- 本 ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062776790
作品紹介・あらすじ
邪の家系を断ちきり、少女を守るために。少年は父の殺害を決意する。大人になった彼は、顔を変え、他人の身分を手に入れて、再び動き出す。すべては彼女の幸せだけを願って。同じ頃街ではテロ組織による連続殺人事件が発生していた。そして彼の前に過去の事件を追う刑事が現れる。本質的な悪、その連鎖とは。
祝!日本人初「デイヴィッド・グディス賞」受賞!
「The Wall Street Journal」2013年ミステリーベスト10選出!
いま最もアメリカで注目されている日本人作家、中村文則の注目作。
邪の家系を断ちきり、少女を守るために。少年は父の殺害を決意する。大人になった彼は、顔を変え、他人の身分を手に入れて、再び動き出す。すべては彼女の幸せだけを願って。同じ頃街ではテロ組織による連続殺人事件が発生していた。そして彼の前に過去の事件を追う刑事が現れる。本質的な悪、その連鎖とは。
米国「The Wall Street Journal」2013ミステリーベスト10にも選出された本作は、米国ホラー作家協会( HWA)の「ブラム・ストーカー賞」にも初ノミネートされた注目作。
著者の中村文則は、米国でノワール小説の分野に貢献した作家に贈られる「デイヴィッド・グディス賞」も受賞し、日本国内外で評価が集まっている。
感想・レビュー・書評
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「掏摸」の兄弟編といった感じでしょうか。
今回の「王国」は、邪の家系を維持する血筋の頂点が、表社会で財閥を築き上げよう裏社会まで支配しているといったところ。
主人公は、その邪の家系を引き継ぐ為生まれ、育てられようとしていた。知らされたのは、11歳の時。そこから家系と父親からの逃亡を計る。
好きな女の子を守る為、父親を殺害。大人となった彼は、他人の顔と経歴を手に入れた。再出発を試みているが、邪の世界から逃れられない。
「邪念の種子はやがてしかるべき無意識と因の支援により生い育ちながら各地でうごめく」作者あとがきにあるように、一貫してそういう状況を描いている。その邪の種子を蒔くのが、邪の家系かな。
アメリカでの評価は高くて、ノワール小説の賞をとったみたいだし読者も多いようです。
邪のうごめく先に、ナイラ証言からの湾岸戦争突入とか、テロによる殺人破壊行為といったものが描かれているのも、アメリカで評価が高い要因かなと思います。
個人的感想ですが、前2作の揺るぎない悪の木崎から比べると、邪の側の人間に弱い部分が見えるし、邪に反抗する主人公の存在が、ノアールさを思ったほど感じなかったです。 -
人を殺めるという行為のとてつもない重さについて。
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悪と仮面のルール 中村文則著
1.初めての中村文則さんの著書
中村文則さん自身の後書きを読んだことにより、
⭐️5個となりました。
「人を殺めるとはどんなことなのか?
それが、この著書でもテーマとなっている。」
創造性 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
陰湿さ ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
テーマ一貫性 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
2.物語
主人公は戦後生き残り財閥の息子です。
大切な人を危険から守るために、彼は人を殺めます。
そう、自身の父親を殺めます。
彼自身は、みずから行方不明になったうえで、別人の人生を歩むこととします。
そう、整形まで行って、、、。
彼の唯一の願いは、当時守った大切な人の今の消息を知ることです。
ここから、物語の展開が早まります。
3.著書より
「人間を殺すことはこの世界にある決定的な第一線を踏み外すことだ。」
「生物は基本的には同種を殺めない。」
「殺人を正当化し、理性で包むのはまやかしである。」
ラストシーンでようやく、ようやく、少しだけ光が見える、そんな小説です。
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久しぶりに中村作品を読んだが、そうそうこの感じと思った。
人間の悪、抗うことのできない人生と圧倒的な力、そんな中で主人公が選ぶ選択は… -
中村文則さんの初長編。それまでは200ページ以内で中編の延長的な作品だった。やはり長編だと明らかに中編と差別をつける所が沢山あり個人的にチャレンジ成功だと思う。
掏摸から作風も変わり、扱うテーマも徐々にずらしているが、核となる部分は変わらず死、悪、罪など、人間の闇に対する心理的探究。
今作もやはりドストエフスキーの影響がありまくる。笑
特に終盤にある神への言及、罪と罰の流れを連想させられる。
ただ、殺人は殺人だが、ルール違反という意味の罪ー今作では善を成す為の罪ということになるがーの場合がメインテーマになる。
悪については戦争、カルト的宗教、テロなど、様々な悪が主人公を運命的に巻き込むサブテーマも、ドストエフスキー的な総合的小説の手法を初使用している。どこか村上春樹の作品も連想出来る構成もあった。
エンディングはやはり今までの作品と同様、希望を残してくれた。読者として救われるが、作品の重さは多少影響される。けど非現実ではない。
更に進化する余地があるが、これはこれで個人的に100点。欠点は強いて言えば邪の家系の形成した経緯というか、邪悪な血が存在することに対して合理性が足りなかったと感じた。ただフィクションだし、推理小説でもないので、そういう前提、そういう設定だと思えば全く問題ないし、むしろ発想が面白い。 -
★3.5
不幸と幸福について、当たり前のことをつらつらと難しい言葉で語ってる小説。幸福は閉鎖のうえで成り立つ。人を殺めることは自分を傷つけ、とことん堕ちてしまうが、それを抱え、真っ直ぐ生きようとする主人公がかっこいい。殺人は犯罪だけど、それを真に理解しながら、生きていく姿に胸を打たれた。純愛要素も入っており、憂鬱にならずに読み切れた。難しいな。 -
「邪」の家系に育ち、初恋の少女・香織を守るために実父を殺した少年・文宏。顔を変え、自分の人生を捨てたかのような生き方をしてきた文宏が再び動き出す…
うむむ…どうなんだろ…
恋愛小説なんだろな~
人に潜む悪意と集団心理と正義(と信じるもの)がからまりあって、もっと社会的な意味も持たせながら、「でもやっぱり世界を動かすのは愛だろ~愛」って感じかな。
人が人を殺すこと…
それによって生じる精神的な閉塞感と壊れゆく心
イマドキの戦争はゲームの世界のように画面の中
でも実際に血を流しているのは生身の人間
エライ人たちは自分で血を流さない
人々は画面で見た戦争をリアルに感じない
悪は無関心から生まれる -
日常では何かと辛いことや苦しいことの方へ目が行きがちですが、ささやかでも暖かな温度を感じる瞬間があって、それの積み重ねで人は生きていけるのだと思わせてくれた大切な作品です。
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面白すぎる。面白すぎて読み終わるのが悲しくなるくらい。 思春期に感じた純粋なもの。大人になったばかりの虚無感。 無意識から支配されることの恐怖。 様々な心理描写に引き込まれ、感情移入しまくり。 頭クタクタになりそうだが、読みたくてしょうがなくなる。スゲー一冊。 本の中の香織に恋してしまった。笑
著者プロフィール
中村文則の作品






次はいよいよ「銃」か(勝手に決める)(笑)
一貫して木崎っぽいのが出るのかな。
そういや「教団X」でもそれ...
次はいよいよ「銃」か(勝手に決める)(笑)
一貫して木崎っぽいのが出るのかな。
そういや「教団X」でもそれっぽいのがいたような気が。