レイさんといた夏 (文学の扉)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 90
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062832397

作品紹介・あらすじ

引きこもりの少女・莉緒の部屋に現れたのは、幽霊になったヤンキー少女・レイさん。ヒッキーとヤンキー、通い合い始めたふたりの心。少女たちは、むき出しの自分の心に触れた――。

東京の中学校で1学期だけを過ごし、兵庫県の西宮市に転校した莉緒は、“汚部屋”にこもりっきりの夏休みを過ごしていた。東京の学校では、莉緒が見せたほんのささいなプライドによって、親友だと思っていた子が「よその人」に過ぎないことを知ってしまった。だから、突然すぎる転校も、莉緒にしてみれば天の助けだったのだ。でも、何もする気が起きない……。

莉緒のことを前向きで明るい人間にしたくてたまらないママは、部屋を片付け、新しい学校で始まる2学期に備えるよう、やかましいくらいに言ってくる。残っている夏休みは、あと五日。うんざりだったし、また新たな「よその人」たちに囲まれることは、恐怖ですらあった。

そんな折、ママは急病で入院することになった。自身の吐いた悪口が招いた災いかと落ち込む莉緒。その前に現れたのは、茶髪にピアス、ジャージ姿で、どう見てもヤンキーという少女の幽霊だった。彼女は、自分が何者かわからないから成仏できないといい、強引に身元探しを手伝わされるはめに。

手がかりは、幽霊の記憶にかすかに残っている「生前、誰かとふれ合ったときのエピソード」。その断片を頼りに「レイさん」が何者だったのかを突き止める、奇妙な夏休みが始まったのだった――。

感想・レビュー・書評

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  • 莉緒は親友だと思っていた子に裏切られ、人と関わりを持つのが怖い。2学期から新しい学校へ転校予定だが、希望も持てずやる気も起きない。そんな夏休みに莉緒の元に現れたのが幽霊のレイさん。
    レイさんは自分が何者なのかわからずに成仏できないという。莉緒はレイさんが成仏できるように手伝いながら気づいていったこと‥
    それは自分探しの夏だった。
    レイさんとは誰だったのか?

  • 影が薄くてコミュニケーション能力の低い莉緒は、入学したての中学校で人間関係に傷つき、汚部屋と化した部屋で腐っていた。向上心の塊のような母との言い争いの際、母は「悪い運気がつく」と言い、彼女は「呪われろ」と捨て台詞を吐く。すると母は盲腸で入院し、彼女は幽霊に取りつかれることに。今世での記憶を失ったために成仏できないという幽霊レイさんのために、彼女は渋々思い出す手伝いをすることになる。ところが、レイさんの過去が少しずつ明らかになるにつれて、彼女は離れがたい気持ちを強くていくのだった。

    幽霊レイさんと一緒に過去の想いを辿りながら、人との関わりについて思惟する少女の姿を描く。




    *******ここからはネタバレ*******

    レイさんと莉緒の母との関わりが執拗過ぎて不自然に感じたが、随所にある幽霊ジョークにほっこりする。

    たとえその結果傷ついても、関わってきた人たちで自分自身ができているとは、正直思えないし、記憶をなくしたから成仏できないという設定も信ぴょう性低すぎとも思うが、人間関係に疲れた時にはこういう考え方もいいのかも知れない???

    主人公は中学生だが、高学年で十分大丈夫です。

  • 学校に馴染めない中1の莉緒、転校することになったがやっぱり新しい学校も不安で家に閉じこもっている。
    そんな莉緒のところに幽霊のレイさんがやってくる。
    レイさんは自分が誰なのかわからないので成仏できない。
    ふたりでレイさんが誰なのか探すことに。
    しかし、心を通わすことができたレイさんを手放したくない気持ちも芽生える。
    中1の不安定な心を複雑だった少し年上の幽霊の女の子が開いていく。
    現実ではないから話せるってあるのだろう。自分の心との会話かもしれない。
    莉緒は幽霊のレイさんから現実を直視することを教えてもらったのだろう。
    口うるさいお母さんの姿にはちょっと耳が痛かった。

  • レイさんが持っていった、主人公の描く似顔絵、どんな風に色がつけられたのか、見たかった。

    「あたしはこの人らで、この人らがあたしやねん」
    「あたしはあたしが出会った人らでできている」と言ったレイさんには、きっと色鮮やかだったのではないかと思う。


    出版社紹介ページ

    中1の一学期を終えて転校した莉緒は、“汚部屋”にこもりっきり。新たな人間関係に恐怖すら覚える莉緒にとって、うんざりの夏休みだった。そんな莉緒の前に現れた、どこから見てもヤンキー姿の少女の幽霊。成仏できていない彼女は、「生前、誰かとふれ合ったときのエピソード」をヒントに、自分が何者だったのかを知ろうとする。ヒッキーとヤンキー、通い合い始めたふたりの心。少女たちは、むき出しの自分の心に触れた――。


    引きこもりの少女・莉緒の部屋に現れたのは、幽霊になったヤンキー少女・レイさん。ヒッキーとヤンキー、通い合い始めたふたりの心。少女たちは、むき出しの自分の心に触れた――。

