烏丸ルヴォワール (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.56
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本棚登録 : 240
レビュー : 42
  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062776806

作品紹介・あらすじ

京都の支配に関わる謎の書の持ち主が死亡。それによって勃発した兄弟争いを収めるため双龍会が始まる。だが龍樹家に予想外の事態が。

感想・レビュー・書評

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  • 最初にお断りしておきますが、以下のレビューには、少なくとも前作「丸太町ルヴォワール」を読んでいないとわからない表現が幾つか出てきます。
    解説の冒頭で法月綸太郎さんも述べておられるとおり、前作を読まずして本作を読むことはあり得ませんので、前作を読まずに本作やこのレビューを読もうとしている方々は、即刻、書店や図書館に走って前作を読んでください。
    それでは本題です。
    まずは、前作と変わらぬリーダビリティで、出だしの龍樹落花と瓶賀流のやり取りからグイグイと物語に引き込まれます。
    前作を読んでから少し間が空いていたのですが、「あー、そうそうこんな感じ」とお馴染みのキャラと雰囲気を思い出しているうちに。。。第一章のラストから早くも騙されました。
    自分が見ていたものが、見えていたものが一瞬にしてシームレスに姿を変える瞬間、快感が脳を突き抜けます。アハ!ムービーも真っ青ですね。
    そんな驚きも冷めやらぬまま第二章に突入。伝説の龍師「ささめきの山月」や元龍樹家の龍師であった私立探偵の鳥辺野有など、新たな登場人物も加わって物語は「双龍会」に向かって動き始めます。
    ネタバレしないように、物語の紹介はこれくらいにしておきますが、あと一つだけ。
    流、達也、論語、撫子、そして落花など登場人物が多く、誰が主人公とは特定はできませんが、今回はそのうちの何人かの過去に関わるエピソードも出てきます。
    それらは時に痛快で、でも時に切なくほろ苦く、「ああ、青春やなぁ」と心を熱くさせられます。
    生馬の目を抜くような壮絶で厳しい双龍会の場面と比してのメリハリもよく効いてます。
    そしてクライマックスでは、再び騙されていたことに気づき(信じられへん!)、意味深なラストを読み終えるとすぐに、続きが読みたくなること請け合いです。
    ああ、続きがあるありがたさ!次作も楽しみです。

  • ○ 総合評価  ★★★★☆
    〇 サプライズ ★★★★☆
    〇 熱中度   ★★★★☆
    〇 インパクト ★★★☆☆
    〇 キャラクター★★★★☆
    〇 読後感   ★★★★☆


