オリンピックの身代金(上) (講談社文庫)

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  • 講談社 (2014年11月14日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (480ページ) / ISBN・EAN: 9784062779661

作品紹介・あらすじ

小生、東京オリンピックのカイサイをボウガイします――兄の死を契機に、社会の底辺というべき過酷な労働現場を知った東大生・島崎国男。彼にとって、五輪開催に沸く東京は、富と繁栄を独占する諸悪の根源でしかなかった。爆破テロをほのめかし、国家に挑んだ青年の行き着く先は? 吉川英治文学賞受賞作

「東京だけが富と繁栄を享受するなんて、断じて許されないことです。誰かがそれを阻止しなければならない。ぼくに革命を起こす力はありませんが、それでも一矢報いるぐらいのことはできると思います。オリンピック開催を口実に、東京はますます特権的になろうとしています。それを黙って見ているわけにはいかない」――本文より――

みんなの感想まとめ

社会の底辺に生きる労働者たちと、華やかな東京オリンピックの対比を描いた本作は、主人公・島崎国男の葛藤を通じて、経済成長の影に潜む格差の問題を浮き彫りにします。兄の死をきっかけに、彼は労働現場の過酷さを...

感想・レビュー・書評

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  • 面白くなってきました~只時間軸がいったりきたりするのが少し戸惑ってしまいますが細かい描写なのでリアル感はありますが、描写が細かいのが苦手な人はキツいかもしれない…いよいよ下巻突入です、戦争からの復興のシンボルである東京五輪の中でのテロに興味MAXですので一気に読みたい。
    追記
    確かに『東京だけ…』が華やかに復興し他の地域は何も変わらないのに、浮き足だってるコトに一矢報いたくなる気持ちは想像できますね、その結果、現在の東京集中化になってることに繋がってるし、この状況はイイとは思えない…個人的には同意見です。

  • 単行本で読んだので感想は下巻に。

  • 再読。いよいよミラノ・コルティナ五輪が始まった。
    本作の舞台となった昭和39年は東海道新幹線の開通、東京オリンピックの開催という高度経済成長期の象徴とも言える年だ。私自身はこの時まだ生まれていないため、当時の社会の様子は映像でしか知ることが出来ないが、この作品は当時の新聞記事や世相を織り交ぜ、まるでその時代に立ち会っているかのような圧倒的な臨場感がある。高度経済成長期の光と影、東京の繁栄と地方から出稼ぎに来て使い捨てされる労働者の二極構造が分かりやすく描かれてもいる。印象的なのは「臭い」だ。飯場の汗、火薬の煙、昭和の街の排気ガス。昭和という時代を臭いで表現している点が更にリアリティを高めている。
    この作品を読むと私は2008年の北京オリンピックを想い起こす。当時北京には貧民街があったが、海外向けに北京の悪印象を与えないよう貧民街は強制撤去され、貧しい人々は北京から放逐された。東京オリンピックから40年以上経って北京でも同じことが行われたのだと感じ、国家の目標のためには弱者の犠牲は軽視され大きく報じられることもないという集団主義の危うさに背筋が寒くなる。
    現在の私たちの豊かさは高度経済成長期の先人たちの汗と涙の上に成り立ったものだと改めて認識させられる作品だ。

  • 奥田英朗『オリンピックの身代金 上』

    東京オリンピック開催前の昭和39年8月。
    秋田から出稼ぎに来ていた兄の死。
    そんな兄の死により、日雇い労働者の過酷な労働環境を知った、東大生・島崎国男。

    故郷・秋田、社会の底辺ともいうべき日雇い労働者たちと、オリンピック開催に沸く東京。その対象的な違いに、違和感を抱き始める国男…

    すべての悪は東京だと…

    そこまでしなくても…
    東大生であるのに。
    そのままで自分の未来は明るかったはずなのに。
    なぜ⁇
    なぜ⁇としか思えない。
    もっと他にやり方があったのではないか、東大生なんだから。
    やるせない。
    国男はどんどん堕ちていくのか…

    昭和39年、ちょうど60年前。
    まだ生まれていないが…
    こんなにも格差は大きかったのか。
    物心がついたころにはこんなに格差があるとは思えなかったが。



  • 高度経済成長期を実体験していない身としては、こうした光と影があることが意外だった。続きが楽しみ。

  • 前回の東京オリンピック開催前を描いていて、オリンピック主催に沸く当時の日本の国民全体での高揚感が読んでいて興味深かった。

    本作は犯人が最初から分かっているので、何故犯人が犯行に及んだかの経緯を追う形だが、その心理が丁寧に描かれており、当時の日本の貧富の格差を読むにつれ犯人の動機には納得してしまう。ただ薬物に手を出す辺りからあまり共感出来なくなった。