    東京の中学校で1学期だけを過ごし、兵庫県の西宮市に転校した莉緒は、“汚部屋”にこもりっきりの夏休みを過ごしていた。東京の学校では、莉緒が見せたほんのささいなプライドによって、親友だと思っていた子が「よその人」に過ぎないことを知ってしまった。だから、突然すぎる転校も、莉緒にしてみれば天の助けだったのだ。でも、何もする気が起きない……。

    莉緒のことを前向きで明るい人間にしたくてたまらないママは、部屋を片付け、新しい学校で始まる2学期に備えるよう、やかましいくらいに言ってくる。残っている夏休みは、あと五日。うんざりだったし、また新たな「よその人」たちに囲まれることは、恐怖ですらあった。

    そんな折、ママは急病で入院することになった。自身の吐いた悪口が招いた災いかと落ち込む莉緒。その前に現れたのは、茶髪にピアス、ジャージ姿で、どう見てもヤンキーという少女の幽霊だった。彼女は、自分が何者かわからないから成仏できないといい、強引に身元探しを手伝わされるはめに。

    手がかりは、幽霊の記憶にかすかに残っている「生前、誰かとふれ合ったときのエピソード」。その断片を頼りに「レイさん」が何者だったのかを突き止める、奇妙な夏休みが始まったのだった――。

  •  中1の夏休み。莉緒は、パパの転勤で西宮市(ママの出身地でもある)に引っ越してきた。1学期にあった親友と思っていた子とのことが原因で、無気力にすごしていた。母が入院し、もうすぐ新学期だが学校に行くのが不安で怖い。泣きながら眠ってしまった夜のことだった。自分以外いないはずの部屋の中で声が聞こえてきた。振り返ると、莉緒より少し年上の知らない女の子が勉強机の椅子に腰掛けていた。

  • 中1の夏休みに東京から西宮市に引っ越してきた莉緒。友だちとうまくいかなかった苦い経験から何もする気がせず、「汚部屋」で引きこもり生活をしていた。新学期まであと数日というある日、莉緒の目の前に、見た目はどう見てもヤンキーの少女の幽霊「レイさん」が現れる。自分が何者かわからないと成仏できないと、強引にレイさんの自分探しに付き合わされることになった莉緒だが…。

  • ★3つというのはYAとして。大人が読むには物足りない。

     最近のYAにはひきこもり、いじめ、不登校が絶対といっていいほど出てきて、またか、という感じだが、これも主人公がいじめにあって引きこもり中の女子中学生。そこに自分が誰だか思い出せない幽霊が現れて、幽霊の自分探しと主人公の自分探しが重なるっていう設定。なかなか読ませるし、ちょっと泣かせるようなところもあり、悪くはない。
     ただ、いじめの原因が、生理が来てないのに来てるふりをしたということから始まっていて、そこがまあ新しい感じもするのだが、それくらいでいじめられるかね?引きこもるかね?ちょっと共感しにくい。
     それから幽霊の名前がわからないのでとりあえず「レイさん」と呼ぶわけだけど、あとからわかる本名も同じで、だったら「レイさん」と呼ばれた時点で、「はっ」としないかい?
     中学生だった主人公の母親がレイさんにかけた言葉が、常識に縛られた大人の発言そのもので、わけあって不良になり、不良仲間とつるむことだけに喜びを感じている中学生なら、一番腹が立つ言葉なんだけど、なぜかレイさんも主人公もその言葉を全く不愉快に思わず、自分を思いやってくれたと感謝しているところが一番疑問だった。こういう本は基本的に「普通の子」が読むから、あまりおかしいと読者自身も感じないかもしれないけど、本当に学校になじめない子や感受性の鋭い子、賢い子なら、その欺瞞をすぐに見抜くはず。書き手が思春期の子をターゲットにしていながら、心はすっかり世間体を気にする普通の大人であるというのが露呈している。

    日本のYAならこんなものなのかな。

  • なかなかよい結末だった。そことここ、がつながっていたとは。

  • 夏休みに引っ越した中1の莉緒は前の学校のトラウマからヒッキーに
    とじこもった汚部屋で出会ったのは幽霊のレイさんだった

    「あたしが誰か、思い出す手伝いしてくれへん?」

    レイさんを成仏させるために身元探しを手伝うことになった莉緒
    新学期直前に突き止めた衝撃の事実を言い出すことができず...

    「私って誰?」
    莉緒と幽霊の自分探しの物語、夏休みのお供にイチ押し

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著者プロフィール

兵庫県西宮市生まれ。大阪教育大学卒業。『あしたも、さんかく』で第54回講談社児童文学新人賞に佳作入選(出版にあたり『あしたも、さんかく 毎日が落語日和』と改題)。第5回上方落語台本募集で入賞した創作落語が、天満天神繁昌亭にて口演される。『むこう岸』で第59回日本児童文学者協会賞、貧困ジャーナリズム大賞2019特別賞を受賞。国際推薦児童図書目録「ホワイト・レイブンズ」選定。ほかの著書に、『ケロニャンヌ』『レイさんといた夏』『おしごとのおはなし お笑い芸人 なんでやねーん!』(以上、講談社)、『あの日とおなじ空』(文研出版)などがある。日本児童文学者協会会員。

「2021年 『セカイを科学せよ!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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