探偵の探偵 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062779845

感想・レビュー・書評

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  •  少し前に買っておいて、楽しみにとっておいた本を今日、一気に読んだ。本書である。
     文体は硬く(かと言って読みづらくもなく)、地に足のついた世界観とマッチしている。探偵という職業について、フィクションの世界に生きる名探偵ではなく、いわゆる調査会社の、決して華々しいとは言えない側面から描写しており、他の探偵小説とは一風変わった魅力を有する作品だ。その魅力を醸し出す中心となるのが、やはり主人公・紗崎玲奈の存在だろう。
     抜群のプロポーションを持つ黒髪美人。都市に似合わぬ憂いつき、となれば、うん何か暗い過去を抱えているのだなぁと想像はつくことだろう。彼女こそは、対探偵課にてただ一人同業者を相手取る、探偵の探偵なのだ。
     とまぁ、ここまで書いておいて、僕の中ではあんまりこの小説の評価は高くない。肩透かしを食らった感すらある。
     正直彼女のキャラクター造形はかなり好みだったし、悪の探偵を相手にした小説というのも私的には目新しくて、結構楽しく読んでいた。けれどまあ、ワトソン役のキャラクターが鼻につくこと。仕事ができないなら何がしか精神的支柱になってやればいいだろうに、結局終始足を引きずってばかり。二人の距離が少し縮まるシーンがあるのだけど、なんだか唐突に過ぎる感じがして、そこらへんから少し白けた。
     玲奈の宿敵とも呼べる相手が再来かーー? という雰囲気を匂わせる辺りでは「おお」と思ったけど、そのあとからずっと敵が小物臭い。劇場演出型ならば、もっと知略を働かせて欲しかった。後手後手に回り過ぎてて、最後のあがきもとってつけた感があるし(そういったものを所持しているような描写はなかったと思う)。
     世界観にリアリティはあるけれど、徐々にキャラクターにリアリティがなくなっていく感じがした。話を動かすために無理矢理動いている感じがあるというか。前半の綿密さに比べて、後半は全然説得力がなくなっていっているように感じた。

  • 読書録「探偵の探偵」3

    著者 松岡圭祐
    出版 講談社文庫

    p102より引用
    “「二時間強、三十五万で誰でも借りられま
    す。”

     探偵を調査する女性探偵を主人公とした、
    長編アクションミステリ。
     過去に家族に起こった出来事から、探偵養
    成所へ入所した主人公・紗崎玲奈。個別面接
    で探偵の全てが知りたいと言いながら、反面、
    彼女は探偵にはなりたくないと明言する…。

     上記の引用は、東京ドームのレンタル料金
    についての主人公の一言。意外に安いという
    か、収容人数からするとその安さに驚いてし
    まいます。
     主人公の過去や仕事の内容など、重く暗い
    話が多いので、好みが分かれやすい作品では
    ないでしょうか。しかし、敵対する相手との
    駆け引きや頭脳戦も肉弾戦も、白熱するシー
    ンが数多くあるので、読まず嫌いで置いてお
    くのも、もったいない一冊だと思います。

    ーーーーー

  • 〇 評価 
     サプライズ ★☆☆☆☆
     熱中度   ★★★☆☆
     インパクト ★★★★★
     キャラクター★★★★☆
     読後感   ★★★☆☆
     希少価値  ★☆☆☆☆
     総合評価  ★★★☆☆

