小暮写眞館(上) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062776738

作品紹介・あらすじ

小暮写眞館宮部みゆきの現代エンターテイメント小説です。
NHKでは神木隆之介を主演としてプレミアムドラマとして放送されました。いろいろな登場人物がそれぞれの思いを抱えながら、物語は語られていきます。ただその視点は主人公の少年から描かれているところが、この作品の良さを引き立てています。社会派推理小説を多く描いてきた宮部みゆきの高校生の青春小説です。

感想・レビュー・書評

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  • 上下巻の感想です。
    私を本読みの世界に引きずりこんだ作家の1人である宮部みゆきさんの作品を久しぶりに読みました。
    本を選ぶ際は表紙や作品名から適当に決める事が多く、今回は宮部さんのミステリー作品を期待してたので、ちょっと想像と違いました。(選び方の問題だね)

    ただ話の進め方や表現力は流石だなと、宮部さん、「国語どれだけできたんだよ」と思っちゃいます。(稚拙な表現だけどそう思う)

    上巻と下巻の半分まで読み進めた時はキャラクターや話は繋がってるけど、4つの短編のような感じかと思ったら、最後に繋がってくるんです。
    人々の心にある苦悩は、その人に対する話し方や接し方、タイミング、絶妙な押し引きにより、そこから抜け出させることができる。コミュニケーションって大事だなと改めて思いました。

  • あまりに長編だったのと、宮部みゆきなのにミステリーっぽくないふわっとした感じだったので、正直何度も途中でやめてしまいました。でも、だんだんキャラクターの魅力に取り憑かれて、中頃からはぐんぐんあっという間に読み終えました。
    家族も周りの人もみんなそれぞれ良い人。素敵な作品だと思います。宮部みゆきさんは私より3歳年上だからか、文章のテンポとか小ネタが実にツボる。
    下巻へGO!です(^^)

  • 講談社創業100周年記念出版書下ろし作品として2010年5月に刊行された作品。

    かつて「写眞館」だった家に引っ越してきた一家、特に高校生と小学生の兄弟の再生を、高校1年生の兄の目を通して描く物語。
    大きな「事件」は起きない、「作者初のノン・ミステリー」と紹介されることが多いようですが、ここのところについて、実は作者や出版社の自認と読者の受け取り方に齟齬があります。偉そうなことを言わせてもらえるなら、起こしていないつもりの事件が起き(ていると受け取られ)、ノン・ミステリーのつもりがミステリーとして読まれることが、この頃の宮部みゆきの限界だったんじゃないかと思うのです。でも、後の「ソロモンの偽証」で軽々とその限界を跳び越えてみせたところに宮部みゆきの凄みを感じました。


    自分が読んだ講談社文庫は上下巻構成です。
    上巻には「小暮写眞館」、「世界の縁側」の2話が、下巻には「カモメの名前」、「鉄路の春」の2話が掲載されています。
    一方、全く同じ作品が新潮文庫nexから1話ずつに分冊されて計4分冊で出ています。
    「講談社創業100周年記念出版書下ろし作品」だったはずなのに新潮文庫にも収録され、さらに「新潮文庫nexレーベル(https://www.shinchobunko-nex.jp/)」にされている(時に他の宮部みゆき作品とは離れたところにnexレーベルでまとめて展示されたりしていて探しにくい)で4分冊(さすがに4冊に分けると1冊1冊が薄くてペラペラです)にされるなど、正直読者としてはどうしてこんなことになっているのかわかりません(ていうか不満です)。
    真相は生臭い話なのかもしれません。まあどうでもいいんですが同じ本が複数の文庫から出ている状態にはちょっと困惑します。


    シャッター通りと化したハッピー通り商店街の一角にあった古い写眞館。店舗兼用住宅だったここを買い取り、改装して花菱家の人たちが引っ越してきました。花菱家の長男、都立三雲高校1年生の英一(花ちゃん)は、ある日店(自宅)の前で女子高生から責任取って何とかしなさい、と写真を押し付けられます。
    まだ営業していた頃の「小暮写眞館」の袋に入ったその写真はいわゆる「心霊写真」だったのです。

    この上巻の第1話「小暮写眞館」で花ちゃんは心霊写真の謎を(一応)解決します。そして第2話「世界の縁側」では、花ちゃんの話を聞きつけて別の心霊写真が持ち込まれます。

    こういう話の動き出しなのですから、上巻の2話を読んで、「日常の謎」系の連作短編(短編というには少し長めですが)集なのかと思うのが自然です。
    1話毎に不思議な写真が持ち込まれ、それぞれの「謎」を解きつつ、幼くして亡くなった妹風子に思いをいたす。そんな作品集だと思うのが自然です。自分も上巻の時点ではそう思っていました。

    宮部みゆきの作品には、「日常の謎」系統や連作短編集は、ないわけではありませんがそれほど多くの作品があるわけではありません。
    また、高1の花ちゃんを通して語られているので、物語は青春小説の色を帯びており、淡い恋愛話も差し込まれています。

