田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」 タルマーリー発、新しい働き方と暮らし (講談社+α文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 376
感想 : 36
  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062817141

作品紹介・あらすじ

発売直後から全国、そして海を越えて韓国でも大評判になった
新しい仕事と生活の提案の書、待望の文庫化。

30歳になるまで、空回りしていた「僕」の人生。
夢に出てきたじいちゃんの「おまえはパンをやりなさい」という不思議な言葉に一念発起。

そしてパン屋になって考えた。
劣悪な労働環境のおかしさ、腐らないパンのおかしさ。
ならば自分は人と違うことをしよう。

「菌本位」のパンづくり、そして働いただけ、働く人に還元できるパンづくり。

そのために、よりよい場所を求め、岡山県・勝山へ。

資本主義の未来は、この本に詰まっている。

文庫化に際し、さらにビール造りの場を求めて
鳥取・智頭町へ行ったその後の話も掲載。

感想・レビュー・書評

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  • パンとビールが好きなのと、昨年ミシマ社から出た新刊のを読みたいと思って、その前にと2013年発行(文庫化は2017年)を読んだ。
    「腐らない経済」に疑問を持ち、天然酵母と地元産の素材だけで作る田舎のパン屋で「腐る経済」=利潤を求めない循環型の経済、暮らしを実践する。タルマーリーは哲学者であり、実践者ですね。
    何より、サイトを見ると美味しそうなのがよいですし、
    イースト菌と天然酵母の違いを知らなかったこと、勉強になった。

  • 脱サラして田舎でパン屋さんをすると一念発起。

    パンの製造過程に触れつつ、資本主義や労働のあり方に対して一石を投じています。

    本を読んで、資本主義とは何か?一部のお金が有り余っている人達が世の中にその力を借りて色々とできるから強いのではなく、循環型の社会の方が無理がないのでは?利潤ばかり追い求めず、地元に根付いた細々とした生活の方が心の豊かさがあるのではないかなど考えさせられました。

  • 鳥取県でパン屋を営む著者の、自らの経験(と、マルクス経済学)に基づく経済論。著者が家族や従業員の生活を回していけるだけの基盤を作って、それを維持していることは素晴らしいと思う。だが、資本主義の恩恵を受けていることを認めない姿勢が、なんだか釈然としない部分もある。スピリチュアルな感覚を持った人とは親和性がありそう。

  • ずっと気になっていた岡山のパン屋さん、タルマーリー。腐る経済という考え方も気になっていました。
    なんでもお金で買う世界に苦しさを感じていたけど、それは、資本家が利潤を得ること、から派生してきたことだったんだ。渡邊さんが、不思議なパン屋として確立していく中で、体で体得してきたことだからなのか、資本主義の問題点がとても分かりやすく伝わってきました。
    小さな商いをすること、日本は資源がたくさんあるのに活かしていない、活かせる人が減っていること、腐らないお金も使い方次第で活かせる(投票の意味がある)など。
    パンに出会えて、打ち込めて、渡邊さんが羨ましい、と思うけれど、自分らしさは、自分で何かに打ち込むことからしか生まれない。私にできることごある、という気持ちをちゃんと抱かせてくれる本でした。
    いつか、タルマーリーのパンを食べたいな。

  • 共感したこと。
    「ほんとうのことがしたい」

    勉強になったこと。
    マルクスの話。資本主義の話。

    パンが食べたくなる。
    お餅でがまん。
    餅もうまい。

    「職人」の考え方が一昔前と今では、変わってきているような気がする。
    昔は、一つのことを極めていくのが職人。
    今はそれだけじゃだめで、世の中を、社会を知らないといけない。

  • 発酵界ではちょっとした有名人の渡辺格さん。千葉の田舎で完全天然酵母のパン屋さん「タルマーリー」をはじめ、震災後には鳥取県の智頭町の廃校(?)になった幼稚園跡地でに移転。今は、元給食室でクラフトビールも作っています。智頭町は図書館で町おこし(岡本真さん関わってる)もしているので、今回のイベントにはピッタリでは。

  • ツイッターなどで見かけ、気になっていた本書。
    いつか読もう読もう、と思う内に、気がついたら文庫になっているではありませんか!

