発達障害の子どもたち (講談社現代新書)

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  • 講談社 (2007年12月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784062800402

作品紹介・あらすじ

言葉が幼い、落ち着きがない、情緒が不安定。
育ちの遅れが見られる子に、どのように治療や養護を進めるか。
長年にわたって子どもと向き合ってきた第一人者がやさしく教える。


第1章──発達障害は治るのか
第2章──「生まれつき」か「環境」か
第3章──精神遅滞と境界知能
第4章──自閉症という文化
第5章──アスペルガー問題
第6章──ADHDと学習障害
第7章──子ども虐待という発達障害
第8章──発達障害の早期療育
第9章──どのクラスで学ぶか―特別支援教育を考える
第10章─薬は必要か

感想・レビュー・書評

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  •  著者の杉山登志郎氏は発達障碍者を幼少期から成人期まで長期間診てきた人で、データが豊富なので、他の発達障碍関係の本とは説得力が違います。よく一緒にされる精神遅滞と自閉症を合併している知的障碍、高機能自閉症とADHDの違いを解説しています。「第4章 自閉症という文化」「第5章 アスペルガー問題」は、自分では言葉で表現出来なかった自閉症の特性が解説されていて、目から鱗が落ちましたし、自閉症者の心情を代弁して下さっているように感じられて、とても感銘を受けました。自閉症者は一人一人症状は違いますが、このような世界に住んでいるんです。「専門家による治療より、家庭での教育が大切」「特別支援教育の重要性」「薬は必要な時に適量を飲む」を訴えています。正式な診断は下されていないけれど、高機能自閉症を疑っていて、「適切な治療や教育が受けられたら、今頃引きこもり状態にならずにすんだのに」と悔しい思いでいっぱいです。発達障碍について主張したければ、この本を読んでからにして欲しいです。一人でも辛い思いをする発達障碍の子供がいなくなり、皆、幸福な人生を送られますように。

  • 発達障害に関して知りたい時に、
    真っ先に読むべき本と聞いていたが、
    本当にその通りだと思った。

    まず発達障害といってもさまざまなので、
    それらを網羅的に分類しているので分かりやすい。

    そして一般的に陥りがちな誤解についても書かれていて、
    「あぶなかった・・・。」と自分をかえりみた。

    現場の第一人者なので、内容も具体的で説得力がある。
    社会システムについても述べられているので、
    どうすべきかという点でも役に立つ。

    事例の部分では、実際に発達障害の子を持つ親にとっては
    胸にチクチクしたものを感じるかもしれない。

  • とにかく物凄い情報量で、読むのが大変でした。
    ですが、それほど読む価値があるということ。
    しっかりと理解しておきたい話が多かったのでじっくりと読みました。

    発達障害に関しては研修も受けて自分なりに学んでいるつもりだったのですが、この本で語られる生の発達障害者の姿、事例、処置は、本当に貴重で、自分の理解の足りなかったこともスッキリとわかった。

    発達障害と児童虐待の関わりは盲点でした。
    たしかに虐待された子どもは、脳が萎縮すると聞いたことがありましたが、自閉症やADHDと似た症状が出るとは。
    この本では被虐待児についても、事例を交えて詳しく語られています。

    自閉症の話が個人的に興味深い。
    感情面では普通の人と同じでも、感覚過敏になってしまったり、抽象的な概念が理解できなかったり、過去の記憶が現在と並存するという、想像し難い感覚。
    筆者曰く〈文化〉だそうですが、以前『自閉症だったわたしへ』を読んだ時の不可思議な世界観の正体が明確に理解できました。

    特別支援教育の意義も再確認させられた本。
    発達障害者を子に持つ親はもちろん、発達障害者と関わるであろう職の人は、繰り返し読むべき本です。
    無関係に思われる人にも是非読んでほしい。
    それほどこの本には、発達障害者の理解や適切な対処を願う筆者の切実な思いがこもっています。

  • 発達障害に関わらない人にも学べる内容が多くあり、一読の価値を感じた。
    またもちろん、これから子育てをする人、子育ち中の方にも有用な内容であると感じる。

    本書は、発達障害の子どもが、障害の度合いが軽くなるにはどういった条件が考えられるのかについて書かれているが、その内容は一般の人が自分をどのようにセルフコーチングしていくかにとても参考になる内容であると思った。

    また、幸せな人生とは何かということも考えさせられた。

    発達障害に関わらない人にも是非読んで欲しい。

  • 情報量が多くまとまっていない印象を受けるが,著者の主張ははっきりしている.それは発達障害児にどのような教育を受けさせるべきかということであり,その理由,親や学校関係者になかなか理解されない現状,実施(未実施)状況などについて記してある.
    個別事例を交えつつ語る著者の言葉には説得力があり,それにもまして,現状を改善したいという思いが強く感じられる.

