ケシゴムは嘘を消せない (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 204
レビュー : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062777483

作品紹介・あらすじ

家に突然現れた透明人間の美女
透明美女と別れた妻と・・・先の見えない恋と人生の行方は!?

離婚届に判を押しアパートに帰った晩、信彦はひとりで「離婚式」を敢行。ビールでぐでんぐでんに酔っ払っていた。元妻・加奈子と元妻の連れ子の悟のことが頭から離れない信彦の前を、突然空気の塊が横切る。その空気に左手を突っ込んでつかんだのは確かに女の手首の感触だ。姿の見えない人の形を手のひらで確認し「暇なら飲まないか」と誘う信彦。意気投合して深酒した二人だが、翌朝、女は信彦―ノブの首筋に出来たキスマークをいともたやすく消す。女は透明人間の上に、何でも消せる特殊能力を持っていた。出社して元妻に、昨晩は透明人間と飲んだと報告するノブ。アパートでノブの帰宅を待っていた透明女は、大きな「組合」に自分が追われていると告げる。組合の追っ手は消されたものが見えるので、組合から透明にさせられた女はアパートの外に出られないのだという。ノブは女を「タマ」となずけ、二人の奇妙な同棲生活が始まる。連れ子の悟へのぎくしゃくしたノブの愛情、シングルマザーの加奈子の矜持、悟の健気さ、透明女と謎の「組合」……一行先も予測不可能、「せつなさの魔術師」による傑作ファンタジック・ラブストーリー。

感想・レビュー・書評

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  • 離婚が成立し、一人やけ酒をあおる男の前に
    突如として現れた透明人間の女。

    声は聞こえるし、触れると感触もある。
    しかし目には見えず
    おまけに何でも一瞬で消してしまう(透明にしてしまう)特殊な能力を持っている。

    いい加減だが正直者の男は
    彼女が大きな組合に追われていると知り、
    寂しさを紛らわすため
    謎の女『タマ』との
    奇妙な同棲生活が始めることにするが…。


    青春ミステリーの傑作『私を知らないで』でも思ったけど、
    まず感じたのは
    白河さん、ホンマ文章上手いわ~!

    SFチックで、
    サスペンスフルな設定を
    歌うようにテンポ良く綴る筆致に
    ページをめくる指が止まらず
    ドンドン引き込まれていく(笑)

    突拍子もない設定は
    乙一と伊坂幸太郎作品を思わすんやけど、
    その伊坂幸太郎のお株を奪うような(笑)
    軽妙で遊び心のある洒落たセリフの数々がまた
    嘘っぽくも嫌みにも聞こえず
    むしろ心地よいんですよ(笑)
    (そして心のメモ帳にストックしておきたくなるハッとさせられる名言が多し!)


    主な登場人物は
    主人公で28歳の派遣会社社員の有田信彦。

    元妻でクールなキャリアウーマンの加奈子。

    加奈子の連れ子で10才になる
    一人息子の悟。

    そして透明人間の若い女性タマと
    タマを確保しようと躍起になる
    謎の『組合』なるものからの
    執拗な追っ手たち。

    透明人間との切ないラブストーリーだと予想していたら
    主人公が離婚した理由や
    元妻や血縁関係のない息子との絆などが中盤からクローズアップされ、
    家族とは?
    血の繋がりとは?を
    すごく考えさせられる意外な内容でした。
    (『私を知らないで』も家族を描いていたし、白河さんの永遠の共通テーマなのかも)

    難を言えば、
    序盤は透明人間を守ろうとする少し頼りない主人公と(笑)
    透明人間を追う組織との攻防は
    謎がなかなか明かされず、
    着地点が見えないため
    いったいどうなるんやろ?って
    時間を忘れて読み進めてしまうし面白いんやけど、
    章の間に挟まれる主人公と元家族とのエピソードが
    どうしても中だるみを生んで
    ちと勿体ない印象かな。

    透明人間や透明人間が見える人たちの設定を
    そこまで複雑にしなくても
    充分に面白いものができたような気がしなくもないです(笑)


    本当は見える見えないは
    大事なことではないのかもしれない。

    現に恋の真っ只中にいる時は
    好きな人以外の全ての人間が
    透明人間のようなもので(笑)、
    眼中に入らない。

    逆に言うと好きになると
    透明人間であっても  
    恋に落ちた人にだけは見えるのかもしれないなぁ。

    そして解説にあった印象的な引用
    『心とは後天的に作られるもの。
    育ってきた環境や得てきた情報や
    触れてきた映画や音楽や小説が人の心を作る』には共感しきり。

