モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか (講談社+α文庫)
- 講談社 (2015年11月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062816199
作品紹介・あらすじ
停滞を打破する新発想!
〈モチベーション3.0〉とは何か?
コンピューター同様、社会にも人を動かすための基本ソフト(OS)がある。
〈モチベーション1.0〉…生存(サバイバル)を目的としていた人類最初のOS 。
〈モチベーション2.0〉…アメとムチ=信賞必罰に基づく与えられた動機づけによるOS。ルーチンワーク中心の時代には有効だったが、21世紀を迎えて機能不全に陥る。
〈モチベーション3.0〉…自分の内面から湧き出る「やる気!=ドライブ!」に基づくOS。活気ある社会や組織をつくるための新しい「やる気!」の基本形。
21世紀版『人を動かす』はこれだ!!
20世紀の半ば、数人の科学者が、人間には従来とは異なる動機づけもある、と主張するようになった――いわゆる「内発的動機づけ」だ。その後数十年の間、行動科学者はその原動力を解明し効能を説明してきたが、残念なことにビジネスの世界はこの新たな認識を十分に生かしきれていない。組織を強化し、人生を高め、よりよい世界を作るべく、ダニエル・ピンクが科学の知識とビジネスの現場の間に横たわるギャップを埋めた意欲作。
『ニューヨーク・タイムズ』『ワシントン・ポスト』ほか全米大ベストセラー
●本文から
本書のテーマは、モチベーションである。モチベーションについて信じられていることの大半が、とてもではないが真実とは言えない。ハーロウとデシが数十年前に明らかにした知見のほうがずっと真実に近い。これを本書で示したい。厄介なのは、動機づけについて、多くの企業が新しい知識に追いついていないという点だ。今なお、きわめて多くの組織――企業だけではなく、政府機関や非営利組織も同様に――が、人間の可能性や個人の成果について、時代遅れで検証されていない、科学というよりほとんど俗信に根ざした仮定に基づき運営されている。目先の報奨プランや成果主義に基づく給与体系は機能せず、有害な場合さえ多いという証拠が増えているにもかかわらず、こうした慣行を続けている。さらに悪いことには、このような慣行が学校にも行き渡っているのだ。勉強を「奨励する」ために、将来の働き手である子どもたちを、iPodや現金、ピザのクーポン券で釣っている。何かがおかしい。
感想・レビュー・書評
-
積読状態になっていたこの本を読んでみました。
人のモチベーションの上げ方にはもともと興味を持っていた上に、
過去この本のTEDの動画を視聴したこともあったので、
知っている内容もあったのですが、面白く読めました。
※やる気に関する驚きの科学(TED動画)
https://www.ted.com/talks/dan_pink_the_puzzle_of_motivation?language=ja
色んな実例を紹介してくれて、
著者の豊富な知識をひけらかしたいだけじゃないかと言う、
よくある洋書の体裁なんですが、そこはさすがのダニエル・ピンク!
ストーリーが興味深く、本をグイグイ読み進めさす筆力がすさまじいです。
彼の主張によると、モチベーションを上げるには、
ルーティンワークと創造的な仕事ではやり方が真逆で、
ルーティンワークの場合は、お金などの目に見える報酬が役立つものの、
創造的な仕事ではそれが逆効果になるという驚くべき研究成果が紹介されます。
じゃあどうすればいいのというのは、自律性、熟達(マスタリー)、目的がキーワードだと著者は言います。
別の本(だから僕たちは、組織を変えていける)では、自律、有能感、関係性と言っていましたが、これも考え方が近いですね。
※だから僕たちは、組織を変えていける
https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4295406252#comment
過去、彼の著作は、「ハイ・コンセプト」なども読みましたが、
彼の選定するテーマはとても面白いですし、先見性も素晴らしいです。
※ハイ・コンセプト
https://booklog.jp/item/1/4837956661
忙しい方は、巻末に各章のまとめもありますので、
そのまとめを読むだけでも効果があるかと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
モチベーションは報酬によって生まれるのみならず、自己の内発的な動機によって行動すべきことを説いている。かつてマイクロソフトも百科事典サービスを開発していたそうですが、最終的には不特定多数の人が無償で執筆するWikipediaが主流になっている。この事実を紐解くために重要な知識。
-
モチベーションについて、丁寧な科学的検証を行った結果がまとめられている本。
外発的な報酬等の動機付けや、人から言われて作った目標などは人間の視野を狭めてかえってパフォーマンスを落とす、という記載はとても納得。
また、アーティストが報酬無しの仕事の方が良い作品を作るのも非常に納得。
優秀な人を雇ったら、あとはほっておくのが一番良いという話がピンときました。
既にコロナ禍のテレワークが成り立っている環境下、管理コストは元々不要だったのではないか?という疑惑があちらこちらで散見されている昨今、
この本は多くの人に読んでもらいたい内容。
内発的(本質的)動機付けを邪魔しないような環境をいかに整備するかが担当者や従来の管理者は必要だと感じました。
心に残った言葉
一度交換条件付きの仕事として実施した作業は、二回目からも報酬が必要となってしまう。
短期の成果を追う習慣は、長期の成果が見えなくなる可能性がある。
本当に価値のあるものは、遥か遠くにある。
モチベーション2.0も全否定ではない。従来の労働集約的な単純作業では有効。(頭はつかない系)
大前提として、ベースの報酬は公正であることが大事。 -
現代におけるモチベーションの源泉とは何か、ということについて具体的な事例を交えて書かれている。
生存を目的としたモチベーション1.0から、外的な報酬と罰が中心のモチベーション2.0、そして活動自体からもたらされる内的な満足感と結びつくモチベーション3.0へ。
組織のマネジメントにも活かせそうだが、個人的には自己を見つめ直し、自己のモチベーションをコントロールする際にも役立つ内容だと感じた。
-
21世紀に向けた組織を生かすための人を動かすためのモチベーションの上げ方に対しての詳細な解説が勉強になります。今までの時代と21世紀の時代で人の仕事に対する意識付けや組織の成長のあり方やモチベーションの推進については著者はモチベーション1.0、モチベーション2.0、モチベーション3.0と3つに分けて解説しております。21世紀の時代はモチベーション3.0の時代でありその考え方とはどのように捉えて実践すべきなのかが非常に具体的に書かれています。今後の組織を営む上で人を動かす上では大変勉強になる本です。
-
モチベーションについての研究報告
-
企業の人事担当者や組織のリーダーやマネージャーは必読でしょう。単なるアメとムチ的なマネジメントの限界の説明に加え、本質的に人間のモチベーションを高める考え方やそれを実際の制度の中に導入する時の考え方などがわかる。2010年初版発行の本だが、今なお色あせない考え方だと思う。
-
モチベーションを体系的に理解できる良書。モチベーショはシチュエーションによって源泉を変えるべきなのかなと思った本。
読書メモの詳細は下記noteをご覧ください!