    後半がどのような展開になるのか楽しみだ。

  • プロレタリアートに敢えて飛び込んでいく青年の心理や時代背景がとても丁寧に描かれている。オリンピック景気に沸く人もいれば過酷な労働環境に身をおいている人、都市部と田舎の経済格差等々様々な視点から物語が進行していく。身代金を要求するに至るまで何があったのか、深くえぐっていくさまが刑事の目線だったり、伏線回収の匠さでどんどん引き込まれてあっという間に上巻読み終えてしまった。伊良部先生と同じ物語を書く人とはとても思えない(笑)

  • なかなか面白い。下巻に期待

  • 随所に1964年ごろの風景や文化が描かれる。知らない人にはSFのようで、知ってる人にはなんだかこそばゆい。

    東大大学院生島崎が恩師に宛てた手紙(327ページ)が、みょうに心打たれる。

    下巻で感想を書く。

  •  現代とは比べ物にならないほど多くの日本人が熱狂したであろう1964年の東京オリンピック。秋田の貧しい農村からの出稼ぎ労働者の実態や戦後間もない頃の格差社会、庶民の生活などすべてが未知の世界だったので大変興味深く読める。島崎国男はミスリードかと思っていたのに、どうやら普通に実行犯のようだ。個人的には古書店の娘・良子の章が当時の若い娘の生活と流行が肌で感じ取れる上、本編の息抜きにもなりとても楽しかった。国男の行く末が気になる。

  • 時系列がバラバラなので最初は一瞬戸惑うけれど、慣れてくるにつれ、ひとつの事象を複数の視点から描いているのがとても効果的。
    1964年の東京オリンピックを前に、草加次郎を名乗る爆弾魔がオリンピックを狙うというお話なのだけれど、そのバックグラウンドにある地方出身の人夫、格差、東京一極集中の経済などがきめ細かく描かれている。たった50年ほど前のことなのに、こんなにも日本は今と違っていたのかと、驚いてしまう。

  • 星4.5
    ちょうどパリオリンピック真っ只中のため、オリンピック関連の本をと思い、読み始める。
    1964年の東京オリンピックがどれほど日本の威信をかけたものか、全編にわたって描写される。そして、今では想像もできないほどの東北の貧しさも。
    これから、下巻を借りに行って来ます。

  • 随分と前に図書館で借りて読んでたけど
    『罪の轍が』を読んだら東京オリンピックの時代で、柳美里のJR上野駅公園口を思い出し
    この時代の作品を他にもと本作を思い出し購入
    事件が軸なんだけど時代背景とか
    ゴーギャンの『我々は〜 』を思い出した

  • タイトル、どういうことかと思ったけど、途中であぁそういうことか!と腑に落ちる瞬間が。
    時系列も順番に行ったり来たりするから、どう繋がるのかと思ったら上巻ラストでまた腑に落ちて。
    戦後日本の経済格差にびっくりするし、すごいリアリティ。
    頭が良ければ勉強できるけど、できなければ出稼ぎに行くしかない貧しい村。
    そんな格差への反発でオリンピックの開催で沸く東京の人たちへの脅迫。
    最初疑われた学生がどうしてそんな大それたこと?と思ったけど、読み進めると納得というかなるべくしてというか。
    下巻でどうなるか楽しみ

  • 東京オリンピックの時代の街並み、流行など当時の描写がリアルに描かれ、当時の様子を脳内で再生する面白みがあった。また、高度経済成長の背景には、低賃金で過酷な労働を強いられる出稼ぎ労働者、東京を発展させるためにないがしろにされる郊外の犠牲があったこと、見える部分のみを大事にする警察の黒い部分など、国の裏事情の描写が鮮明で、今の二極化社会、政府の国民に都合の悪い内容を隠す体制など今にも繋がる内容になっているように感じた。
    主人公がよくモテる。

  • 東京オリンピックを通して再興する戦後の日本が舞台ではあるものの、利権争いが蔓延る国家のあり方はついこないだの2020東京オリンピックの話と聞いても違和感がない。東京オリンピックが終わって続々と不正疑惑、汚職などのニュースが出てくる中で読んだため、日本も成長しないなあと他人事のような感想を抱いた。

    爆破事件を起こすことで、オリンピックで浮き彫りになる階級格差、地域格差な一矢を報いようとする主人公はびっくりするほど純粋で正義感が強く、なぜか嫌いになれない。

    出稼ぎの描写、これから衰退していく日本ではどんどんこういう家庭が増えていくのでは、、と怖くなった。

  • 奥田英朗を初めて読んだ本。
    この本めっちゃ面白いやん!

