竜が最後に帰る場所 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.69
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本棚登録 : 626
レビュー : 86
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062776509

作品紹介・あらすじ

読み終わった後、目の前の風景が別のものに見える―高揚感に包まれた至福の読書体験をお約束します。稀有な表現者による幻想短編集。

感想・レビュー・書評

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  • いやぁ~、ひさびさの恒川さんだったけど
    やっぱこの人の作品にハズレなし。

    文章が上手いから淀みなくスラスラ読めるし、
    情景描写もしっかりしてるから
    読むと必ず絵が浮かび上がるし、
    よくある設定であっても
    必ず予想の斜め上をゆく展開を用意して
    オリジナリティを毎回感じさせてくれるし、
    なんで世間一般でイマイチこの人がブレイクしないのか
    ちょっと不思議なくらい(笑)
    過小評価な作家の一人だと思う(‥;)
    (同じテイストの作家で言えば、朱川湊人さんもそう)

    本作はデビューから
    ホラー、伝奇もの、ファンタジー、SF、妖怪ものなど
    「不思議」でちょっとコワい世界を描いてきた恒川さん自らが
    「もっとも自分らしい物語の揃った特別な自信作」と言い切るのも頷ける出来映えです。


    真偽のほどは分からない、
    恨んだ相手を殺すことのできる「精霊を封じ込めた小瓶」の話に幻惑される男を描いた
    『風を放つ』、

    母の恋人による壮絶なDVによって幼少期の心に深い傷を負った「私」の壮大な復讐劇がコワい!
    「アンブレイカブル」やバットマンの「ダークナイト」、
    「オールド・ボーイ」「コピーキャット」「メメント」など
    様々な映画を下敷きにし、
    正義とは何かを読む者に問う構成もお見事!
    『迷走のオルネラ』、

    現(うつつ)と幻の境をさ迷う
    夜行(やぎょう)の一団。
    好奇心から参加してしまった男の苦悩を描き、
    背後の闇の中で脱落者を待ち受ける異形の群れの描写に震えた!
    『夜行の冬』、

    この世界に存在する様々なモノに化けた「擬装集合体」なるもの。
    この「擬装集合体」を見破って「拡散」させ、
    本来の姿を露わにする特殊な力を持った男。
    この独創的で素晴らしい設定だけで軽くご飯三杯は食べれるくらいだけど(笑)、
    さらに驚愕のストーリー展開が待ち受ける
    『鸚鵡(おうむ)幻想曲』、

    ある想像上の生き物の誕生から旅立ちまでを描いた幻想小説。
    生きることを謳歌し生まれた意味を知り、「キュハリラ」と鳴く美しいキュワワに恋するゴロンドの純粋さに涙…
    『ゴロンド』、

    など現実社会、異世界、人間のいない世界と全五編に様々な舞台を用意し、
    惚れ惚れするほど完成度の高い珠玉の短編集となっております。

    特に印象的だったのは
    『迷走のオルネラ』の
    「君はどう思う?」が口癖で 
    本を愛す議論好きなコジマアヤカの魅力的なキャラ設定!
    そして真剣に読んでみたくなるほど架空の漫画「月猫」の世界観が
    いい。
    あとは恒川さんの本領発揮と言える『夜行の冬』のパラレルワールドの怖さとラストの後味の悪さ(笑)、
    異世界へジャンプするために夜行するという設定の秀逸さ。
    そしてラストを飾る『ゴロンド』はゴロンドが可愛すぎて悶絶したし(笑)、
    個人的にもっとも好きな一編でした。


    タモリの「世にも奇妙な物語」や
    異世界ファンタジーが好きな人、
    パラレルワールドの存在を信じてる人、
    (僕はもちろん信じてます!笑)

    UMAや心霊番組をついつい観ちゃう人、
    面白い短編集を探してる人にオススメしまーす。

  • 日本で幻想(ファンタジー)をまともに描ける稀有な作家、恒川光太郎の5話で構成される短編集。《狐に摘ままれた》ような語りのプロローグ『風を放つ』から、徐々に作者の持ち味を活かし、読む者を異界へ誘う構成は毎度ながら実に見事。
    誰しも一度は夢想する正義と悪をくじく力への憧れは《闇が有っての光》なのか?『迷走のオルネラ』、SFのパラレルワールドを見事に幻想譚へと変換した『夜業の冬』、予期せぬ展開に翻弄される《愉しさ》を満喫できる『鸚鵡(オウム)幻想曲』、クライマックスを飾るにふさわしい、大きなスケールで語られる、優しい読了感のある傑作は、表題作でもある『ゴロンド』で締めくくられる。
    デビュー作『夜市』から5作目の本書をして、恒川が紡ぎ続けてきたテーマが「再生」にある事を前面に強く打ち出した作品でもある。最新作は異界の題材にした時代劇小説の『金色機械』と。文庫になるまでじっと我慢だ。

