ぬけまいる (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062779852

作品紹介・あらすじ

一膳飯屋の娘・お以乃。御家人の妻・お志花。小間物屋の女主人・お蝶。若い頃は「馬喰町の猪鹿蝶」と呼ばれ、界隈で知らぬ者の無かった江戸娘三人組も早や三十路前。それぞれに事情と鬱屈を抱えた三人は、突如、仕事も家庭も放り出し、お伊勢詣りに繰り出した。てんやわんやの、まかて版東海道中膝栗毛!

感想・レビュー・書評

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  • 前半は3人とも秘密を抱えて、重い雰囲気で進んで行くが、闘いや人助け、恋愛などの展開が次々と出てくるので、後半はあっという間に読み進められた。江戸に戻った後は3人はどうなるのだろうか?

  • 「抜け参り」...親や主人、村役人の許可なしにお伊勢参りに行くことをさす。お蔭参りとも言う。柄杓を持ち気のみきのままででかけ、道中で色んな家々に面倒を見てもらえる。抜け参りをしてる人に面倒をみたり世話をするのも功徳があるとされる。

    さて、物語の主人公は幼馴染の女3人。名をお以乃(おいの)、お志花(おしか)、お蝶(おちょう)といい、若い頃は「猪鹿蝶」と町でも一目置かれる存在であったのだが、アラサーの年齢になってきてそれぞれどうにもパッとしない人生を歩んでいる。久しぶりに会って愚痴の言い合いをしていたらお志花が突然抜け参りを提案し、そのままふらりと旅に出ることになった。果たしてどんな旅になるのやら...

    携帯もない時代に家の者に何も告げず旅に出るのが流行ってただなんてびっくりな話でした。新幹線もないし...旅は何ヶ月にも渡るし...現代なら考えられないことだらけで新鮮。この猪鹿蝶、三者三様で性格もバラバラなのに何故か良いバランス。時には喧嘩もしながら訪れた先であれやこれやとトラブルに巻き込まれたり、商売始めてめちゃめちゃ稼いだりとイベント尽くしな旅。騒がしさ、忙しさがコミカルに描かれる。

    3人ともそれぞれに鬱屈を抱えているのだがお伊勢に近づくにつれて少しづつその心理描写も変わっていく...その変化を追っていくのも面白かった。

  • お以乃、お蝶、お志花の幼馴染み三人組(猪鹿蝶)が、訳あって突然お伊勢詣り(抜け詣り、御陰詣り)に繰り出すことに。本作はその珍道中記。

    お伊勢詣りに限って、無一文でも柄杓片手に旅をすれば、「街道沿いの家々が親切に面倒見てくれる」のだという。

    ワイド劇場にありがちな中年女三人のドタバタのコメディ。人情味溢れていて面白いことは面白いが、浪費癖があって我が儘なお蝶のキャラにはちょっとムカついた。

  • NHKドラマ化を見る前に読もうと、本書を手に取った。本来弱々しい役が多いともさかりえが、どこまで腕っ節の強い独身アラサー女を演れるのか、おとなしい役の多い田中麗奈がどこまでおきゃんな小売商の女将を演れるのか、おきゃんな役が多い佐藤江梨子がどこまで御家人の妻を演れるか、まあ見ものではある。

    「恋歌」に次いで、朝井かまて読了二作目。解説士の言うとおり、恋歌とはかなり調子が違う本書ではあるが、弱き者に寄り添う著者の視点は、同じだ。愉しませて頂いた。

    小説は1話毎に3人それぞれが「語り手」を交代するという手法を採るけど、ドラマは流石にそうは行かず、その分小説の方が3人の心持ちを詳しく描いていて、ドラマよりも楽しいという感じがした。しかも、3回に一回しかそれぞれの心理が明かされないので、ちょっとづつ謎解き小説部分もあり、エンタメである。流石直木賞作家だ。

