小暮写眞館(下) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 234
  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062776745

作品紹介・あらすじ

もう会えないなんて言わないよ。花菱家には秘密があった。小暮写真館への引っ越しで、もう一度、家族と向き合った英一。そして--。

感想・レビュー・書評

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  • 知人さんにご紹介いただいた一冊、
    さすがの宮部さん、といった感じで。

    死の際には、残されたヒトビトの本音が現れる、
    ソンナ現象をモチーフにした、少し不思議な小説。

    主人公は一つの家族と古びた写真館、になるのでしょうか。

    出てくる人々は、どこか不器用で、
    そして、何かしら傷を負っていて。

    これはそれが癒されていく、物語。
    NHKあたりでドラマになりそうな、、全5-6回くらいで、とも。

    ん、ラスト、彼は彼女には会いに行ったんだろうか。
    同時期に観た『言の葉の庭』とも被る終わり方が、なんとも奇縁。

    年上のお姉さま、イイデスヨネ、なんて。

  • ピカちゃんの「小暮さんに会いたい」という言葉と行動に胸が痛みました。
    ただ、それは優しい痛み。
    身内とか大好きな人を亡くした経験のある者にしか分からない優しい痛み。
    心霊写真っていうから構えて読んだけど、とてもあたたかい内容でした。
    久しぶりの宮部みゆきさんでしたが、クモテツのこととか大変興味深くて、読んで良かったです。

  • 上巻を読んでしばらく経ってしまったけど、割りと覚えていた。

    コゲパンに秀才の彼氏が出来てたり、英一と垣本順子が映画に一緒に行くような仲になったり、コゲパンの彼とテンコとの会話のやり取りが知的だったり、上巻に比べると、心霊的な要素は薄れてる。
    しかしここまで自分の考えや気持ちを言葉で表現できるこの高校生、本当に頭がいいなぁ。いい男と褒められるのもわかるわぁ。

    今回は花菱一家と垣本順子に焦点があたった。
    やっぱり子どもだったと言っても、ピカも英一もきちんと自分の記憶や知識を使ってそれなりに考えてるし、家族の問題を自分のせいだと考えていた。完璧な家族なんてどこにもいないけれど、それでも英一はよくやった。本当にいい息子で、お兄ちゃんで、いい男だ。
    相手に暴言を吐いた事実と、その正統性のなさを自分よりかなり年下の学生に指摘されればそりゃ猛烈に恥ずかしくなる。
    まぁそもそもそう言った事を言わない人こそが立派な人物なんだろうけど、素直に反省して謝罪できたら、最低な人間から一歩抜け出せるかな。
    英一の父は変わってるけど、懐は本当に大きいな。

    順子も、そういう英一と関わったからこそ、変わる勇気が持てたのかもしれない。素直じゃなかったけど、絶対に嬉しかったはず。
    英一にとってはショックだったかもしれないけど(読んでて切なかった)、順子の気持ちも少しわかる。

    お互いに受け取った気持ちのかけら。
    心の交流って書くとなんか安っぽいな。
    うまく表現できない。
    恋という単語こそ出てこなかったけど、この体験も人生を彩る青春だったと思う。
    今時ないのかもしれないけど。

  • ちょっと積読状態になってたけど、読みかけのソロモンの偽証を忘れてきちゃったから久々に手にとって最後まで読んだ。
    なんで積読状態になったかというと、花ちゃんとテンコの関係が羨ましすぎて、眩しくて、、、
    自分にはテンコみたいに自分や自分の家族のことまで案じてくれる友達もいなければ(そんなこと言ったら怒られそうだけど)、テンコが花ちゃんのことを考えているように友達のことを案じたりもできない。その現実を嫌でも突きつけられるのがつらくて、読めなかった。
    でも、ようやく読み終わってみて、やっぱり読んでよかった。まあ、結末はちょっぴり寂しさが残るけど。でも、出てきた人たちみんなが、最初の頃よりも元気になっているようで、とてもほっこりした気持ちになった。
    ちょっとずつ、周りの人とのつながりを大切にできるようになりたいな。