  • 2023/08/25 Kindle(セール)
    よい。

  • 発達障害の諸症状だけでなく、どのような場合にどの薬を用いるか、子どもの場合はどのような学校を選択するとよいのかなど、当事者の視点にたった説明に著者の人柄を感じる。当事者も支援者も、また一般社会でも、正確な知識や対処法についてまだまだ理解が不十分な分野だと思う。更に理解を深めたくなる。

  • 臨床経験の豊富な医師が知見を盛り込んだ発達障害の良書。
    自立とは何か。通級や支援学級の目安など具体的に書かれており、参考になることが多かった。

  • 最悪なのは「放置」

  • 発達障害とは何か?が体系的に学べる良本。

    本文の中にある、国語力が低いと自身の気持ちを表現できずストレスがたまり非行に走ってしまうというのは、
    発達障害の方だけでなく、健常者にも当てはまると思ったし、不安な気持ち、嫌な気持ち、それらを言語化することで気持ちの整理ができると学んだ。

  • 私は30歳になって発達障害と診断されました。
    そのことをとある席で話したところ、とある方からこの本を譲っていただきました。

    非常に良い本でした。

    当事者であっても支援者であっても、とにかく発達障害について知りたいなら必ず読んでおくべき本の一冊だと私は思います。

    もちろん、発達障害について関わることが少ない人にも読むのを勧めたい。
    勧めたいですが、ただし私としては「この本を読んだからって全ての誤解は解かれたなんて思わないでほしい」と忠告してから、それでも読んでと手渡したい。

    筆者は愛知県のお医者さんだそうで、私はもちろん会ったこともないお医者さんですが、きっと良い先生なんだろうなというのは読んで伝わります。沢山いるんでしょう、この先生——杉山登志郎先生——に救われた人は。

    「発達障害に関する世間の誤解を解きたい」という信念から冒頭が書き起こされ、次いで自身の携わった豊富な臨床例を——しかも失敗談も隠さず——引き合いに出しつつ、いわゆる「発達障害」の全体像をあぶり出していく。

    何度も読みました。読むたびに本当に良い先生なんだなぁ、という感じを覚えます。
    良い先生というのは、身の丈を超えたことを決して軽々しく言わないものです。知識を誇らず、数字(データ)と経験をベースに物を言います。心は誠実、謙虚。人には温かいまなざしを向けられると同時に、混迷した社会の現状に対して鋭く批判も出来る。
    ひょっとしたら騙されてるのかもわかりませんけど、この本を読んでいると、そんな良い先生のお人柄というものを感じます。

    もしこの先生に、人生の早い時期に診てもらうことがあったなら、私の人生も変わっていただろうか、なんてことも考えましたが、それはそれ。
    今の主治医も私にとっては良い先生なので、まずは頼れる人に全力で頼りつつ、与えられた脳味噌と、遺伝子と、環境の中で、謙虚に前向きに、生きていくだけです。

  • 約10年ぶりに再読。症例も交え、分かりやすく記載しており(約10年前の著作であり、DSM-5前のため、診断名の読み替えは必要であるが)、発達障害を理解するには入門書として最適かと思います。
    「小学生、中学生年齢から親しい交流があるもの同士が共に青年に成長するという経緯が必要で、いきなり青年を集めてもこのような支え合いは困難であるようだ。」のところは、敢えて触れなくても良かったのでは。標題のとおり「子どもたち」としているのだから...。

  • 2/5
    P.6−18
    「IQ70-84は境界域、IQ85以上を正常値」
    「3〜4年生でカリキュラムに抽象的なイメージ操作を用いる課題が登場する。接続詞や小数、分数など。ここでハードルが高くなり引っかかる児童がいる。この現象を9歳の壁という」

    2/6
    P.18-28
    「子供にとって最も大切なものの一つは自尊感情」
    「通常学級からたまに特別支援学級に通う:通級」
    「特別支援学級からたまに通常学級に通う:交流」
    「生殖医療において、発達障害も生じやすく、子ども虐待のリスクも高まる」
    「妊娠中の母親の心身に渡るコンディションが子どもの育ちに影響を与えるらしい」


