オリンピックの身代金(下) (講談社文庫)

  • 講談社 (2014年11月14日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (432ページ) / ISBN・EAN: 9784062779678

作品紹介・あらすじ

要求金額は八千万円。人質は東京オリンピックだ――五輪開催を妨害すると宣言していた連続爆破事件の犯人、東大生・島崎国男が動き出した。国家の名誉と警察の威信をかけ、島崎逮捕に死力を尽くす捜査陣。息詰まる攻防の末、開会式当日の国立競技場を舞台に、最後の闘いが始まった! 吉川英治文学賞受賞作

いったいオリンピックが決まってから、東京でどれだけの人夫が死んだのか。ビルの建設現場で、橋や道路の工事で、次々と犠牲者を出していった。新幹線の工事を入れれば数百人に上るだろう。それは東京を近代都市として取り繕うための、地方が差し出した生贄だ。
――本文より――

みんなの感想まとめ

社会の繁栄の裏側に潜む人々の苦悩を描いた物語は、東京オリンピックを舞台にした緊迫感あふれるストーリーです。主人公の島崎国男は、エリートとしての未来を捨て、故郷の貧困に目を向けることで反逆心を抱きます。...

感想・レビュー・書評

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  • 図書館で借りて10日かけて読み終わった。最近読んだ本の中ではなかなかの文量。
    読み応えがあり、敗戦からの復興の証としてオリンピックに沸き立つ当時の日本の様子が表の部分と裏の部分とで描かれていて厚みのある話だった。
    そのままでいれば東大大学院卒のエリートとして何不自由なく生きていけるはずであった島崎国男が、兄の死をきっかけにオリンピックの栄華の陰で淘汰されていく貧しい人々を知るようになり、国への反逆心を抱くようになるといストーリーも面白かった。
    ただ、約束された明るい将来を棒に振り、国を脅迫するだけではなく麻薬に手を出したりどんどん闇の世界に染まっていく国男は読んでいて辛かった。自分だけが恵まれていることに罪悪感を抱き、自らその道を捨てることで貧しい人々と一体になったような気でいたのだろうか。
    スリの村田と手を組んだことからも、国男はずっと大きな孤独感を持ち続けていたのかもしれないと思った。東大のエリートコースの中には孤独を癒すものを見つけられず、自ら身を落とし日雇い人夫となることで、ずっと抱えていた孤独を解消する何かを得ようとしたのかもしれないと感じた。

    読み応えはあったか、後半はやや間延びした感があり、所々飛ばして読んでしまった。村田が自白した場面をもう少し読みたかった。全体的にもう少し島崎目線の文量が欲しかった。

  • 面白かった!
    昭和の東京オリンピックに湧く、高度経済成長の頃の日本。先日読んだ『罪の轍』と同じ頃の話でした。

    オリンピックを成功させるために、安い賃金で奴隷のように働かされていた人夫。ほとんどが田舎から出稼ぎに来ている人たち。東京は著しく発展していくのに、田舎はその恩恵を受けることなくとても貧しい生活のまま。それに疑念を抱いた主人公が犯行を企てる。

    真面目さや家族への優しさが、方向を間違えるとこんな事になってしまうのかと切なくなったけれど、主人公の思いには共感できるところも。

    警察の捜査も興味深く、電話さえ稀な時代にどんどん犯人を追い込んでいく捜査は読んでいて息を呑みました。

    大きなことを成し遂げるには、それを底辺で支えてる人たちがいることを忘れてはいけないと思った作品でした。

  • 『オリンピックの身代金 下』。

    要求額は8,000万円。
    東大生・島崎国男はオリンピックを人質に、身代金を要求する。
    東京だけが繁栄し、取り残されつつある故郷・秋田の田舎の農村のために…

    一方、警察は死力を尽くして、国男の行方を追う…

    国男は…
    警察は国男を捕まえることができるのか…

    ほんとになぜ⁇
    東大生の国男なら、もっとやり方があったんじゃないかと、何度も思った…
    こんなことをしなくても…

    最後にはうまくいってほしいと…
    どこかで生き続ける国男と村田を思い描いていた…

    何もなかったかのように…
    国男は生きているのか…
    生きていてほしい。

    ここから日本は高度経済成長に入り、物心がついた時にはテレビも車も普通にある時代だった…
    カラーテレビではなかったかも…

    あれから60年。
    日本は豊かになったのか…
    国男が生きていれば、今の日本をみて、何を思うのか…
    国男の時代のようにな田舎の農村はなくなっただろうが。
    能登半島地震、豪雨からの復興が遅々として進まない能登の市町村をみて、何を思うだろう。