    目には見えない『心』というものの存在や動きを
    いろいろな言葉を駆使して読む者
    に味あわせてくれる
    そんな白河さんの小説を読みながら、
    自分の心も作られていくのなら
    こんな嬉しいことはないと思う。

    個人的にまだまだ追いかけていきたい作家です。
    (文庫本の帯の解説にもあるように
    確かにラストは予測もつかない結末でした笑)

  • ミステリー要素もSF(というかファンタジー?)要素もふんだんにあるんだが、俺はこの本を父親の小説として読んだ。物語の冒頭、ダメ亭主として(おそらく意図的に)描写された主人公ノブが話が進むごとに変わっていく変遷の味わいがよい。

    そう、男ってのはこういうダメなところが、多かれ少なかれ何がしかあるもんだ、こじらすとアル中になったりDV走ったりするんでアカンねんけど、パーフェクトを目指す女性から見たら「なんと情けない」と思われてしまう要素を持ってしまってる性なんやと。

    その「なんと情けない」を背負いつつ、子供との関係や恋人とか配偶者との付き合いを進めて行くうちに光ってくる何かがある。背負ってるもんのしんどさがイヤになったり、逃げ出したくなったり、呆れてみたり…

    白河さん、少々荒さが目につくものの、さすがの人間描写。透明人間と組合のゴタゴタ劇に家族小説の味わいをぶっ込んでくるあたり、器用さだけじゃない強引さも感じる。そういうのキラいじゃないけど、細部をもうちょいやすりがけしてなめらかにしてくれたらもっと良かったかな。

  • 消せる者と見える者。どうなることかと思ったけれど、全てあるべきところに収まった。必ずしも仕組みや種明かしが完全になされなくても、それぞれが幸せになればいいじゃないか。

  • 家族の絆がテーマだとは思うが、この著者の手にかかると、奇妙な設定により独特の雰囲気になる。
    終盤の展開は好きではない。あくまで不思議な雰囲気を維持して欲しかったなぁ。
    白河さんのベストは未だに『プールの底に眠る』です。

  • 透明人間のお話
    人や物を消せる能力
    透明人間を見ることができる能力
    そんな力をもった人たちがいる世界

    離婚したばかりの男が透明人間の女と出会い
    物語は展開する

    この著者の作品に出てくる登場人物は一癖二癖ある
    人ばかりだなと感じる
    そこは好き

    ストーリーも楽しめているので好きです

    でもなにかもうちょっと欲しいなと感じてしまう
    こともあります

  • 2017年9月13日読了。
    2017年60冊目。

  • 読みやすくて、すらすら進んでしまう作品。
    なんだけど、起伏というか、感情移入みたいな、作品にのめり込むみたいな動きがなかった物語だった。

  • 逃亡中の透明人間との奇妙な共同生活。すごく…シュールです…。

  • 離婚をしてやけ酒を飲んでいると、突然目の前をなにかが横切ったような気がした。思わず手を伸ばして掴むと女性の手首の感触だった。話しかけると女性の透明人間で、なんでも消せる能力をもち、透明人間の組織に追われているという。寂しかった彼は透明人間の女性を匿うことにした。料理上手の透明人間との奇妙で妙に居心地いい生活は次第に組織の包囲網により追い詰められていく。

    荒唐無稽も過ぎるという感じだけれど結構楽しんで読んでしまいました。でもちょっと辻褄が厳しいので理屈っぽい心を麻痺させる必要はあると思われます。

  • 問題を抱えた人達が前に進もうと足掻く中に不思議が普通に入り込んでいるという。
    よくありそうでありえない話。
    母親の心の傷と子供の健気さに心が痛み、元夫の優しさがしみます。
    よくもまあこんな繊細な心の傷を不思議の中に盛り込んだというか だからこそ設定が生きたお話というか。
    結末が気になって一気に読まされてしまいました。
    後味も悪くなく、この作家さんの別の本も呼んでみたくなりました。

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著者プロフィール

2009年『プールの底に眠る』で第42回メフィスト賞を受賞しデビュー。『私を知らないで』が「本の雑誌」増刊『おすすめ文庫王国2013』にてオリジナル文庫大賞BEST1に選ばれ、ベストセラーに。他の著書に『ふたえ』(祥伝社文庫)『ケシゴムは嘘を消せない』『もしもし、還る。』『小人の巣』『田嶋春にはなりたくない』『十五歳の課外授業』『計画結婚』『無事に返してほしければ』などがある。

「2020年 『他に好きな人がいるから』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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