鬼溜まりの闇 素浪人半四郎百鬼夜行(一) (講談社文庫)

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  • 講談社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062777223

作品紹介・あらすじ

家老の跡取りを剣術稽古の際に怪我を負わせ廃嫡させた榊半四郎は江戸に出て素浪人となった。兄の仇を取るため江戸に上った弟は仇討ち決行を臆す弱腰で、半四郎はいくばくかの金子を与えられ藩を召し放ち(追放)になる。仇討ちを受けることができず江戸の暮らしにも望みが見えず、生きる気力を失う半四郎。「やはり死のう」と刀を引き抜いたとき、半四郎はそばに火の玉が浮かぶ。火の玉を斬らんとする半四郎を止めに現れた謎の老人・聊異斎と小僧・捨吉。聊異斎は半四郎に本人も知らぬ怪異に対峙する力があると気づき、半四郎を子守と子供が神隠しに遭ったという屋敷に連れて行く。

感想・レビュー・書評

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  • 摩訶不思議な話に、引き込まれて行きます。

    豪剣、鬼包丁を腰に帯びた真っ直ぐな気性の榊(さかき)半四郎が活躍する物語です。
    幼いころに一緒に育った大切な志津を死なせたことを心の重荷になっている半四郎、そんな半四郎を助ける北町奉行所臨時廻り同心の愛崎哲之進。怪しげで、それでいて存在感のある際野(みきわの)聊異斎、何のために居るか分からないが、肝心な時に半四郎を導く、真っ黒な小僧の捨吉の取り合わせが絶妙です。

    第一話 鬼火
    浪人・神之木二郎左(榊半四郎と名を変える)は、藩主寵愛の浦山高則を剣術会で不具にして脱藩した。仇に討たれるつもりで上屋敷近くの裏長屋に住み、討ちに来るのを待っていたが、その気配がないので上屋敷に行くと。浦山高則は、病気により隠居した、このため仇討ちはないと。生きる目的を無くした榊半四郎は、死に場所を探していて鬼火を見る。聊異斎と捨吉に会い、そこが鬼溜(きだ)まりであることを知る。

    第二話 表裏の家
    呉服太物商吉勢屋で屋敷を増築したら、旧建物と増築した建物の境の廊下の角を曲がる主の子・太一を背負った乳母の背中を手代が見て、乳母の前からご新造様が来たが。ご新造様は乳母を見ていない。乳母と太一は何処へ行ったのか…。家の内外を探したが見当たらない神隠しにあったか。呼ばれた聊異斎、捨吉と半四郎は、家を増築した棟梁が残した「万一の折にはこれを」と言って残した寄木細工の小箱を開けたら、その中から捨吉が太一を救い出す。

    第三話 刀商叶屋
    幼いころに両親を失った半四郎は、12才の時から山方勤めの組頭の家で面倒を見てもらった。そこには、4才下の娘・志津が居て、実の兄のように慕ってくれた。半四郎が21才の時に、志津が藩主の小姓であった家老職の家柄の浦山高則に嫁入りしたが。1年も経たぬうちに実家へ戻って来て咽を突いて死んだ、なぜだ? その浦山と剣術会で真剣で立ち合い不具にしてしまった。藩主寵愛の上士を軽輩が不具にした。その重圧に耐えかねて半四郎は、脱藩した。なお、藩主の面前での剣術会は、藩主と浦山の間で何か思惑があったとしか思えないような書き方です。

    第四話 剣鬼
    凶刀を手にした辻斬りは、名刀を持った剣の遣い手を襲って行く。同心の愛崎哲之進は、剣を相当に遣う半四郎に手助けを頼む。愛崎は、刀剣商叶屋徳右衛門に頼み名刀を借り半四郎と聊異斎、捨吉の4人で対決すると。凶刀が、屍を操って辻斬りをしていた。半四郎が、凶刀を持った手を切断すると屍は倒れたが。凶刀を持った手はまだ生きていた、半四郎が凶刀から屍の手を引き剥がすと手は力をなくす。

    第五話 初雪女郎
    半四郎が住む裏長屋のお千は、旗本家の渡り用人をしている醍醐(だいご)秋成に騙されて、慈眼寺小町と騒がれた娘お行を女郎として売り、その金を醍醐に渡す。2年後に再度醍醐は、お千を騙し娘の年季を5年ふやした金を騙し取る。女郎の初雪(お行)は、遊女屋で騙されたと騒いだ勤番侍に殺されると。お千は、包丁で醍醐に斬りつけて無礼討ちされる。それを知った半四郎が非情の決意をして醍醐を斬る。半四郎は、初めて人を斬る。