    2/8
    P.28-40
    「人として生まれた子どもが、受精した瞬間から社会の中で生き、自立するまでの過程自体が『発達』」
    「発達を支えるものは子どもが持つ遺伝子と環境である。」
    「遺伝的素因ん解明は、障害を決定づけるものではなく、高リスク児に対する早期療育の可能性を開くもの」
    「小さい扁桃体が作られる原因は被虐待経験らしいことが現在最も有力な説。」
    「器質因(素因)と環境因との掛け算によって治療の対象となる精神科疾患が生じるという普遍的なモデル」

  • 発達障害の子を持つ親として、なかなか参考になる本がなかったが、本書は入門編としてとても優れている。
    一番いけないのは親が世間体を気にして子どもに適した方法を取らないこと。

  • 発達障害の明確な線引きは存在しない。
    障害があれば療育、支援級へとか診断がついてなければ普通級とかではなく、「障害有無でなく、社会生活に困ってるなら何らかの支援が必要」という単純なロジックに納得した。

    また、自閉傾向の世界観を表現した「知らないロシアの街に放り込まれ、日本語レストランを見つけたとき」という例えがわかりやすい。
    処理しきれないあふれる情報に囲まれ、よりどころとなるところにこだわるそぶりや、情報を遮断しようとするそぶりがいわゆる自閉傾向といわれるものにあたる。

  • 人生の早期に子供に挫折経験を与えて良いことは一つもない。 p.22

    この受精に始まる一連の過程は、それ自体、様々なリスクをはらんでいることに留意してほしい。一対の遺伝情報が二つに分かれ、その片割れ同士がくっついて新たな遺伝子の一対を組み上げるのであるから、その最初の作業自体がさまざまな困難をはらんだ仕事である。
    そもそも何のために、このような危ないことを世代毎に行わなくてはならないのか。これについて、固定した遺伝子は状況の変化に対応できないから、という説明がなされている。少しずつ変化するためにこそ、このような危ない橋を渡るのである。言い換えると、この段階で、すでに様々な突発的な変異が起きることが前提となっている。 p.26

    ちなみに現在、人工授精など生殖医療はどんどん進んできている。子供を望む夫婦の気持ちを慮ってか、生殖医療に対する積極的な批判はほとんど見あたらないが、不妊が生じるにはそれなりの理由があり、そこを強引に妊娠させる過程においてある程度のリスクがあがることは当然である。この本の中ではほとんど取り上げることはないが、実は生殖医療において発達障害も生じやすいし、また意外なことに、子供虐待のリスクが高まるのである。 p.27

    ひとたびその家族に子どもが加わったときには、子育ての単位としての機能が、子どもが全面的な世話を必要とする時期、少なくとも三年間、できれば十二年間、は求められる。これは発達障害の有無を越えた事実である。
     特に生後三年間は、できるだけ親は子どものそばにいてほしいと思う。そばにいるといらいらして虐待してしまうという場合も、困ったことに今日少なくないので、例外はあるとしても、人間の子どもという存在は、子育ての早期には養育者の絶対奉仕を要求するのである。もちろんそこには大きな喜びもあるのであるが。
     筆者としては女性の自立は必然でありまた必要でもあると思うが、誰かが子育てを担わなくては被害を受けるのは子どもの側であり、それは社会全体に十数年後には跳ね返ってくる。子育ては集団よりも個人のほうがよい。特に生後早期から数年間において個別のそだちが必要であることは、乳児院で育った子どもたちが後年、心の発達の問題を抱えやすいことからも、さらにイスラエルのキブツをはじめとするさまざまな実験からもすでに証明済みのことである。 p.32

    そだちの終着点

    遺伝子に蓄えられた情報は、環境によって発現の仕方が異なることが示されたのである。遺伝情報の発現の過程は、遺伝子そのものであるDNAの情報が、メッセンジャーRNAによって転写され、タンパク質の合成が行われることによって生じる。この過程が実は問題で、ここで環境の影響を受ける。多くの状況依存的なスイッチが存在し、環境との相互作用の中で、合成されるタンパク質や酵素レベルで差異が生じることが徐々に明かとなってきた。 p.34

    遺伝子の持つ情報は、学習、記憶、脳の発達、感情コントロールのレベルでどうやら環境との相互作用が生じるのである。つまり遺伝的素因の解明は、障害を決定づけるのではなく、高リスク児に対する早期療育の可能性を開くものとなる。 p.35

