百年の家 (講談社の翻訳絵本)

  • 講談社
3.90
  • (60)
  • (90)
  • (57)
  • (11)
  • (1)
本棚登録 : 758
感想 : 102
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (64ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062830423

作品紹介・あらすじ

一軒の古い家が自分史を語るように1900年からの歳月を繙きます。静かにそこにある家は、人々が一日一日を紡いでいき、その月日の積み重ねが百年の歴史をつくるということを伝えます。自然豊かななかで、作物を育てる人々と共にある家。幸せな結婚を、また家族の悲しみを見守る家。やがて訪れる大きな戦争に傷を受けながら生き延びる家。そうして、古い家と共に生きた大切な人の死の瞬間に、ただ黙って立ち会う家。ページをめくることに人間の生きる力が深く感じられる傑作絵本がここに…。人が家に命を吹き込み、家が家族を見守る。家と人が織りなす百年の歳月。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 本書は先に読んだ「あさのあつこ特別授業『マクベス』」の巻末で、中学生に向けてあさの先生がお勧めした本の中にあったもの。『ヴェニスの商人』『秘密の花園』『人間の絆』『エルマーの冒険』などの定番に混じりこれが入っていた。正直初めて聞いた書名。「大人のための絵本」だそうです。

    1656年、ペスト流行の年に建てられた「わたし(家)」は長い間ずっと廃屋になっていたけど、きのこ狩りの子供たちに発見してもらう。1900年、狐やウサギも駆け回る森の丘陵地にある古い石と漆喰でつくられた一軒家だった。

    19001年、補修工事が始まった。周りの木々は倒され、屋根は丈夫に敷き治された。すぐ近くに畠も耕されている。1905年荒れ果てた段々畠に葡萄が植えられた。1915年お嫁さんがやってきた。1916年産まれた子どもが牧師さんから祝福を受ける。1918年夫が戦死した。
    そして、家は建て増しされながら続いてゆく。周りの葡萄畑、麦畑、果樹の畑は豊かに実り、葡萄収穫時には20人もの人々が一挙にワインを作ってゆく。戦争時には、避難場所になった。

    あさのあつこさんは言います。

    一軒の家とそこに住む人々と流れていく時代。死があり誕生があり、日々の暮らしがあり、戦争があります。これは、かけがえのない何かを喪失した大人のための絵本ではないでしょうか。そして、反戦のための一冊では。独断ですが、強く思います。


    70年代になると、また家は荒れ果ててしまう。
    そして1999年、丘陵を活かして家は現代風に生まれ変わっていた。古い石は、僅かに壁に塗り込められていた。
    多くの人々が生まれ、集い、老い、ファドアウトしていき、新たな人々が家に集まる。百年の歳月を定点観測手法で温かな細密画が、イタリアのひとつの田舎が、描かれていた。
    西欧では、家は修理し、建て増して住むのが当たり前だという。日本のように家は仮の住まいではない。日本のように数十年で建て替えするのは、異例なのだろう。
    その中で、人びとは誕生し労働し時代に翻弄され、交代してゆく。家の歴史は、歴史そのもの、という気がする。

    • kuma0504さん
      イーノセンティとインノチェンチィ?確かに同一人物臭さはあるけど、よくわからない‥‥。
      イーノセンティとインノチェンチィ?確かに同一人物臭さはあるけど、よくわからない‥‥。
      2023/04/04
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      kuma0504さん

      Roberto Innocenti
      http://www.robertoinnocenti.com
      kuma0504さん

      Roberto Innocenti
      http://www.robertoinnocenti.com
      2023/04/04
    • kuma0504さん
      猫丸さん、
      Wikiによれば

      ロベルト・インノチェンティ(Roberto Innocenti, 1940年 - )は、イタリアの画家。
      (...
      猫丸さん、
      Wikiによれば

      ロベルト・インノチェンティ(Roberto Innocenti, 1940年 - )は、イタリアの画家。
      (略)
      『白バラはどこに』 ガラーツ共著 長田弘訳 みすず書房 2000
      (略)
      『百年の家』 J・パトリック・ルイス文 長田弘訳 講談社 2010

      同一人物である事がわかりました。
      2023/04/04
  • 100年の家の歴史、そうです本書の主人公は「家」。
    なので、当然そこで生活する人々も描かれるのですが、人の一生は普通に考えれば100年未満ですよね。

    生と死、戦争、その時代と共に「家」は存在する。


    国際アンデルセン賞画家賞受賞インノチェンティの傑作
    人が家に命を吹き込み、家が家族を見守る。家と人が織りなす100年の歳月。

    100年の歳月を、ことばの世界と細密な絵の世界で融合させた傑作絵本!
    1軒の古い家が自分史を語るように1900年からの歳月を繙きます。静かにそこにある家は、人々が1日1日を紡いでいき、その月日の積み重ねが100年の歴史をつくるということを伝えます。自然豊かななかで、作物を育てる人々と共にある家。幸せな結婚を、また家族の悲しみを見守る家。やがて訪れる大きな戦争に傷を受けながら生き延びる家。そうして、古い家と共に生きた大切な人の死の瞬間に、ただ黙って立ち会う家。ページをめくるごとに人間の生きる力が深く感じられる傑作絵本が、ここに……。

    内容(「BOOK」データベースより)