    イーストなどを使用せず、天然酵母や天然麹菌によってパンをつくり、店を経営する著者による本書。
    面白いのは、マルクスの『資本論』をはじめ、いくつかの経済書を引用しながら、彼らがつくるパン、経営、労働についての考え方を言葉にしているところ。
    複数の論点、かつ、著者の学生時代も含めると長いスパンの話を扱っているにもかかわらず、構成がとてもよく整理されているので、するすると頭に入る。
    何より、著者が30歳にしてはじめて本格的な社会人として働きはじめてから遭遇する様々な理不尽や矛盾が、とても他人事とは思えず、はらはらさせられ通しである。

    今の資本主義社会の中で、おカネがあふれ続けている……というくだりで、ふと『千と千尋の神隠し』の“カオナシ”を思い出す。
    実体のない経済がどんどん膨れ上がりバブルが爆発することと、映画でのカオナシのくだりはとてもよく似ている。
    カオナシは、銭婆のもとで仕事を与えられて穏やかな横顔をみせるようになるけれど、じゃあおカネは?
    本の中で、著者は菌の声を聴いてパンをつくっているけれど、もしおカネの声を聞くことができたら、どんなことを言うだろうかと考える。
    私のお財布の中のおカネたちは、もうちょっと大切にして、少なくともすぐレシートで財布のなかパンパンにするのはやめて、と怒っているかもしれないな。

    資本主義社会の中で、どのように気持ちと生活の折り合いをつけて生きていくか。
    正解のない問いに、果敢に挑む著者夫婦の姿が印象に残る1冊でした。

  • 金本位制ではなく菌本位制、資本主義は不自然と断言する筆者の語り口調に違和感を持ちつつも、では〇〇本位制、〇〇主義の〇〇の部分にどんな名詞が入ることが自然なのかと考えた。腐らないものつまりストックできないものだ。現在の社会はお金を自然の摂理に抗い大量増殖させている反作用で環境破壊や安全を犯した生産がされている。また、市場に大量供給されたお金の余りによって日本のバブル経済、アメリカの住宅バブルが発生した。本書はそんな資本主義の不自然さを訴え循環経済を薦める書である。

    一方で、筆者は小さくてもほんとうのことをすることを目指しているが、現状日本の企業の大部分は大きくてほんとうのことを成し遂げている。経営者の多くはがめつさを持ち合わせはおらず、抱える従業員の生活を支えることを重要に考えている。このような事実からも、筆者の木を見て森を見ない資本主義批判には違和感を持たざるを得ない。

    筆者は利潤を生まない経営を語っていた。しかし、利潤を生み蓄えることは一概に否定できない。スラック資源を持つことは、一つは企業の成長発展の為に有効である。これに関しては筆者の関心にはない。しかし、もう一つの目的として外部環境の変動に対するバッファーとしての意味がある。将来の不確実性に対して備えるのだ。この点に関して筆者は利潤を生まずに消費を減らすことで差益を得ているのだろうと考えられる。

  • 職を安くするために、食を安くする。
    消費者は安い商品を求めるが、それが巡り巡って労働者の首を絞める。

    厳選した食材を使い、手間暇をかけて作ったパンには、その対価として真っ当な価格をつける。
    タルマーリーのパンを食べて、ビールを飲んでみたい。


  • タイトルに惹かれて読んだら、思想に共感した。マルクスの資本論の市場経済に対抗するために、野生の菌にたどりつく。

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著者プロフィール

1971年生まれ。東京都東大和市出身。23歳でハンガリーに滞在。25歳で千葉大学園芸学部入学。農産物流通会社に勤務後、 31歳でパン修業を開始。2008年千葉県いすみ市で、自家製酵母と国産小麦で作るパン屋タルマーリー開業。10代にパンクバンド活動で培ったDIY精神から、起業後は自力で店を改装。2011年岡山県に移転し、野生の麹菌採取に成功。2015年鳥取県智頭町に移転。パンの技術を応用し、野生の菌だけで発酵させるビール醸造を開始。著書に『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』(講談社)、『菌の声を聴け』(ミシマ社)。

「2022年 『撤退論 歴史のパラダイム転換にむけて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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