エンデの遺言 ―根源からお金を問うこと (講談社+α文庫)

  • 講談社
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本棚登録 : 601
レビュー : 43
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062814195

作品紹介・あらすじ

『モモ』『はてしない物語』などで知られるファンタジー作家ミヒャエル・エンデが日本人への遺言として残した一本のテープ。これをもとに制作されたドキュメンタリー番組(1999年放送/NHK)から生まれたベストセラー書籍がついに文庫化。忘れられた思想家シルビオ・ゲゼルによる「老化するお金」「時とともに減価するお金」など、現代のお金の常識を破る考え方や、欧米に広がる地域通貨の試みの数々をレポートする。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は現代の経済を考える上で、必読の書である。いや、地球の問題と言い換えてもいいかもしれない。エンデは別の本でこう言っている。「第三次世界大戦はもう始まっているのです。それは時間の戦争です。ある地域が別の地域に仕掛ける戦争ではなく、ある時代が別の時代に仕掛ける戦争です。われわれは、自分たちの子や孫が生きてゆけないような世界を作り出そうとしているのです。」このままいけば、決定的な経済的破綻が起きるか、さもなくば地球が滅亡するだろう。
    根源はどこにあるのか。エンデはロシアのバイカル湖のエピソードを紹介する。その湖畔の人々は、日によって漁の成果は異なるものの、毎日売れるだけの魚を採り、自宅や近所の食卓に供していた。彼らはよい生活を送っていた。しかし、ある日紙幣が導入される。それと一緒に銀行のローンもやってくる。状況は一変した。漁師たちはローンで大きな船を買い、より効率的に魚が取れる漁法を採用する。採った魚は遠くまで運搬できるように、冷蔵庫が建てられた。漁師たちはさらに大きな船を買い、より早く、より多くの魚を採ることに努めた。ローンを利子付きで返すためにも、そうせざるを得なかった。競争に勝つためには、相手より早く、より多く魚を採らなければならない。その結果、湖には魚が一匹もいなくなってしまった。
    この話は、どこか『モモ』に似ていないだろうか。そう、エンデは経済について深く考えていた。問題は明白であろう。それはお金のあり方にある。
    いかなる物も、時とともに劣化する。食べ物は腐り、服は傷む。しかし、お金だけは劣化しない。昨日の千円は、今日も千円である。したがって、人は物よりもお金を所有しようとする。物は溜め込んでも無駄になるが、お金はいくらでも溜め込むことができるからである。だから、自然の収奪が起こる。環境問題の根はここにある。
    もうひとつ、お金には重要な問題がある。それは利子である。考えてみれば、利子はヘンなものである。これも物と比較するとわかりやすい。たとえば、あなたが食べきれないほどの食べ物を持っていたとする。そのままにしておけば、食べ物は駄目になってしまう。そこへ誰かがやってきて、その食べ物を分けてくれと言う。その代わり、あなたが必要なときに、同じだけの新鮮な食べ物を返すから、と。そうすれば、あなたは喜んでその人に食べ物を分け与えるだろう。このように、物ベースで考えれば、利子などもらわなくても、あなたは十分得をしていることがわかる。利子には何の根拠もないのである。マルクスのいう剰余価値は、内在的な理論ではないということだ。
    利息をとってお金が貸し出されると、借りた方は自分が売るモノやサービスの価格に、その利息分を上乗せしなければならなくなる。ということは、この利息は人々が作り出した富から、その分だけ富を取り去っているのである。ちょうど、時間泥棒が人々から時間を取り上げたように。つまり、利息とはまだここにない未来から得ている利益である。そのことが、経済に無限の成長を強制する。
    すべての問題の根源は、いまの貨幣システム、つまり「お金」のあり方にある。それを変えることができるかどうか、それがわれわれ人類がこの惑星上で今後も生存できるかを決める決定的な問いだ、とエンデは言う。では、その具体的な方法はあるのだろうか。それは本書を読んで考えていただきたい。この本にはそのヒントが散りばめられている。

  • 仮想通貨ビットコイン、お持ちですか?
    私は、まったく興味がなかったのですが、
    最近のニュースで、私の予想よりもビットコインを持っている人、使用している人がはるかに多いことを知りました。
    たしかに、「お金」を持っていると、欲しいものが買えたり、旅行ができたりします。(価値あるモノとの交換)

