オリンピックの身代金(上) (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062779661

感想・レビュー・書評

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  • 東京オリンピック目前、過去に確かにあった街や人の空気を味わえる気持ち良さがある。
    なぜか一気に読めず推進力は弱かったが読書中の気持ちの昂りはかなりあった。

  • 島崎を止めることはでかなかだたのか

  • 物語の中には想像も出来ない日本、そして東京が登場する。
    「昭和」という時代は、まさに激動という表現が似合う時代だったのかもしれない。
    他国に負けまいと必死に背伸びし、勝ち目のない戦いを挑んで敗れ、それでも焼け野原の中から復興を果たした日本という国。
    その過渡期において、国民にとって大きな自信となったものがオリンピックだった・・・と物語を通して伝わってくる。
    昭和39年、東京オリンピック開催直前。
    爆破事件が起き、秘密裏に必死で警察は捜査を続ける。
    しかし、容疑者は特定出来たものの、何度も後一歩のところで逃げられてしまう。
    東大大学院に在籍する島崎は、亡くなった兄の代わりにオリンピック会場の工事現場で働くようになる。
    考えられないほどの格差社会がそこには存在した。
    たぶん奥田さんは綿密な取材のもとに小説を書かれたと思う。
    だとすると、物語の中に登場する多くの工事現場での死者や、立派な会場の陰で虐げられていた多くの人たちがいたことは現実にあったことなんだろう。
    国立競技場も日本武道館も、首都高速も代々木体育館も、すべてこの時に造られたのだと初めて知った。
    その国立競技場も、来るべきオリンピックに備えて全面的に造り直される。
    今までまったく知らなかった・・・知ろうともしなかった・・・過渡期の東京(日本)がこの物語の中にはある。
    とても不思議な感じがした。
    オリンピック開催に向かって急ピッチで進んでいた他の国の様子をみて、目に触れるところだけきれいにして・・・と笑ったりしていたけれど、前回のオリンピックではこの日本でも同じようなことが行われていたのだ。
    知らないということは恥ずかしいことだ。
    けっして他国のことなど笑えないというのに・・・。
    再び東京でオリンピックが開催される。
    当時のように日本国中を巻き込んだような熱気は、今の日本では無理かもしれない。
    きっと冷ややかに眺める人たちだっているだろう。
    けれど、それでもやはりオリンピックは特別なイベントであることに変わりはない。
    村田の島崎を思う気持ちが切ない。
    島崎の本当の目的は何だったのか。
    理不尽な社会(国)への怒りなのか、反逆なのか、哀しみなのか。
    もしかしたら島崎にも明確な答えはわからなかったのかもしれない。

  • 東京オリンピックを控えている今だからこそ、読むのがいいと思う。オリンピック開催が日本人にとって如何に大切なことだったか、日本がオリンピック開催が決まったことで戦争という苦い過去から一歩を踏み出したのか、などオリンピックがなかったら日本の発展が何十年かは遅れていたような気がする。それが良いことか悪いことかはわからないけど。

  • 複数の視点から時間が前後して進行していく構成が面白いし、作者の巧さだと思う。
    ラストは、島崎と村田のその後まで書いてほしかった。

  • 2015.12.9

  • 内容(「BOOK」データベースより)

    小生 東京オリンピックのカイサイをボウガイします―兄の死を契機に、社会の底辺ともいうべき過酷な労働現場を知った東大生・島崎国男。彼にとって、五輪開催に沸く東京は、富と繁栄を独占する諸悪の根源でしかなかった。爆破テロをほのめかし、国家に挑んだ青年の行き着く先は?吉川英治文学賞受賞作。

  • 素晴らしい作品です。☆5以外ありえない…んですが個人的好みで4。
    5年後に東京オリンピックを控えた今、読むタイミングは完璧でした!!

    東京オリンピック開催妨害と引き換えに、国家に身代金を要求する東大生・島崎国男。
    章ごとに変わる視点と場面で、社会の底辺と、繁栄する日本を思う存分に楽しむ東京の若者たちの対比が痛いくらいに表現されます。

    島崎を追う刑事たちも富を享受する側であり、貧困に窮する地方とは大きくかけ離れた生活を送っている様子が描かれていますが、彼らにその自覚は無く、この話では誰を憎めばいいのか……

    島崎の思いが国家に届くことが無いのなら、せめて身代金を無事受け取ってほしい、そんな思いで読み進めました。

  • 東大生がダークサイドに墜ちすぎ。
    オリンピックの裏で蠢く華やかさとは異なる深い人の闇が描かれていると思う。それが人間味のある。

  • 東京オリンピックを中心に据えた、戦後日本のテロリストサスペンス。
    犯人と、捜査陣や周辺人物の視点を交えて物語を進める構図が巧み。
    後者は事件初日から、前者はその約一ヶ月前から語りを始め、徐々に間がつまり、ラストのオリンピック開会式で交わる。おそらく著者の狙い通りの、緊迫感と疾走感の加速が味わえてよかった。
    ただ、テーマに据えてる戦後日本のプロレタリアートに対するオチが、見当たらないのが気に少しなる。
    3+

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著者プロフィール

おくだ・ひでお
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライターなどを経て1997年『ウランバーナの森』でデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞受賞。2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『最悪』、『イン・ザ・プール』、『マドンナ』、『ガール』、『サウスバウンド』、『無理』、『噂の女』、『我が家のヒミツ』、『ナオミとカナコ』、『向田理髪店』など。映像化作品も多数あり、コミカルな短篇から社会派長編までさまざまな作風で人気を博している。近著に『罪の轍』。

「2021年 『邪魔(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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