悪と仮面のルール (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.69
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本棚登録 : 1557
感想 : 123
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062776790

作品紹介・あらすじ

僕は顔を変え、身分を変え、ただ彼女の幸福だけを願う。巨大な陰謀の裏には、誰にも知られることのないひとつの小さな物語があった。

感想・レビュー・書評

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  • 「掏摸」の兄弟編といった感じでしょうか。
    今回の「王国」は、邪の家系を維持する血筋の頂点が、表社会で財閥を築き上げよう裏社会まで支配しているといったところ。
    主人公は、その邪の家系を引き継ぐ為生まれ、育てられようとしていた。知らされたのは、11歳の時。そこから家系と父親からの逃亡を計る。
    好きな女の子を守る為、父親を殺害。大人となった彼は、他人の顔と経歴を手に入れた。再出発を試みているが、邪の世界から逃れられない。
    「邪念の種子はやがてしかるべき無意識と因の支援により生い育ちながら各地でうごめく」作者あとがきにあるように、一貫してそういう状況を描いている。その邪の種子を蒔くのが、邪の家系かな。
    アメリカでの評価は高くて、ノワール小説の賞をとったみたいだし読者も多いようです。
    邪のうごめく先に、ナイラ証言からの湾岸戦争突入とか、テロによる殺人破壊行為といったものが描かれているのも、アメリカで評価が高い要因かなと思います。
    個人的感想ですが、前2作の揺るぎない悪の木崎から比べると、邪の側の人間に弱い部分が見えるし、邪に反抗する主人公の存在が、ノアールさを思ったほど感じなかったです。

    • 土瓶さん
      もう中村文則のプロですね。
      次はいよいよ「銃」か(勝手に決める)(笑)
      一貫して木崎っぽいのが出るのかな。
      そういや「教団X」でもそれ...
      もう中村文則のプロですね。
      次はいよいよ「銃」か(勝手に決める)(笑)
      一貫して木崎っぽいのが出るのかな。
      そういや「教団X」でもそれっぽいのがいたような気が。
      2023/06/25
  • 人を殺めるという行為のとてつもない重さについて。

  • 悪と仮面のルール 中村文則著

    1.初めての中村文則さんの著書
    中村文則さん自身の後書きを読んだことにより、
    ⭐️5個となりました。

    「人を殺めるとはどんなことなのか?
     それが、この著書でもテーマとなっている。」

    創造性 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
    陰湿さ ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
    テーマ一貫性 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️


    2.物語
    主人公は戦後生き残り財閥の息子です。
    大切な人を危険から守るために、彼は人を殺めます。
    そう、自身の父親を殺めます。

    彼自身は、みずから行方不明になったうえで、別人の人生を歩むこととします。
    そう、整形まで行って、、、。

    彼の唯一の願いは、当時守った大切な人の今の消息を知ることです。

    ここから、物語の展開が早まります。

    3.著書より
    「人間を殺すことはこの世界にある決定的な第一線を踏み外すことだ。」

    「生物は基本的には同種を殺めない。」

    「殺人を正当化し、理性で包むのはまやかしである。」

    ラストシーンでようやく、ようやく、少しだけ光が見える、そんな小説です。


  • 中村文則さんの初長編。それまでは200ページ以内で中編の延長的な作品だった。やはり長編だと明らかに中編と差別をつける所が沢山あり個人的にチャレンジ成功だと思う。
    掏摸から作風も変わり、扱うテーマも徐々にずらしているが、核となる部分は変わらず死、悪、罪など、人間の闇に対する心理的探究。
    今作もやはりドストエフスキーの影響がありまくる。笑
    特に終盤にある神への言及、罪と罰の流れを連想させられる。
    ただ、殺人は殺人だが、ルール違反という意味の罪ー今作では善を成す為の罪ということになるがーの場合がメインテーマになる。
    悪については戦争、カルト的宗教、テロなど、様々な悪が主人公を運命的に巻き込むサブテーマも、ドストエフスキー的な総合的小説の手法を初使用している。どこか村上春樹の作品も連想出来る構成もあった。
    エンディングはやはり今までの作品と同様、希望を残してくれた。読者として救われるが、作品の重さは多少影響される。けど非現実ではない。

    更に進化する余地があるが、これはこれで個人的に100点。欠点は強いて言えば邪の家系の形成した経緯というか、邪悪な血が存在することに対して合理性が足りなかったと感じた。ただフィクションだし、推理小説でもないので、そういう前提、そういう設定だと思えば全く問題ないし、むしろ発想が面白い。


  • 代々伝わる財力と力で、様々な我意を尽くしてきた『邪』の家系。

    そこで『邪』を成すために育てられた久喜文宏は、十一歳の時、父の口から自身の運命を言い渡される。

    「思春期に入った時、お前がこの世界を否定したくなるような地獄を見せる。そしてお前は将来、この国の中枢か、国に対峙する何かの中枢に入り、悪をなす。」

    ある日、香織という少女が久喜の屋敷の養女になり、文宏と同じ学校に一緒に通い始める。そして父の思惑通り、二人の距離は縮まっていく。

    父の言う地獄とは、香織が文宏にとって最も大切になった時、それを損なうというもの。香織を守るためには狂った父を殺害するしか方法がなく、文宏は計画を実行する。

    殺害に成功したものの文宏の精神は病み、父の顔に似ていく文宏に対し、気持ちとは裏腹に身体が拒否反応を起こしてしまう香織。そして二人は距離を置くことに。

    時は進み、大人になった文宏は顔を変え新谷弘一という男の身分を手に入れていた。探偵を雇い、久喜香織の現在を調べるように依頼する。そこで、香織が詐欺師に狙われていると知り、直接行動に出る。

