ミッドウェイ (講談社文庫)

  • 講談社 (2014年7月15日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (640ページ) / ISBN・EAN: 9784062778732

作品紹介・あらすじ

戦争へと突き進む時局に押され、憧れの女性への思慕も個人の夢も捨て去り、戦闘機乗りに身を投じた日米の若者たち。爆撃を受け火だるまになる空母、次々と飛び立つ戦闘機。はからずも同じ女性の影を追っていたとも知らずに、降旗とロバート、それぞれの想いがミッドウェイの空に交錯する……。太平洋戦争の分岐点となった激戦ミッドウェイ海戦に正面から取り組んだ、著者渾身の戦記小説。


詩人になりたかった降旗圭は、戦時へと突き進む時局に背中を押されるように、江田島の海軍兵学校に進んだ。軍人の世を憎み、彼に詩の話をしてくれた憧れの女性弓枝は、特高に捕らわれ死を選んだ。海軍将校への世間の憧れとは裏腹に、鉄拳で鋳型にはめられる日々。降旗はそれに耐え抜き、零戦パイロットになるべく霞ヶ浦航空隊へ進む。
サンフランシスコのロバート・ウッドは、日本人女性の寛子に心奪われる。だが、二人を引き裂くように、寛子の一家は日本に帰国することになった。弓枝と面影の似た寛子と、降旗は休暇中の横浜で出会い、出撃前の束の間、二人は恋仲となった。そして寛子を自家用機に載せたことのあるロバートもまた、戦闘機乗りへの道を選んでいた。
ハワイ真珠湾攻撃以降、戦局を優勢にすすめていた日本海軍は、レーダー網のない虚を衝かれて、本土空襲を浴びる。日本の空軍力を目の当たりにし、アメリカは戦艦から空母への転換を急ぎ進めていた。初の空母同士の対決となった珊瑚海海戦を経て、日本海軍はアメリカ太平洋艦隊を叩くため、ミッドウェイ沖に空母四隻を進めた。
だが序盤の戦いで蒼龍、加賀、赤城を次々に失い、空母は飛龍を残すのみとなった日本海軍は、手負いの空母ヨークタウンに狙いを定め、零戦や爆撃機を発進させるのだった。
飛龍の零戦部隊には降旗が、ヨークタウンの戦闘機にはロバートが生き残っていた。同じ女性と出会った互いのことなど知らない日米の若い戦闘機乗りは、両軍死力を尽くした戦闘の空に身を投じるほかなかった……。
太平洋戦争の戦火の中に散っていった若者たちの夢。迫真の戦記小説。

みんなの感想まとめ

戦争の激動の中で、夢や恋愛が試される若者たちの姿が描かれています。詩人を志して海軍兵学校に進む降旗圭、アメリカのロバート・ウッド、そして彼らが思いを寄せる女性寛子。この三人の関係が、太平洋戦争の分岐点...

感想・レビュー・書評

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  • いまいち
    ちょっと期待しすぎた(笑)
    ミッドウェイ海戦をベースに、その時代の男女の悲哀や人間模様、ヒューマンドラマが語られる鉄板ストーリと思いきや、登場人物の人物描写が今一つで、単なる戦争史を臨場感満載でなぞった物語のように感じました。

    ストーリとしては、
    詩人を志しながら海軍兵学校に進学しゼロ戦パイロットになった降籏。
    降籏が憎む爆撃機パイロットの大山。
    アメリカのグラマンパイロットのロバート。
    3人が一人の女性寛子をめぐり、戦争の中でどうなる?
    最後は守るべき人のために!
    みたいな鉄板ストーリを期待していましたが、残念ながら、その展開は薄かった。
    もっと、人物を掘り下げて描いてほしかったところです。
    登場人物たちに感情移入ができません。

    一方で、真珠湾攻撃からミッドウェイ海戦にいたる戦争史については、詳細に描かれています。
    当時の日本海軍の考え方。真珠湾攻撃に対するルーズベルトの思惑など、史実や様々な諸説をベースとして描かれています。そして、臨場感満載の戦闘シーン。特に後半のミッドウェイ海戦については圧巻です
    そして、残された一遍の詩
    といった展開。