    その後伊良部シリーズのエンタメ性にもやられ、群集劇の「最悪・邪魔・無理」など、あれよあれよという間に20数冊を読了。
    奥田のおっさんの本は読みやすくっておもろすぎ~

  • 『罪の轍』、『リバー』に続いて奥田さん作品3作め。

    早い段階で犯人がわかります。
    頭脳明晰、容姿もよくて、性格も穏やか。そして、女性にモテる…。
    きっと将来も安泰なのに、どんどん道を踏み外していく彼が、どうなるのか夢中で読みました。
    彼は、自分に好意的な人を見抜いて、利用できるだけ利用する。そんな残酷な一面を持ちながらも、同じぐらい優しさも持っている。

    彼の運がどこまで続くのか…下巻も楽しみです。

  • よくオリンピックは「平和の祭典」って言葉を使われるけれど、多くの部分で権力の行使が蔓延ってることを体現した本だと思う。
    外国人には見せられない汚い部分を隠してるみたいなこと書いてあったと思うが、一昨年のオリンピックもやってること変わらないなと感じた。(オリンピックの選考会の時に、「東京は福島から遠いから放射能の心配はない」ってアピールしてたような記憶がある。)
    平和の祭典の裏に隠された闇を見せられた感じがしました。
    物語の構想もなかなか面白かったです。
    下巻もきっと一気読みでしょう。

  • 『オリンピックの身代金』上・下巻


    先日読んだ『罪の轍』にも登場していた
    警視庁捜査一課5係の面々

    数年前に読んだ
    『オリンピックの身代金』にも登場してたということなんだけど
    もの凄く面白かったという以外
    殆ど記憶に無かったので、意を決して再読


    本書も、文庫で上下巻
    新刊に至っては、2段組みの分厚いハードカバーだったなぁーと


    長い道のりに、少し腰が引けたけど…
    結果、再読して正解!


    えぇー!こんな結末だったっけー⁈

    私の記憶とは、こんなモンです…笑



    昭和39年10月10日に
    アジア初のオリンピック開催を控えた日本

    敗戦から約20年が経ち
    先進国の仲間入りが果たせると
    日本中が湧き上がる


    主人公である、島崎国雄は
    東京大学で、マルクス経済学を学ぶ大学院生

    ある日、秋田の貧村から
    東京に出稼ぎに来ていた兄の死の知らせを受け、両親に代わって身柄を引き取に行く


    別人のように変わり果てた姿の兄と対面し

    ただ勉強ができると言うだけで
    違う生き方をさせてもらっていたという現実に絶望を感じる


    地方から、出稼ぎをせざるを得ない
    プロレタリア層の実態を、体験すべく
    工事現場での過酷な肉体労働を始める


    全国から集められた、出稼ぎ労働者の中でも
    ヒエラルキーがあり
    賭博やヒロポンの売買が横行している

    最下層の労働者内ですら
    搾取が行われている現実を目の当たりにした国雄は

    「東京だけが、富を享受するなんて、断じて許せない」と
    オリンピック開催を阻むべく、一人テロ活動へと突き進む



    当時、鳴りを潜めていた爆弾魔「草加次郎」の名前を使い
    都内各所で、爆弾を仕掛けるも
    全く記事にも話題にもならず

    諸外国や、オリンピックムードに沸き立つ国内に対して
    報道規制が掛かってるコトに、更なる苛立ちを覚える

    公安、警視庁、全学連、やくざなど、全てを敵に回し
    運を味方につけて、緻密な計画を
    着々と実行していく国雄


    そんな中
    とても印象的だった、国雄の独白



    「いったいオリンピックの開催が決まってから、東京でどれだけの人夫が死んだのか
    ビルの建設現場で、橋や道路の工事で、次々と犠牲者を出していった
    新幹線の工事を入れれば、数百人に上回るだろう
    それは、東京を近代都市として取り繕うための、地方が差し出した生贄だ」



    なんともやり切れない気持ちにさせる



    オリンピック開会式当日
    2回目の身代金受け渡しから
    最後の爆弾を仕掛ける場面では
    手に汗握る、刑事との攻防戦


    勧善懲悪を嫌い、作品内では
    決して人を裁かないコトをポリシーとしてる著者らしい展開で

    登場人物全ての事情を、余すコトなく丁寧に描いている


    本書は、もちろん犯罪小説ではあるものの、細かい時代描写も秀逸


    刑事と公安の確執
    とか
    当時のBG(ビジネスガール)の生態
    とか
    地方と東京の激しい格差社会
    とか
    若い夫婦の文化的生活
    とか


    当時のカルチャーも、ふんだんに散りばめられているので
    どのシーンをとっても、充分に楽しめる



    2020年
    56年振りに、日本で開催される東京オリンピック

    個人的には、全く思い入れはありませんが
    開催直前に、本書を再読できたコトに関しては
    なかなか感慨深いモノがあるなーと




    #オリンピックの身代金
    #奥田英朗
    #読書好き

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著者プロフィール

おくだ・ひでお
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライターなどを経て1997年『ウランバーナの森』でデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞受賞。2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『最悪』、『イン・ザ・プール』、『マドンナ』、『ガール』、『サウスバウンド』、『無理』、『噂の女』、『我が家のヒミツ』、『ナオミとカナコ』、『向田理髪店』など。映像化作品も多数あり、コミカルな短篇から社会派長編までさまざまな作風で人気を博している。近著に『罪の轍』。

「2021年 『邪魔(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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