ジェントルマン (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 41
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062778756

作品紹介・あらすじ

眉目秀麗、文武両道にして完璧な優しさを持つ青年、漱太郎。しかしある嵐の日、同級生の夢生はその悪魔のような本性を垣間見る――。天性のエゴイストの善悪も弁えぬ振る舞いに魅入られた夢生は、漱太郎の罪を知るただ一人の存在として、彼を愛し守り抜くと誓う。切なくも残酷な究極のピカレスク恋愛小説。

感想・レビュー・書評

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  • 息つく暇もなく一気に読んでしまった。途中でやめることがなぜか出来なかった。

    漱太郎は人の姿をした悪魔だ。究極のエゴイスト。無邪気に残酷なことをする。けれども普段は世間体を身につけて、眉目秀麗、文武両道、誰にでも優しく親切なのだ。
    そんなある時、彼の悪事を目の当たりにしたゲイの夢生は恋に落ちる。彼に惹かれ共犯者となり、圧倒的な支配下に身を置くことになる。

    何十年も恋心を残酷に扱われていた夢生も気の毒(でもそれは自らそうしているので)だけど、シゲのことがほんとうに可哀想でショックで。
    今は、すごい小説読んでしまったと改めて思っている。

  • 漱太郎の数々の卑劣な行為は女として到底受け入れがたく、嫌悪感だけが残った。彼を愛する男、夢生も翻弄され終には破綻してしまう。そして彼らに深くかかわる二人の女は一見脇役であるように思えたが、終盤クライマックスでその存在の凄みを知ることになる。哀しくて残酷で、滑稽で、まぎれもない悪夢なのだけど、沈美的で永遠の夢のようでもあって。。どちらかというと嫌な読後感の類。ただ、ここまで登場人物たちに感情移入できたのは、やはり作者の持つ魅力なんだと思う。例えば「人の行動に伏線なんかない。衝動しかないんだ。あと、運命しか…」こんな風にさらっと主人公に言わせる詠美節。相変わらず、洗練された文体は読み手の心と脳を大いに刺激してくれる。

  • 山田詠美は初読です。これまで下らない恋愛ジャンルの御方でしょ、と意味不明に毛嫌いしてた事を土下座してお詫びします。最凶に面白い。構成文章力ともに素晴らしい。ただラストが予想通りだったことだけが残念。自分の中には絶対に見つけられない(と信じたい)歪んだ愛の形が濃縮されている。最初はその物珍しさに魅了されただけであった筈なのに、読み進めてゆくうちに自分でも見に覚えのある単純な恋愛感情こそが主人公の行動理念だと思えてくる。うへぇ、と胸糞悪くなるけどわかるんだ。自分が大好きな人の一番でありたいの。

  • 残酷なまでに美しい悪魔のような男と、その悪魔に魅せられて愛し従属した男の話。震えました。あの衝撃のラストは彼らにとったらメリーバッドエンドなのだろうか。漱太郎もユメなら仕方ないねって笑いそうな気もする。笑って犯した罪を告白する漱太郎と、それを許して受け入れるユメはある意味共犯者であり、そこで二人は唯一無二の相手として分かり合える、それは遥かに肉体関係を持つ事よりも深く結ばれている事なのだ。 殆どプラトニックでありながら、どんな関係よりも狂っていて歪んでいて背徳的。 これでおまえ、俺の奴隷だな、ユメ?という漱太郎の言葉が淫美な悪魔の囁きのようで恐ろしい(けど個人的に大好き)。

  • うーん。
    なんとも言えないなぁ。
    何点かここは話が拡がるわけではなかったんだな~と思う事があったり…

    ???と思うことがあってページを戻って確認したりする作業も何度かあったな

    何でこの本が家にあるのか分からないけど(過去に購入したんだろうけど)自分で購入するようなジャンルではないから新鮮っちゃ新鮮…

    でもいつか読み直すことはないかな

  • 美しく妖しかった。
    最初の写真の話がもうインパクトあるので、山田さん自らが挿絵をつけたような感じがした。
    倫理観も良心もないのに、表面上完璧に見えるなんて怖すぎる。怪物。
    殺したことは誤算だったのか、もしくは殺した結果殺されることまで含めて希望通りだったのか、どうだろう。
    いつかもう一度読もう。

    • komoroさん
      確かに気になりますね。僕もいつかもう一度読んでみます。
      確かに気になりますね。僕もいつかもう一度読んでみます。
      2016/02/21
  • 大好きな山田詠美。
    美しい文章。美しすぎて、溜め息が出る。

    なのに、こんな終わり方はいやだ。
    私は、このお話に出てくる人がきらい。圭子のことも、夢生のことも、路美のことも。
    漱太郎のことは、もっときらい。

    いやだ、いやだと思いつつ、私は多分、この本が好きだ。
    好きよりも嫌いの方が、人を強く惹き付けるのかもね。


    「欲しがれば欲しがるほど逃げて行くものが、この世の中にはたくさんある。」
    本当にその通りで。
    欲しがるのを辞めれたら、もっと簡単になるのに。
    私が欲しくて欲しくてたまらないものは、いつの間にか遠くに行ってて、もう絶対に手に入らない。