    チックはドーパミン系の神経経路の過剰反応を原因とする明らかな生物学的な素因があり、それなくしては生じない。しかし臨床における経過は、ストレスや緊張などの情緒的な問題が要因となり、良くなったり悪くなったりを繰り返す。……中略……一過性で自然軽快をするものが大半を占めるが、大声の叫びの反復など周囲に迷惑を生じる重度の不適応や、そこから発展して強迫性障害(ばかばかしいと分かっていても手を洗うなどある動作を繰り返さざるを得なくなるという状態)などはっきりとした精神科疾患に至るものもまれにある。この重症度については、素因もあれば環境因も関与している。 p.39

    「発達障害とは、子どもの発達の途上において、なんらかの理由により、発達の特定の領域に、社会的な適応場の問題を引き起こす可能性がある凹凸を生じたもの」 p.45

    従来、発達障害を非常に限定的に捉えていたために、比較的軽微なものに関しては、子どもの高い代償性もあって、その存在に気づかれずに青年期、あるいは成人期を迎えることも生じてきた。特に知的障害を伴わない軽度発達障害は、軽微とは言いがたいさまざまな適応上の問題を生じていても、発達障害の存在に気づかれずに経過する場合がある。 p.47

    知的障害を示す児童の89%までがIQ50-69の範疇に入る軽症の知的障害である。IQ50とは、成人に達したときの知的能力は健常発達の九歳前後と同等である。われわれの周りの小学校四年生を考えてみれば了解できるように、抽象概念操作や、複雑な知的作業は困難であるとしても、特別支援教育をきちんと積み上げてゆけば、このレベルの知的障害は社会的な自立を妨げることはない。一般的な単純作業であれば工場労働は可能であり、むしろ、就労の報告を見ると、単純作業においては就労継続率はむしろ高いことが報告されている。経済的な自立や結婚、子育てにおいても、必要な時のみ若干のサポートがあれば可能である。
    全体の約九割の知的障害児がIQ50以上ということは、知的能力そのものによって自立を妨げられる可能性があるグループは0.2%に過ぎず、精神遅滞の実測値である1%前後というのは、その実に八割まで、回避可能であった適応障害が生じたものであると言うことだ。 p.52

    このように適切な特別支援教育を受けて、知的障害を持っていてもきちんと就労し、ついに幸福な結婚と子育てが可能となった者と、その逆の道を辿った者とその道のりを見ると、発達障害の適応を決めるものは実は情緒的なこじれであるという事実がより鮮明に見えてくるのではないだろうか。 p.59

    境界知能の重要性の一つは、その多さである。計算上は14%の子どもがこの境界知能の範疇に入る。このレベルの児童は、実は小学校教師の力量が最も反映される児童でもある。これまでの状況をあえて単純化すれば、小学校中学年のいわゆる9歳の壁の前後に、良い教師に当たった境界知能児はこの壁を突破し、知能自体も小学校高学年には正常知能になることが多かった。それに対し、そのような教師に恵まれなかった児童は、ここでハードルに捕まり、知能自体も小学校高学年には知的障害のレベルに下がっていたのである。 p.60

    心因性視力障害はまさに学校の授業を受けることに困難があることを端的に示す救助信号である。 p.66

    F君のような児童は、中学卒業後に良き職人、良き労働者として十分に適応していたはずである。今日の学歴社会、そして第三次産業が圧倒的な割合を占める社会的な構造の中で、F君のような事例において、成長した後の良好な社会的適応を必ずしも保証できない状況となっている。 p.68

    成人の発達障害の方への対応のコツについても触れておきたい。今、あちらこちらから悲鳴が上がっているのを聞くからである。発達障害の治療においてもっとも必要なことは、障害に関する正確な知識を提供し、新たな自己認識を手助けすることであると思う。成人になって初めて診断を受けた事例を見ると、「よくここまで何もなく……」という不適応事例と、無駄に年を取っていないと実感させられる適応事例とに二分できる。
    不適応事例はほとんどがうつ病など併発症を持ち、被害的な対人関係を抱える事例も多い。このような事例では、障害の診断に対する受け入れは速やかである者が多い。ほぼすべてが目から鱗という感じで自己のハンディキャップについて納得をされる。つまり自己自身との関係修復は比較的容易である。 p.121

