獣の奏者 外伝 刹那 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
4.18
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本棚登録 : 3731
感想 : 214
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062776608

作品紹介・あらすじ

エリンとイアルの同棲時代、師エサルの若き日の苦い恋、息子ジェシのあどけない一瞬……。 本編では明かされなかった空白の11年間にはこんな時が流れていた!
文庫版には、エリンの母、ソヨンの素顔が垣間見える書き下ろし短編「綿毛」を収録。
大きな物語を支えてきた登場人物たちの、それぞれの生と性。

王国の行く末を左右しかねない、政治的な運命を背負っていたエリンは、苛酷な日々を、ひとりの女性として、また、ひとりの母親として、いかに生きていたのか。高潔な獣ノ医術師エサルの女としての顔。エリンの母、ソヨンの素顔、そしてまだあどけないジェシの輝かしい一瞬。時の過ぎ行く速さ、人生の儚さを知る大人たちの恋情、そして、一日一日を惜しむように暮らしていた彼女らの日々の体温が伝わってくる物語集。

【本書の構成】
1 文庫版描き下ろし エリンの母、ソヨンが赤子のエリンを抱える「綿毛」
2 エリンとイアルの同棲・結婚時代を書いた「刹那」
3 エサルが若かりし頃の苦い恋を思い返す「秘め事」
4 エリンの息子ジェシの成長を垣間見る「はじめての…」


「ずっと心の中にあった
エリンとイアル、エサルの人生――
彼女らが人として生きてきた日々を
書き残したいという思いに突き動かされて書いた物語集です。
「刹那」はイアルの語り、「秘め事」はエサルの語りという、
私にとっては珍しい書き方を試みました。
楽しんでいただければ幸いです。

上橋菜穂子」

感想・レビュー・書評

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  • パズルのピースのように、空白の11年を埋める役割を持ったサイドストーリー❗

    上橋 菜穂子さんのあとがきにあるように、人生の半ばを過ぎた人が読むと、非常に感慨深い作品となっています♫

    個人的には、エリンの同棲・結婚生活を描いた『刹那』よりも、若かりしエサルの切ない恋模様を描いた『秘め事』の方が、興味深く読むことができました❗男性キャラクターは、ユアンよりもジョウンの方が好きです♫

    カバーデザインも非常に綺麗で、とても満足出来たシリーズ作品でした❗

  • エリンの恋と出産のお話では、夫婦ともに大変なものを背負ってでも添い遂げ子を産んだ理由が理解出来てよかった。
    本編では3巻でエリンが一気に母親になっていて、ちょっとついていけなかったから先にこっちを読んでいたら気持ちが追いついたかなと思う。
    少女から妻になって、そして母になる。
    全てにおいて様々な葛藤があった。
    エリンの未来を諦めない気持ちが心に響く。

    エルサ師の学生時代のお話にもビックリした。
    家の事や将来のこと、そして短い恋の話。
    読んでいると気質がエリンとそっくりだなって笑っちゃった。
    あと、ジョウンも登場したので嬉しかった。

  • 4.2
    やっと読み終わった、、面白かったが、何故かなかなかページが進まず読み終えるのにかなり時間がかかった。
    最初の話は後から追加したものだと後書きで知りびっくりしました。
    この話が一番良いと感じたから、エリンが好きなのでその生まれた時の話を読めたのはとても楽しかった。
    あとはエサル師中心の話で、それもとても面白かったです。獣の奏者本編でもイサルよりエサル師の方が登場場面が圧倒的に多い割に彼女の話が全く無かったので、そう言った意味では彼女の若かりし頃を知ることができてとても良かった。

  • 『獣の奏者 外伝 刹那』読了。
    エリンと若かりし頃のエサルのサイドストーリーでした。本編が凄かったのでこちらは仄々とした気分で読んだ…
    それでも二人の女性の生き様が描かれていて、勇気づけられたような気がする。
    強い意志や信念を持って何かを成し遂げる姿はカッコよかったな。
    読んでいるうちに自分の過去と重ねてしまった。
    過去に何度か生まれてこなければよかったなと思っていた時期があって(今はそうでもないけど)。
    なんでこんな私が生まれてしまったのか、その問いに対する答えがなんとなく分かったような気がする。
    刹那の生きる喜びが今の私を生かしてくれてるんだろうな

    2020.9.2 (1回目)

