連城三紀彦 レジェンド 傑作ミステリー集 (講談社文庫)

著者 :
制作 : 綾辻 行人  伊坂 幸太郎  小野 不由美  米澤 穂信 
  • 講談社
3.85
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本棚登録 : 434
感想 : 61
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062779814

作品紹介・あらすじ

ミステリーに殉じた作家を敬愛する四人による驚嘆のアンソロジー。巧緻に練られた万華鏡のごとき謎、また謎。遊郭に出入りする男の死体が握っていた白い花に魅せられた若い刑事(「桔梗の宿」)、月一度、母の愛人と過ごす茶室に生涯を埋めた女(「花衣の客」)ほか。綾辻×伊坂、巻末対談でその圧倒的な魅力も語る!

感想・レビュー・書評

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  • それにしても今更ながら
    連城三紀彦はスゴい!
    流麗な筆致と驚愕のトリック。
    その落差が生み出す甘美な眩暈。
    セレクトしたものだから当然だけど、
    すべての短編に
    驚愕の反転が待ち受けるストーリーの妙にお腹いっぱいになりました(笑)


    終戦間近な山村を舞台に
    作家と妻、そしてある日突然現れた若い女が織りなす愛憎劇を日記形式で描いた綾辻行人選出の
    『依子の日記』、

    大病院の内科部長の妻の投身自殺に隠された真実。
    暴こうとする者と隠し通したい者の心理合戦と二転三転する展開の妙に誰もが引き込まれること請け合い!
    伊坂幸太郎選出の
    『眼の中の現場』、

    昭和3年。娼家が居並ぶ盛り場近くの川で発見された男の絞殺死体。手にはなぜか白い桔梗の花が握られていた。警察学校を出たばかりの若い刑事は鈴絵という幼い娼妓が何かを隠してると知り、彼女を訪ねるが…。小野不由美選出の哀切極まりない傑作
    『桔梗の宿』、

    1981年に実際にパリで起こった日本人留学生による猟奇殺人事件をモデルに、殺人犯「S」への異常愛を描いた
    綾辻行人が偏愛する異色作
    『親愛なるエス君へ』、

    母の不倫相手を25年もの間
    密かに思い続けてきた女の情念。
    恋愛小説にミステリー要素が見事に融合した米沢穂信推薦の重厚作
    『花衣の客』、

    死の間際に書いた母から息子への手紙。そこに隠された驚愕の真実に誰もが唖然とすること必至の
    伊坂幸太郎イチオシのミステリー
    『母の手紙』

    の6編の短編を収録。

    個人的なベストは「戻り川心中」に収録の
    美しく哀切極まりない『桔梗の宿』だけど、
    綾辻行人が絶賛するのも頷ける 『親愛なるエス君へ』も
    かなりのインパクトだったなぁ~( >_<)
    (米沢穂信の『儚い羊たちの祝宴』はかなり影響受けてるように感じた)


    いくら見事なトリックを決めても綿密な設計図どうりに作られた小説には人工的な匂いがして
    よくできてるとは思っても、良い物語だったとは感じない。
    連城さんの凄さは、
    トリッキーでいて、なおかつ物語に魅力があるという点です。

    作品に漂うあの情念や叙情的な香りを見れば一目瞭然だけど、
    読み手の心を乖離させるスキを与えないほど
    人間を巧みに描いてるから、
    トリックより先に物語の世界にハマってしまう。

    そして読みながら騙されることを今か今かと待っていて、
    今もうすでに騙されているのに
    読んでる自分はまったくそれに気づいていないという(笑)
    そんな職人芸。
    (読む者に罠を決して気づかせないのは
    その破綻のない美しい文章の賜物だと思う)

    ミステリー好きなら誰もが分かる、
    「騙される喜び」を堪能できるのも
    連城ミステリーの醍醐味なのです。
    (しかもこのすべてを短い短編の中でやってしまうところに連城さんの凄さがあります)

    そして
    連城三紀彦への愛と憧憬を二人が全力で語った、
    巻末に添えられた綾辻行人×伊坂幸太郎の対談も読み応えアリ!
    (連城さんの名を売るため、自らPOPを描いて本屋に売り込みに回った伊坂さんのエピソードにビックリ!)


