新参者 (講談社文庫)

著者 : 東野圭吾
  • 講談社 (2013年8月9日発売)
4.06
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062776288

作品紹介

立ちはだかるのは、人情という名の謎。日本橋で発見された女性の絞殺死体。着任したばかりの刑事・加賀は、この未知の街を歩き回る。

新参者 (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

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  •  小伝馬町で起こった殺人事件。加賀恭一郎が事件の手がかりを求めさまざまな証言者と出会い、その証言者の抱えた謎と殺人事件の真相に迫っていくミステリー

     事件自体平凡な殺人事件です。なので加賀が捜査に参加しなくても他に鋭い刑事がいれば警察は犯人にはたどり着けたのではないか、とも思います。でもこの事件の本当の『真実』は加賀じゃなければたどり着けなかったのだろうとも思います。

     それは殺人事件の真実はもちろんなのですが、事件の犯人や真相とは違う、『被害者自身に関する真実』です。加賀が被害者に関する真実を明らかにすることは、被害者の息子や友人に事件による喪失感を少しでも埋めてもらえるよう真実を明らかにしているように感じました。加賀がいなければきっと被害者の生前の想いは注目されることはなかっただろうし、それが残された人々に伝わることもなかったはずです。

     「事件で傷ついた人がいるなら、救い出すのも私の仕事です」。そう語る加賀のどんな細かい点も見逃さない洞察力と推理力は、事件の真の解決を目指す優しさの表れだと感じました。

     そしてその優しさは被害者の深い関係者だけではなく、証言を集める際に出会った人々にも向けられます。殺人事件解決にはあまり関係のない、証言者自身の問題も加賀は真実を明らかにしていきます。きっと加賀にとって真実に大きいも小さいもないのだろうな、と思います。もちろん殺人事件という非日常からの大きな真実も大事ですが、日常からの小さな真実でも救われる人がいる、ということを加賀は分かっているのではないでしょうか。それが分かっているからこそ、被害者の細かいことも証言者の謎も調べないと気が済まなかったのだろうと思います。

     この本の中心となっているのは殺人事件ではなく、殺人事件を中心とした人々の人情。平凡な殺人事件を描いたからこそ、事件の捜査の過程で切り捨てられてしまう人々の人情を描き切ることができたのだと思います。それとともに連作調にしたのも、加賀に関わることになる人々の一つ一つの出来事をクローズアップし殺人事件の証言だけにとどまらない、刑事と証言者のかかわりを濃く描くためのものだったのだと感じました。

     人形町という舞台の描き方もまた素敵でした。加賀同様作者の東野さんもこの人形町を歩き回ったのだろうな、と感じました。

    2010年版このミステリーがすごい!1位
    2010年本屋大賞9位

  • それぞれ事件に関係ないと思われていることが、実は少なからず関係していて、それが結果いい話だったり、そうではなく悲しい話であったり、とても読み応えがあって面白かった!
    警察の人がみんな加賀みたいな人だったらいいのになぁ。
    この作品のように、事件に関わった人の心が少しでも救われたらもっと良い世の中になるのに。

  • 私はテレビ版と映画版の加賀恭一郎シリーズを評価していない。阿部寛が加賀に相応しくないからである。外見が、ではない。むしろこの作品でも加賀を「彫りが深くて浅黒い」と描いていて、ピッタリなのかな?とも思う。しかしテレビや映画にすると、必ず阿部寛が全面にでるのである。主人公だから当たり前だろ、というかもしれないが、このシリーズの素晴らしいのは、加賀は登場するのは必ず途中からであって、活躍するのは最後の最後であって、むしろむしろ謎解きだけしてそのまま居なくなることさえあったのである(初期は違う)。そこが素晴らしかったのだ。テレビや映画だと、どうしてもスターを最初から最後まで登場させなくてはならない。だから映像化は最初から期待できなかった。

    「新参者」は、加賀の出番は比較的多いが、あくまでも物語視点を「謎を抱えた人物」に置く。しかも、犯人探しは最後にとっておいて人情話に終始する。事件推理を追いながら、同時に「日常の謎」解きの物語を作るという荒技を今回は挑戦している。しかも成功している。

    東野圭吾の小説群の中でも、「白夜」や「私が彼を殺した」以来の傑作になったと思う。

    ずっと知りたかった「眠りの森」に登場した浅岡美緒との関係が一つわかったのは収穫だった。加賀は多分、今でもずっと彼女を待っているはずだ。加賀が捜査一課から所轄に移ったのは、あの事件のあとの顛末のせいだとは今回分かった。また、そのあと所轄で華々しい成果をあげ、上司もそのことを認めていながら、上に上げないのは、彼女との関係を加賀が精算する気が一つもないからに違いない。

    いつか再び彼女との物語が紡がれることを願ってやまない。
    2013年11月23日読了

  • 加賀刑事シリーズ。日本橋で起こった一つの殺人事件。その捜査上に上がってきた人達へ加賀刑事が関わっていくことで、その人達が抱えてきた問題を良い方向へ変えてしまうという人情もの連作短編集。ミステリーでもある。印象に残ったのは嫁姑のバトルが激しいけどラストはホロッとする「瀬戸物屋の嫁」と素直になれない頑固おやじが可愛らしい「時計屋の犬」ミステリーというより人情ものとして読みました。

  • 刑事の加賀が事件に関係ない小さなことでも謎を解いてあげたり、被害者ではないが事件で心が傷ついた人にも救うのが暖かい感じで良かった。最終的には犯人も同情を誘う感じだった。短編短編がつながっていてあたたかいミステリーだった。