https://note.mu/masatake0914/n/n6864e371cce5?magazine_key=m290b2a9df69d -
『フリーエージェント社会の到来』や『ハイ・コンセプト』で知られる米国の作家ダニエル・ピンクが、「内発的動機づけ」をテーマに据えたビジネス書である。
ビジネス書ではあるが、「ポジティブ心理学」の成果が随所に取り入れられている。「ポジティプ心理学入門」としても読めるし、第一級の自己啓発書としても読める本だ。
著者は、モチベーションを三種に大別する。
「モチベーション1・0」は、食欲・性欲などによるプリミティブなモチベーション。「腹が減ったから狩りに出かけよう」などというものだ。
「モチベーション2・0」は、いわゆる「アメとムチ」によるモチベーション。「達成したら報酬を与えるが、達成しなかったら罰を与える」などという外発的動機付けによって行動に駆り立てること。
最後の「モチベーション3・0」が、本書のテーマとなる「内発的動機づけ」を指す。すなわち、誰に命じられたからでもなく、お金を得るためでもなく、自分がやりたいと思ったからやる、というものだ。
20世紀までのあらゆる組織は、「モチベーション2・0」をおもに使って人を動かしてきた。だが、いまやそれは時代遅れだと著者は言う。
なんとなれば、「アメとムチ」で人を動かすやり方は、誰がやってもよいルーティンワークには有効だが、創造性の必要な作業には無効――むしろ有害(アメとムチを掲げることで、創造性の発揮が阻害されることが研究でわかっている)だからだ。
そして、21世紀の先進国においては、誰がやってもよい仕事はコンピュータやオフショアリング(海外へのアウトソーシング)にどんどん置き換えられており、「モチベーション2・0」が有効な領域は急速に狭まりつつある。
だからこそ、これからのあらゆる組織は、「モチベーション3・0」をいかに業務の中に取り入れるかを考えなければいけない……というのが著者の見立てである。
ユーモアとウィットに富む文章で、高度なテーマをわかりやすく面白い読み物に仕上げる著者の鮮やかな手腕は、いつもどおり。
たとえば、「アメとムチ」のやり方が抱える本質的欠陥を、著者は次のように明快に説明する。
《外的な報酬が重要視される環境では、多くの人は報酬が得られる局面までしか働かない。それ以上は働かなくなる。たとえば本を三冊読めば賞品がもらえるのなら、多くの生徒は四冊目の本を手に取りはしないだろう。ましてや、生涯にわたる読書の習慣など身につくはずがない――ちょうど、四半期の業績目標を達成した幹部が、それ以上の利益追求に興味を失い、会社の長期的な健全性についてじっくり考えたりしないように。同様に、金銭を動機づけとする運動や禁煙、服薬などについても、最初はそれなりの成果が表れる。ところが報酬がなくなると、その健康的な行為はそれ以上続かない、と複数の研究から明らかになっている。》
対象読者層としては、経営者や組織のリーダーがまず念頭に置かれているのだろう。が、私のようなフリーランサーにとっても、仕事に対する姿勢の根本的見直しを迫る本である。
後半の内容は、ポジティブ心理学の重要な研究者の一人、ミハイ・チクセントミハイの「フロー体験」の研究に多くを負っている(本人にも取材している)。
「ああ、そうか。最近私の仕事には『フロー体験』が足りないのだ」と、読みながらしみじみ思った。
本書は、“働くことを通じて幸せになるためには、どんな条件が必要なのか”を、さまざまな角度から探った本といえる。また、人間の幸福は目的のために挑戦をつづける過程の中にこそあり、なんの目的も持たずに遊んで暮らすことがじつはまったく幸福ではないと、研究データをふまえて教えてくれる本でもある。
深みのある、知的興奮すら味わえるビジネス書。日本には、こういう上質なビジネス書があまりにも少ない。