新参者 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 471
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062776288

作品紹介・あらすじ

立ちはだかるのは、人情という名の謎。日本橋で発見された女性の絞殺死体。着任したばかりの刑事・加賀は、この未知の街を歩き回る。

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    加賀恭一郎シリーズでドラマ化もした代表作。
    映画にもなった「麒麟の翼」や「祈りの幕が降りるとき」は観たが、ドラマ版はこれが初めて。

    はじめは「噓をもう一つだけ」みたいな日本橋の事件に関する短編集なのかなーと思っていたが、全く違うところがまたニクイ。
    日本橋で起こった一つの事件に対し、各章ごとに色んな人物が絡んでいき、下町の人情味、そして情緒あふれる登場人物たちを交えて真相へと近づいていく。
    一見事件とは無関係に思える人々の日々の暮らしに接し、彼らのトラブル?もキチンと解決しながらじっくりと事件を詰めていく。
    また、キザすぎる加賀恭一郎の台詞一つ一つがまたイイ味を出している。
    飄々としながらも、事件の要点をしっかり押さえていくこの野郎は本当にカッコイイんだよ!!笑

    結局、最後の方になるまで東野圭吾に振り回される1冊でした。
    いや、本当に面白かった。


    【あらすじ】
    日本橋の片隅で一人の女性が絞殺された。
    着任したばかりの刑事・加賀恭一郎の前に立ちはだかるのは、人情という名の謎。
    手掛かりをくれるのは江戸情緒残る街に暮らす普通の人びと。

    「事件で傷ついた人がいるなら、救い出すのも私の仕事です」。
    大切な人を守るために生まれた謎が、犯人へと繋がっていく。


    【引用】
    p253
    「捜査もしていますよ、もちろん。でも、刑事の仕事はそれだけじゃない。事件によって心が傷つけられた人がいるのなら、その人だって被害者だ。そういう被害者を救う手立てを探し出すのも、刑事の役目です。」


    p296
    「皮肉な話です。戸紀子の一件から、女を幸せにするには馬車馬のように働かなきゃならないってことを学びました。でもそれだけでもだめだってことを、今度は峯子から教わりました。私っていう人間は、全く不器用にできているらしい。」
    息子とこんなふうに酒を飲むことが、昔からの夢だった。
    時には悩みを聞き、父親らしいアドバイスをしてやりたかった。
    しかし現実には、言葉を交わせば口論になる。心の繋がりを感じられない。


    p298
    「もう一つ質問です。加賀さん、あなた警察での階級は?」
    「警部補ですが」
    「警部にしてもらうべきだ。」そういって直弘は出口に向かった。


    p388
    彼の話は、人形町にある煎餅屋のエピソードから始まった。
    そこに出入りしていた保険の外交員に嫌疑がかかったが、なぜ彼がアリバイを正直に述べなかったのかという話だ。

    次は料亭にまつわることで、三井峯子の部屋にあったワサビ入りの人形焼きに繋がる。
    さらには三井峯子が通っていた瀬戸物屋、顔見知りだった時計屋、友人だった翻訳家の話へと続いた。
    いずれも事件と直接関わるような内容ではない。

    だが上杉は、聞きながら内心舌を巻いていた。
    この所轄の刑事は、誰もが見向きをしないような些細なことに拘り、たとえ事件に無関係だとわかっていても、決して手を抜かずに真相を突き止めようとしてきたのだ。


    p389
    「俺はね、この仕事をしていて、いつも思うことがあるんです。人殺しなんていう残忍な事件が起きた以上は、犯人を捕まえるだけじゃなく、どうしてそんなことが起きたのかってことを徹底的に追及する必要があるってね。だってそれを突き止めておかなきゃ、またどこかで同じ過ちが繰り返される。その真相から学ぶべきことはたくさんあるはずです。」


    p395
    上杉は背筋を伸ばし、背中を丸めたままの岸田を見下ろした。
    「私は悪事を働いた息子を守ったのではなかった。もっと悪い方向へ行くように背中を押しただけだったのです。親として、完全に失格です。同時に警察官としてもね。
    親は、たとえ憎まれても、子供を正しい方向に導いてやらねばならない。それができるのは親だけなんです。」

