薔薇を拒む (講談社文庫)

  • 講談社 (2014年5月15日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784062778343

作品紹介・あらすじ

施設で育った博人は進学の援助を条件に、同い年の樋野と山奥の洋館に住み込みで働き始める。深窓の令嬢である小夜をめぐり、ふたりの想いは交錯する。洋館に関わる人物の死体が発見され、今まで隠されていた秘密が明るみに出た時、さらなる悲劇が起こる。気鋭の作家が放つ、最終行は、読む者の脳を揺さぶり続ける。


施設で育った博人(ひろと)は進学の援助を条件に、同い年の樋野と山奥の洋館に住み込みで働き始める。深窓の令嬢である小夜をめぐり、ふたりの想いは交錯する。洋館に関わる人物の死体が発見され、今まで隠されていた秘密が明るみに出た時、さらなる悲劇が――。気鋭の作家が放つ、最終行は、読む者の脳を揺さぶり続ける。

みんなの感想まとめ

心に傷を抱えた少年たちが、孤立した山奥の洋館での生活を通じて成長していく姿が描かれています。主人公の博人と同じ境遇の樋野は、進学のための援助を受ける条件でこの洋館に住み込み、そこで出会った深窓の令嬢・...

感想・レビュー・書評

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  • 交通事故で孤児になった主人公と父親の犯罪で孤児になったもう一人の17歳の少年が陸の孤島のお屋敷に雇われる。
    3年間をそこで暮らせば大学4年間の学費と生活費を無条件に負担してくれるという。そんなお屋敷で事件が起きる。
    あり得ないような設定、荒唐無稽なストーリーだがぐいぐい引き込まれて読んでしまうのは作者の力量なんだろうな~。

    Amazonより
    陸の孤島で起きた殺人をめぐり、屋敷に関わる者たちが疑心に陥る。悪意すら美しく描かれる新感覚ミステリー。著者講談社文庫初登場!

  • 事情があって施設で育った博人は、同じような境遇で育った樋野と共に山奥の洋館で働き始める。
    他に居場所があるわけでもない二人は、少しずつだが洋館での暮らしに馴染んでいく。
    意外にも博人は、ゆったりと自分だけの時間を過ごすことが出来る生活を楽しんでいた。
    少しでも長く、この洋館での暮らしを続けたいと願うほどに。

    やがて博人と樋野は洋館に住む令嬢・小夜に恋をする。
    それぞれ心に傷を持つ博人と樋野。
    大切だからこそ近づくことをためらってしまう博人。
    大切だからこそ壊してしまいたいという破壊衝動をかかえている樋野。
    同じように傷を隠したまま生きてきた小夜には、二人はどんなふうに映っていたのだろうか。
    彼らが洋館に雇われた理由もすべて知ったうえで、彼らを受け入れていた彼女は哀れだ。
    けれど、結局のところそれも自己満足でしかない。
    館に住む人それぞれが本当の気持ちを隠し、表面上を取り繕っていたために少しずつ歪んでいく世界。
    人は誰でも身勝手な部分を持っている。
    だが、それをあからさまにしないのは第三者の目があるからだ。
    ストッパーとなるべき存在がいないとき、人の欲望はどす黒いものへと変化していくのかもしれない。
    博人は結局幸せになったのだろう。
    それが真の幸せと呼べるものかどうかは別として。

  • 心に闇を持つ少年が山奥の館で過ごす数ヶ月。
    近藤さんの本は読みやすいし、ぐいぐい引き込まれて一気に読んでしまった。山奥の館、湖畔、美しい少女、そして殺人事件…物語の中に流れる耽美な世界観が好きだ。
    事件の結末(犯人とか…)についてはあっさりとしていたが、その後の展開にゾクッときた。

  • ラストは薔薇の棘が刺さったかのような痛みを感じる、軽めなミステリー(でも人は死ぬ)。絶対に何か起きないわけがないステキな設定に魅力的な登場人物。
    思ったより胃もたれしないでサクサク読めていい。