    【読後】
    怪しげな不思議な話に先を読む気持ちがとまりません。テンポよく、第2話「表裏の家」から強く引きつけられます。これは面白いです。今回は、1作目のため半四郎に触れた物語が多かったです。次作が楽しみです。
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    鬼溜(きだ)まりの闇 ー 素浪人半四郎百鬼夜行シリーズの1作目
    2014.01発行。字の大きさは…中。2022.09.03読了。★★★★☆
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  • シリーズ第一弾
    藩主の股肱の臣を試合で負かした主人公は脱藩して江戸へ
    途中で出会った老人と小僧、諸々の怪異が

  • 死にたがりの素浪人、だけどなんて男っぷりの良い好男子なのでしょう半四郎。普通の時代小説のようで、ホラーファンタジーになっているのも新鮮です。半四郎が持つ強い霊力に本人全く気づいていない辺りが微笑ましいのですが、不思議な老人と子どもに出会い運命的に行動を共にすることで、次第に半四郎自身が闇に近づいてしまっているように思えます。辛い半生を背負いながら正義を貫く半四郎が、心から生きる希望を持つことができる日がくるのでしょうか。まだまだ謎の多いこの作品の続きが気になって仕方がありません。面白い!

  • 訳あり浪人が生きる気力を失っていた頃、江戸の町で出会った老人と子供。それを機にあやかしい出来事に巻き込まれていく。とても読みやすく、主人公の浪人・半四郎の感情を抑えた筆致と真っ直ぐな性格が清々しい。登場人物たちがそれぞれ魅力的で読んでいて楽しい。まだまだ謎がたくさん隠されているようなので、早く続編を読みたい。日頃、時代小説を読まない人にこそオススメできる、骨太で粋な作品。

  • 聊異斎と捨吉のこと、半四郎のことも、謎は残ったままで、ちょっともやもやですけど、お話は面白かったです。最後の話では、あのまま悪党は野放しなのか!と思ってたので、半四郎ありがとうでした。そして、愛崎さんたちの計らいもあって、次巻があるのですね。

  • 素浪人半四郎百鬼夜行シリーズ、1作目。

    初めて読む作家さん。剣客モノ+ホラー時代モノでしょうか。可愛い妖怪系ではなく、本気の怪異モノ。本気のホラーは逃げ腰になるのだけれど、実直な半四郎を始め、脇を固める謎の老人と子供のコンビ、刀商人や同心と、素敵なキャラがきっちり揃っているので、最後まで面白く読めた。解説の通り、まだまだシリーズ作品の序章といった形で、老人と子供の正体など、謎をいくつか残したままの終わるので、その謎への興味も高まる。次作以降にも期待したい。

  • 平成27年3月31日読了
    2015年

  • あやかし系時代小説の乱立に辟易していたのですが、縄田一男さん推薦という事で読んでみました!怪異を祓ってめでたし、めでたしではなく、謎を含んだ余韻のあるお話ばかりで面白かったです。今後、主人公がどう生きていくのか次巻が楽しみです。

  • 返り忠兵衛シリーズの芝村さんによる新シリーズ。

    実直でストイック、他者への思いやり深さなど、主人公から受ける印象は、読んでいくうちに忠兵衛と重なって感じられた。そうなると、愛崎同心は矢崎(浅井風味)、長屋の担い売りは与茂平と重なって見えてきて、新シリーズなのにどこか見知った雰囲気にも感じられた。
    物語は始まったばかりであり、これからの展開に注目したい。

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著者プロフィール

1961年、宮城県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。学生時代は映画サークルでシナリオ作成に熱中、二十数年のサラリーマン生活を経験した後、2011年『返り忠兵衛 江戸見聞 春嵐立つ』(双葉社)でデビュー。「半四郎百鬼夜行」シリーズが「この時代小説がすごい!」(宝島社)文庫書き下ろし部門二年連続ランクイン! 新シリーズ「御家人無頼」も好評。確かな筆力と個性的な人物造形で目利き絶賛の時代小説作家。

「2017年 『素浪人半四郎百鬼夜行(拾遺) 追憶の翰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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