  • 私はテレビ版と映画版の加賀恭一郎シリーズを評価していない。阿部寛が加賀に相応しくないからである。外見が、ではない。むしろこの作品でも加賀を「彫りが深くて浅黒い」と描いていて、ピッタリなのかな?とも思う。しかしテレビや映画にすると、必ず阿部寛が全面にでるのである。主人公だから当たり前だろ、というかもしれないが、このシリーズの素晴らしいのは、加賀は登場するのは必ず途中からであって、活躍するのは最後の最後であって、むしろむしろ謎解きだけしてそのまま居なくなることさえあったのである(初期は違う)。そこが素晴らしかったのだ。テレビや映画だと、どうしてもスターを最初から最後まで登場させなくてはならない。だから映像化は最初から期待できなかった。

    「新参者」は、加賀の出番は比較的多いが、あくまでも物語視点を「謎を抱えた人物」に置く。しかも、犯人探しは最後にとっておいて人情話に終始する。事件推理を追いながら、同時に「日常の謎」解きの物語を作るという荒技を今回は挑戦している。しかも成功している。

    東野圭吾の小説群の中でも、「白夜」や「私が彼を殺した」以来の傑作になったと思う。

    ずっと知りたかった「眠りの森」に登場した浅岡美緒との関係が一つわかったのは収穫だった。加賀は多分、今でもずっと彼女を待っているはずだ。加賀が捜査一課から所轄に移ったのは、あの事件のあとの顛末のせいだとは今回分かった。また、そのあと所轄で華々しい成果をあげ、上司もそのことを認めていながら、上に上げないのは、彼女との関係を加賀が精算する気が一つもないからに違いない。

    いつか再び彼女との物語が紡がれることを願ってやまない。
    2013年11月23日読了

  • 会社からすごく近い人形町。
    その風景がふんだんに現れて親近感!

    連作短編だけど、しっかり繋がっていて
    面白かった。

    人形町探索したくなりますねー。

    ドラマも見たかったなぁ。

  • 加賀恭一郎シリーズ第8弾。
    9つの章で成り立った連作短編で構成されていて、それぞれの章で加賀が出逢う下町の人々との人間関係が描かれており、加賀の思いやりや優しさなどが垣間見れる。
    各章の短編という点が、読み進めるとともに線となっていく過程が魅力的。
    謎解き人情劇という言葉がしっくりくる作品。

  • それぞれの登場人物が章の題名になっている。加賀刑事は殺人事件の捜査でこれらの人物と接触していき犯人に辿り着く。被害者が妊娠している女性を息子の嫁と勘違いして、安産を願いながら亡くなったところが悲しくもあった。

  • 今までの中では一番楽しめたかも。捜査には関係のなさそうなところを明らかにしていき、それぞれの動機が様々なものを人を紡いでいく。翻訳家の友の章が一番グッときました。

  • 加賀恭一郎シリーズ第8作目。練馬署から日本橋署に異動になった加賀刑事(警部補になっている)がやはり警視庁捜査1課の刑事をうまく使って殺人事件を解決する。
    6作目までの加賀恭一郎はどこか頭脳明晰なだけの名刑事というイメージだったのが、7作目「赤い指」あたりからちょっと奥が深くて温かく、人に寄り添いながら事件の本質を解き明かしていく人間だとわかってきて、今回の8作目「新参者」で加賀恭一郎の本領発揮です。
    捜査1課の捜査を所轄の加賀刑事が、関係ないと思われた関係者から事件の背景、被害者との関係、そして犯人と犯行理由まで次から次へと導いていく。被害者が関わった人々を一つずつ丁寧に解いていき、最終的に犯人とその動機まで解き明かすのだが、捜査対象のいろんな関係者のケアまでして、所轄の地域の人々と信頼関係を築いていく加賀刑事の人間性が今作のもう一つのテーマかなと思う。
    そして加賀刑事が捜査1課の刑事だったのが、4作目「どちらが彼女を殺した」から所轄の刑事になっていた訳も語られる。
    読み終わってから、加賀恭一郎に思入れが一気に強くなり、もう1回読み直してしまった。
    8作目にしてようやく期待していた加賀恭一郎に出会うことが出来た。