    日常の謎にせよ、青春小説にせよ、これまでとはずいぶん違った方向性のものを書きたくなったことに読者としては感心したものです。
    あれだけ色々なテーマについて、多彩なキャラクターを動かして、様々な切り口から作品を書いているのに、それではまだ足りないんですか?どれだけ書いたら満足するんですか…というようなことを思ったのです。


    でも、読み始めてみれば、まだまだこのジャンルのものとしては発展途上のものに感じました。

    「そンだけ」「ふウん」「ンな大げさなもんじゃないけど」など一部にカタカナを交えた「若者言葉」は浮いていますし、「SNS」として出てくるのが「ブログ」(おそらくmixiあたりのイメージです)であったりして、かえって古臭さを感じてしまいます。
    青春小説を評する言葉としてよく使われる「等身大」の感覚に欠けます。「ま、いいけど」という「決め台詞」や、どちらかというと流されるままに生きている英一の様子と合わせると、どうしても世慣れた中年のおっさんのくたびれた日常を読まされているような気がしてきます。サブキャラクターたちは外連味たっぷりだったり饒舌だったりするので、余計にそう思うのかもしれません。

    また、「ノン・ミステリー」のつもりで書かれた作品であるにもかかわらず、自分と同じように心霊写真の謎を解いていく日常の謎系のミステリだ、ととらえた人が多かったのでしょう、【『週刊文春2010ミステリーベスト10』国内部門7位、『このミステリーがすごい!2011年版』国内編8位、『ミステリが読みたい!2011年版』国内篇17位を獲得している】(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E6%9A%AE%E5%86%99%E7%9C%9E%E9%A4%A8)という皮肉な結果になっています。
    どうしてもミステリ臭が抜けない…何を書いてもミステリになっちゃうようなのです。

    加えて言うなら、「心霊写真(「念写」のほうが近いようですが)」が存在する(手元にある写真は心霊写真である)という前提で話が進むのがどうにも落ち着きません。小暮さんの幽霊とか、風子の気配とかのように、いると信じているものと、写真のように物理的に目の前にあるものとは、全然別物です。実際に目の前にある「心霊写真」について合理的な説明がないのは(理詰めで話が進んでいくミステリであるからこそ)どうにも気持ち悪くてなりません。


    でも、この作品で試してみたあれやこれやは後の作品に反映されています。
    軽めでときどき読者への語り掛けが混じる地の文は「ここはボツコニアン」(大失敗作でした。もうこの路線はやめておいたほうが良いと思います)に、ティーンズが活躍する読後感の良いジュブナイルは「ソロモンの偽証」に結実します。
    特に「ソロモンの偽証」は、ミステリかどうかにこだわらなくても、ちゃんとビルドゥングスロマンでありジュブナイルである一方、ミステリでもあり、リーガルサスペンスでもある「ソロモンの偽証」が書けるのだから、もうミステリだとかミステリでないとかなんてあまり難しいことを考えないほうがよいのではと思ったりします。

    さて、上巻では静かな滑り出しを見せた物語は、下巻に入ると「日常の謎」を離れます。そして、4歳で亡くなった花ちゃんの妹風子について、一家それぞれが心の中で冷凍していた思いを引っ張り出してきて、ゆっくり溶かしていく過程が描かれます。
    もっとわかりやすく過去を冷凍していた垣本順子を通して、心を解けさせ、溶けた思いを土台に「再生」の色を濃くしていくストーリー、そしてラストまで読んで初めて意味がわかるカバーの写真。その鮮やかな仕掛けは、でも下巻までお預けです。


    でも上巻の時点では伏線こそたくさん敷かれているものの、「ご近所心霊写真探偵」が続くかのように読めるため、どうしてもこんな感想になってしまいます。
    下巻の展開を読んで、こんな浅はかな感想を書いていたことを恥じ入ることになるのですが、まずは初読のときの感想を大事にしておきます。

  • 店舗の主が亡くなった写真屋の店舗兼住居に引っ越してきた花菱一家の長男、高校生の英一が写真にまつわる謎を解くために奔走するミステリー。

    弟の光、幼馴染で地元の有力者の息子の店子(テンコ)とのやり取りもなんだか微笑ましくてほっこりするし、中々の独特な発想を持つ主人公の両親に振り回される主人公のエピソードも面白い。
    なんて良い息子だ…。と世のお母さんが涙しそうなくらい良いお兄ちゃんであり、真面目な学生。
    高校生だけど、きちんと育てられた分別のある感じがすごくかっこいい。
    2話目の終わり、コゲパンの打ち明け話に戸惑いつつ、ものすごく斬新な返しをする主人公。外見の描写はあまりないけど、隠れて好感を持つ女子は多そう。将来はモテそうだ。