  • 美しい光景がたくさん描写されて、綺麗な風景を思い描くけど、
    空はいつもどんより曇っていて、視界は薄暗い。
    そんなイメージの残るお話。

    話がどんどん展開していくような物語ではなく、
    終始ゆっくり進んでいくけれど、
    先が読めず、続きが気になって一気に読んでしまった。

    近藤史恵さんの文章、好きだなあ。

  • こちらが物語を読んでいる最中に立てた予想はことごとく裏切られた。ラストで思わずため息が漏れた。そう来たか……。
    少年二人を翻弄する運命の悲しさ、悲嘆に沈んでいると物語が誰も望んでもいない方向へと舵を切る。
    285頁という短い内容故にテンポもよく、構成もよく組み上げられている。面白い。

  • 施設で育った博人は進学への援助を申し出た資産家の持つ家に住み込みで働くことに。そこには血の繋がらない美しい母子と使用人たちが。隔絶された湖畔の美しい家に絡みつく愛憎と復讐の糸。

    深窓の令嬢をキーに主人公たちの過去の傷や心の闇が少しずつ紐解かれる緊張感あふれる近藤さんのミステリ、今回もその複雑な感情の絡みと主人公がすっきり救われない切ないお話を楽しませていただきました。ただ、本作では割と早めに犯人に目星がついたり、オチがどこかで読んだような感じだったりと王道のミステリ感がありました。もう少し心の迷宮に誘って欲しかったというところでちょっと残念でした。
    いつもそうなのですけど、近藤さんの作品の背後には冷た〜い日本の社会が横たわっていて、差別やジェンダーの問題が物語にふわりと浮き上がってきたりします。今回も一度社会から弾かれてしまうと戻れない、再チャレンジの難しい日本の社会やそこで突き落とされる孤独、社会的な死みたいなものを思わされました。一方で出てくる湖畔の家の晩秋の風景を思い浮かべながら、こんなところで馬を世話しながら本に埋もれて暮らしたい、と思ってしまいました。あと、犬がかわいそう。

  • ゴシックミステリ。謎解きより舞台を楽しみました。
    山奥のお屋敷に住む血の繋がらない母娘、家庭教師や庭師の男性、お手伝いの女性たち、そこへ暗い過去を持つ美少年ふたりが雇われる…何か起こらない方が不思議。
    少年ふたり、鈴原と薫(切り取り方だけどエヴァ…?)の罪の持ち方はちょっと違うし薫くん自体は問題ないな…鈴原くんのおかげで止められるし。
    鈴原くんは諦念なふりして1番強かで良いです。諦めてたのが全部手に入るとなると、抑圧してたぶんだけ反動が物凄いのかも。頭の回転は速いし。村上刑事も鈴原くんにしといて良かったね、と思いました。他の選択肢無いだろけど。
    誰も幸せにならない結末なのも凄い。鈴原くんは薫くんとして生きていくんでしょうね。薫くんなのは小夜の前だけで、他の人の前では鈴原くんのままなのだろうか?という疑問は残りました。
    謎解きは、田中って明らかに偽名やろ…小夜の自殺したお姉さん・夕日の元恋人?怪しい、と思ってたのでそうだろうね、と。それでもお屋敷の最期のあれこれは集中しました。桃子居なくなってコウさん刺されてから急展開。
    桃子可愛い。グレートデーンに桃子…グレートデーンって厳ついめっちゃ大きい犬なはず。体高1mあったりする犬。あれ放し飼いされたら怖いよ!!おとなしいとはいえ見た目ではドーベルマン並に威嚇になる。スミレもポニーなら下手したらあまり大きさ変わらんくない??
    映像化しても映えそうこれも。湖もある山奥のお屋敷に若い母親、美少女、美少年、グレートデーン。良き。
    タイトル、最後まで読むと物凄いな。

  • だれにも邪魔されず、静かに本をめくる時間。好奇や同情の視線を向ける人に怯えることもなく、静かに庭の木々を手入れし、夜は心地よい疲れの中、たったひとりのベッドで眠る。それはぼくがはじめて手に入れた砂金のような幸福だった。施設の中で大勢の子供たちと一緒にもみくちゃになっていたときが、不幸せだったというつもりはない。十分な食事と眠る場所を与えられ、学校にも行かせてもらっていた。だが、この屋敷にきてぼくは知ってしまった。人は食事や寝る場所があれば生きていけるわっけではないのだ。そして、ぼくには水や空気と同じくらい静けさとひとりの時間が必要だった。