  •  小伝馬町で起こった殺人事件。加賀恭一郎が事件の手がかりを求めさまざまな証言者と出会い、その証言者の抱えた謎と殺人事件の真相に迫っていくミステリー

     事件自体平凡な殺人事件です。なので加賀が捜査に参加しなくても他に鋭い刑事がいれば警察は犯人にはたどり着けたのではないか、とも思います。でもこの事件の本当の『真実』は加賀じゃなければたどり着けなかったのだろうとも思います。

     それは殺人事件の真実はもちろんなのですが、事件の犯人や真相とは違う、『被害者自身に関する真実』です。加賀が被害者に関する真実を明らかにすることは、被害者の息子や友人に事件による喪失感を少しでも埋めてもらえるよう真実を明らかにしているように感じました。加賀がいなければきっと被害者の生前の想いは注目されることはなかっただろうし、それが残された人々に伝わることもなかったはずです。

     「事件で傷ついた人がいるなら、救い出すのも私の仕事です」。そう語る加賀のどんな細かい点も見逃さない洞察力と推理力は、事件の真の解決を目指す優しさの表れだと感じました。

     そしてその優しさは被害者の深い関係者だけではなく、証言を集める際に出会った人々にも向けられます。殺人事件解決にはあまり関係のない、証言者自身の問題も加賀は真実を明らかにしていきます。きっと加賀にとって真実に大きいも小さいもないのだろうな、と思います。もちろん殺人事件という非日常からの大きな真実も大事ですが、日常からの小さな真実でも救われる人がいる、ということを加賀は分かっているのではないでしょうか。それが分かっているからこそ、被害者の細かいことも証言者の謎も調べないと気が済まなかったのだろうと思います。

     この本の中心となっているのは殺人事件ではなく、殺人事件を中心とした人々の人情。平凡な殺人事件を描いたからこそ、事件の捜査の過程で切り捨てられてしまう人々の人情を描き切ることができたのだと思います。それとともに連作調にしたのも、加賀に関わることになる人々の一つ一つの出来事をクローズアップし殺人事件の証言だけにとどまらない、刑事と証言者のかかわりを濃く描くためのものだったのだと感じました。

     人形町という舞台の描き方もまた素敵でした。加賀同様作者の東野さんもこの人形町を歩き回ったのだろうな、と感じました。

    2010年版このミステリーがすごい!1位
    2010年本屋大賞9位

  • 各章が1つの事件に繋がっていながら、それぞれに独立した謎解き要素がある。非常に面白い小説であると感じた。

  • 平易な文章で書かれたミステリーでありながら一つの殺人事件に対し各登場人物の視点で描く事により
    タランティーノの映画を観ているような立体性が出ている。
    謎解き係の加賀警部補は論理的であり、小説の流れも驚きはある。surpriseは笑いや芸術になくてはならないスパイスだと思う。

    殺人とは関係のないミステリーも丁寧に解いていく事でさらに深みを増している。確かに殺人事件の犯人を見つけるだけがミステリーちゃうもんねーて思う。

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著者プロフィール

東野圭吾(ひがしの けいご)
1958年大阪市生野区生まれ。大阪府立大学工学部電気工学科卒。大学在学中はアーチェリー部主将を務める。1981年に日本電装株式会社(現デンソー)にエンジニアとして入社し、勤務の傍ら推理小説を執筆する。1985年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞し、小説家としてのキャリアをスタート。2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木三十五賞を受賞。2013年『夢幻花』では第26回柴田錬三郎賞を受賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞受賞。現在、直木三十五賞選考委員を務めている。代表作としてガリレオ・新参者シリーズに加え、映画化された『手紙』『ラプラスの魔女』。ほかにもテレビドラマ・映画化された作品が多い。2018-19年の作品では、『人魚の眠る家』、『マスカレード・ホテル』、『ダイイング・アイ』、そして今後の映画化作として玉森裕太、吉岡里帆、染谷将太らの共演作『パラレルワールド・ラブストーリー』(2019年5月31日映画公開)がある。なお、中国で『ナミヤ雑貨店の奇蹟-再生-』が舞台化・映画化され、映画はジャッキー・チェンが西田敏行と同じ雑貨店店主役で出演する。2019年7月5日、「令和」初の最新書き下ろし長編ミステリー『希望の糸』を刊行。

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