    将来、病気の療養や介護が必要になった時に、
    お金が頼りになるという側面もありますね(資産)

    仮想通貨で持つのがいいのか、日本円で持つのがいいのか分かりませんが、
    「できるだけ、たくさんのお金をほしい」
    「持っているお金をもっと増やしたい」
    そういう気持ちは、多くの人に共通するものなのかなと改めて、考えているところです。

    ただ、どのくらいの「お金」があれば十分なのかは、人それぞれかもしれません。

    「モモ」「はてしない物語」などの著者であるミヒャエル・エンデのインタビューや蔵書をもとにまとめられた「エンデの遺言」を手に取りました。

    より良い人生を生きるための「お金」であるはずが、
    「お金」を得るために、心と身体を消耗しているようなことが起こる。
    それは、なぜか。
    「お金」そのものの性質について、改めて考えさせられる本でした。

    この本に文章を寄せている河邑厚徳さんによると、
    エンデは、人は目に見える危機には対処できるが、目に見えない危機には無力な存在であると言っている。
    解決ができないような根源的な問題に対しては、気が付いていても目をそむけていると言った方がよいのかもしれない。
    さらに、エンデは、かつては、過去の文化や歴史を学ぶことで、現代の問題にどう対処すべきかが了解できたが、私たちが今、向き合っている「お金」の問題では、どう考えるべきかの規範が過去にはない。したがって、未来を想定し、何が起きて来るか予言的に直視しなければならないと語っている。
    問題解決を、過去からではなく、未来から考える。それが、エンデのファンタジーの力である。

    「お金」を求める気持ちを考えるとき、その心には、未来に対する漠然とした不安があるように思います。

    これから先、どんなことが起こるか分からない。
    経済の動向、高齢化社会、加齢に伴う体力や気力の低下などなど、
    不安につながる要素が出てきた時、
    とりあえず、それらに関連する危機を乗り切れるように備えておきたい気持ちになります。
    頼りにできるのが「お金」。
    「お金」を所有することで、安心が担保されるという発想が沸いてきます。

    いざと言う時に頼りにできるのは、「友達」「地域の人々」と思えたら、
    「お金」も大事だけど、「お金」を求める気持ちはそれほど強くないかもしれません。

    一方で、孤立していて、友達や地域の人々など頼りにならないと思ったら、
    「お金」を頼りにするようにも思います。

    「お金」は、万能ではないということに、改めて気が付かされた一冊です。

  • 大西つねきさんの講演等で時々出てきたミヒャエル・エンデの『モモ』の灰色の男たちが金融における「利子」であるという話。この本はそれについて書かれたものだ。もとはNHKの番組として考えられていたもの。
    もとNHKの方によるエンデのお金についての話のほか、それぞれ専門の方による、使わないと価値が減るお金の話(シルビオ・ゲゼルの話)や地域通貨(イサカアワー)の話なども面白かった。とはいえ、もともとが経済や金融の分野に疎い人間だったので、そういったことを勉強し始める1年以上前の私だったら、ちんぷんかんぷんだったかもしれない。
    地域通貨は日本では一過性のブームだった感もあるが、きちんと有効に働いている地域が世界にはあるのだと目から鱗だった。そういえば、ドラマ『義母と娘のブルース』のスペシャルで、みゆきちゃんがサークルでそれらしいものを使ってたから、日本でもそういう使われ方をしている地域があるのかもしれないとは思うけど。
    この本を読んでる途中で、都知事選の山本太郎さんの街宣を聞いてて、アッと思ったことがある。それは、都民に配ると約束している10万円。本当はそれを期限付きのものとして配りたいという希望を語ったことだ。もちろん、今回当選したとして、現金で配る以外の方法はすぐにはできないと思うのだけど、これこそシルビオ・ゲゼルの考え方だったから。価値が減るお金を人は長く持とうとはしない。使ってしまう。そこで経済が循環するというものだ。その理論は今から100年以上前に考えられたもの。素人で知ってる人は少ないかもしれないが、経済の歴史を勉強している人なら知ってるだろうから、提唱した人の名前は知らなくとも、太郎さんが読んだ本やレクチャー受けた話の中に、そういう景気刺激策が入っていたのかもしれない。