  • 2010年「このミステリーがすごい!」第一位作品。
    刑事・加賀恭一郎シリーズ。文庫になるのを待って最近ようやく読んだ。
    正直ミステリとしての本格度というか、トリックやアリバイの妙という点では派手さはない。むしろ地味というか、フーダニットとしては物足りないくらい。
    だけど、この作品はそこが売りではない。
    日本橋界隈という、都心ど真ん中にありながら江戸情緒、人情あふれる街。三味線や行李を売る店が普通に商店街に並んでいる、そんな場所。
    そこに暮らす、どこか昔懐かしい人たちの生活を丁寧に描写し、彼らのある意味古くさい、世話物的な価値観を静かに浮かび上がらせる。その描写力がやさしく淡々としていて、たとえば古い小津映画を思わせる。(この作品には、たとえば「容疑者Xの献身」のような盛り上がる感動はない。)
    「煎餅屋の娘」「料亭の小僧」「瀬戸物屋の嫁」など、作品は9篇の短編からなる連作。
    最初は近所の噂話レベルにすぎなかった、中年女性の殺人事件。それが、読み進めるに従って徐々に、その女性の人生、家族や友人知人、考え方、性格や外見までが明らかになっていく。
    小さな、本当に小さな事実を見過ごさず、鋭い観察力と洞察で事件の核心に迫る加賀はたしかに切れ者刑事だが、ここでは最後までやさしい。不器用だが人情味あふれる人たちを好意をもって見守る姿勢が、なんというかまあ、刑事らしくないし、まだ30代の若造がここまで達観できるものかね、とは思うけど(笑)。
    傑作というよりはワザありの秀作。いずれにしても、楽しめました。

  • なんだかTVドラマかのタイトルになっているのを覚えていて買った文庫本。人気の加賀恭一郎シリーズ。

    亡き母の生前を知るために日本橋署に希望し赴任してきた加賀恭一郎。かつては捜査一課でも名だたる事件を解決してきたにも関わらず所轄の警部補となることを厭わない。

    物語は日本橋の風情ある商店街の煎餅屋さんから始まる。一人暮らしの中年女性が殺害された事件に関して、保険セールスマンのアリバイを調べる加賀恭一郎が日本橋にやってきた新参者としてその町を本当に理解することから捜査を始める。

    物語は話し手の視点の変更を次々と繰り返し、日本橋に住むいろいろな人がその事件に関わり、そこにつねに加賀恭一郎が鋭い洞察力と思い遣りで町の人々に接していく。事件の犯人を逮捕するだけでなく、残された遺族の心の傷まで解決していく様子はまさに、加賀恭一郎が粋であるところ。

    仲の悪い嫁・姑、仲たがいした親子、毎日顔を見るのが楽しみにされていたケーキ屋さんの店員、口の堅い料亭の見習い、おばあちゃんが末期の病気になった煎餅屋の家族など、さまざまな人間模様とミステリーを複合させたストーリーは見事としか言いようがない。

    加賀恭一郎が心から町を・人を理解しようとするその一貫性・行動力。細部から深い洞察力を駆使し、真実を掴む刑事としての推理力。人の機微を理解し、周りを幸せにしていくけど、それをひけらかさない粋な姿。とってもかっこいいと思いました。

    非常に面白い。お勧めです。

  • 人情溢れる町・人形町を舞台に、残忍な殺人事件とその裏で起こっていたいくつもの温かい“事件”。
    その温かさが殺人事件の悲しさを増して切ないです。
    被害者は「誰に」「なぜ」殺されたのか。
    殺人事件というのはそれだけではないと、その裏にある人間模様を突き詰める加賀刑事はやっぱり素敵。

    主人公である加賀刑事視点の章が無いのも好きな手法。

  • 東野圭吾さんの新しい文庫読了です。

    加賀恭一郎シリーズでしたが、
    久々すぎていつ所轄に落とされたのか忘れちゃいました。

    その所轄らしさが随所に現れた作品でした。
    日本橋の情緒が描かれるとともに、
    短編集の連作のような形で色々な人々の生活が、
    殺人事件を軸に描かれるという感じで、
    その人々の描き方が味わい深かったのが印象的です。

    もはや犯人が誰かはどうでもよく、
    そういう人々の姿を描くことがメインに思えるほどでしたが、
    非常に読みやすく、ちゃんと伏線も回収してくれるので、
    満足度の高い読了感でした。
    さすが東野圭吾さんです。

  • 日本橋の片隅で一人の女性が絞殺された。
    着任したばかりの刑事・加賀恭一郎の前に立ちはだかるのは、
    人情という名の謎。

    手掛かりをくれるのは江戸情緒残る街に暮らす普通の人びと。
    「事件で傷ついた人がいるなら、救い出すのも私の仕事です」。
    大切な人を守るために生まれた謎が、犯人へと繋がっていく。


    **************************************

    東野圭吾の本はほんま読みやすい。
    もしかしたら、この「新参者」は東野圭吾作品の中で、
    ベスト5に入るぐらい面白かった。

    第一章から第九章までの構成になってるねんけど、
    一つ一つが短編集のようで楽しめた。

    一人の女性が絞殺され、その犯人を刑事が追うって流れの中、
    聞き込みでわかってくる、いろんな家族の形。

    はじめは、このまま犯人はわかりませんでした。。。みたいな、
    とんでもない結末になるのでは!?ってぐらい、
    全く犯人らしき人が出てこうへん。

    でも最後には、犯人を捕まえるだけでなく、それまでの経緯で
    家族が深く関わってきてる事が全て繋がってて、すごい面白かった。

    心に語りかける書き方、うちはやっぱ東野圭吾作品が大好きやわ!!

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