     丸田町ルヴォワールに続くシリーズ第2段。この作品は「黄母衣内記」(ぎぼろないき)という古書を中心とした物語である。平安時代から続く伝統的な私的裁判である「双龍会」の存在がポイント。双龍会は,下手に負けると大火傷を負う。「黄母衣内記」を欲しがる人物は多い。その「黄母衣内記」を所持しているのは絢織耕作という美術教師。前作,丸田町ルヴォワールにより龍樹家の龍師になった御堂達也(發王),城坂論語(白澤),瓶賀流(亜鴉),龍樹撫子らが,綾城耕作の兄である綾城文郎の依頼を受け,「黄母衣内記」を手に入れるための行動を起こす。達也が絢織耕作が勤める学校に侵入することになった…というところで回想シーンが入る。
     回想シーンは,達也が高校に入学した頃の話が描かれる。図書館の本の文字が盗まれ,ページが白紙になった本が見つかるという話。これを素直に読むと達也が絢織耕作が勤める学校に潜入しているシーンと誤信してしまう。円居挽得意の叙述トリック。前作,今出川ルヴォワールの1章では,後半の叙述トリック(女性を男性と誤信させる叙述トリック)を匂わせていた。この作品でも,この回想シーンの存在が,「時制を錯覚させる叙述トリック」の存在を匂わせている。
     「烏丸ルヴォワール」を通じて最大の謎は「ささめきの山月」という龍師が誰かということ。真相は,ささめきの山月は黄昏郷。青蓮院という双龍会を仕切っている団体のトップで1000年生きているという噂の男だった。「ささめきの山月」は1000年生きるという黄昏郷のお忍びの姿だというもの。これは意外性があった。意外性がウリの小説ではないが,どこかに意外性を用意するということが円居挽の作風なのだろう。
     作品全体の筋としては,綾織文郎と文郎の弟の綾織武郎が「黄母衣内記」を巡って対立し,綾織文郎は龍樹家の龍師を雇って,綾織武郎が「ささめきの山月」を雇って双龍会に挑む準備をする…と見せかける。しかし,実は綾織文郎と綾織武郎は手を組んでおり,綾織耕作の子どもであり綾織操子が耕作を殺害したとして,双龍会を開くというものだった。この話の持って行き方にも意外性がある。総じて驚愕というほどではないが,十分な意外性があり,何より先が気になって読み進めることができる。
     龍樹家のメンバーが双龍会に挑む準備をするのが物語前半。ここでは鳥辺野有という,もと龍樹家の龍師だったものが出てくる。この鳥部野有の存在がこの物語のポイントの一つ。鳥辺野有が龍樹家の味方なのか,ささめきの山月の手先なのか。その辺りがあいまいでどちらにも取れる。この鳥辺野有の視点から描かれパートに叙述トリックがある。鳥辺野有が少女と一緒に行動しているが,ここに9年前のシーンが含まれている。龍樹落花がかつて青蓮院に誘拐されようとしたときに,それを防ぐためにささめきの山月が仕掛けた双鴉の計。落花の影武者として9年前に京都の町で一緒に過ごした鳥辺野有と瓶賀流の姿が挿入されている。これがラストの鳥辺野有と瓶賀流との再会につながる。ここから,そもそも鳥辺野有がささめきの山月の影武者として瓶賀流に仕事を与えていたこととの関係,鳥辺野有と瓶賀流の師弟関係の含みが見て取れる。烏丸ルヴォワールの読後感がよいのもこの叙述トリックがあってこそだろう。
     黄昏郷=ささめきの山月とすると,黄昏郷は青蓮院のトップとしての仕事をしながら,個人的に瓶賀流の誘拐を阻止したことになる。そして,この物語では自信の娘である綾織繰子を助け,青蓮院に来ることを阻止し,恵心に引き取らせる。この辺りの動機・真意は想像するしかない。実はいい人ということなのか,更に裏があるのか。これはシリーズの後に描かれるのかもしれない。
     さて,「烏丸ルヴォワール」の評価。黄母衣内記を巡る攻防と綾織繰子を御贖(被告人)とする双龍会がテーマ。鳥辺野有と瓶賀流が9年前に京都で過ごした時間を叙述トリックとして挿入し,ラストで驚きと良い読後感を与えるという構成は円居挽らしい話づくりの上手さを感じる。綾織耕作殺しはトランクのすり替えという陳腐トリック。双龍会でもいくつかの可能性が推理として披露されるが,披露される推理はそれほど面白みがない。双龍会でのやり取りとしては,達也,論語,瓶賀にも見せ場があり,最後は落花がささめきの山月の正体を暴いて終わる。形はしっかりできている。総合的に見て,この作品の評価を考える上で気になる部分は,1000年生きるという黄昏郷の存在や,青蓮院,天親,龍樹といった龍師の一族の存在といった子供じみた,漫画っぽい雰囲気を好きになれるかどうかだろう。こういった部分が嫌いな人にとっては,根っこにある話づくりの上手さはあるが駄作に見えると思う。漫画っぽいん雰囲気を楽しめるのであれば十分楽しめる良作。根っこの話のつくりはそれなりに上手い。
     個人的には,このシリーズの漫画っぽい雰囲気がかなり好きである。なので評価は甘め。ただし,話づくりの上手さはあるが,メインとなる謎やトリックがそれほど優れていない点も踏まえ,ギリギリ★4というところ

  • すごく一生懸命読んだのです。『丸太町』は楽しくて仕方なかったから、この『烏丸』だって一所懸命、一生懸命読んでいれば、そのうちわかるにちがいないと思って。だけど凡人のアタマにはムリでした(泣)。私的裁判「双龍会」で繰り広げられているのがとても面白いことだというのはわかるのに、何が起こっているのかついていけなくなり、登場人物の誰が今しゃべっているのかもわからなくなる始末。『丸太町』の読了後すぐに読めばなんとかなったのでしょうか。わからないのにカッコイイ、「落花狼藉、堪忍な」。私もちょっぴり狼藉を働きたいのだ!

