新装版 落日の宴 勘定奉行川路聖謨(上) (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062778527

作品紹介・あらすじ

幕末期、軽輩の身ながら明晰さと人柄で勘定奉行まで登り詰め、開国を迫るロシア使節プチャーチンと堂々と渡り合った川路聖謨の生涯。

感想・レビュー・書評

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  • 主人公は川路聖謨。川路は幕末の幕府官僚であり、最高の地位である勘定奉行に上り詰めた人物。高邁・清貧、知的でそのくせユーモアのセンスも抜群な有能な人物だった。その彼の大仕事が、ロシアとの和親条約及び修好通商条約の締結。ロシア大使プチャーチンを相手に一歩も引かぬ姿勢は、当時の鎖国情勢の中でも情報収集に努めていたこと、そして開明的な発想と、上記の人格故。厳しい交渉をしつつもプチャーチンに尊敬された。川路聖謨というと、私には、手塚の漫画「陽だまりの樹」で漢方医と激しく対立しつつ種痘所を江戸に作ろうという主人公たちの側に大きな支援をした人物という認識だった。こんな有能な人がいたのかというのが驚き。しかしほんとかよ?と思ってしまうのがロシア人たちの凶暴性で、ある日フランス捕鯨船が日本に来た時に、役人たちが鎖国故追い払うと、血相を変えて怒り出す。ロシア人は安政の大地震による津波で船が壊れていたのだが、フランス船を拿捕、乗組員を殺し、乗っ取ろうとしていたという。川路たちも得体がしれなかったことだろう。

  • 幕末のロシア使節プチャーチンとの交渉記録を丹念に。
    そんな交渉の場、下田で大地震・大津波があったことを知る。
    いつか下田に行って見たいし、ここに出てきた町を自転車で巡って見たい。

    交渉の詳細、外交官気質(当時はそういうものはなかったでしょうが)みたいなものが克明に記述されていて、自分とはまったく違うので、ひたすら感服。

  • 当時の外交術を学ぶべきではないだろうか?

  • 記録文学とは、こういうものかとの思いで読み進んだ。
    幕末時代は、とかく倒幕側の人物ばかりに焦点が当たりがちだが、幕府側にも、その崩れかかる屋台骨を何とか支えたいと必死の思いで誠心努力する、優秀な幕吏がおり、もっと光を当てるべき人材がいるのではないか。
    本作品の主人公川路聖謨は、その筆頭たる人物と言っていい。
    著者吉村昭が、彼を取り上げたのは、そのその豊かな人間性とともに、彼の中に、著者自身とも相照らす資質を見出したからではないか。
    条約交渉をめぐる談判。この交渉経過を詳細に記した著者の取材の綿密さに、改めて畏敬の念を抱いた。
    このような歴史上の偉大な人物に巡り会えることが、読書の喜びであり、醍醐味ともいえる。

  • 勘定奉行 川路聖謨の生涯にわたる話である。幕末に生を受け、半生を主に日露和親条約の取り交わしの命を完うするためにプチャーチンらと命を厭わずに懸命に交渉を重ね、幕政に尽くした人物である。その人格は高く、今の外交官の模範となる静謐さと沈着冷静な判断力と物事の先を見抜く力を持った役人であった。これまでの吉村昭の小説の中で最も影響を受けた人物の一人である。墓所は、上野池之端の大正寺にある。

  • 江戸幕府に交易と北辺の国境策定を迫るロシア使節のプチャーチンに一歩も譲らず、領土問題にあたっても誠実な粘り強さで主張を貫いて欧米列強の植民地支配から日本を守り抜いた川路聖謨。軽輩の身ながら勘定奉行に登りつめて国の行く末を占う折衝を任された川路に、幕吏の高い見識と豊かな人間味が光る。(親本は1996年刊、1999年文庫化、2014年新装版)

    本書は、勘定奉行としての川路聖謨の事績を小説化したものである。内容の大半を、プチャーチンとの交渉が占める。幕末にロシア使節、プチャーチンが来航した事は知っていたが、どの様な交渉が行われていたのか、イマイチわからなかった。
    本書を読むと、幕臣たちが幕末の外交交渉に苦心したことがわかる。国力の著しく劣る日本が、ネゴシエートにより、言うべきことは言い、妥協点を見出していく様は、読んでいて外交官になった気分(爽快感は無いが達成感はある)になる。
    当時の史料として、川路の日記(東洋文庫から刊)があるが、取っつきにくい。事前に、本書を読んで置くと、理解が深まるのではないか。そういった意味でもオススメの一冊である。

  •  幕末、日本が諸外国から開国を迫られた頃、ロシアのプチャーチンと、開港・通商・領土についての交渉をした勘定奉行・川路聖謨(としあきら)の存在の大きさを知った。
     明らかに軍備、近代化の遅れを目にしながらも、屈せず、粘り強い交渉力、そして人柄が豊か。才能ある者は身分に関わりなく、埋もれず出てくる養子制度が、努力を絶え間なく続けていくような、偉人を生み出していったのだろう。通史と呼ばれている通訳の実力も凄い。
     長崎か交渉舞台が下田となり、この交渉中に起きた安政大地震の甚大な被害など、グングンと内容に引き込まれていく。世界遺産となった韮山反射炉はこの地震に耐え得ていたり、冬の強い海風、戸田村でのロシア船修復など、沼津出身の私にとって、情景が浮かんでくる作品だった。
     

  • 幕末の嘉永~安政年間、ペリー率いるアメリカの黒船来航と同じ頃、開港を迫るロシアのプチャーチンと交渉し渡り合った勘定奉行川路聖謨の物語。
    主張することは主張しつつ、人間的にロシア側から尊敬を受ける。写真のエピソードは面白いですね。
    交渉の場、下田も襲った安政大地震。沈没寸前のディアナ号を巡る駆け引き。ほとんど地の文で物語が進みますが、読みやすく緊迫感も伝わってきます。
    ただ川路の伝記ではなく、間宮林蔵や渡辺崋山との繋がりにあまり触れられていないのが、ちょっと残念です。

  • (感想は下巻にまとめて書きます)

  • 江戸末期の勘定奉行であった川路としあきらについての小説。
    吉村昭作品には幕末の人物を書いたものが多く、川路はその中でも世間一般にはあまり知られていない人物であるが、ロシアの外交使節との交渉は本当に見事であり、一仕事人としての心意気が感じられる。

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著者プロフィール

吉村 昭(よしむら あきら)
1927年5月1日 - 2006年7月31日
東京日暮里生まれ。学習院大学中退。在学中、大学の文芸部で知り合った津村節子と結婚。
1966年『星への旅』で太宰治賞、1972年『深海の使者』で文藝春秋読者賞、1973年『戦艦武蔵』『関東大震災』など一連のドキュメント作品で第21回菊池寛賞、1979年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、1985年『冷い夏、熱い夏』で毎日芸術賞、同年『破獄』で讀賣文学賞および芸術選奨文部大臣賞、1987年日本芸術院賞、1994年『天狗争乱』で大佛次郎賞をそれぞれ受賞。吉川英治文学賞、オール読物新人賞、大宅壮一ノンフィクション賞、新田次郎文学賞、太宰治賞、大佛次郎賞などの選考委員も務めた。
徹底した資料調査・関係者インタビューを背景にした戦史小説・ノンフィクションで、極めて高い評価を得ている。上記受賞作のほか、三毛別羆事件を題材にした『羆嵐』が熊害が起こるたび注目され、代表作の一つとみなされる。『三陸海岸大津波』は2011年の東日本大震災によって注目を集め再評価を受け、ベストセラーとなった。

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