- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062810289
作品紹介・あらすじ
中曽根内閣の官房長官で辣腕を振るい、歴代の政権にも隠然たる影響力を持った男・後藤田正晴-混乱する政局を舌鋒鋭く斬り、"カミソリ"の異名を取った彼の直言は、各界から幅広い支持を得てきた。そんな著者が自らの波瀾の人生を振り返った、貴重な戦後政官界の秘史が本書である。上巻は、軍隊時代から内務省、警視庁などを経て、警察庁長官、田中角栄内閣の官房副長官を歴任し、田中派議員として台頭するまでを収録している。
感想・レビュー・書評
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行政の仕事に通じた切れ者に、東大卒の学者がインタビューを行う。
前提をある程度共有する二人の間で会話のラリーが続くが正直おいてけぼりをくう所もあった。
個人的には国会議員になってからの話の方が知ってる人や聞いたことのあるエピソードもあって読み易かったと思う。
戦後の混乱や安保闘争、選挙の失敗などを経て得た教訓が随所に散りばめられていて勉強になる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
官僚として内務・警察・防衛・自治行政に携わった後、自民党に所属する衆議院議員として内閣官房長官等を務め上げ、中曽根内閣における行政改革を推進した後藤田氏の半生を本人の語りによりまとめた回顧録。
日本の戦後復興と経済成長を官僚と政治家という異なる職責から担ってきた人間だけあり、日本の戦後政治史を理解する上で貴重な語りであるのはいうまでもないが、本書の素晴らしさはこのタイトル「情と理」に表れているように、いかにこの両極のバランスを取りながら物事を推し進めていくことが大事かを学ばせてくれる点にある。
そのターニングポイントになったのはやはり初めての選挙での落選であり、その際に本人が「(落選したことで)人間が変わっちゃったよ」と語っているように、官僚として生きてきた自身が、自立した個人として有権者を見ていなかったことへの反省なのだろう。その後の政治家としての生きざまにおいては、自民党の一党体制が長く続く中で、派閥抗争のダイナミズムも当然のごとく描かれるが、どのように”情”を持って自民党の各派閥のバランスを取り、政治を安定的に進めていくかということに関する苦心が生々しく語られている。
描かれる時代は、自身が物心付くまでのものが大半であり、自身が歴史的事実としてしか捉えていなかった日本の戦後史を別の観点から見れる面白さも含め、多くの人に推薦できる一冊。 -
戦前から戦後にかけての断絶・継続、官僚のパワーバランス、逮捕後の田中角栄の暗躍、行政改革の歴史など、実に興味深い。
戦前に内務省に入省し、その後警察庁へ、あさま山荘事件をはじめ学生運動が過激な時代に警察庁長官をつとめ、退官後62才にて政界入り、田中角栄の懐刀として活躍後、中曽根内閣時の官房長官時代に辣腕を奮ってカミソリの異名をとる後藤田の目から見た20世紀である。
省庁統合の難しさを痛感するくだりでは、ひとつのポストの増減をめぐって省庁間で激しい応酬があった様子が書かれている。
イランイラク戦争でアメリカの要請によりペルシャ湾に自衛官を派遣する話が出た際、強硬に反対し、総理を思いとどまらせる。「これは戦争になりますよ、国民にその覚悟ができていますか」。状況は今も同じだと思われる。
なお、本書は聞き書き(オーラル・ヒストリー)である。自伝が、多かれ少なかれ自慢話と自己弁護に傾きすぎるきらいがある中で、一定の歯止めとなっており読みやすい。 -
「そもそも、『カミソリ』を形成したものは何だったのだろうか。本人が生れ持った資質の他に、何が作用したのだろうか」(下巻・「解説」より)
筑紫哲也氏(ジャーナリスト)推奨!
中曽根内閣の官房長官で辣腕を振るい、歴代の政権にも隠然たる影響力を持った男・後藤田正晴――混乱する政局を舌鋒鋭く斬り、“カミソリ”の異名を取った彼の直言は、各界から幅広い支持を得てきた。そんな著者が自らの波瀾の人生を振り返った、貴重な戦後政官界の秘史が本書である。上巻は、軍隊時代から内務省、警視庁などを経て、警察庁長官、田中角栄内閣の官房副長官を歴任し、田中派議員として台頭するまでを収録している。 -
数年前に単行本を読んだが、文庫版の存在を知り再読。
読み終えて、やはりバランス感覚に優れた政治家だったと感じるし、言葉もズッシリ重いように感じた。
三角大福時代の話は、伊藤昌哉氏の「自民党戦国史」も読んでおくと、より面白く臨場感を感じる。 -
買って良かったと思える本。後藤田の評伝は佐々淳行の本で十分かなとも思ったが、御厨の手法によるオーラルヒストリーも非常に読み応えがあり、記述者のバイアスがほとんど無いだけにストレートで生々しく、かつインパクトがある。
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「カミソリ」と称された後藤田正晴。中曽根内閣の官房長官で辣腕を振るい、歴代の政権にも影響力を持っていた。笑うと人なつっこさを感じさせるところもあった。好き嫌いはともかく、プロフェッショナルを感じさせた人だった。