  • 時点を前後させながら描くスタイルが新鮮で、より一層興味をそそられた。
    中でも、開会式当日のやり取りは、緊迫感が伝わり、正に手に汗握る展開。もう少しラストの余韻を楽しめれば、☆5をつけていた。

  • 下巻も期待以上の手に汗握る怒涛の展開。熱すぎる刑事魂とどこまでも冷静な国男の対比がラストまで印象的だった。それにしても村田さんのキャラ立ちが際立った。国の威信をかけたオリンピック。そこにかける人たちの思いが様々にぶつかり合っていた。時系列を前後しながら落合さんの目線だったり、国男の目線だったり、魅力的な登場人物と布石を織り混ぜながら最後まで目が離せない最高の物語だった。ラストはやはりそうだよねーという感じかな。

  • 吉川英治文学賞

    さすが吉川英治文学賞受賞作。奥田英朗作品は伊良部シリーズなど軽いものしか読んでいなかったが、こちらの方が好みだった。
    2度目の東京オリンピックとは違い、1964年の東京オリンピックは、敗戦から復興した日本を全世界に見せるということが全国民の悲願となっていた。誰もが東京オリンピックのために、努力して、どんなことをも納得してしまうという、今では考えられない時代だった。外国人に恥ずかしいところを見られたくないと、東京中で工事が繰り広げられ、新幹線、モノレールなどオリンピックに合わせて開業した。その犠牲になったのが、工事に従事する東北出身の貧農たちだった。そこには人権などなく、それが主人公の犯罪へと繋がっていくのだった。
    たまに、こんな言葉遣い、この頃したかなと思うところもあったが、概ね当時の空気感が色濃く漂っていた。

  • 東京オリンピック時代の雰囲気がひしひしと伝わってくる。
    オリンピックに向けての建設現場で労働しているなか、東京、田舎の差による不平等さなどを感じながら主人公がテロリストになっていく。ただ、共感ができてしまう部分もある。
    長編だが、最後まで読ませる書き方はさすが。

  • 1964年、東京オリンピックが控える日本を舞台にした爆破テロ事件を起こす青年の話。当時実際に起きた草加次郎事件を参考に描かれた作品です。
    東京大学院生の島崎国男が兄の死をきっかけにオリンピック工事の日雇い人夫となり、貧しい労働者層の過酷さを知る。華やかになる東京開発の一方で使い捨てされる労働者層に疑問を持ち、日本を相手取ってテロを企てるお話。

    これから発展していく期待を持った日本人の感情、一方で地方での残る貧困やそれに対する労働者層の感情が詳細に描かれており、自分の親、祖母の世代の当時の感情などに興味を持つきっかけになりました。

    聞き慣れない言葉が多く最初は慣れないですが、慣れると奥田英朗ワールドが広がって読みやすかったです。
    ただ、テンポが悪いところがいくつかある点、終盤の島崎や村田視点での語りが少ない点は少し残念。みんなそこが読みたかったのでは?と思ってしまいましたが、自分で想像することにしますmm

    戦後日本がもっと知りたくなり、同じ時代背景の他の本も読んでみたくなりました!

  • 罪の轍の刑事達が出てるとは知らず、とても驚きました。(知らずに読んだのも。お恥ずかしい話しですが…)
    罪の轍でもそうですが、戦後の日本、特に北国の情景の描き方は、流石だと思います。
    現代こそ、都会と地方の格差は無くなっていますが、戦後は、はっきりとした格差ができており、その影響にオリンピック特需があったことは間違いありません。
    とても印象的な本になりました。

  • 下巻もおもしろかった。
    上巻は時系列が前後しますが、下巻はそれもないせいかどんどん進みました。

    罪の轍もそうだけど、奥田さんの作品て、どうしてこんなことになってんのーって展開が多い。
    間一髪のところで逃げきれたり、とんでもない場面に居合わせて、罪を重ねたり…。 
    そして、犯人が完全な悪人でないところも。
    最後はなんだかせつない気持ちになりました。

  • あまりに面白すぎて、読み始めたらほかのことができなくなる。時間があるときに読むのがおすすめ
    これが刺さった人は罪の轍も読んで欲しい〜また五係の活躍がみれます

