人間小唄 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 907
感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062777421

作品紹介・あらすじ

国民の無意識に影響力を及ぼして混乱を招来する糺田両奴の文学を根底から破壊する。罠にはまった糺田に課された難題の行き着く果て。

感想・レビュー・書評

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  • 表紙の猿の絵に惹かれて手に取った1冊。
    猿の表情とタイトル文字と作者名のバランスがすごいと思った。
    すごく格好いい文庫本。
    一目惚れでした。

    中身の小説は(も?)強烈。
    いったい何が始まったのか分からず、押される方に転がっているうちに身体と心は傷だらけになり、もう二度と元には戻れなくなってしまっていた。
    何が?
    この小説の主人公(?)の作家の人生が。
    そして、それを読んだ私の人生観も。

    大切だと思っていたことを軽く足蹴にされる。
    堅い地面がなければ立っていられないのに、それをぐじゃぐじゃにされて、尚も踊ることを求められる。
    自分は闘っているつもりなのに端から見ると滑稽な踊りを踊っているだけ。
    やり切れない。
    恥ずかしいとか言ってたら何も出来ず(呼吸も食事もなにもかも)、分かってくれとか言っても誰にも届かない。
    だからこうしろと言うこともなく、そうなんだよと思い知らせてくれるような小説。

    • MOTOさん
      本当だ♪
      この猿の絵、すごいイイですね~
      (しばし、
      ぽ~っと見入っちゃいました。^^;)
      町田庸さん、
      実は気になりながらも、ま...
      本当だ♪
      この猿の絵、すごいイイですね~
      (しばし、
      ぽ~っと見入っちゃいました。^^;)
      町田庸さん、
      実は気になりながらも、まだ未読の作家さんでしたが、
      この本は是非手にして見たい!

      きっかけをありがとうございます~♪
      2014/10/14
    • takanatsuさん
      MOTOさん、コメントありがとうございます!
      そうなんです!
      単行本はもっと猿がアップなのですが、私は文庫のバランスの方が好きでした。
      ...
      MOTOさん、コメントありがとうございます!
      そうなんです!
      単行本はもっと猿がアップなのですが、私は文庫のバランスの方が好きでした。
      「町田庸さん、
      実は気になりながらも、まだ未読の作家さんでしたが、
      この本は是非手にして見たい!」
      なんと!
      そうなのですね。
      MOTOさんがこの小説をどう読むのか…とても気になります…!
      2014/10/15
  • 町田康、脳が疲れる〜。
    悪役の視点で描いた本かな。
    「短歌をつくる」「ラーメンと餃子の店を開き人気店にする」「暗殺」の三択、町田康にしか思いつかないんじゃないか。

  • 当たり前って何だよ。
    どうして当然だって思えるんだよ。

    喜んだり、悲しんだり、怒ったり、寂しくなったり、根っこから生まれてくるはずの感情さえも、世の中に溢れる在り来たりな予定調和にコントロールされている雰囲気に、いったい何なんだと、頭を掻き毟り、湧き上がる吐き気を無理矢理飲み込んで、絶望的な気分に落ち込んでいく。

    約束通りの答えが欲しくて欲しくて仕方がない。
    良いことも悪いことも、思い描けるイメージの範囲内で生まれてきてくれる世界を求めて、そんな期待通りの世界に囲まれて、安心しきって生きている人間という大勢。

    定石どおりに進む。
    そんな世界が何だってんだ。

    同じことを繰り返していくだけで、停滞し、鈍重になり、もう飽和して、腐り始めてる。でも、気づかない振りをして、ごもっともらしい意味だけが終わることなく出力されて、次から次に降り積もるだけ。

    まるで人間の存在そのものと重なっていく風景にすべて一度壊れてもいいんじゃないかと、残酷に思う。

    見るに堪えないものが溢れる世界に、ときたま表れる何処にも同じものはない物語、意思、それを持つ人間。誤魔化さないで、寄り掛からないで、自分の中から立ち上がる世界を作れる人間が、僅かだけどこの世界にはちゃんと存在している。

