ピストルズ 下 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 140
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062775632

作品紹介・あらすじ

語られてゆく一子相伝の秘術「アヤメメソッド」の正体、一族の忌まわしき宿命。あらゆる未知に彩られた谷崎潤一郎賞受賞の傑作巨編。

感想・レビュー・書評

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  • じつは最初に読んだ阿部和重がこちらでした。単行本が出た頃に図書館で借りたから、10年前くらい?その時はすごく面白いんだけど、著者が自分の文才に酔っているというかめくるめく言葉の魔術師というかやむにやまれなさが足りないというか、とにかくどこか物足りない(もっと言えばいけすかない)と思ってしまったのだが、後に何かのインタビューで阿部さんがすごく苦労してこの作品を書き上げたことを知り、勝手な憶測を反省したのだった。(←実生活でも第一印象や思い込みで人を判断しがちなので気をつけたい)
    面白さで言えば著者のことなどまったく知らずに読み耽った初読時のほうが勝った(今回は上巻まではすごく面白く読んだのだが、下巻のみずきの修行あたりでじゃっかん飽きてきて大事なことを読み飛ばしたのか、せっかくグランドフィナーレの人が出て来てテンション上がったのも束の間、ラストのおとうさんの行為の意味?必然性?とかいまいちわからないまま終わってしまった)気がするけど、今回、上巻の菖蒲家のコミューンの描写が、去年自分が訳した本に出て来た60年代アメリカのヒッピーコミューン(ヒュー・ロムニーっていう人のホッグファームっていうコミューン)に、雰囲気やメンバーの素性なんかがびっくりするほどよく似ていて、ああこれは「錬金術的に紡がれた空想物語」なんかじゃなくて、ある時代のある文化を綿密に調査したうえで巧みにずらした意欲ある創作なんだなあ、と今更きづいてまた反省した。とは言え、たまたま自分がちょっと齧った世界だから得した気分だし、あべかずユニバースの登場人物たちにも再会できて嬉しかった。ここまであべかず作品を読んできて、『シンセミア』は別格として、初期の人を食ったような中篇が好きだなあと思うけれど、『ピストルズ』にも、そういう人を食った中篇要素がモザイクみたいに入っていて、読んでいてそこが一番楽しかったかな。
    で、文体の話に戻るけど、こういう流麗な文体でも『プラスティック・ソウル』みたいなあえての悪文でも、どっちに転んでも面白く仕上げられてしまうというのは、やっぱり言葉の魔術師なんだろうかな。

  • 「シンセミア」の続編や言うから読んだんやけど、シンセミアがおもしろすぎるからなぁ、なかなかあのレベルを想定しちゃうとキツいわね。いや、コレはコレでおもしろくないかと言われれば十分おもしろいねんけども。やはりスケールの違いか。

  • 下巻になって『グランド・フィナーレ』のロリコン男・沢見が出てきた!はっきりとした結末が示唆されなかった『グランド・フィナーレ』のその後、二人の少女がどうなったかが本作で明かされることになるとは・・・そういえばそうか、二人の少女の片割れは本屋の娘だったっけ、そこで繋がるのかー。これからこの本を読もうと思っている人は『シンセミア』よりも『グランド・フィナーレ』を読んでおいたほうがいいかも。

    『シンセミア』との繋がりという部分では、星谷影生(ホシカゲさん)とタヌキ先生の出自や、シンセミアでUFO云々と謎の行動をしていた意味がわかったのはスッキリ。ただ作品としては群像劇的だったシンセミアに比べて、ひたすら菖蒲家という一族の歴史(すでに過去に起こったこと)が延々と語られるだけなので、小説としてのダイナミズムみたいなものには欠けたかも。構想として三部作の二部目ということで、最終作への伏線的な作品なのかなという感じでした。

    あと個人的に、突然実家の地元(※京都)のお寺の名前が出てきたのでビックリ。まあ密教系だと大体出てくる有名どころではありますが。そこ繋がるんだ!と(笑)

  • 読後感がとても気持ち悪い。嫌いな登場人物がいるわけでも結末が許せないわけでもないのにこの後味の悪さ。解説の筒井康隆氏の言う通りだと思う。あと、世の中って、人間って怖い。

  • 川上未映子の夫である点と、筒井康隆の帯で手に取った。
    最初は可愛い感じの文章とイメージだと思った
    だんだんどろどろワクワクのSFっぽくなって来た。

    読み進むうちに文章自体の発想のすごさに驚いた。
    日記や古文やガイドブックやブログなど様々な様式の文章が織り込まれる。
    この小説を解説しているプロの作家さんも文章自体に注目している感じだ。

    僕は、文章にも驚いたけどストーリーもとても興味深く楽しめた。
    この小説で語られる「家系の中で秘儀を伝承して行くという宿命」は、
    実はどんな家族においてもあることなのではないかと思う。
    もちろん小説の様な秘儀ではないけれど、なにか独自の習慣。
    そして家族の中で洗脳されるかのように、その伝承される習慣、考え方からは逃れられない。

    そういうテーマもありつつ、可愛くてドロドロしててワクワクする小説だ。

    解説でびっくりしたのは、神町が実在する町だということだ。

  • 「シンセミア」の続編。
    同時期のまた別の奇妙な家族のお話。

    ここでもまた、長さを感じない、話の展開と
    流れっぷりが堪能できました。

  • 上巻の怪しい雰囲気がさらに加速する下巻。
    いったい何が正しくて、何が嘘で、何が錯覚で、何が思い込みなのかますますわからなくなっていく。。。
    混沌とした展開にどうやってケリをつけるのか?という一点が気になって、結末に向けて一気に読めるのだが、夢オチに近いような第三者的視点が覆いかぶさるだけ。
    ここまで混沌とした大きな風呂敷を広げたならば、どっかから吹いてきた風に風呂敷が吹き飛ばされて終わり、のようなスタイルではない終わり方がよかった。
    阿部和重氏にしてなお、こういう展開の決着は、神様みたいな感じの視点で締めるしかなかったのかと思うと、かなり残念な結末であった。
    無理に決着をつけなくてもいい物語だったのでは?

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著者プロフィール

1968年生まれ。『アメリカの夜』で第37回群像新人賞を受賞し作家デビュー。’99年『無情の世界』で第21回野間文芸新人賞、2004年に『シンセミア』で第15回伊藤整文学賞・第58回毎日出版文化賞、’05年『グランド・フィナーレ』で第132回芥川賞、’10年本作で第46回谷崎潤一郎賞をそれぞれ受賞。他の著書『クエーサーと13番目の柱』『IP/NN 阿部和重傑作集』『ミステリアスセッティング』ABC 阿部和重初期作品集』対談集『和子の部屋』他多数。

「2013年 『ピストルズ 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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