  • デビュー作「凍える島」が好きで、近藤史恵にはまった人間ですから、嬉々として買った。ちなみに「ガーデン」も好きだし、「桜姫」も、「青葉のころは…」も大好きである。
    この話は、ミステリーでは、ない。と思う。しかし、こういう痛々しい青春群像劇はやはり、このひと特有の崩れない退廃的な世界観がここちよく、満足して読了した。
    うつくしい少女、血のつながらない母、少女に焦がれるもと「殺人者」たる少年二人。閉ざされた館。
    こういうのがもっともっと読みたいのよー。とぼやいてみる。世間の需要に逆らっている気がするけど。もとめてるのですよ…。

  • 和歌山の山奥、湖畔にポツンと建つ洋館。そこに住むのは、血の繋がらない美貌の母娘と、彼女たちに仕える使用人――。
    ここまで読んで、「ああ、誰か死ぬな」と思わなかった読者は、ミステリー経験値がまだ足りない。

    ご安心いただきたい。本書は読者の期待を裏切らない。きっちり死体は出る。しかも朝一番、湖に浮かぶボートの上で、というサービス付きである。風光明媚と物騒は両立するのだ。

    とはいえ、この物語の不穏さは事件以前からすでに満ちている。むしろ「なぜこんな状況になっているのか」のほうが、よほど気になる。

    主人公は施設育ちの内気な少年・博人。大学進学の援助と引き換えに、同い年の樋野とともに、この“陸の孤島”のような屋敷で働き始める。――この時点で怪しさ満点だが、さらに拍車がかかる。

    屋敷の主・光林はなぜ見ず知らずの少年を援助するのか。
    なぜ妻と娘をこんな山奥に閉じ込めるのか。
    なぜ娘を学校に通わせないのか。

    少し考えただけで疑問が渋滞を起こす。もはや「考えないほうが楽」なレベルである。

    登場人物も負けていない。
    妻・琴子と使用人・中瀬はしっかり不倫関係。こういう閉鎖空間では“あるある”だが、だからといって安心材料にはならない。むしろ危険信号である。

    娘・小夜の家庭教師コウは、琴子の幼馴染で片想い中。ここに来て三角関係、いや四角関係の気配すら漂う。加えて住み込みの登美と通いの弥生。人が増えれば増えるほど、疑いも比例して増えるのがミステリーのお約束だ。

    そして少年側も一筋縄ではいかない。
    樋野は、少女五人を惨殺した父を持つという、設定だけで重たい過去を背負っている。「自分にも同じ血が流れているのではないか」という悩みつきだ。重い。とにかく重い。

    一方の博人も、施設で兄妹のように育った奈緒の不審死に関わった疑いを持たれている。主人公がすでに“疑われた経験あり”というのも、なかなか攻めている設定である。

    ――と、ここまで来てようやく事件が本格化する。
    中瀬が湖のボートで死体となって発見される。犯人不明。いつもの展開である。だが、この屋敷では「いつもの」が一番信用できない。

    さらに、小夜のそばにいたクレートデンの桃子が失踪。
    もはや「誰もいなくなるまでやる気か」と思いたくなるが、物語はむしろここからが本番だ。

    ただし、本書を単なる犯人探しとして読むと、少し肩透かしを食らうかもしれない。作者の関心はどうやら別のところにある。そう、男女の愛憎である。しかもかなり粘度の高いやつだ。

    そのヒントがタイトル『薔薇を拒む』にある。
    タイトルは大抵の場合、作者からのヒントである。時にヒントが過ぎて答えになっていることもあるが、本作は“分かりにくいヒント”の部類だ。

    作中に登場するフランスの古い詩「澄んだ泉で」。その一節が鍵を握る。

    ――恋人にふさわしくないと思い、薔薇を贈ることを拒んだ《僕》。

    赤い薔薇は、言うまでもなく情熱の象徴である。それを差し出さなかったのは、愛が足りなかったからではない。むしろ逆だ。「自分にはその資格がない」と思ったからだ。

    この屈折こそが、本作の核心にある。

    事件から十数年後、博人の心境はこの詩に重なる。内気で人付き合いを避ける青年――かと思いきや、その実態は案外打算的で、俗っぽい。人は見かけによらないし、自己認識はだいたい当てにならない。