     平成19年6月に「探偵業の業務の適正化に関する法律」が制定されている日本…というフィクションの世界が舞台。過去に,妹をストーカーに殺害された紗崎玲奈は,ストーカーに居場所を教えた悪徳探偵に復讐をするために,探偵業を学ぶ。そして,スマ・リサーチという探偵社で,悪徳探偵と対峙する対探偵課なる部署を開設する。
     万能鑑定士Qシリーズとはうって変わり,バイオレンスな要素が入った「人が死ぬ」ミステリ。ジャンルとしてはハードボイルドに近い。
     冒頭で玲奈の悲惨な過去が語られる。妹が殺され,父は不倫。母は精神病…という状態である。主人公としては,万能鑑定士Qシリーズの凜田莉子とは違った魅力のある人物として描かれている。新体操で全国大会に出たことがあり,身体能力が高い。偏差値70の高校を卒業し,スマPIスクールで探偵業を学んだという設定なので,知識,知能も高い。 
     この紗崎玲奈を始め,須磨康臣,峰森琴葉,桐嶋颯太といったスマ・リサーチの面々は,なかなかに魅力的に描かれている。
     前半部分は玲奈の過去を描き,後半部分は阿比留という探偵社が企む事件を中心に描かれている。それとは別に,悪徳探偵から恨みを買っている玲奈が命を狙われるシーンが多数ある。この描写が妙にリアルで生々しい。琴葉は事件に巻き込まれ瀕死の状態になる。メインの事件のラストシーンでは玲奈が矢吹洋子を鉄パイプで殴るシーンまである。インパクトは高い。
     サプライズらしいサプライズはなく,最後は阿比留の計画を玲奈が阻止して終わり。探偵関係の雑学,マメ知識が多数あるのは,松岡圭佑の作品らしい要素
     シリーズ1作目ということで,このあとどうなるのかという期待を持たせるデキではある。バイオレンス要素が肌に合わない人もいるだろう。評価としては★3で。

    〇 メモ
     平成19年6月に「探偵業の業務の適正化に関する法律」が制定されたという架空の設定。須磨康臣が経営する「探偵」の養成所,スマPIスクールに,未成年の紗崎玲奈が入学する。
     須磨は,玲奈の家族関係や過去などを調査し,玲奈の妹の「咲良」について知る。須磨は玲奈から咲良が,ストーカーに殺害されていること,ストーカーに咲良の居場所を伝えた探偵に対し,玲奈が恨みを持っていることを知る。
     ストーカーに咲良の居場所を教えた探偵に恨みを持つ玲奈に,PIスクール卒業後は,自分が経営する株式会社スマ・リサーチに就職するように言う。玲奈は,スマ・リサーチで,「対探偵課」の職員として働くことになる。
     スマ・リサーチに,峰森琴葉という未成年の女性が就職してくる。寮生活をしたいなどの事情から,対探偵課の玲奈の助手に割り当てられる。
     同僚の桐嶋颯太から対探偵課の案件かもしれないと紹介された案件に玲奈と琴葉が出向く。しかし,それは巧妙な罠だった。対探偵課に恨みを持つ関山探偵事務所の探偵の報復行為だった。
     報復行為をした探偵は,阿比留総合探偵社と関わりがあった。警察は,前副総監の相続問題で,阿比留総合探偵社と関わる。同社の社長,阿比留佳則は,パソコンの時計の狂い(進んでいた)などから,真の遺言書の在りかをつきとめる。しかし,貸金庫にパソコンと一緒に入れていた5000円札が,故人の死後に発行されたものであったことから,偽装がばれる。
     後日,阿比留から玲奈にプレゼントが渡される。玲奈は事務所にいなかったが,琴葉が玲奈のもとに持ってきてしまう。そのプレゼントはGPSだった。玲奈は琴葉を逃がすが,居場所がばれ,トレーラーに海に落とされる。玲奈はなんとか脱出する。
     後日,咲良のストーカーだった岡尾のDNA鑑定をした矢吹洋子という女医から連絡がある。岡尾は生きているかもしれない。日銀総裁の孫の誘拐事件の犯人が岡尾かもしれない…と。
     玲奈は悪徳探偵である薮沼から情報を得る。阿比留は警視庁から日銀総裁の孫誘拐事件で依頼を受けていた。阿比留はカジノ法案が成立した後の筆頭探偵社の座を狙っていた。
     玲奈は琴葉に事情を説明する。偶然が過ぎる。琴葉は確証バイアスではないか(=玲奈が自分の仮説に都合のいい事実しか見ていないのではないか)という。玲奈はそれを否定。矢吹からの情報提供を得て西多摩郡日の出町に向かう。 
     しかし,これは阿比留と手を組んでいた矢吹洋子の罠だった。岡尾は死んでいた。琴葉を人質に取られ,霜田という実行犯である悪徳探偵に襲われる。琴葉は呼吸停止状態になる。
     阿比留は自作自演の誘拐事件を解決することで,物語に出てくる探偵のようになろうとする。しかし,玲奈が立ちはだかる。玲奈は鉄パイプで洋子を殴る。玲奈は窪塚警部補を利用し,阿比留の計画を阻止する。
     阿比留は誘拐の主犯として逮捕される。矢吹洋子は法医学鑑定で報告書の改ざんをした罪で逮捕。玲奈には捜査の手は伸びなかった。
     エピローグ。玲奈は琴葉の見舞いに行くが,家族と楽しそうに過ごす姿を見て会えずに帰る。玲奈は,須磨からの電話を受け,対探偵課の仕事に向かう。