  • 島崎国男は秋田の貧農の村、政治から捨てられたような地域の出。国男にはスリの相棒、村田がいる。読んでいて村田の言動が愛嬌があって微笑む。いつのまにか国男を応援していた。堪能しました。

  • 最高に面白かった。
    高度経済成長に突き進んでいくきっかけになったオリンピックの存在の偉大さをひしひしと感じた。
    設定としてはありえない設定だが、体制を敵に回し庶民の味方然として振る舞う犯人には非常に共感が持てた。
    最後の最後にどんでん返しがあれば、言うことなし。
    目的のためにすべてを我慢して、受け容れて突き進んでいく姿に心を打たれた。

  • 上巻に引き続き一気読み。
    最後の方のシーンは緊迫感に呑まれ、私自身も手に汗握って読んでしまった。
    この時代に生きる人達も多くの苦労があり、不自由があり、悩みがあったのだろうとは勿論思うが、それでもなお「日本が必ず成長している」と感じられる時代を生きた人達を羨ましく感じた。

  • 社会の闇を暴くタイプの小説が好きな私にはたまらなかった!
    読んでいて、ああこれ撃たれるやつだなって感じつつも逃げ切れ国男と思う自分もどこかにいた。
    いい意味でボリューミーでエネルギーを使うお話なので、まとまった時間がある時に読むことをおすすめします。

  • たくさん盛り上がったわりに、最後はちょっとあっさり…

  • 作者の綿密な調査により、当時の東京オリンピックを迎える東京の雰囲気が臨場感を持って伝わって来ることで、作品のリアリティが増している。前編は犯人目線だったが、後編は思わず警察に肩入れしたくなった。

  •  国男ほど頭が良い青年でも、オリンピックの身代金を要求する行為でしか彼の主張を届ける方法はなかったと感じたのだろうか。結局彼の真意がよく理解できないまま終わってしまった。親の脛を齧って学生運動をしている学生達と覚悟が違うことはわかるが、何者にも捉われないようでいて、あっさりヒロポン中毒には陥っている。国男の心に燃える静かな激情の一端しか垣間見れなかったのが残念。村田はどうしようもない爺さんのようで、国男との友情と絆に温かさを感じる。「今は多少不公平でも石を高く積み上げる時期なのと違うか」と言う村田の言葉が心に残る。

  • 1964年のオリンピックは聖火リレーの見物客として、父の肩車で眺めている写真の記憶
    開会式や競技の鮮やかな光景が本当に見たのか、記憶が上塗りされたのかもはっきりしない

    その鮮やかさや晴れがましさの裏にさまざまな人間の事情、思惑、犠牲があったんだろうと思わせる作品だった。

    その時代、時代の自分の立ち位置からしか、思いを馳せることができないけど、本当は人間の数だけ、嬉しいこと、楽しいこと、辛いこと、悲しいことがあると改めて思った。つい忘れて瑣末な身辺に囚われる自分が情けない。

    以下は後日の追加です。

    先日、クイズ番組の中で昔の「お宝映像」なるものがあった。 東京タワー建設時の鳶の人たちがまったく命綱なしで移動したり降りて来たりしていて、それを見て出演者たちが、凄いとか怖いとか騒いでいた。 ああ、こういうことか、私も前ならそういう感想で終わってしまってた。だけど、今なら、「この時代この人たちの命がいかに軽んじられていたか。たまたま、誰かが犠牲になっても、(なったかもしれないが、)人知れずうやむやにされていたんだろう」と想像した。
    その映像と出演者のはしゃいだコメントが、今だに心にわだかまっている。

  • あれ!?っと思ったら
    「罪の轍」のメンバー!

    戦後の東京の高度成長期とプロレタリア
    主人公の島崎の純粋さと それがだんだん壊れていく様にグイグイ引き込まる

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著者プロフィール

おくだ・ひでお
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライターなどを経て1997年『ウランバーナの森』でデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞受賞。2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『最悪』、『イン・ザ・プール』、『マドンナ』、『ガール』、『サウスバウンド』、『無理』、『噂の女』、『我が家のヒミツ』、『ナオミとカナコ』、『向田理髪店』など。映像化作品も多数あり、コミカルな短篇から社会派長編までさまざまな作風で人気を博している。近著に『罪の轍』。

「2021年 『邪魔(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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