    気になったのは、主著者である河邑さんの文章の中に、赤字国債を懸念する箇所が見られたこと。まあ、私も昨年秋くらいまでは、よくわかっていなかったからこの本が書かれた当時だとなおそうだったのだと思うけど。
    ちなみにこの方、辰巳芳子さんのドキュメンタリー映画とか撮られた方らしい。
    この方にも、日本における国債がどういう働きをしてるのか、赤字というものが本当はどういう意味持つのかを知ってほしいと思うばかりだ。

  • 金利がプラスということを前提に経済を組み立てていることの矛盾をおしえてくれる。モモの背景を理解するのにとてもよかった。
    漏れバケツ理論や地域通貨を理解するのにも良い。

  • 弱さの思想から
    お金について

  • NHK番組『エンデの遺言』をベースにした本。副題のとおり、「根源からお金を問う」ことがテーマとなっている。
    エンデ及び彼に強く影響を与えたシルビオ・ゲゼル等の思想をもとに、利子の問題点を指摘し、あるべき「お金」の姿として、減価していく「エージング・マネー」を提起し、その実践として、各地の「地域通貨」の取組を紹介している。
    本書を読んで、「お金」についての考え方を根本から揺さぶられた。本書で述べられている「お金」についての指摘は、本質を突いているように思った。今すぐに現在の「お金」のシステムを変えることは難しいと思われるが、その一歩として、「地域通貨」の試みには一定の意義があると感じた。

  • 物々交換の代替として登場した貨幣であるが、今となっては、利息がつくのが当たり前のものになり、本来の意味がなくなった。これこそ、金持ちがより金持ちに、貧乏がより貧乏になる原因なのだと、指摘。

    ヴェーラという貨幣
    ただし、自由貨幣という価値が減少する貨幣。
    スタンプ制を採用し、額面を維持する場合は、スタンプを購入する必要あり。
    不況による蓄財を抑制し、市況の活性を促した。
    1920年の世界恐慌時代のドイツ

    イサカアワーという地域貨幣。現在は、使いづらい貨幣に。

  • 「モモ」の作者エンデはお金を根本から問い直すことを示唆した。交換の為のお金、それはいいだろう。貯蓄、投機の為のお金、それは別のものではないのかと。老化するお金、時とともに減価するお金。それを提唱したシルビオ・ゲゼルの思想を現代に呼び戻そうとさまざまな地域通貨が使われているという。お金に利子は付き物と思っていたが、使わなければ減価するお金という考え方があったのだ。それが地域社会を活性化させている事例がある。さて、それは日本で可能だろうか?

  • お金とは何か、それを我々は経済の中でどう位置付け、どのような種類のお金があったのか、よくわかる本であった。地域通貨、交換リング、モモ:時間貯蓄銀行、シルビオ、ゲゼル、イサカアワー、交換と尺度、交換手段、価値の保存、価値の尺度、投機的支配、支配の道具、等お金の本質がよくわかった。これからは電子マネー、地域通貨、キャッシュレス経済になっていくのでお金の考え方はもっと変化していくと思われる。

  • お金について新たな知見を与えてくれる本。

    書かれている内容はなかなか難しいところもありましたが,現在の貨幣制度の問題点と,それを克服しようとする試みの歴史があったことをこの本で初めて知りました。

    その一方で,今も仮想通貨が投機的に利用されている現実があり,人々の意識を変えていくのは相当困難を伴うであろうと思いました。

    地域通貨について,それが貨幣制度の問題克服に有益なのは分かりましたが,その導入にはマイナス面もあるのではないかと考えます。良い面ばかりではなくて,問題点についても記載されていれば,なおよかったです。

    仮想通貨の技術は画期的だそうなので,貨幣制度の問題克服(地域通貨の導入など)に活かせないものかと思いました。

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著者プロフィール

1948年生まれ。
映画監督。大正大学特命教授。71年東京大学法学部卒業。NHKディレクター、プロデューサーとして『がん宣告』『シルクロード』『チベット死者の書』『エンデの遺言』などを制作。長編ドキュメンタリー映画作品として『天のしずく 辰巳芳子“いのちのスープ"』『大津波3.11 未来への記憶』『笑う101歳×2 笹本恒子 むのたけじ』がある。

「2017年 『むのたけじ 笑う101歳』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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