  • Qシリーズを読むときの気分で、この本を読み始めたらびっくりしました。Qシリーズは人の死なないミステリということで、どこかほのぼのしていましたが、この話は残酷なシーンの多いこと!岬美由紀シリーズを思い出しました。
    もちろん続編も読みますが、紗崎があまり怪我をしていませんようにと祈るばかりです。

  • 先にドラマを観ていたので内容は知っていたが楽しめた。 ちゃんと著者らしさ(雑学だったり、優秀な女性主人公だったり)がありつつも、良い意味でよくあるハードボイルド小説っぽい味付けがされている。 千里眼シリーズほどぶっ飛んだ感じでもなく、なかなかよい位置づけの作品だと思う。原作を読んで思ったのは上手いこと映像化されたなぁと。 イメージしやすい文章ってのが大きいんでしょうね。

  • ドラマが面白かったので原作をば。

    悪徳探偵を取り締まる“対探偵課”所属の探偵、紗崎玲奈が主人公。
    妹をストーカーに殺された過去を持つ彼女は、ストーカーに妹の居場所を教えた探偵に復讐したいと願っている。

    ドラマのキャスティングはかなりマッチしていたのではないか。
    三浦貴大だけはちょっとイメージが違う気もするが。

    登場人物がみんなおかしい話。
    唯一、琴葉がまともか、今のところは。
    アクションシーンも、あんなに嗜虐的に描く必要はあるのかと思う。
    その辺、誉田作品よりも激しい。

  • 20170526 テンポよく読めた。結局玲奈の目的は達成されず、続編を読もうと思う。

  • 松岡氏独特の描写が見られる。

    主人公の女性が強いのはパターンなのだろうか。

    続編があると言うことなので、気になる話ではある。
    まだまだ、明らかになってないポイントもあるので、その辺はおいおい分かってくるのだろう。

  • 壮絶です。そしてとことん追い続ける理由がある。
    何しろ探偵vs探偵だから一筋縄ではいきません。
    いろんな探偵の技や内情も盛り込みつつ戦闘シーンもありで夢中になります。

  • 不正を働く探偵を追う対探偵課所属の紗崎玲奈が活躍するシリーズ1作目。
    何故、探偵を憎むのか?の背景を充実させたプロローグ的内容ながらも、
    阿比留との対決を軸に描かれる内容は、読者を引き付けるには十分。
    今後の展開も楽しみなシリーズの誕生と言える。

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著者プロフィール

1968年、愛知県生まれ。デビュー作『催眠』がミリオンセラーに。大藪春彦賞候補作「千里眼」シリーズは累計628万部超。「万能鑑定士Q」シリーズは2014年に映画化、ブックウォーカー大賞2014文芸賞を受賞。『シャーロック・ホームズ対伊藤博文』は19年に全米翻訳出版。NYヴァーティカル社編集者ヤニ・メンザスは「世界に誇るべき才能」と評する。その他の作品に『ミッキーマウスの憂鬱』、『ジェームズ・ボンドは来ない』、『黄砂の籠城』、『ヒトラーの試写室』、「グアムの探偵」「高校事変」シリーズなど。

「2023年 『高校事変 16』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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