  • 下巻の3、4話は、家族がテーマなのではないかと。家族だからこそ、言わなくてもわかってもらえて当然なんだ。そういう甘えがあるからこそ、なかなか言えないことが実は多い。
    本のカバーの風景の意味が最後に溶けて嬉しかった。

  • 主人公の高校生花菱英一が写真館付き住宅に引っ越して、持ち込まれた心霊写真の謎を調べる第一話「小暮写真館」、同様に、写っているはずのないものが写っている不思議な写真の謎を調べる第二話「世界の縁側」、第三話「カモメの名前」と続き、最終話「鉄路の春」では、亡くなった風子に関して花菱家の家族が抱えている問題、垣本順子の引き起こした騒動、祖父の納骨での出来事と続いていく。

    宮部さんの文章は元々軽いのだが、この作品では地の文に主人公英一の心のつぶやきがふんだんに盛り込まれていて、さらに軽く感じられ、ラノベのよう。登場人物も、ほとんどが宮部作品によく出てくるような、明るくて善良で単純で軽い感じの人物たちばかり。唯一の例外が垣本順子で、この人物が良い味を出していて、本作品のキーウーマン。口や態度が悪く、時々自殺のまねごとをする社会不適合者なのだが、意外にも、物事の本質を捉えていることがわかる。主人公が垣本順子のことが気にかかり、接触を持とうとすることが、物語で重要な意味を持っている。

    第1話から第3話までの写真に関する謎解きは、非科学的な解決であったり、ありきたりな解決であったりと、ミステリーとしての謎解きではなく、その背景にある事情、家族にまつわる問題を探る謎解きだ。特に目新しい内容ではないし、それほど面白いとは感じられず、正直、第三話までの話であれば低い評価だった。しかし、第四話が物語の締めくくりとしてとても良くできていて、評価が急上昇した。特に、<しおみ橋>下のベンチで、英一と光が川の向こう側のアパートの女の子と手を振り合う場面が美しく、名場面。納骨の後の精進落としの席で、英一が言い放った言葉も鮮烈。ラストで英一が順子からの封書を受け取って、感慨にふける場面も未来への希望が感じられ、すばらしい。

  • 久しぶりの宮部さんを堪能。英一の家族も友達や周りの人たちも魅力的。会話のやり取りが軽妙で引きづり込まれた。 家族って近いからこそ難しい。 英一の啖呵カッコ良かった! 巻末解説の兵庫さんの言葉のとおり、終わるのが悲しくなる作品出したずっと読んでいたかったって感じ。 自分の好みにどストライクでした。

  • これが昔から慣れ親しんだ宮部みゆきだなあと、なんだか懐かしい気持ちになりました。
    模倣犯も十分に楽しんだのだけれど、救いのない泥の海のような重い重い話に疲れてしまってそれ以降宮部さんの本を手に取ることが無くなってしまっていました。
    元々は踊るようなタッチで、生き生きと人物が動き回る作品を書き続けていましたが、模倣犯では理不尽に巻き込まれる犯罪の中で踏みにじられる無辜の人々の姿をひたすら描いていたような気がします。
    全盛期の姿とは言い難いかもしれませんが、この作品に描かれた人々は魅力的で、ちょっとどこか抜けていて、一生懸命に人生を生きています。

    英一は高校1年の男子。親がマイホームとして購入したのは古い古い写真館で、取り壊される寸前の建物。そんな家に家族睦まじく暮らしているところへ持ち込まれた1枚の心霊写真。その謎を解こうと奮闘する・・・。
    親友のテンコ、可愛い弟ピカ、同級生女生徒コゲパン、そして写真館を売った不動産会社の社員 順子。皆魅力的な登場人物が目白押しで、宮部さん書いていてきっと楽しかっただろうなと思う。