  •  ここがトリックだとわかっているはずなのに、気がついたら騙されているという快楽。すごい。

  • 達也の過去とか気になる書き方してくるし、仕掛けもしっかりあって意表を突かれました。前作に比べると、双龍会自体の盛り上がりにやや欠けていたかな。

  • 展開が複雑過ぎてついていけない。正直しんどかった。めくるめく!というわけではなく、普通に不快な感じでわかりづらい。特に達也の回想シーンはどこから回想に入ったのか全くわからず。
    相変わらずのラノベ臭、中二病。特に、賢い女性というキャラクターが通り一遍。丸太町のルージュと達也の学校のセンセが全く同じキャラじゃないか。
    流にはすごく共感した。達也や論語のように特別なものを持っているわけではなく、撫子のように英才教育を受けたわけでもなく、落花のような天才でもない。でも生きていかなきゃいけないし、生きていくしかないんだよなー。すごくよくわかるよ。
    著者がラノベに出会うことなく作家になっていたら、どんなによかったろう。
    今回は京都っぽさが前作より薄まった気がする。
    ただ、妖怪みたいな神みたいなおっさん、電車での別れ、神社、学生街、などなど、京都を多面的に切り取っているのは今回もすごく魅力的。
    どっかの某森見登美彦みたいに、学生街という側面に依存していない。街が街としてちゃんと作品内に存在している。

  • ロジックの連打と騙しのためだけに作られた精緻なミステリで、久々にあのトリックにやられた。
    いわゆる私的裁判の話しなんで、そこまで行くのにいろいろな騙しはあるのはわかってよんでいて、最初に一回やられ、次はロジックの連打で真実の様相の変化に酔い、そして最後のあかしにもやられました。
    この人の作品は最初の作品には感心したけど、硬さに少し苦手かなって感じたけど、シャーロックノート以降ハマり、この作品もよかった。
    あと二作も読む。

  • 仮に真っ当な本格ミステリーとして読むとすれば、ド派手な飛び道具がバンバン撃ち込まれてくるので、決して読者から見てフェアな作品であるとは言えないが、各キャラクターがしっかり立っており、多彩な技が散りばめられた長編は純粋に読み物として面白い。
    特に舞台が京都であるというだけで、私にとっては尚更。
    2作目にして、レギュラーメンバーたちの素性も徐々に明らかになってきて、シリーズものとして広がりも感じさせる。

  • どんでん返しのような、急展開が多すぎて「おお…?今どういうことだった…?」となる。遠心力のような。一度目は結末が気になりすぎて途中で考えるのを放棄したまま読み終えてしまったので、現在そのまま二度目挑戦中。

    急展開の中でも最後の場面の五文字はやられたなー。私が鈍感なだけかもしれないけど、一言でそれまでの自分の思い込みが崩れた。

  • シリーズ2作目。今作は前作よりキャラクター物として読んでしまったが、まあ話しがどう動くのが肝だから〜。そして流さんいいよね〜。続きが気になる。

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著者プロフィール

1983年、奈良県生まれ。京都大学卒業。京都大学推理小説研究会に所属し、2009年に『丸太町ルヴォワール』で講談社BOXよりデビュー。同作から始まる『ルヴォワール』シリーズ(講談社)のほか、『キングレオの冒険』(文藝春秋)、『シャーロック・ノート』(新潮文庫nex)などの著作がある。

「2019年 『FGOミステリー 翻る虚月館の告解 虚月館殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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