「依存症」の日本経済 (講談社BIZ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062821025

感想・レビュー・書評

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  • 内容自体の正しさはこれから次第というところだけど,そのとおりだと思うところが多い。切り口と一見独立した各章のつなげ方には目を見張るところがある。

  • ビジネス
    社会

  • 【Review】
    複数の個別の問題について述べられており、それらから「何かに依存していて、そこから抜け出すことのできない」という日本経済に共通の問題が読み取れる。

    【Reflection】
    「依存症」の社会を言い換えると、フレキシブルではない社会、つまり外部環境の変化にうまく対応することができていない社会と言い換えることができそうだ。変化に対応するためには、継続的な構造改革が必要だが、その際に生じる短期的な負の影響は覚悟しなければならない。実行のポイントは、負の影響をどう最小限に抑えるか、あるいは影響を吸収できる策が考えられるか。それができないと、いずれの分野でも何かに依存し、経済は徐々に悪化を辿るだけと考えられる。

    少子高齢化が顕著な秋田県の、平均的学力が高いのは良いニュースだが、学力の高い子は能力を活かすことのできる職に就くために、秋田県を出て行くため、結局地元の経済の発展にそのままつながるわけではない。これは、構造改革をしなければ将来日本もこのような状況になると予想される一方で、その逆もしかりというメッセージだととらえている。

  • 100827

  • [ 内容 ]
    世界的な金融危機と景気悪化の中、国民の間では、日本経済の将来を悲観する見方が増えている。
    その現状を見ると、さまざまな分野で「依存症」と呼べる状態が観察される。
    本書は、そんな10の依存症を取り上げて考察し、この国の経済をよりよく、より強くするためのヒントとして提供しようと試みたものである。

    [ 目次 ]
    第1章 日本の個人消費は「女性依存」―婦人服売上高にカギがある
    第2章 お父さんのこづかい減少でわかる「交際費依存」体質―「消費弱者」に逃げ場はあるのか
    第3章 なお残る「建設業依存」と構造調整圧力―中小・非製造業は生き残れるのか
    第4章 食料の「海外依存」は本当に問題なのか―40%の食料自給率が意味するもの
    第5章 緩和への熱が冷め「規制依存」に逆戻りする日本―このままでは国ごと沈んでしまうのか
    第6章 教育はどこまで「学習塾依存」を強めるのか―ゆとり教育が生んだ3つの弊害
    第7章 景気判断や買い物で「マスコミ依存」する日本人―景気の波と報道の影響力の関係
    第8章 投資に移行しにくい家計運用の「預金依存」―間接金融中心で何が悪い?
    第9章 主導権を握れず「外国人依存」が続く金融市場―ブレークスルーを生む政策を打ち出すために
    第10章 日本経済はやっぱり「米国依存」―否定された「デカップリング論」
    第11章 ケーススタディー:少子高齢化の秋田県は「日本の未来図」

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 『はじめに』
    ・日本の低成長の主因は何と言っても,人口減少・少子高齢化による潜在成長力への下押し圧力である.

    『第1章 日本の個人消費は「女性依存」』
    ・日本の個人消費はこのところ,偏重振りが著しい.大きな原因は,賃金の伸び悩み(あるいはボーナスの減少)に加えて,原油だか・食品高という「悪い物価上昇」が加速したことにある.
    ・百貨店業界では昔から,婦人服ではなく,「背広など紳士服の売上が伸びてくれば景気回復は本物」と言われている.紳士服が売れるというのは,家庭内で「消費弱者」になるケースが多い男性が,自分の仕事着にお金を多めに使えるようになることを意味する.しかし,そこからさらに深読みすると,「紳士服まで売れるようになったということは,景気回復がすでに終盤にさしかかっているのではないか」という見方も出来る.
    ・今後,本格的な増税策に,財負の紐を握っている女性層がどう対応するかを考える上で,今回の原油や食品の値上げのケースは参考になる.

    『第2章 お父さんのこづかい現象でわかる「交際費依存」体質』

    『第3章 なお残る「建設業依存」と構造調整圧力』
    ・建設投資のピーク時からの減少率は42%だが,労働者の減少率は19.4%.雇用の面で「建設業依存」が残っているおかげで,日本の完全失業率は6%代に跳ね上がらずに済んでいる.