    アラサー女性だけの伊勢参りを描くことで、幕末の女性事情を明らかにするという事も狙っているようだ。それはまあ果たしている。そもそも「抜け参り」と言いながらも、お錫を持って沿道のカンパを頼って旅をしたのは、最初期の数日だけで、後は3人の才覚で何故か金を儲けてお伊勢まで行っている。それはそれで楽しいのだけど、果たしてお錫だけで伊勢参りは出来るのか?という疑問が残った。彼女たちの出立したのは、1854年らしい。それと関連して、この小説に唯一の歴史上人物が登場する。まあ、中段から予想は付いていたけどね。

    正月休みで、やっと溜まっていた録画を見終わりました。NHKドラマは、それぞれの役者が今迄の殻を破ろうと力演した。でも、わざわざイメージと違う役を演らせる必要はあったのか?という疑問は残った。

    2019年1月読了

  • テレビドラマの放送が始まった。
    書名は知っていたけれど、読んだことがなかったので、ドラマ第一話を見た。
    騒々しくて、内容もガチャガチャしていて、正直、なんじゃこりゃ、と思った。
    「昔はいけてたのに」という思いは、もちろん江戸の人にだってあったのだろうけれど、表現がそのまんま。
    ネオ時代劇(ミュージカルでもなんでもありのエンタメ時代劇)かと思ったのだ。
    それで、第一話で見るのをやめた。
    でもー、なぜか原作を読んでみようと思い立ってしまったのだ。

    お伊勢参りのガールズ・ロードムービーといった趣の小説。
    読んでみると、だんだん猪鹿蝶の三人に愛着がわいてくるから不思議。
    三人が自分の境遇を振り返り、自分が行くべき道をそれぞれ納得して進んでいくように変化していく。
    端的に言えば、二十八の三人(現代の年齢感覚だとアラフォーくらいにあたるだろう)が、本当の大人の女になっていくお話、と言えるだろうか。
    ここ辺りが丁寧描いてあって、納得して受け入れられるからだろう。
    特に、男勝りのお以乃の、次郎長との恋と別れはいい。

    時を重ねることによって見えてくる人間の多面性みたいなものに着目しているのも面白い。
    自分にも、友にも、「昔から変わらないなあ」という面があれば、「前はそんなじゃなかったのに」という面を見出したりする。
    ちょっとしたことだけど、それが人物像のリアリティにつながっているのかな、と思う。

  • 続きはないのかと調べまくりました。

  • この作家さんは好きなので何冊か読んでますが、毎回楽しめています。今回もワクワクしながらあっという間に完読。

  • 気軽に楽しめる

  • つべこべ言わずに楽しめる。

  • 若い頃は「馬喰町の猪鹿蝶」と呼ばれた三人組も今や三十路前。
    お以乃、お志花、お蝶は、ある日江戸から伊勢へと旅立った。
    それも、抜け詣り!
    立場は違えど、家に、境遇に鬱々としたものを抱える三人が、
    東海道を旅し、様々な事件に巻き込まれる、道中記。
    一膳めし屋のお以乃、御家人の妻お志花、小間物屋の女主人お蝶。
    かれこれ半年ぶりの再会が伊勢への抜け詣りとなったのですが、
    十八、九歳頃につるんでいた時とは異なり、それぞれの立場の
    違い、抱えている問題があります。それでも性格は変わらない。
    道中、それが原因で反目し合ったりもするのですが、
    いざ事件に巻き込まれると、過去のようにそれぞれの性格と特性を
    活かして一致団結する姿は、なかなかのもの。
    老夫婦を助ける人情物、恋に身を焦がす恋愛物、賭博場での
    立ち回り有りのアクション物と、バラエティーな内容です。
    それでいて、江戸、とりわけ東海道の風俗、伊勢詣りの様子等、
    きちんと描写されているところは、さすが。
    他の登場人物も良かった。特に、柄杓作りの正ちゃん(^^♪
    洒脱なご隠居一行も・・・彼等のように将来、三人組がまた、
    仲良くお伊勢詣りに出掛けられたら良いなぁと思いました。
    しゃんしゃんと♪

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著者プロフィール

作家

「2023年 『朝星夜星』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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