    それを確かに感じ取れるだけで、少なくとも自分の世界は破滅的な状況から救われている。

    この物語、これを描く意思はそれだ。


    分かりやすくて、簡単に人の心を動かして、ひとりよがりな世界を当然の風して撒き散らしてる。もうそんな空気には辟易だ。

    破壊とか、テロルなんて解説されていても、それでもそこに生まれている言い訳のない自らで生み出された言葉は、代わりがない、美しい形だと思える。

  • 町田康の長編小説の中で一、二を競う面白さだった。『告白』などの大長編に於いては、主人公・熊太郎の成長譚と作中の時間の厚みも相まってこちらも時間を重ねながら読み進めていく面白さがあるが、この文量で屈される感覚は人間小唄の方が好み。
    涅槃のような、あっちのような、不思議な空間を出入りする子角と未無と、なんかいい感じの文章を書いていい感じの女を口説く傲慢な作家糺田。
    今までの、なにか欠落してたりダメ人間な自分、が転がるように事の顛末まで落ちに落ちていく作品に比べて、子角と未無の手によってそういったものが徹底的に撃たれ斬られ爆破される。悲しいまでに破壊される。否定される。

    糺田の糺、には【あざなう。糸をより合わせる。ただす。問いただす。あつめる。もつれる。乱れる。】という意味があるそう。
    革命が起こっている。悲しいまでの破壊と謙虚さに胸うたれた。

    文庫版解説の教授の論に、ルソーと町田康の類似点を挙げる旨が上がっていたのがなかなか面白かった。

  • 何て乱暴で不条理な話なんや…
    町田康ていつもは踏んだり蹴ったりな側視点ばかりやったような気がするんやけど逆側なんもしんどい原因やと思った。
    でも安っぽいラーメンを食べたくなった。

  • ずっと高熱でうなされている時に見る夢のような話。
    主人公の小角は、訳の分からない単価を一方的に糺田両奴に送り付ける。
    その単価を考察した文章を著書に載せてヒットした糺田両奴に小角は恨みを持ち、糺田両奴を謎の世界に拉致し、短歌を書かせたりラーメン屋を開かせたり、秋元康的なプロデューサーを暗殺させようとしたりとめちゃくちゃな事を課題として押し付ける。
    とにかく、終始わけがわからないのだが、町田康独特の言い回しで続くストーリーは読んでいてとても面白い。
    特に続きが気になるなどはないが、ついつい読み進めてしまう。
    あと、登場人物の漢字が全く読めないので調べたら、どうやらそういうものらしい。
    糺田両奴(きゅうだりょうど)と渡すは読みました。

    実写でやるとしたら

    小角→オダギリジョー
    糺田両奴→滝藤賢一
    新未夢→池田エライザ

    かな?

    楽しい小説でした。

  • イキりキッズだったので中2の読書感想文にこれを選び、国語担当の教師に「俺もこれ読みたいんだけど、どうだった?」と聞かれるや否や「まあまあッスね」という越前リョーマにしか許されない返答をしてしまった

    主人公の男がヤクザに脅され、殺されそうになりながらもラーメンを作っていた。ディープウェブっぽい笑
    また読みたい。

  • 名作です。町田康さんにハマり20年以上たちますが、1番かもしれません。

    難解な印象が強い町田康さんですが、今作はテーマが明確です。「薄っぺらいくせに、さも本物のように表現して多くの国民を洗脳するエセクリエイターども許さん、ちゃんとしろ。性根を叩き直してやる」

    文学は読み手の受け取り方次第で、何が正解なのかは分かりません。町田康さんも別にそんなこと思っていないかもしれませんが、私はそう解釈しました。

    解説にあった、
    ?田(?読みも分からんから変換できない笑)の薄汚れた魂の浄化を図るためのもの、という指摘に近かったです。

    1、短歌を作れ→創作に真摯に向き合え
    2、ラーメンと餃子の人気店をやれ→大衆(読み手)を
    理解しろ
    3、暗殺→なんだっけ、わすれた笑

    猿本丸児はもうこれ秋元康でしょ笑笑「川の流れのように」のパロまで入れて。

    ちなみに1番笑ったのは、鎖鎌で切りつけた時の一文「音頭朗々〜」です笑

  • 高熱の時に見る夢

  • うーむ。うーむ。うーむ。わからん。わかりませんでした。でも、ま、分からなくても良いか、と思った自分もいる。正直、ホンマに正直言いますと、そこまで面白いとは、思いませんでした。あくまでも自分基準で。俺には合わんなあコレ、って感じ。