    とはいえ、戦争の悲劇、逝った人々の想い、そして託された私たち。はしっかりと伝わってきた物語でした。

  • ロシアの侵攻と読んだ時期が重なったが、80年前と変わってない人間の悲しさが辛かった。人間の歴史は、戦いの歴史と言われるのがよく解った。歴史に反して生きたい。

  • 森村誠一氏の作品は、どちらかというと選ぶ対象外であった。多分、あまりにもステレオタイプの情報に染まっていたのかもしれない。偶然に書店の本棚で本書と出会えて刮目せざるを得ないというのが正直な印象である。
    大して先の大戦の戦史を知るわけではないが、先の大戦に突入する大いなるきっかけは、開戦を望む軍部(どちらかといえばカーキ色の印象)により既成事実を積み上げられ、アメリカとの開戦に追い詰められた帝国海軍が最善の戦略として真珠湾攻撃を敢行、アメリカとの全面戦争に突入したと記憶していた。山本五十六元帥は、アメリカとの工業生産力や資源量さらには人的な面からも差異が大きく短期決戦ならばと、決断に踏み切ったと理解しており、本書にも随所にその記述がある。しかし、終結のあり様を強くイメージした開戦でないことは開戦後の折々の判断が正しくなかつたことからも見てとれる。イメージの共有が足りなかったことから事象の重さが個人に委ねられそれがミッドウェイの敗戦へと収束していく。しかし、その敗戦は煎じつめれば組織の敗戦と読み替えてみたほうがいい。
    敵である合衆国の力量を低く見積り、情報収集を軽んじた慢心、自らの攻撃の本質を見誤り、現場に混乱を出来させた指揮官の不見識、リスクを適切に見積り対応策を講じることを怠った慢心、トップに適切な具申出来る人材の不在。そのまま今日の組織論に通ずる教訓が満載である。
    森村氏は、物語の中に淡々とこの事実を織り込み劣勢な合衆国が天下分け目の決戦に勝利した必然を浮き彫りにする。
    帝国海軍将官は、ともすれば白の軍服のイメージからかシーマンシップ溢れた傑出した人物として描かれ、戦さ場にあっても平静であるようなイメージを持ってしまうが、実際の現場での混乱を想像するにつけ、その偶像には懐疑的にならざるを得ない。本質でも指摘がある様に江田島にある海軍兵学校での徹底的な上意下達の鋳型教育により画一的で合理性に富む兵隊は出来たがリーダーがもつべき柔軟性については甚だ乏しいのが帝国海軍の本質である。
    本書は、一方で国家総力戦に巻き込まれていく、日米で複雑に邂逅する若き男女を描くことにより、戦争の本質に鋭く切り込む。兵である以上は死が日常的に存在する現場に在り、上官は必死に至る作戦を国家存亡のもとに部下に下命する。その不条理もまた、戦争の本質であることを抑えた筆致で描きだす。

  • 第二次世界大戦。パールハーバーの追撃を果たすべく、ミッドウェイ諸島での海戦を仕掛け、戦艦大和を活かすことなく惨敗を喫した戦いで錯綜する、4人の人生。

    まずはじめに断っておきますが、ワタクシは第二次大戦物が大嫌いでありまして、ここんとこ毎年毎年NHKの朝ドラで見せられるのにも辟易しているわけです。理由は2つ。

    その1つは「戦争は悪いものだ」というメッセージを露骨に隠さない話であること。もう1つが「敵は誰かわからない」である。2つ目は解説すると、敵は宇宙人か何かのように、心も戦略も持たず、ひたすら物量と神出鬼没で主人公を殺しにかかり、ホラー映画やシューティングゲームのような気分にさせられること。

    この作品もそのままでございます。だから☆1。

    日本人の中川寛子を巡って、降旗、ロバート、大山という3人が一応のドラマを繰り広げるわけだが、メインである降旗が詩が好きという設定は序盤以外ほぼ生かされず、あとの2人および中川寛子に至っては、人間として描かれていない。

    他の部分に文字を使わなければならなかったのだろう?と言われればそうなのかもしれないが、そこに毎章現れるのが「人間の心を殺す軍隊」「普通の人間を凶暴にして街でも傍若無人に走らせる国粋主義」というものが、オブラートに包まれることが一つもなく、くどくどくどくどくどくどくどくど書かれるのである。

    「戦時中は手紙も検閲され、自由な発言はできなかった」なんて書いているが、この小説も『悪魔の飽食』同様に赤旗に書いていたのかもしれないが、「人非人の集まり軍隊」「鬼畜アメリカ」というテーマに固定された価値観に固まっており、読んでいてめんどくさいし面白くない。

    確かに、ミッドウェー海戦の敗因を考察したり、展開を時間ごとに確認したりと、歴史的な考察はされているし、そもそも森村氏自身がミッドウェイに、日本側からの思い入れがあるようで、そのあたりは面白かった。しかし、いずれにせよ例に漏れず、人対人でない宇宙人との戦いでも見ているようで、何の感慨もないまま読み終わってしまった。

    ちなみに、第二次大戦物が嫌いだと書いたが、それは日本側に思い入れの強すぎる、ヒーローを描いた作品も同様で嫌いである。それらにしても、結局は反戦を全面に出しているものと、ほぼ同じ様な2つの点で好きになれない。