  • 76

    うん、面白い。さらさらと読みやすい。
    日常を非日常に帰る手腕が自然で、いつのまにか引き込まれる。
    短編5作入ってるけど、どんどん人間の世界から離れていくのがおもしろかったな~。
    忘れてしまうだろうっていう一言がいい。

    お気に入りは、
    迷走のオルネラと鸚鵡幻想曲。
    オルネラは最初よくわからんな~という入りから、徐々に紐解かれていく感じがいい。こういう復讐もあるのね。
    鸚鵡幻想曲は、発想が素晴らしい。触りたくなっちゃう。
    こんなアイデアどっから出てくるのよ、しかも作者は最初の不審者に話しかけられるからどんどん書き始めたらしいし、筆が踊って作品が勝手にできるとはまさにこのことかな。

    20191013

  • 不思議な世界観の短編集。
    面白く読みやすい長さなので、時間が過ぎるのを忘れて読み耽って1日読了。
    「夜市」でお気に入り作家に仲間入りしたこの作家は期待を裏切らない。次が楽しみだ。

  • 本屋3軒はしごしてようやく見つけた短編集。

    作家・恒川光太郎を好きになるには十分すぎる一冊。

    こういう出会いがあるから読書はやめられない。

  • 「風を放つ」
    この作者にしては珍しく(?)妙に現実的なお話。

    「迷走のオルネラ」
    これもファンタジーというよりはリアルな怖さ。自らのトラウマをこういう形で昇華させる方法もあるのか。復讐も兼ねていて効率的ですね。

    「夜行の冬」
    これが一番、いつもの常川作品ぽかった。いつもの、というか私の思う(好きな)常川光太郎のイメージですけども。ちょっと民俗学的な匂いのする不思議現象。ただ、終わり方が少しあっけなかったかな。もう少し続きを読みたかった。

    「鸚鵡幻想曲」
    これはなんとも奇想天外。何が起こるのか、どこへ向かっているのか、展開が全く予想できない面白さがありました。「偽装集合体」という発想も奇抜だけれど、それがメインのテーマではなく、それを「解放」する側が主人公でもなく、ある意味被害者のほうがどんどん変遷していく意外性が面白い。ラストが一応ハッピーエンド(?)なのもいいですね。

    「ゴロンド」
    本タイトルの「竜が最後に帰る場所」は、この作品のサブタイトルみたいなものでしょうか。そこに思い当たれば、物語の主人公の正体は最初から明らか。とくに大事件が起こることもなく、一匹の竜の誕生、成長、そして旅立ちを描いているだけなのだけれど、童話のような印象でした。

  •  5編収録の短編集。

     今まで読んできた恒川さんの作品と比べると、少し幻想色や異界の雰囲気は薄目かなあ、という印象を持ちました。と言っても奇想あふれる短編もありそのあたりはさすが恒川さんと言うべきかなあ、と思います。

     もっとも気に入った短編は『ゴロンド』。本のタイトルでもある竜の一生を描いた短編です。
     童話のような設定と語り口、そして主人公のゴロンドを始め出てくる竜たちの可愛さに癒される話でした。

     ほかの短編では『迷走のオルネラ』はラストが印象的。冷ややかな怖さがラストに残る短編です。系譜としては『秋の牢獄』に収録されている「幻は夜に成長する」と似ていると思います

     『鸚鵡幻想曲』はいきなりの展開に唖然としました(笑)
     解説によると行き当たりばったりで書かれた作品だそうで、そう考えるとある意味納得でもありますが。こんな不思議な物語を成立させるのはおそらく恒川さんくらいしかいないのだろうと思います。色彩豊かな映像がすっと頭の中に浮かんでくるのも恒川さんらしいです。