    • おのぴーママさん
      はじめまして。世のお母さんの私もなんて良い息子だ……と思いました。他の子達もみんなとっても良い子達ばかりで、本当にほんわかした気持ちになりま...
      はじめまして。世のお母さんの私もなんて良い息子だ……と思いました。他の子達もみんなとっても良い子達ばかりで、本当にほんわかした気持ちになりました。宮部みゆきワールド、なかなか奥が深いですね。
      2019/01/14
    • ほしこさん
      おのピーママさん
      コメントありがとうございます(^-^)
      私も花菱一家の会話がほのぼのしてて好きです!宮部さんの作品は色んな作風がありま...
      おのピーママさん
      コメントありがとうございます(^-^)
      私も花菱一家の会話がほのぼのしてて好きです!宮部さんの作品は色んな作風がありますが、出てくる子がみんな良識があって、読んでて楽しいです。
      彼と比べて、自分の高校生の時を振り替えってみると反省の矢が突き刺さりますが(笑)
      2019/01/14
  • 「君、いくつ?」
    「誕生日がきたら、十七です」
    そっか、と微笑む。「先、長いよ」
    「はあ」
    「もしかしたらあの子かもしれないし、別の子かもしれないけど」
    君がこれから、結婚しようと思うほど好きになる女性。
    「泣かせようなんて、これっぽっちも思わないんだよ。幸せにしようって、いつも本気で思っているんだよ。だけどね、何でか泣かせちゃうことがあるんだ」
    男って、そんなふうになっちゃうことがあるんだ。
    「だから、あほんだらなんだよね」(387p)

    これが、誰が誰に対して言った言葉か、どのようなシチュエーションで出された言葉か、328pぐらいの段階で推理出来たならば、その推理力は少なくとも私よりは優れているということになる。おめでとう(←嬉しくない?)!

    宮部みゆきの作品は文庫本になった段階で全て読むことにしているので、義務として読んだのであるが、最近には珍しく明るい基調で、読後感は良かった。とは言え、まだ半分しか読んでない。

    第一章と第ニ章はどちらも「不思議な写真」を巡るミステリー仕立てである。

    このまま、最後まで行くのか?
    小暮写眞館のお爺ちゃんの幽霊話はどうなるのか?
    それは後半で出てくるのか?
    さて、続きを読もう!

    2013年10月19日読了

  •  家族とともに古い写真館付きの住居に引っ越してきた高校生英一がさまざまな奇妙な写真の謎に挑むミステリー

     上下巻の宮部作品なので結構ヘビーな雰囲気も覚悟しないとなあ、と思いながら読み始めたのですが、わりかし穏やかな世界観で包み込んでくれるような雰囲気の小説でした。

     登場人物たちの温かさがその世界観の構築にとても大きく関わっているように思います(変人も多いですが)。しかし何よりも大きいのは宮部さん自身の温かい登場人物たちに対する目線が感じられるからだと思います。

     もちろんただ温かいだけでありません。今回は殺人事件は起こりませんがその分リアルな人の悲しい部分、ずるい部分が写真の真相が浮かび上がってくるのとともに分かってきます。しかし普通ならそういった面が分かって話が閉じられると少し後味が悪いものですが、後味の悪さを残すどころか、優しい雰囲気が最後まで貫かれています。

     写真の調査をする英一やその友人たちの優しさ、そして宮部さん自身がそういう人の哀しい部分も包み込んでくれる、温かい目線で話を書いているからこそこういう雰囲気が貫かれているのだろうな、と思います。

     話の肝となる写真については念写というワードが使われます。書く人によっては「そんな非科学的な……」と冷めてしまいそうなのですが、この作風で宮部さんが書くと不思議と真実味を帯びてきます。人の想いの強さ、特に人の悲しさの強さが話を通してひしひしと伝わってくるからです。

     連作調になっているので切りのいいところで上巻は終了しました。英一の家族も少々複雑な事情があることが書かれているので、これを宮部さんがどう包み込んでくれるのか、といったあたりにも期待しながら下巻に突入します。

     2011年版このミステリーがすごい!8位

  • どんよりとした気分になってたから手に取った一冊

    うん!ほんわかと浮上(^ ^)

    高校生ならではの青くさい感情、大人達の後悔やもどかしさ…

    まだそれぞれの胸に抱えているものはハッキリしてないので、下巻が楽しみです♪

    登場人物が少ないのもいいかな(*´∀`)♪

  • 読み始めたら最後まで読みたい性格なので結局は読むと思うけど、感想としては下巻に進もうか少し迷うところ。
    この話のメッセージがまだよく分からない。

  • だんだん読むのが滞ってきた

  • 小暮写眞館とは主人公英一の少し変わった両親が新居に決めた元写眞館。
    その写眞館一枚の奇妙な写真の謎…物語はそこから始まっていく。
    心霊写真とかあまり信じない方ではあるが、人間の強い思いは、生きてるときも死んだあともそう変わらないのではないかと、第1話、第2話を読んで感じた。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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