    認知の穴

    愛着行動としては次の三つがある。これらの行動はすべて乳幼児が不安になったときに特に顕著に表れる行動であることに注目してほしい。愛着者にじっと視線を注ぐ「定位行動」、愛着者にしきりに泣き声を上げたり声をかけたりする「信号行動」、愛着者に後追いをしたり、しがみつこうとする「接近行動」の三つである。
    愛着行動は、零歳代後半から始まり、二~三歳に第一反抗期をもって完成することが知られている。この時期になると目の前に愛着者がいなくとも、愛着者のイメージを想起するだけでそれほど不安に駆られることはなくなり、つまりしばらくの間であれば養育者から離れることができるようになってくる。この愛着行動は安定した対人関係の基礎とも言うべきものである。
    さてこの愛着の形成に支障が生じた状況が、反応性愛着障害である。子ども虐待において、安心を与えてくれるはずの養育者から被害を受けるのであるから、重大な情緒の混乱を来すことはご理解いただけるであろう。この障害が、対人関係の重大な問題に至ることは当然として、重要なことは衝動や怒りのコントロールの障害を来すことである。愛着が、子どもが不安に駆られた時に見られる行動であることを思い起こして欲しい。愛着形成に決定的な問題が生じると、子どもは不安な時に自分を慰め、安心させる術を持たないままに成長するのである。 p.150-151
    だから、依存症になりやすいんだ。
    私はソリティアの画面をにらみつけながら泣いてたな。

    母親の診断は、いずれも当科においてなされたものであり、子どもの問題で受診した際に、母親自身の問題が明らかになったものである。大多数の母親自身に障害についての告知を行ったが、自分自身の対人関係のあり方や社会的な能力に対して不全感をすでに覚えていた方が多く、受容は良好であった。この約八割に子ども虐待が認められたが、母子へ行こう治療によってその大半に改善が認められたのである。 p.153

    彼が暴れ出すと夫のイメージと重なってしまい、K君の気持ちを受け止める気にはならないという。母親は明らかにうつ病の状態であった。 p.155

    被虐待児が発達障害児のような行動をとることについて
    解離とは、脳が器質的な傷を受けたわけではないのに、心身の統一が崩れ、記憶や体験がバラバラになる現象の総称である。心的外傷体験(トラウマ)のみで生じるものではないが、トラウマによって起きる精神症状のうちもっとも頻度が高いものの一つなので、トラウマ臨床とは不可分の関係にある。 p.157

    しかし多動の生じ方は、ADHD様症状ではムラが目立ち、非常にハイテンションの時と、不機嫌にふさぎ込む状態とが交代で見られることが多い。特に夕方からハイテンションとなり、寝る前までそれが続く。これはおそらく、午前中は抑うつが強いからではないかと考えられる。それに比べて一般的なADHDは眠くなると多動がひどくなるが、一日の多動にそれほど大きな変化はない。対人関係のあり方は、ADHDは単純で率直であるが、ADHD様症状は逆説的で複雑である。そして何よりも、問題に直面した時に、解離反応が起きて朦朧としてしまったり記憶が飛んだりすることは、純然たるADHDには見られない症状であり、ADHD様症状の大きな特徴である。 p.160

    幼児にとっていちばん必要なものは、障害の有無に関わりなく安心の提供である。子どもが最も安心して過ごせる家庭環境とは何だろう。これは逆の場合、つまり安心して過ごせない環境が何かを考えてみれば答えは容易に得られる。言うまでもなく虐待環境である。
    これは直接的な虐待に限らない。夫婦の深刻な喧嘩が繰り返される状態は、安心できる環境の対極にあり、心理的虐待の一種である。実は親子関係の安定以前に、夫婦関係が安定していることがもっとも大きな要因となるのである。多人数のサンプルによる調査からは、親子関係よりも夫婦関係の方が子どもの心の問題に大きな影響を与えることが示されている。また両親は完璧な親である必要は全くない。小児科医であり高名な精神分析家でもあったウィニコットは、良い母親とはgood enough(ほどほどに良い)であることという有名な言葉を残している。子育てのような双方向の関わりの場合、完璧であることは、逆にしばしば重大な問題となることすらあるということは、小児科医であれば誰でも周知のことではないだろうか。 p.185