    『第4章 食料の「海外依存」は本当に問題なのか』
    ・食料安全保障」というのは,「平時」ではなく「有事」を前提にした概念だということである.だが,たとえば有事の際に「兵糧攻め」にされるのを防ごうとしても,40%の自給率が45%や50%になるくらいでは,結果に大した違いはないのではないか.また,仮に食料が完全に自給できても,原油の供給途絶が長期化すれば,日本はそれだけで万事休すという事態になってしまう.
    ・安全保障という観点からの食料政策では,食料の輸入先を含む各国と良好な外交関係を日ごろから気付き挙げておくことこそが,何にも増して重要であろう.
    ・いまも生きている1985年の提言.ポイントは,自給率向上の名のもとに国内農業を保護してその競争力を低下させることに警鐘を鳴らし,農業そのものの生産性を高めるべきだとしている点にある.

    『第5章 緩和への熱が冷め「規制依存」に逆戻りする日本』
    ・規制緩和への熱が冷めていった理由として考えられるのは,次の3点である.①景気が順調に拡大し,円高局面も起こらなかったので,経済変革についての緊張感が薄れた.②経済面の「格差」拡大が政治問題と化したことから,政治の関心が弱者九歳に向かいやすくなった.③マンション耐震偽装とその後の建築基準法改正の事例のように,何らかの問題発生を契機に,規制消化をしようとする流れが官公庁サイドで強まった.(規制強化が景気悪化要因になるケースが,いわゆる「官製不況」である)
    ・「規制強化」については,事前に想定しやすい.しかし,規制緩和が経済に及ぼす効果というのは,事前につかみにくい.短期的には既存企業の倒産や失業の増加を通じて,景気に悪影響を及ぼす.その一方で,中長期的には生産性の向上を通じて経済全体にメリットを及ぼす.これはまさに「実験」に近い世界であり,やってみなければわからない.

    『第6章 教育はどこまで「学習塾依存」を強めるのか』

    『第7章 景気判断や買い物で「マスコミ依存」する日本人』
    ・人々は景気判断をマスコミに委ねている.

    『第8章 投資に移行しにくい家計運用の「預金依存」』
    ・米国人は日本人よりも,マーケットでリスクをとって運用していることが分かる.しかし,そもそも基本的な疑問として,何でも米国にあわせようとする発想自体,いかがなものかと思う.
    ・金融庁は「貯蓄から投資へ」の旗を振り,家計が株式や投資信託など,リスク性のより高い資産にもっと投資するよう促している.その一方で,財務省は数億円単位の広告宣伝費をかけて,個人向け国債に家計のマネーを誘導しようと努力を重ねている.
    ・家計のレベルでも企業のレベルでも,日米のメンタリティーの違いは歴然としているのだ.金融市場におけるリスクテイクの姿勢について大きな違いが生じているのは,当然過ぎるほど当然のことではあるまいか.

    『第9章 主導権を握れず「外国人依存」が続く金融市場』

    『第10章 日本経済はやっぱり「米国依存」』

    『第11章 ケーススタディー:少子高齢化の秋田県は「日本の未来図』

    ----------以下感想----------
    ・女性依存の消費を考え,政策導入時期を決定する.
    ・食糧依存の真の問題.有事と平時とを分け,有事には備蓄を,平時には営農規模の増大,研究開発の推進,外交協定を充実させることが大事.
    ・規制強化と規制緩和の違い.

  • 小飼弾氏推薦(09,01,12)

  • みずほ証券の上級アナリストによる日本経済の今後を憂いた一冊

  • 分かりやすい言葉でデータも多く,読みやすい本でした。

    日本ってホント問題だらけなのね。

  • まずテーマ設定だけでも非常に面白く、データを用いて平易な文章で説明する技術を学ぶにももってこいの本。読みやすいので経済に興味のない方でも勧めやすい感じです。各所のインプリケーションやちょっとした言葉に考える考えるヒントを多く見出せるように思います。

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