    初心者に向けて作られたアンソロジーなので連城ミステリー入門にもピッタリだし、
    選出作家のミステリーの好みや
    憧れのテイストが分かるのも面白いです。

    まだ未読なミステリー好きや
    ドンデン返しで見事に騙されてみたいアナタは是非ぜひ。

    • kwosaさん
      円軌道の外さん、おひさしぶりです。

      円軌道の外さんが『桔梗の宿』をベストに選んでくれて嬉しい!
      傑作ですよね。
      ハルキ文庫版『戻り...
      円軌道の外さん、おひさしぶりです。

      円軌道の外さんが『桔梗の宿』をベストに選んでくれて嬉しい!
      傑作ですよね。
      ハルキ文庫版『戻り川心中』は、表題作をはじめ、『桔梗の宿』級の傑作、いわゆる「花葬シリーズ」全八編が勢揃い。超おすすめです。
      いま読むなら、光文社文庫『戻り川心中』『夕萩心中』の二冊に分冊されているので、そちらの方が入手しやすいかと。

      そしてハルキ文庫から復刊された『宵待草夜情』も「花葬シリーズ」の流れを汲む傑作ぞろい。
      収録作『花虐の賦』は『桔梗の宿』『戻り川心中』に匹敵する超絶ミステリ。
      個人的には、能の幽玄の世界とミステリを融合させた『能師の妻』にものけぞりました。
      日本画家、池永康晟(いけながやすなり)の現代美人画をあしらった表紙も素晴らしいです。

      連城三紀彦はどれも凄いけど、僕は明治大正・昭和初期くらいの時代設定の中で、男女の心の機微とミステリを融合させた『戻り川心中』『宵待草夜情』の二冊(ともにハルキ文庫)が、作家の本領を遺憾なく発揮した「連城'sベスト」だと思います。
      2015/09/22
  • 伊坂さんのおすすめの作家さんと聞いて…

    どれもこれも、一筋縄ではいかないお話ばかりでした。予想を裏切られ、そのまた想定をひっくりかえされ…
    家で読みながら「えっ…嘘だろ…?」「え、あっ、…あぁー…うわぁー…」と思わず呟くことが何度もありました。

    お気に入りは「眼の中の現場」です。2人の男が繰り広げる会話による逆転劇。緊張感が半端ない。
    切なく、儚い少女の恋を描いた「桔梗の宿」もよかったです。

    ミステリーはあまり読まないからわからないのですが、とても文章が美しいなぁと感じました。妙に艶のある文章に時折ぞくりとします。そして、どのラストもやるせない気持ちになります。
    短編でこれだけの濃厚な世界を描き、しっかり読ませるってなんだかすごい。

    綾辻さんと伊坂さんの対談が熱かった!

  • これこそまさにレジェンドだった、ミステリ短編においての連城氏の作品完成度は余人を寄せ付けない。また選者がいい!ちょっとした講釈があるのだが、うんうんうなずいてしまう。

    これほどのものを読むと、次に何を読んだらいいのか?なんとも罪作りな一冊なのだ。

  • とにかく良い小説を読んだと感じるアンソロジー。選者もみな好みの作家ばかりだし、決め方のガチ度も高くて嬉しくなる。連城さんの本は何冊か読んだが、裏切りの連続のような作家。

    依子の日記、、、不倫相手を夫と共謀して殺した妻の日記。叙述ですよと書いてあるようなもんですが、サスペンスとして楽しめるんだけど、この短編集の中ではまだ普通な印象。

    眼の中の現場、、、自殺した妻の不倫相手が医者の元を訪ねてくる。目眩のするような複雑にグルグル回る心理戦。

    桔梗の宿、、、売春宿にまつわる連続殺人事件を調べているうちに、刑事が16歳の娼婦に出会う話。なんやこれも凄い。切ない。最後の手紙から本当にぐっとくる意外な真相が明かされる。

    親愛なるエス君へ、、、猟奇殺人を犯した犯人への手紙から、異様な犯罪の告白が始まる。綾辻さんが愛してやまないらしい作。ああなるほどね。これもとんでもなく意外性のある真相。親愛なるとはそういうことか。