     全編何かしらのメッセージが込められていそうな、いなさそうな不思議な読み心地の作品ばかりです。読み終えた時の感覚は、カフカの短編集を読んだ時と少し似ている印象を個人的に持ちました。腑に落ちないけどなぜ腑に落ちないのか分からない……そういう感覚です。

  • 大好きな恒川さん(*^_^*) 文庫化してから全部揃えております。初めて、予約注文しちゃった (^_^)v 恒川作品でベスト3に入る作品。『南の子供…』よりも先に買っちゃった。

    ↓↓読了コメントここから↓↓
    あれれ?と違和感に焦る。こんなにドロドロいやな感じだったかな?鸚鵡も好きだったのに、こんな、こんな…(汗)
    恒川作品ファンを自負していましたが、返上しなきゃかな(涙)
    読むタイミングじゃなかったかも。またいつから再読します。
    とりあえず、11/7には『秋の牢獄』再読決定(^_^)v

  • 少し怖くて不思議な話が詰まった短編集。ファンタジーと現実の境目を行き来するような、怖くもありワクワクさせられる物語。

  • 初めて恒川光太郎さんの作品を読んだ。
    表紙がとても綺麗で、読んでみたくなって手に取った。
    短編集と言う事もあるが、文章や描写がとても綺麗で読みやすく、自分のように初めて読む人も読みやすいと思う。
    初めて読んだが、この作者さんは色の描写がとても上手だと思う。
    他の著作も読んでみたいと思わせる作品だった


    迷走のオルネラ
    最初はとても胸糞悪いと思いながら読んでいたが、主人公の少年(まぁ後々大人になる訳だが)が、よく頑張ってやってくれたので、スカッとした
    最後の解放って言うのは何なんだろう、ナルミと言うアイドルは誰なんだろう、宗岡と何らかの関わりがあるのではと思わずにはいられない、ここまで読むと。

    夜行の冬
    季節も相まって、雪国住まいの私は、とてもリアルに感じることが出来た
    冬の夜と言うのは、本当にとても静かで静かで…積もった雪に何でも吸い込まれていくような、そういう錯覚に陥る…
    そんな雰囲気の話
    過去と未来を取り替え続ける、と言う発想が良いと思った

    鸚鵡幻想曲
    何かの物体が、他の何かが集まって出来ているとかいう、そんな発想はなかった
    そしてそれを解放する青年と、実は集合体だった青年の話
    そっちかよ!!!!みたいな衝撃の展開で、思わず声が出てしまった
    そして、解放させられてしまった青年のその後、そして解放する青年のその後。
    私は解放させられてしまった青年の後日談が読めてよかった
    この短編が一番好き

    ゴロンド
    ゴロンドが初めて陸に上がった時の描写が、とっても綺麗だった。
    ゴロンドと仲間たちがとても可愛らしく、暖かい気持ちになった。
    おたまじゃくしの話だと思って読んでいたが、もっと壮大なスケールの話だった。

  • しんと静まる雪の夜
    錫を鳴らして歩く赤い女に導かれ
    町から町へと渡ってゆく怪しい集団。
    巡礼めいた一行。その一行に加わった僕は
    微妙に異なる世界から世界への旅に出る…
    (夜行の夜)

    「風を放つ」「夜行の冬」「鸚鵡幻想曲」
    「迷走のオルネラ」「ゴロンド」5編収録。

    幻想ホラー小説というのでしょうか。
    怖い感じはあまりなく、独特の世界観
    不思議な空気感を持った作品たち。
    「夜市」だけ読んで他作品を
    読んでいなかったのですが、
    この本を読んでもっと他作品も読んで
    みたくなりました…!

    文章がうまいので読みやすいけれど軽くなく、
    描かれる美しい情景。
    どれも魅力的でしたが
    特に「集合体」を探し出し「解放」する男が
    描かれた「鸚鵡幻想曲」が印象的でした。
    「夜行(やぎょう)の冬」も
    寂しくて不気味で静かで良かったです。

  • 恒川さんのは一晩で読んじゃう。

  • 恒川作品のなかで最初に読んだ本。短編5つ。最初のお話があまり好みでなかったから微妙だったかなって思ったけど、後半の3編がほかの恒川さんの作品にも多い、不思議で独特の雰囲気を持っていて、とても好みだった。