    英一の初恋は思わぬところからやってきた。はっきり言って上巻では予想していなかったのでちょっとびっくり。てっきりコゲパンちゃんと付き合うのかなと思った。

    最後切ないな、とても切ない。でもこの表紙のようにとても綺麗なラストだった。これからもこういう作品書いて行って欲しいです。

  • 何なんだ、この「容赦ない名作っぷり」は。

    今更ながら、私にとって初宮部作品。
    いやこの人、時代物の人だと思ってて(^ ^;

    ときどき感想文に書いているが、
    「文を読んでいること自体が幸せ」という
    至福の読書体験を与えてくれる一作。
    その辺、文庫版の解説が「そうそう! 正にそれ!」
    という感じで気持ちを代弁してくれている(^ ^

    英語で、心地よい音楽を聴いた時の褒め言葉で
    「ear candy」という表現があるが、
    これは「readin candy」と言うか(^ ^

    久々に「読み終わるのが勿体なくて」
    下巻の後半とか、ちょっと読み進めては
    部屋の掃除始めたりしていた(^ ^;

    私は活字中毒気味で、それゆえに多読で、
    その結果かどうか「読んでる最中に気持ちいいか」
    がメインの読書衝動なところがあって。
    賢くなりたいとか、いわゆる「ミステリ読み」みたいに
    基本は全部押さえとかなきゃ、みたいな意識はゼロ。

    それ故に、読み終わった瞬間に
    ストーリーをきれいさっぱり忘れてたりする(^ ^;
    なので、同じ本で何度も感動できたりする
    「安上がり」な体質ですが(^ ^;

    それだけ「読んでいる最中が気持ちいいか」には
    けっこううるさい....と言うか、どんなに筋が良くても
    「読んでて気持ち悪い」と、途中で投げたりする(^ ^;

    本作は、とにかく読んでて心地よい。
    それはもちろん「文章がうまい」訳でしょうが、
    とにかく設定がいい、キャラクターがいい、
    会話がいい、地の文がいい、起こる「小さな事件」もいい、
    それを解決していく中で培われていく人間関係がいい。

    いくつかの章に分かれていて、それぞれに一応
    「テーマ」はあり、解決もあるのだが...
    その全てを通底して流れて行く時間が、人間関係が、
    商店街の、学校の、ST不動産のすべてが愛おしい。

    ...えと...ちょっとミステリ成分もあるので、
    あまり細かく書けないことをご容赦ください m(_ _)m

    そしてそれらを「リアルたらしめている」
    町の描写が素晴らしい。
    何も無い単なる小川沿いのベンチが、
    これ程愛おしく思えるのは何故なんだ。

    そして、登場するキャラクターみんなが、
    それぞれにそれぞれの「歴史」を抱えていて、
    ある者は意地になって約束を守り通し、
    ある者は記憶にフタをして「なかったこと」にして。

    みんなそれぞれ生まれてからこれまでの「歴史」を
    ひきずりながら「今の環境」の中でもがいていて。

    「見ない振り」をしていた過去の記憶が動くとき。
    それは思いがけず、でも少しずつ予兆もあり、
    「不意打ち」も含めて「流れ」として
    見つめ直さなければいけない状況になって。

    執筆中には意識していなかったらしいが、
    解説中の宮部氏のインタビューの中にある
    「愛は負けても親切は勝つ」という言葉が、
    これ程しっくりくる小説も中々無いのでは。

    本当に、しみじみと「読書って素晴らしい」と
    思わせていただいた一冊でした。

  • 主人公の花菱英一と彼を取り巻く家族や友人達、変わったところはあっても至って普通の、周りにはいないかもしれないけど、どこかにいそうな人達が、それぞれの人生で起こる出来事に向き合っていく。その出来事も誰の人生にも起こりうることだから、彼らの生き方に対して感動とかそういうのはありません。ただかつて逃げ出したことに改めて向き合った垣本順子には最後にしんみりしました。面白い小説ではあるのですが、それより読み終わった後、この先の彼らの人生を知ることはないのだなあという寂しさを感じる、そういう本でした。

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著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。
1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。
大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。
『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。

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