    花衣の客、、、茶室に来ていた母の恋人と、母の死後22年添い遂げようとする話。これも切ない。登場人物全員やるせない気持ちになる。超傑作。

    母の手紙、、、母から息子への手紙。なぜ嫁に冷たくあたるのか。いやトリッキーすぎる。もうお腹いっぱいです。







  • 「親愛なるエス君」がいいかな。あのエス君。
    「眼の中の現場」もよかった。
    恋愛とミステリがいい具合にあわさってる。

  • 情念の物語が6編。
    それだけでなくどの短編でも気持ち良く騙された。
    選者が好きな作家さんばかりなのでこの人の好みはこうゆうのかという楽しみ方も出来て十分堪能。
    しっとりとした文体もあまり読んだことがないので新鮮だった。

  • 次世代レジェンド達により厳選された連城氏の傑作短編集。この題名からも、編者達の気合と敬愛が伝わる。六編が収録されており、それぞれ冒頭に選者の想いが綴られている。
    どの短編も、もちろん秀作。恋愛小説や社会派小説の中に巧みに複雑な虚構が組み込まれたものばかり。気持ち良く騙されてる、
    巻末に、綾辻氏と伊坂氏の特別対談が収録。お二人のミステリー愛を垣間見る。

    もう面白い本読んでしまうと、古典や純文学を手に取るのが辛くなる。

  • 読み終わった。やっぱり美しい。2より1のほうがインパクトの強い、情感の強い、色彩鮮やかな作品が揃っていて、この手の企画本はどうしても1作目の方が強いのか…と思ってしまった。

    編者のコメントにも出てくるけれど、叶わない想いが作品のベースにあることが多く、美しい文章や単語選びと相まってもの悲しさを一層色濃く表している。この本では、そういったテーマに沿って語られる作品が4作あるから、その印象がとても強いのかもしれないけど。
    桔梗を通して籠の中の少女の儚さを描いた「桔梗の宿」が醸し出す悲哀はとても美しい。個人的には、「母の手紙」も好きだったけど。

    日ごろミステリーを読みなれないので、短期間に読む作品の中でこれだけたくさんの方に死なれると結構精神を削られるということに気付いた。もちろん死なない作品もあるけど、大抵のミステリーには殺人があり、その原因はハッピーなベクトルに向くこともないからなぁ。

    綾辻さんもお名前よく聞くけど読んだことない。最後の井坂さんとの対談から、連城さんと不思議なご縁があった人のようなので、今度デビュー作読んでみたいと思いました。

    ★収録作品(本書の底本一覧から)★
    「依子の日記」―『変調二人羽織』(2010)
    「眼の中の現場」―『紫の傷』(2008)
    「桔梗の宿」―『戻り川心中』(2006)
    「親愛なるエス君へ」―『瓦斯灯』(1987)
    「花衣の客」―『瓦斯灯』(1987)
    「母の手紙」―『日曜日と九つの短篇』(1988)

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    ミステリーに殉じた作家を敬愛する四人による驚嘆のアンソロジー。巧緻に練られた万華鏡のごとき謎、また謎。遊郭に出入りする男の死体が握っていた白い花に魅せられた若い刑事(「桔梗の宿」)、月一度、母の愛人と過ごす茶室に生涯を埋めた女(「花衣の客」)ほか。綾辻×伊坂、巻末対談でその圧倒的な魅力も語る!

  • 「眼の中の現場」、「親愛なるエス君へ」、「花衣の客」のみ未読だったので購入。作者にかかればどんなに特殊な心理も高尚に。

  • 初めて読む連城三紀彦作品。
    綾辻、伊坂、小野、米澤の4氏が選んだ6つの短編。どの作品も短編とは思えないほどの重量感があって、読後はただ疲れた~。
    一番良かったのは「桔梗の宿」、娼家の少女が儚く憐れで映像が浮かんでくるような風情あるミステリー。
    巻末に綾辻さんと伊坂さんの連城作品への愛に溢れた対談が掲載されているのもgood!

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著者プロフィール

連城三紀彦
一九四八年愛知県生まれ。早稲田大学卒業。七八年に『変調二人羽織』で「幻影城」新人賞に入選しデビュー。八一年『戻り川心中』で日本推理作家協会賞、八四年『宵待草夜情』で吉川英治文学新人賞、同年『恋文』で直木賞を受賞。九六年には『隠れ菊』で柴田錬三郎賞を受賞。二〇一三年十月死去。一四年、日本ミステリー文学大賞特別賞を受賞。

「2022年 『黒真珠 恋愛推理レアコレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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