    コミュニケーションの課題としては、発語よりも、まずは言葉の理解が課題となる。その前提となるのは模倣の能力である。園での指遊びが出来る、あるいはリズム体操の模倣ができるなどといった能力は表象機能に直結している。特に後模倣と呼ばれる、その場で即時に模倣するのではなく時間が経ってから思い出しながらの模倣が可能であれば、イメージを作る能力が備わった指標となる。さらに、たとえば園のスモックを見たら登園、買い物袋を見れば買い物の外出、タオルを見れば入浴と分かって次の行動ができるなど、状況判断ができることもまた、コミュニケーション能力の基盤となる。このように、遊びや身辺の課題は全て、表象機能の前提となる課題であり、それであるからこそ、コミュニケーションの課題よりも優先順位としては上位に位置するのである。
    一般的に話し始めるためには、理解語彙は三十語から五十語は必要である。単語が出始めてしばらくすると、オウム返しが見られるようになる。発達障害の臨床においては、オウム返しが出現すれば、それからコミュニケーション可能な発語まではあと一歩であり、一安心ということになる。さらに発語語彙が100を越えたあたりで二語文が登場するようになり、言葉は急速な発達を見せるようになる。 p.187

    おおむね著者の意見に同意だが、発達障害の親に虐待されて生きることに困難を抱えている子どもを発達障害児呼ばわりするのはやめて欲しい。
    仕事に誠実に取り組んできた証拠なのだろうが、この人は発達障害の側に立ちすぎている。この人の立場を思うと大正解だけどね。

  • 周りの人の発達障害の不勉強や、もしダメだった時に自尊心を損なってしまうというリスクを考慮すれば、発達障害の子どもは通常学級ではなく、ある程度専門知識を持つスタッフが手厚く就職においてもサポートしてくれる特別支援学級に通った方が良いという考えのように、しっかりと自身の体験を用いて主張を導いてくれています。読めば、まずは正しい知識を身につけることが大事だと改めて思うと思います。そして、皆が正しい眼を持って個々が取り組むことが筆者の本作を執筆に至った想いであり願いだと思います。

  • 発達障害のこどもを持つ親って大変そう!というイメージしかなかったけれど、いろいろな対処法があることがわかった。早期の対応によって、かなり社会に適応できるようになる。
    我が子が発達障害かもしれないという不安を抱える親は、適切な対応をするため、また、無駄な不安を抱えないために是非読んでみるべき本だと思う。

  • 大学授業の指定で読んだ。
    特別支援教育の幅広い問題点が概観されている、密度の高い本。
    医者としての立場で真摯に発達障害の療育に取り組んでこられた筆者が、幼児期から成人期までを見通して提言されているため、
    かなりしっかりした論調で、問題と提言が整理されている。
    全面賛成できない面や、教育環境等で他の意見をぶつけてみたいと
    思った点もあったが、教師の参考書としてはかなり勉強になる。

  • 何となく発達障害について信じていたことが見事に打ち砕かれた。人生というスパンで見て実用的、実践的な内容である。発達障害は当然のこと、健常児の教育、育児についても益するところ大である。

    ・不妊が生じるにはそれなりの理由がある。
    ・非行のような、日本では環境因が決定的と思われている問題も、生物学的な素因と環境因を比較すると、前者の方が圧倒的に高い。
    ・強いトラウマ反応を生じる個人は、もともと扁桃体が小さい。小さい扁桃体は遺伝もあるが、被虐待体験が大きい。
    ・国語力の不足が内省力の不足に直結し、悩みを保持することができず、非行に走りやすい。
    ・逆転バイバイと疑問文による要求on自閉症児。
    ・自閉症は統合失調症とは逆に語ることは困難であるが、書かせると容易になる。
    ・自閉症は基本的な感情は同一。
    ・一度に複数の情報を提示しない。
    ・不登校外来を受診した5割になんらかの発達障害が認められ、その8割は高機能。
    ・高機能は広汎性発達障害は8割が深刻ないじめを受けていた。
    ・文脈から理解することが困難で、人の気持ちを読むことや人の気持ちにあわせて行動することができない。
    ・広汎性発達障害の子どもは迫害体験があるために、対人関係のあり方を被害的に読み誤ることを繰り返す。
    ・早期診断、虐待、いじめから守る。触法行為から守るために。
    ・中学生から仕事の練習の機会を持つことが必要。
    ・被虐待児は5才以下…反応性愛着障害、6才から…解離性障害、12才から非行の割合が増える。
    ・虐待的絆の考慮。その後の愛情だけでは困難。
    ・10才までに身についた言語や、非言語が一生の基本になる。
    ・完璧な親はしばしば重大な問題になる。親子関係よりも夫婦関係が重要。
    ・言語療法、作業療法はお稽古事同じ。
    ・日本の生徒は中退、不登校、非行、殺人どれも欧米の数分の一から十数分の一。

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著者プロフィール

福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任教授

「2023年 『そだちの科学 40号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

杉山登志郎の作品

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