  • 「獣の奏者」を読んだのは何年も前のことになります。
    前作を再読してからにしようかとも思いましたが、
    audibleで聴き始めると
    あっという間にエリンたちの世界に舞い降りたような気分になりました。
    懐かしかった。
    エリンを取り巻く人たちの
    柔らかなひと時に触れられて本当によかった。

  • シリーズ4作品の後の、番外編。
    後日談ではなく、本編に書かれていなかった四つの時間が描かれている。
    ・エリンの赤ん坊時代
    ・イアルとエリンの恋と出産
    ・エサルの秘めた恋
    ・ジェシの幼少時代

    どのような生き方を選ぼうと、瞬間を切り取れば確かに幸福な時間がそこには存在していたのだ、ということがどの物語からも強く伝わってきた。

    このシリーズ、大のお気に入りになりました。おすすめ!

  • エリンを産み、母となったソヨンの不安や歓びを描いた「綿毛」。

    エリンとイアルの出会い、結婚、そして出産までを描いた「刹那」。

    カザルムの教導師長で、エリンの良き理解者でもあるエサルの、切ない恋の物語「秘め事」。

    二歳になったジェシと家族の、ささやかな日常を描いた「初めての……」。



    あとがきに書かれている「雑と達者」「効果と手抜き」の違い(漫画家の萩尾望都さんの言葉)についての話が印象的で、それを踏まえて考えると、作品を大切にする作者の想いと、本編を完結させた後に隠されたエピソードを知ることができ、「獣の奏者」好きにはご褒美のような作品だと思った。

    エリンとイアルの何とも言えない距離感、エサルに対してのジョウンのさりげない優しさ、エリンやソヨンの子育てエピソード等、なかなか良かった。

  • 記録用。

  • 獣の奏者、本編が終わってしまい余韻に浸りたくて購入した。しかし本編のような興奮も壮大なストーリーもないし、王獣は登場しない。本編は子供でも楽しめるがこちらは少し大人向けかな。という感じでした。本編の2巻が終わった時点で読んでもいいかな。と思える内容です。(若干ネタバレになるが)

  • 恋をしたとかなんとかは親の身勝手にすぎない。生まれてくる子の幸せを考えるなら、エリンのような立場にある者は、親になどになってはいけないのだ、と。
    皿の底に残った透明な汁をすくいながら、わたしは小さくため息をついた。
    (そう考える人には‥‥)
    エリンの気持ちはけっしてわかるまい。
    あの子はよしとしなかったのだ。ー飼われた王獣のように、去勢された生を生きることを。国政に押しつぶされ、生き物としてあたりまえに生きることをあきらめる‥‥そういうことを、よしとしなかったのだ。
    それでも、心を支えているのがそういう「思想」だけだったなら、彼女は子を産もうとは思わなかっただろう。ー惨い仕打ちを受ける母を見なければならないことが、子どもにとってどんなことか、彼女は誰よりもよく知っているのだから。
    それでもなお、エリンが子どもを産む気になったのは、彼女の心のもっと深いところで、これまでの暮らしを幸せだったと感じているからなのだ。
    ‥‥生まれてきて、よかった。
    ジェシに乳をやりながら、エリンがそうつぶやいたことがある。(274p)

    上橋菜穂子の作品を読んでいると、架空の物語の中の話というよりも、人類史の中で女性の思ってきた想いを代弁しているという気が時々する。共同体の中で、産むということに制限をかけられた無数の女性たちの、それでも産むことを決意する女性たちの代弁者である。(単なるストーリーテラーとしてではなく)女性の産むという行為を根源の処で描こうとするのは、彼女の出身が人類学者だったことと無関係ではないだろう。

    「獣の奏者」本伝は、「人類は自然への介入をどこまで為すことができるのか」という壮大なテーマを扱って見事に完結した。その一方で外伝は、女性の人生と性を扱ってブレがなかった。

    そのとき、父が言った言葉は、いまも胸に深く刻まれている。
    ー雌雄が交わって実を結び、次代を育む花もあれば、自身が養分をしっかり蓄えて根を伸ばし、その根から芽を伸ばして、また美しい花を咲かせる植物もあるのだ。(364p)

    若い時の恋を封印し一生独身を通したエサル師を、著者はそのように励ます。それもまた、人類史的な励ましである。そしてまた、私をも励ましてくれた。

    2013年11月10日読了

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著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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