    詐欺師の狙いが金だけでなく、香織を薬漬けにして快楽を得ようとしていると分かり、殺害する。しかし、その裏で糸を引いていたのは『邪』の家系の兄、久喜幹彦だった。





    人を殺すとはどういうことなのかを考えさせられる作品。

    理不尽な状況下で、殺す以外の選択肢を絶たれ、しかも相手が死を受け入れている場合、果たしてそれは罪と言えるのか。

    生物は基本的に同種を殺さないように作られているのかもしれないが、ゲームや漫画で仮想の殺し合いを楽しんだり、画面ばかり見て生に対しての実感が薄れている現代人にとっては、そこまで罪の意識が精神を蝕むことになるのかが気になった。まぁ、それは殺人をした人にしか分からないかもしれないが。

    作中のテロ集団「JL」の犯行声明で、「総理大臣が記者会見を開き、100%の力で郷ひろみのモノマネをしないと政治家を暗殺していく。」というのがあったが、約束を守る保証がもしあった場合、殺人を止めるために恥を覚悟でモノマネをするのかとか、色々想像してしまった。

    実際にあったナイラ証言や軍需産業についての話は少し調べたが、興味深い内容だった。

    『邪』の運命に立ち向かう主人公が、好きな人を救うために罪を重ね、人殺しではあるが悪ではない感じは良かったと思う。

    最後、主人公の香織に対しての選択は切なかったが、吉岡恭子の存在で救われた。

    冒頭にあった「刑事の日記」が、読み終わった時にどう見え方が変わるのかを期待していたが、最後の会田刑事の認識と、冒頭の会田刑事の日記が、読み直しても微妙にしっくりこないのが残念だった。個人的にはそう感じた。

  • ★3.5
    不幸と幸福について、当たり前のことをつらつらと難しい言葉で語ってる小説。幸福は閉鎖のうえで成り立つ。人を殺めることは自分を傷つけ、とことん堕ちてしまうが、それを抱え、真っ直ぐ生きようとする主人公がかっこいい。殺人は犯罪だけど、それを真に理解しながら、生きていく姿に胸を打たれた。純愛要素も入っており、憂鬱にならずに読み切れた。難しいな。

  • 「邪」の家系に育ち、初恋の少女・香織を守るために実父を殺した少年・文宏。顔を変え、自分の人生を捨てたかのような生き方をしてきた文宏が再び動き出す…

    うむむ…どうなんだろ…
    恋愛小説なんだろな~
    人に潜む悪意と集団心理と正義(と信じるもの)がからまりあって、もっと社会的な意味も持たせながら、「でもやっぱり世界を動かすのは愛だろ~愛」って感じかな。

    人が人を殺すこと…
    それによって生じる精神的な閉塞感と壊れゆく心

    イマドキの戦争はゲームの世界のように画面の中
    でも実際に血を流しているのは生身の人間
    エライ人たちは自分で血を流さない
    人々は画面で見た戦争をリアルに感じない
    悪は無関心から生まれる

  • 日常では何かと辛いことや苦しいことの方へ目が行きがちですが、ささやかでも暖かな温度を感じる瞬間があって、それの積み重ねで人は生きていけるのだと思わせてくれた大切な作品です。

  • 面白すぎる。面白すぎて読み終わるのが悲しくなるくらい。 思春期に感じた純粋なもの。大人になったばかりの虚無感。 無意識から支配されることの恐怖。 様々な心理描写に引き込まれ、感情移入しまくり。 頭クタクタになりそうだが、読みたくてしょうがなくなる。スゲー一冊。 本の中の香織に恋してしまった。笑

  • 悪の連鎖に思惑通り呑み込まれないために新しい悪・ルール違反を重ねる主人公だけど、悪も正義もそれはある側面の話というのを体現しているように思った。
    もちろんそれが人を殺めたりすることの肯定に繋がるというのでは決してないんだけど、それはじゃあどうしてそうなのか、が秀逸に描かれてるし書かれてる。
    ずっと陰鬱と死が渦巻いてるのに、作者が書く言葉・文章の上手さが、プールで息継ぎをするみたいな、息苦しさからのある種の救いみたいに思えた。

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著者プロフィール

一九七七年愛知県生まれ。福島大学卒。二〇〇二年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。〇四年『遮光』で野間文芸新人賞、〇五年『土の中の子供』で芥川賞、一〇年『掏ス摸リ』で大江健三郎賞受賞など。作品は各国で翻訳され、一四年に米文学賞デイビッド・グディス賞を受賞。他の著書に『去年の冬、きみと別れ』『教団X』などがある。

「2022年 『逃亡者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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