    結局「ああ、こういうの嫌いだったわ」と思わせられただけの作品であった。

  • 国境を越えた男女の愛が、時代に翻弄され、やがてたどる皮肉な運命。戦時中ゆえに愛も夢もあきらめなければならなかった悲劇の青春を描いた物語¨かと思ったら、実はがちがちの戦争史でした。
     資料を入念に読みこんで書かれているので、ミッドウェイ海戦に関わるくだりはほぼ事実。ものすごい迫力である。こんな恐ろしいことがあの美しい海の上で繰り広げられていたのかとぞっとする。まるで映画かゲームだ。恐ろしい反面、かっこいいと錯覚さえしてしまう。
     1942年6月5日、パールハーバー以降負け知らずだった最強の日本海軍が陥落した日だ。当時は日本の零戦に勝る戦闘機は存在せず、日本有利とされていた。なのになぜミッドウェイ海戦に敗れてしまったのか。
    歴史にもしもはないけれど、世界最強といわれた戦艦大和が参戦していれば,戦況は違った結果になったでしょう。大和は通信設備も充実していたので、米空母がミッドウェイで待ち伏せしていたことを傍受していたという。一緒にいれば前線空母4隻とともに迎え撃つ作戦をたてられたのに…。あるいはもし大和が「敵航空機行動中」と危険をちゃんと前線に伝えていれば、一度に空母4隻と優秀な飛行機乗り三百数十名も失うことはなかったのに…。負けるはずがないと思う大和の参謀たちの驕りが優秀で健気な若者たちを死に至らしめ、その後の日本を地獄の戦争へと突入させてしまった。
     空中戦はお互いの血を見ることも少ないし、ある種ゲームかスポーツのような感覚に陥りがちだ。零戦飛行士は英雄で、少女たちはみな海軍兵に憧れの目を向けた。しかし戦争はそんな美しいものではない。生きてこその人生。戦争なんて二度とやってはいけない。

  • 戦雲急な時代、詩人を志しながら海軍兵学校へと進み世界最強の零戦搭乗員になった降旗(ふるはた)。日米開戦は同じ女性を愛したロバートと降旗を敵味方に分けた。戦争は若者の恋も青春の夢も容赦なく叩きつぶす。彼らは何のために生き、何のために死んだのか。ミッドウェイ海戦に命を賭けた防人たちを描く鎮魂の大作。

  • P603
    戦争については、分かりやすいが、偶然が出来過ぎ。

  • たかだか80年前の話なのに、この国はなんでこんなに変わってしまったのだろう。今の時代の感覚では理解出来ない思考が多く、小説的な誘導や解説がなければ、登場人物の心情に入り込みない所があった。昔学生時代に知覧にある特攻記念館に行ったことがあるがその時は同世代の特攻隊員達が書いた遺書に圧倒された。今は親の立場で読んでいるが、文中に出てくる与謝野晶子の君死にたまふことなかれの詩に激しく同感した。

  • およそ短期間にここまで価値観が変わった国は珍しいな。
    現代の生活からはまったく想像できない考え方と生活です。
    そんなに昔のことでないのが信じられません。

  • 太平洋戦争開戦前からミッドウェー海戦までの時代を背景に架空の主人公の生き様を描いた小説です。書名から戦史物と一見思われますが、どちらかといえば「永遠の0」のような史実を舞台にしたフィクションです。詩を愛する青年が時代のうねりの中で海軍士官学校に進み、戦闘機の搭乗員となって戦場に送り出されてゆく…。その戦場で、自らが愛した女性と関わりのある米軍パイロットとの遭遇。
    開戦前の次第に言論を統制されてゆく息が詰まりそうな時代背景や海軍士官学校での訓練の日々など当時の青年が自らの夢を捨てさざるを得ない時代背景などがより重苦しく伝わってきます。史実に基づく戦記物としての部分と、主人公の生き様を描く人間模様としての部分のバランスが絶妙で、600ページに及ぶ大作ですが「永遠の0」に共感できた方なら十分に浸れる作品だと思います。

  • 戦場を舞台とした小説で、タイトルから史実の再現を想像するかもしれないが、若者の生きる様を生々しくえがかれた、多くの読み手を惹きつける小説と思う。

    永遠の0に似ていると感じた点は少しあるものの、戦時中の若者を、戦争というものを、多方面から見るような構成は、右翼左翼などを感じさせず、ただただ描かれた世界観に没頭することができる、とても面白い小説です。

    登場人物は著者が生み出した人物ではあるものの、多くの資料に支えられた世界観は、この書籍自体が一つの資料としてもその存在価値を輝かせている。ストーリー仕立てである分、こちらの方が戦争の流れを把握しやすいのではと思うほど。

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著者プロフィール

森村誠一
1933年1月2日、埼玉県熊谷市生まれ。ホテルのフロントマンを勤めるかたわら執筆を始め、ビジネススクールの講師に転職後もビジネス書や小説を出版。1970年に初めての本格ミステリー『高層の死角』で第15回江戸川乱歩賞を受賞、翌年『新幹線殺人事件』がベストセラーになる。1973年『腐触の構造』で第26回日本推理作家協会賞受賞。小説と映画のメディアミックスとして注目された『人間の証明』では、初めて棟居刑事が登場する。2004年に第7回日本ミステリー文学大賞受賞、2011年吉川英治文学賞受賞など、文字通り日本のミステリー界の第一人者であるだけでなく、1981年には旧日本軍第731部隊の実態を明らかにした『悪魔の飽食』を刊行するなど、社会的発言も疎かにしていない。

「2021年 『棟居刑事と七つの事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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