    結局のところ、この物語でいちばん怖いのは殺人ではない。
    人が人をどう思い、どう値踏みし、どう諦めるか――その過程である。

    薔薇を差し出すか、拒むか。
    たったそれだけの違いが、取り返しのつかない距離を生むのだ。

  • 事件の真相を究明する部分よりも、主人公の青年の心情に焦点が当てられている。ラストの状況が一番のミステリで、全体を通してなぜこうなったかを丁寧に書いているような印象。

  • 交通の弁が悪い別荘地に身寄りの無いイケメンの若者2人が呼ばれた。そこには可愛い女の子と母親と男性家庭教師、執事、料理人庭師などが居て、絶対に何かが起こるであろうというシチュエーション。そこで起こった殺人事件。最後には、イケメン若者が手に入れたものは…中々面白かった。

  • 読んでいて苦しくなる作品
    主人公の良い子だけど打算的で傷つきたくない心情が事細かに伝わってくる
    でもあの流れで結局小夜は薫のこと本気で好きだったってこと??そこだけが疑問…

  • 「シェフは名探偵」というドラマが好きで、原作者からこの本に出会いました。

    もう一度読むかと言われるとそうでもないですが、映像化されても面白いだろうなと思いました。
    内容的には、そうかな〜とある程度予想がつくのですが、最後まで読むとじんわり胃が重たくなります。
    読了後、一度本を閉じて深呼吸しました。

    登場人物の過去や想いが、山荘の風景と共に綺麗に描かれています。少しずつ見えてくる様と描写のマッチングは好きです。

    今度はドラマの原作である、短編集3冊を読みたいと思います。

  • 薔薇を拒む
    近藤史恵さん。

    最後まで、
    どうなるのか?わからず、
    読み進められた。

    おもしろかった。

  • サクサクと読みやすいミステリー。両親のいない2人の美少年が「大学へ行くための学費と生活費を出す」という条件と引き換えに住み込んだ家。そこには美しい母子と数人の使用人がいた。続けて起こる殺人事件(未遂も)、なぜ2人の美少年が選ばれ、この家に呼ばれたのか。図書室まである館で起こる謎だらけの事件。ドラマ化したらきっと美しい映像になりそう。

  • 生い立ち、育った環境で形成された性格って変えることは出来ないのかな?

  • なんというか…なんだか不思議な話だった…



    身寄りがなく施設育ちの博人は施設に所長から「3年間住み込みで働けばその後の生活費と大学のお金は出してくれる人がいる」という話に乗り、山奥の陸の孤島の別荘へ向かった。屋敷には雇い主の妻と娘の小夜、それから数人の使用人がおり、博人は同い年の樋野と一緒に仕事に励んだ。 
    しかし、そんな穏やかな日々にある事件が舞い込む。そして、それと同時に博人と樋野と小夜の関係も少しずつ変化が起こってきて…


    なんとも言えない。完全に弱者な博人と樋野。人にはあまり大きな声で言えない秘密がある2人は、完全に弱者だしそれを弄ぶ権利はないはずだよね。まぁ、あの家族が少し歪んでいるってことなのかな?


    しかし、博人もまた同じような人種だったのかなぁ。最後、ちょっと読めた気もしたけどゾッとした。誰も幸せになれないってこういうことかーとも思ったわ。


    2020.1.22 読了

  • 少年少女時代とは、瑞々しくて繊細でどこか非現実的なもの。事件の顛末はどうということはなかったが、博人も結局は己が青春と心中したようなもんだ。一番手にしたかった薔薇を自ら拒んだこの結末。真の愛なのか、或いは復讐か…?何れにしろ、あまりに哀し過ぎる。

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著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。1993年『凍える島』で「鮎川哲也賞」を受賞し、デビュー。2008年『サクリファイス』で、「大藪春彦賞」を受賞。「ビストロ・パ・マル」シリーズをはじめ、『おはようおかえり』『たまごの旅人』『夜の向こうの蛹たち』『ときどき旅に出るカフェ』『スーツケースの半分は』『岩窟姫』『三つの名を持つ犬』『ホテル・カイザリン』等、多数発表する。

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