情と理 -カミソリ参謀回顧録- 下 (講談社+α文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062810296

作品紹介・あらすじ

中曽根内閣の官房長官で辣腕を振るい、歴代の政権にも隠然たる影響力を持った男・後藤田正晴-混乱する政局を舌鋒鋭く斬り、"カミソリ"の異名を取った彼の直言は、各界から幅広い支持を得てきた。そんな著者が自らの波瀾の人生を振り返った、貴重な戦後政官界の秘史が本書である。下巻は、田中派支配、中曽根内閣官房長官時代の秘話、田中派分裂、リクルート事件、連立政権誕生などを収録している。

感想・レビュー・書評

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  • 後藤田氏は、三角大福中の怨念にも近い確執とか、リクルートをはじめとする汚職事件とかを経て行政改革に取り組んで行ったよう。

    中選挙区の解消はなったが、後藤田氏が二十一世紀の一桁までかかるだろうと予測していた、政権交代が可能になり相互チェックが働くようになる状況はまだ実現していない。個人的には立憲民主党に頑張って欲しいと思っているけど、なかなか厳しいでしょうね。

  • 官僚として内務・警察・防衛・自治行政に携わった後、自民党に所属する衆議院議員として内閣官房長官等を務め上げ、中曽根内閣における行政改革を推進した後藤田氏の半生を本人の語りによりまとめた回顧録。

    日本の戦後復興と経済成長を官僚と政治家という異なる職責から担ってきた人間だけあり、日本の戦後政治史を理解する上で貴重な語りであるのはいうまでもないが、本書の素晴らしさはこのタイトル「情と理」に表れているように、いかにこの両極のバランスを取りながら物事を推し進めていくことが大事かを学ばせてくれる点にある。

    そのターニングポイントになったのはやはり初めての選挙での落選であり、その際に本人が「(落選したことで)人間が変わっちゃったよ」と語っているように、官僚として生きてきた自身が、自立した個人として有権者を見ていなかったことへの反省なのだろう。その後の政治家としての生きざまにおいては、自民党の一党体制が長く続く中で、派閥抗争のダイナミズムも当然のごとく描かれるが、どのように”情”を持って自民党の各派閥のバランスを取り、政治を安定的に進めていくかということに関する苦心が生々しく語られている。

    描かれる時代は、自身が物心付くまでのものが大半であり、自身が歴史的事実としてしか捉えていなかった日本の戦後史を別の観点から見れる面白さも含め、多くの人に推薦できる一冊。

  • 「死去の直前までの10数年間、何かが起きるたびに、それをどう見たらよいのか、その『診断』を求めたくなるのが私にとって後藤田氏だった」(「解説」より)
    筑紫哲也氏(ジャーナリスト)推奨!

    中曽根内閣の官房長官で辣腕を振るい、歴代の政権にも隠然たる影響力を持った男・後藤田正晴――混乱する政局を舌鋒鋭く斬り、“カミソリ”の異名を取った彼の直言は、各界から幅広い支持を得てきた。そんな著者が自らの波瀾の人生を振り返った、貴重な戦後政官界の秘史が本書である。下巻は、田中派支配、中曽根内閣官房長官時代の秘話、田中派分裂、リクルート事件、連立政権誕生などを収録している。

  • 中曽根内閣の官房長官で辣腕を振るい、歴代の政権にも隠然たる影響力を持った男・後藤田正晴ー混乱する政局を舌鋒鋭く斬り「カミソリ」の異名を取った彼の直言は各界から幅広い支持を得てきた。そんな著者が自らの波瀾の人生を振り返った、貴重は戦後政官界の秘史が本書である。下巻は、田中派支配、中曽根内閣官房長官時代の秘話、田中派分裂、リクルート事件、連立政権誕生などを収録している。(親本は1998年刊、2006年文庫化)
    ・第十一章 政治家の運勢は一瞬の判断が将来に影響する
    ・第十二章 激しい党内抗争が教訓で「和の政治」を目指す 
    ・第十三章 内閣発足当日まで応諾しなかった官房長官就任 
    ・第十四章 省庁統合の難しさを痛感する 
    ・第十五章 選挙制度と税制の改革に悪戦苦闘
    ・第十六章 緊急事態に縦割り行政の弊害
    ・第十七章 田中派の分裂から後継総裁指名までの真実
    ・第十八章 政治改革のうねりと世代交代の波 
    ・第十九章 自衛隊派遣、死刑制度、検察人事に物申す
    ・第二十章 自民党政権の崩壊から連立政権への道程
    ・インタヴューを超えて 伊藤隆・御厨貴
    ・解説 筑紫哲也
    ・後藤田正晴の経歴と略年表 

    再読。読むほどに発見がある。本書は、内務省、警察庁、自治庁(省)などに奉職。警察庁長官を勤め退官後に官房副長官。政界進出後は、官房長官、法務大臣など閣僚となった後藤田正晴の回顧録である。官界政界の重鎮であった氏の証言がつまらない訳が無い。
    下巻では、政界での貴重な体験が語られている。印象に残ったものを抜き出すと、イラン・イラク戦争の時に掃海艇の派遣を阻止したエピソードでは、実行の責任を負う、防衛庁の長官の意見さえ軽視する外務省の態度に苦言を呈しているが、理路整然としており、感情的に派遣反対を訴えている訳ではない。p228
    また、自衛隊のPKOの武器使用の問題。正当防衛を個人の判断で、責任で使用することとしていることにも、指揮官の命令で正当防衛として武器を使用すべきと疑問を呈している。p312
    両方に共通しているのは、なし崩しにやるのではなく、法律を作ってやれという点である。ゆえに、筋の通らない事には手厳しい。自民党総務会における多国籍軍支援のための法律案でのやり取りを読むと、危惧の念を抱かざるを得ないp308

    本書は、貴重な歴史の証言としても、今後の政と官のあり方を考えるヒントとしても、広く読まれるべき本としてオススメである。

  • 中曽根内閣の官房長官であった時の危機管理の話や、田中派分裂時の話など、とても興味深かった。

  • オーラル・ヒストリーの典型、らしい。
    やや、自分の都合のいいことばかり喋っているきらいがある。

  • ■一点だけ印象に残った。「司法試験は絶対に改正する必要がある。あのギルド組織はよくない。(中略)もう少し年齢制限があって然るべきだよ、あるいは人数を思い切って増やして、ギルド組織はよせと言ったことがある。司法試験のあり方、そして若返りが必要ではないかなとと思いますね。」

    アメリカの圧力だけでなく後藤田正晴も、司法社会に対して改革の必要性わ唱えていたという点が印象的。

    ギルド組織は確かに良くないが、人数を増やしたとところで需要がないので受け皿がないというのが現段階の状況。
    法科大学院は崩壊すると思うが、崩壊した後の制度の建て直しをどうするのか。。。。

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