    「鸚鵡幻想曲」がとくにすき。

  • 『風を放つ』
    『迷走のオルネラ』
    『夜行の冬』
    『鸚鵡幻想曲』
    『ゴロンド』
    の5編からなる短編集

    『風を放つ』では、あるあると共感できる人間味や日常のなかにちょっとだけ出てくる不思議な存在の表現がうまいと思いました。上手に余韻を残す終わり方がおおい恒川さんですが、この作品の終わり方には少しインパクトが少なすぎると感じる方も多いかも。

    『迷走のオルネラ』は恒川さんらしからぬミステリチックな作品で、他作では『蛸漁師(南の子供が夜行く所)』に近い感じだと思います。主人公の行いを善とするか悪とするか…ゾクゾクさせられる作品。ぜひ作中の漫画を読んでみたい…。

    『夜行の冬』はパラレルワールドの出現するSF的な物語なのですが、近代的な機械などが出てくる訳ではなく、恒川さんらしい『風の古道(夜市)』のような幻想的な雰囲気、ダークファンタジー的な要素がある作品で、今までにない作品だったと思います。

    『鸚鵡幻想曲』は上の3つの作品に比べ、イメージ的に明るくなってきます。開放する者によって、人間を止めなければならなくなった主人公が、鸚鵡として生きる。人間の主人公が一転鸚鵡になって物語が進んでいくスタイル、終わり方まで、素晴らしい作品だと思います。

    『ゴロンド』は人間ではない、伝説の生物のお話。物語に目的らしいものはなく、成長してゆく様子や自然界の生死をリアルに表現してあって、もしかして本当にいるのではないかと思わせてくれる様な素敵な作品。

    少しづつ人間から離れた話になり、少しづつ明るい話になっています。作者の意図を思案しながら余韻に浸れる良い作品でした。

  • 短編集。この中ではゴロンドがとても好き。生物が成長するということ、そのことを描くというのはなんとすごい視点

  • これはよかった。
    全編よかった。
    まさに珠玉の短編集。

    第1206回 てるぞう賞(短編部門)受賞。

  • 美しく感動的な情景を描いていても、
    どこかしら不穏さの残り香みたいなものが微かに感じられる
    そんな文章を書く人だなという印象。
    「夜行の冬」のしんと冷たい空気とか夜明けの眩しさとか
    そういうのはちょっと好きかも。

  • 一編一編読み進むたびに窮屈さから解放されて外の世界へ開いていくような感覚は、解説で触れられていた著者のお話の通りだなと思いました。そして読み終えて本を閉じた時の無気力感。まだ現実には帰りたくないような、もっと浸っていたいようなそういった魅力が、あの少しズレた世界たちにはありました。印象的だったのは「迷走のオルネラ」「鸚鵡幻想曲」「ゴロンド」。特に「ゴロンド」で表題が発せられた時はどうしようもなく胸が熱くなりました。私の中ではクライマックス。やはり恒川さん大好きだと再確認。

  • 大好きな恒川光太郎6冊目。
    各々SFやファンタジー映画1本撮れそうなスケールなのに、
    暖かな余韻を残して幕を閉じる恒川ワールド満載の5作品。
    日常と幻想の境界を描くのが本当に巧いなぁ。
    自分がもし何かの擬態だったら、とか誰かの空想上の世界のエキストラだったら…。
    想像しても私にはそれ以上に拡げる事は出来ないし…
    夢でもいいから恒川さんの世界に迷いこんでみたいなんて思ってみたり。

  • ただ現象としての幻想があり、それに説明はない。いらない。不思議なものごとはなんの理由もなくただ在るだけのもので、ファンタジーとはそういうものであるといい。
    全編を通じて、放り出されるようなものがたりの終わり方も素晴らしく好ましい。それらがいちばん顕著なのはこの短編集のなかでは「夜行の冬」かな。

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著者プロフィール

1973年東京都生まれ。2005年、『夜市』で日本ホラー小説大賞を受賞しデビュー。同作で直木賞候補に。14年、『金色機械』で日本推理作家協会賞を受賞。著書に『雷の季節の終わりに』『秋の牢獄』『南の子供が夜いくところ』『竜が最後に帰る場所』『金色の獣、彼方へ』『南の子供が夜いくところ 』『スタープレイヤー』『ヘヴンメイカー』などがある。

「2019年 『白昼夢の森の少女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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