橋の上の「殺意」 <畠山鈴香はどう裁かれたか> (講談社文庫)

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  • 講談社
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レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062776141

感想・レビュー・書評

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  •  ベテラン・ルポライターが、2年半におよぶ取材をふまえて書き下ろした、畠山鈴香事件(秋田連続児童殺害事件)のルポルタージュ。中心となるのは、さる5月に鈴香の無期懲役が確定した裁判の記録である。

     この事件については週刊誌・夕刊紙等がずいぶんいいかげんな記事を書き飛ばしており、根拠のないデマの数々――鈴香が男を家に連れ込んでは売春していたとか、被害男児の父親と不倫していたとか、彩香ちゃんを虐待していたとか――が、事実であるかのように一人歩きしている。
     さすがに本書は、そうしたスキャンダリズムとは無縁の真摯な内容となっている。むしろ、この事件の報道に対する批判の書にもなっているのだ。

     著者は死刑反対の姿勢を旗幟鮮明にしており、本書も一貫してその立場から書かれている。そのため、裁判についての記述では偏向が目に余る部分もある。
     著者の目から見ると、死刑を求めていた検察側はつねに“悪しき国家権力”であり、彼らが法廷でなす主張は「舌なめずりするように」などというネガティヴな形容詞つきで描写される。このへん、ちょっとあからさますぎやしないか。

     また、著者が鈴香に対して終始同情的でありすぎる点も気になる。
     たしかに、彼女は病んだ心をもつ「哀れな加害者」(著者の形容)であり、その生い立ちを見れば同情の余地も山ほどあるのだが(父親から虐待を受けていたり、少女期に学校で激しいいじめを経験していたり)……。

     もっとも、世論の大勢が鈴香糾弾に傾いたなかにあっては、このような本が1冊くらいあったほうがバランス上好ましい、ともいえる。

     不可解なこの事件だが、本書を読んでもその不可解さは払拭されない。
     ただ、鈴香の精神鑑定に当たった精神科医の一人・西脇医師による解釈は、私にとって「なるほど」と腑に落ちるものだった。

     西脇医師は、最初の彩香ちゃん殺害(鈴香は殺意を否定)は人生に絶望した鈴香による「無理心中未遂」であり、豪憲くん殺害は「混沌とした心理状態で、あの世(死後)の彩香ちゃんの遊び相手として豪憲くんをあの世に送り込んだ」ものだと解釈している。
     もっとも、著者は西脇鑑定を評価しつつも、「(動機を解釈した)結論部分については疑問を感じている」としているのだが……。

     ともあれ、著者によるバイアスが少し気になる以外は、読みごたえあるルポルタージュだ。

  • 当時だいぶ話題になった事件のルポ。
    特に取材もなく書かれたものなので事件の概要をつかむ以外に価値なし。当初、事故として扱われていた一件は、その後の被告人の言動(再捜査を要求)を見る限り、記憶障害がおきているという主張もありそうな気がした。

  • 2/3が裁判傍聴記

  • 日本ではとかく勧善懲悪が基本的に支持されるので、殺人者=死刑で裁かれるべき、というのが常に趨勢になる。
    そのため死刑廃止論は抹殺されがち。もちろん自分の子供が殺されたら加害者を絶対死刑に頬むりたいって思うだろう。その気持ちはもちろんよく分かる。
    だけど裁判とか刑法というのは、そういう被害者感情だけに流されては本来いけないはず。とはいえこの著者もそうだけど、そういうこと言うと叩かれてしまう。
    刑法39条の心神喪失者や心神耗弱者に対する免刑・減刑規定により、日本の殺人事件の裁判は、複数の精神鑑定結果報告の解釈が重要視されるようになってしまい、事件の本質がどんどん見えなくなってしまう傾向にあるようだ。
    まあ、どんな刑法になろうが、本人が真実を語ってくれなければ、真実は暴かれないわけだけど…
    この事件も2人の幼い命が奪われた真相が見えないというやるせなさが残ったまま無期懲役が執行された。
    特に本人が事件の核心を健忘してしまっているので、その部分に関する複数の医師の精神鑑定結果のどちらが正しいか?といった裁判の流れは、遺族が傍聴するには耐え難い屈辱だと思われる。
    素人が単純に見ると、忘れれば極刑を免れる、という誤解を受けかねない裁判の流れが読んでいて辛すぎた。

  • 2006年の秋田児童連続殺人事件で逮捕された畠山受刑者の実像に迫ったルポルタージュ。

    帯に『魔女の裁判』という言葉が記載されているが、著者は世論の畠山受刑者に抱くイメージと真逆のイメージへと読者を誘っている。

    焦点は畠山受刑者の『殺意』と犯行当時の『精神状態』であるようだが、短期間に無抵抗の幼き子供二人を死に至らしめた事実は消しようもなく、死刑という求刑は妥当と思われる。しかし、著者は一貫して畠山受刑者を擁護するかのようであり、違和感を覚えた。この事件が冤罪であり、疑わしい人物がいるのならば、畠山受刑者の擁護にも納得するのだが…

著者プロフィール

ルポライター。『残夢――大逆事件を生き抜いた坂本清馬の生涯』(金曜日)、『大杉栄――自由への疾走』(岩波現代文庫)など、明治大正期の社会主義者、無政府主義者を描いた作品も多い。「さようなら原発」運動、「戦争をさせない」運動などの呼びかけ人。

「2017年 『軟骨的抵抗者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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