  • 完璧な漱太郎の本性を唯一知るユメ。そしてユメの漱太郎への究極愛。同性愛、レイプとハードな中に純愛がしっかり全編に感じられる。
    シゲの恋に落ちた感情や、ユメの漱太郎への「自分だけに優しい人がいい」「そして、自分だけに冷たい人がいい」思い。
    ラストの圭子の大事にしてきた思いも…。
    誰にも言えない想い。切ない。

    • 9nanokaさん
      このお話、とっても気になっていました。
      ユメ…いい名前です(^^)
      過激な内容なんですね。
      自分だけに冷たい人がいい、の気持ちはわかる...
      このお話、とっても気になっていました。
      ユメ…いい名前です(^^)
      過激な内容なんですね。
      自分だけに冷たい人がいい、の気持ちはわかるようなわからないような…です。komoroさんはどう思われましたか?
      2014/10/13
    • komoroさん
      ユメは男ですよ。
      自分だけに冷たい人がいい。これは恋愛上級者か恋愛屈折者じゃないかな。
      でも、Mっ気ある場合も…。(笑)
      ユメは男ですよ。
      自分だけに冷たい人がいい。これは恋愛上級者か恋愛屈折者じゃないかな。
      でも、Mっ気ある場合も…。(笑)
      2014/10/16
    • 9nanokaさん
      ユメは男の人でしたか。
      同性愛はユメのことなんですね。
      Mっ気なら私にもあるかもしれません笑。
      ユメは男の人でしたか。
      同性愛はユメのことなんですね。
      Mっ気なら私にもあるかもしれません笑。
      2014/10/16
  • モラトリアム期の少年少女の描写が巧みな著者でも、それを持ち越しすぎた大人となると。愛は惜しみなく奪う、映画のサブタイトルが浮かんだ。愛は惜しみなく奪うものか与うものか。

  • 幸不幸の全てが恋のスパイスにされててヤバいわ

  • ラストの方は、なんだかホラー小説
    からのメリバ、、、。
    とはいえ、巧みな文章で、ぐーーーっと引き込まれての一気読み。

    実際にだれからもジェントルマンと言われる友人がいるが、そういう彼もどうしようもなく弱いところや、醜い部分がある。
    『紳士と呼ばれる奴もどこかにシミがあるものさ』と自論を持っているが、漱太郎のイカれっぷりは衝撃。それに寄り添うように生きるユメもイカれてる。
    その2人に関わる女性もやっぱり壊れてて、終盤は衝撃の人怖展開で驚愕した。
    ユメが華道・フラワーアーティストをやっていたのは、ラストの展開で納得。
    夢に生きるでユメ。名前も最後に納得。

  • なるほど、漱太郎のやばさとはそうゆうことか、と納得する場面も束の間、なんとBL展開。
    いや、私は女だしレイプ魔は許しちゃいけない存在だけど、漱太郎に恋する夢生のこともわからないでもなく。落ちのおかげでスッキリ。

  •  夢生は、漱太郎の悪魔のような一面に惹かれ、彼を愛し守り抜くと心に誓う。彼の罪を聞く自室を「懺悔室」と表現した。暗闇と罪の間にある美しさがとても良かった。山田詠美の文体でBLが読める幸せよ。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/683431

  • 同性愛、不毛で究極の片想い。
    山田詠美さんの今まで読んだ数作品はすごくダイナミックで繊細で形容しがたい感情にさせられたけど…。うーん、私が年をとったせいか、これは響かなかった。
    レイプをはじめ、サイコパス瀬太郎氏の犯した罪らが陳腐なファンタジーに読めてしまって…。完全犯罪みたいな流れだがいやいや痕跡残しまくりやろ。

    しかし、ユメの罪の象徴である鋏が、罪をおかした最愛の男へのギロチンになるとは…

  • 山田詠美作品はなんと30年ぶり
    美しい人に心奪われるのはわかるけど、でもでも登場人物の誰一人として共感できないわぁ

  • ラスト、鳥肌が立った、、、、。

  • レイプする朔太郎にも、それに加担する夢生にも理解ができなかった。
    夢生の朔太郎に抱く想いも、理解できるようなできないような。
    シゲと貴恵子のオルゴール聞いて幸せな時間過ごしてるのがほのぼのした。
    最後は衝撃だった。
    胸糞悪い内容もあるのに、ページめくる手が止まらなかった。やっぱり山田詠美さんはすごい人だな。でも再読はしないと思う。

  • 言葉を失うほど焦がれている相手を、殺すことで、永遠に結ばれると信じて疑わない夢生こそ罪の意識がなく、傲慢だ。
    自分ではない他の男を抱いたという事実に腹を立てたのか。それにしてもラストの夢生の行動がとても飛躍しすぎている気がして、冷めてしまった。血の海が小説の最後にふさわしいとは思えなかったからだ。

    主人公の誰にも感情移入ができなかったけれど、夢生や漱太郎の名前はしばらく頭から消えないだろう。そこがやはり山田詠美の凄いところだなと思う。

  • なんか途中からありきたりになっちゃって、奇をてらったのが逆に既視感、みたいな。飽きちゃった。

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著者プロフィール

1959年東京生まれ。85年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞受賞。87年『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞、89年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、91年『トラッシュ』で女流文学賞、96年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞、16年「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。他の著書『ぼくは勉強ができない』『姫君』『学問』『つみびと』『ファースト クラッシュ』『血も涙もある』他多数。



「2022年 『私のことだま漂流記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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