    でもアレだ。合わないんだけど、合わないなりに好き、という変な感想。ああ、町田さん、ぶっとんでんなあ~、ってのはヒシヒシと伝わったし、別の作品で、十分に「町田康、マジすげえ!!」って驚愕驚嘆感嘆感動させていただきまくっているので、別に合わない作品があってもね、そんなこたあ、俺の町田さんに対する尊敬の気持ちは一向変わらんね、って感じ。

    ま、平たく言うと、町田康、という作家を、無条件で尊敬信頼する自分がいるのです。それだけ好きな存在なんですよね。で、ちなみに、町田町蔵時代のパンクバンド「INU」は、、、正直、、、わからん、、、ありゃあ、わからん、、、でもなんだか凄いよな、って感じ。

    町田さんの作品で以前に読んだ中で、この作品になんだか近い感じ?って思ったのは「真実真正日記」でしょうか。アレの意味不明さとコレの意味不明さは、なんだか似ているなあ、とか、ザックリ思いました。でも「真実真正日記」を読んだのは、えれえ大昔なんで、今読んだら「全然ちゃうよね」って思うかもしらん。それはまあソレ、って感じですね。

    まあ、ぶっ飛んでるなあ、というか、ホンマに有体に言うと、狂ってるよなあ、って感じなんですが、まあその、怒涛の狂いっぷりを楽しむ物語、でしょうか。個人的には、登場人物の誰にも感情移入することなく、単なる傍観者として、淡々と物語を読み進めました。「ああ、、、みんな、アホばっかやなあ、、、」みたいな感じで。

    いわば神の視点でこの物語を眺めたのです。高みの見物、ってヤツですね。傲岸不遜過ぎる。そんな俺はマジでクソみたいな人間なのか?とも思いつつ、まあ、すまん。感情移入して「自分の身にこんな事が降りかかったらどうしたらいいんだ!!マジ辛い!!なんとか助かりたい!!」とか全然思わなんだ。すまん。

    物語の終盤で、なんだか軽佻浮薄なポップスソングを世間に矢鱈乱発しているクソみたいなプロデューサー、みたいな人物が登場して、主人公目線で「あいつはクソ。死んでいい。だから暗殺」ってなるんですが、あっこらへんの流れは、うーん、、、どうだろう。個人的には、納得できないなあ。

    誰かが誰かを、死んでも良い人間だと断定する。アイツがいるのはこの世の中のためにならない。だから暗殺するのは正義。って思うのは、「あなたにとって都合の良い世界にアイツはいらない」ってことですよね?それは、絶対に誰の目線から見ても「アイツは死んだ方が良い」では無いですよね?ということを、常に、思ってしまうのだ。「(誰にとっても)真の悪」とは何か?「(誰にとっても)真の正義」とは存在するのか。それは、永遠に問い続けるべき問題ですよね。

    そういう意味では、あの最後らへんの展開は、ブランキー・ジェット・シティーの「人殺しの気持ち」という曲を思い出させてくれてサンキュー、って感じでした。自分にとっては、とても大切な曲です。あの曲は。あの曲の存在を思い出させてくれたってだけでも、この本を読んで感じた事があったね俺はラッキーだね、ってことですよね。

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著者プロフィール

町田 康(まちだ・こう)
一九六二年大阪府生まれ。作家。九六年、初小説「くっすん大黒」でドゥマゴ文学賞・野間文芸新人賞を受賞。二〇〇〇年「きれぎれ」で芥川賞、〇五年『告白』で谷崎潤一郎賞など受賞多数。

「2022年 『男の愛 たびだちの詩』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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