情をいろんなオマージュを使いながら言語化してくれる本谷有希子ワールド、そしてここにしかない。
ヒステリックもグルーブ先輩ていえばなんかかっこいいやん。