    一軒の古い家が自分史を語るように1900年からの歳月を繙きます。静かにそこにある家は、人々が一日一日を紡いでいき、その月日の積み重ねが百年の歴史をつくるということを伝えます。自然豊かななかで、作物を育てる人々と共にある家。幸せな結婚を、また家族の悲しみを見守る家。やがて訪れる大きな戦争に傷を受けながら生き延びる家。そうして、古い家と共に生きた大切な人の死の瞬間に、ただ黙って立ち会う家。ページをめくることに人間の生きる力が深く感じられる傑作絵本がここに…。人が家に命を吹き込み、家が家族を見守る。家と人が織りなす百年の歳月。

  • 人に歴史あり、家にも歴史ありということで、1900年からの約100年にわたる、イタリアのとある家の人生ならぬ、家生とも思えるような、歴史の積み重ねを見ている内に、自然と人間のそれと同じような感傷を抱くようになりました。

    誰もいない荒れ果てた家に、住む人が現れ、二度の戦争を経ながら、その家族の幸せも悲しみも見つめ続けてきた半生は、その家族の歴史をありありと写し出してくれたが、やがて、その家族も去って行き、独りに戻ったときの家の姿にこそ、最も人間らしさを感じさせられ、その孤独さに共感を覚えずにはいられませんでした。

    こうしてみると、人が住んでいる時の家には、何か家自身の魂というか、ある輝きを纏って見えるのも肯ける気がして、改めて、家と人間の関係性の大切さ、素晴らしさに気付かされた思いがしました。

  • まずなんか絵が惹かれるものがある。

    そこにずっと昔からあるもの、自分が知っているどんな場所や世界にも歴史があることを気づかせてくれる作品。
    自分が今いる場所や世界が全てではない。
    そこには色んなことを経て色んな人がいて今がある。
    なんだか場所や物にさえ敬意をはらうようになれます。

  • 詩人の長田弘さんが訳していらっしゃる絵本なので手にとりました。1ページ1ページがとても丁寧な描写と雄弁な表現で頁をめくるのがたのしくなります。まるで人間の歴史であるかのような家の歴史の変遷を美しく絵画的な絵で表しています。お子様とお母さんで一緒に変化の発見をたのしめる絵本です。

    対象年齢:読み聞かせ 3歳から ひとりよみ 5歳から

  • 大人にもお勧めの絵本だと思う。
    一軒の古い家から語られるその時代の言葉に重味を感じる。
    絵からも幸せ、悲しみだけではなく破壊、絶望、苦しみなどの負の感情も溢れ出ている。
    ただ、静かにそこに百年の歴史を人々が紡いでいく様子は、壮大さも感じた。

  • 16世紀に建てられた家がいつの間にか忘れ去られ、1900年に子供たちに見つけられた。そこから100年間の歴史を家の視点で語っている。定点観察のような構図で家やその周りの畑が栄えたり、戦争で荒れたり...見比べて変わっているところを探すのが楽しい。

  • 2010年発表。

    100年の家が見つめてきた人々の毎日を
    詩情豊かに描いた絵本で、
    2008年に小さなノーベル賞とも呼ばれる
    国際アンデルセン賞を受賞した
    『エリカ、奇跡のいのち』の
    ロベルト・インノチェンティの新作絵本です♪


    一軒の古い家が出会ってきた人々や歴史を
    まるで自分史を語るように、
    温かくも写実的な絵で
    1900年から順に見せてくれます。



    構図は常に
    一定の視線から見た定点観測。


    廃墟になっていた
    山間にある石造りの家に人が集まり
    家族が移り住むところから物語は始まり、
    この家に住んだ人たちの
    長い長い歴史が語られていきます。



    優しい人々と共に作物を育てた
    あったかい時代。


    結婚があり新しい命が生まれ
    そして誰かが亡くなり、
    やがて大きな戦争が始まる…。



    ページをめくるたびに時代が変わり、
    その家に住む人々の生活も変化していく。


    服装や時代の移り変わりに沿って
    進化していく道具や井戸や畑の風景、家畜、自然のうつろいなど、
    見るたびに新しい発見があり
    飽きることなく
    その美しい絵に浸っていられます。



    アメリカの詩人、J.パトリック・ルイスの文を訳した
    同じく詩人の長田弘さんの重厚な文章が
    物語をグッと引き締めています。



    人が家に命を吹き込み
    家が家族を見守る。


    家と人が織りなす
    100年の歳月を閉じ込めたストーリーに
    なぜだか涙が溢れてきました。


    家とは
    人がそこに住んでこそ、
    生気を吹き込まれるものであり、
    人が家に暮らす
    普通の日々の積み重ねが
    歴史を作っていくということを
    あらためて教えてくれた
    本当に美しい絵本です。

  • 一軒の古い家をめぐる、100年の歴史。
    家族、農耕、戦争と、生きていると味わういろんなできごとや感情が「家」視点で描かれています。

    1つの家を長く使う、ヨーロッパの文化ならではの物語。

    長田弘さんの訳と素晴らしい絵で
    壮大で高尚なものを読ませていただきました。

    ゴルディロックス (札幌)さんの蔵書です。

  • イタリアのある丘陵地に、石と木だけの<家>が造られた。それは1656年のペストが大流行した年だった。〝時と共に、窓ができて、わたしの目となり、人の話し声も聞こえるようになった。わたしは、様々な家族が住んで育つのを見、多くの木々が倒れるのも見た。沢山の笑い声を耳にし、沢山の銃声も耳にした。何度も嵐が来て、去って、何度も修理が繰り返されたが、結局、わたしは住む人のいない廃屋となった〟古い家を再生し必死になって生活を営む人々、二度の大戦下での生と死・・・やがて、新しい時代の息吹きが丘にこだます・・・圧倒の絵本。

全102件中 1 - 10件を表示

J.パトリック・ルイスの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×