白夜に青い花 (講談社X文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062867689

作品紹介・あらすじ

外交官補の海翔は語学研修にやってきたソビエトで、美しいロシア青年、イリヤと出会った。彼の絵には自由と愛を渇望する想いが込められていた。海翔はイリヤに魅せられ恋に落ちるが、愛した男はソビエトのスパイだった。人を愛する気持ちもエリートの道をも失った海翔は、復讐を誓う。そして7年後、陸軍大佐のイリヤと再会。憎しみを晴らす機会がやってきたのだが……!?

感想・レビュー・書評

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  • ★3.5

    外交官補日本人×スパイロシア人

  • 外務省キャリア官僚候補生として旧ソビエトに留学中の海翔は、街の小さな展覧会で研修医として働くかたわら絵を描くイリヤに出逢う。イリヤの描く自由を渇望するようでいてどこか寂しげな絵、壮絶な美貌、誇り高い強靭な精神、その一方で悪魔のように蠱惑的で淫蕩なイリヤに海翔はあっという間に溺れていく。
    人間として画家として自由を渇望するイリヤと共に生きるため、亡命を企てる海翔。それはエリート官僚としての将来を捨て去ることを意味する。それでも愛と自由を渇望するイリヤを愛し支えていくことで共に歩もうと海翔に迷いはなかった。
    亡命決行当日、待ち合わせ場所に現れたのはイリヤではなく警官だった。すぐに日本大使館に引き渡された海翔は、イリヤの正体がKGBのスパイだったことを知る。緊急時に国外逃亡を可能にするため日本大使館が独自に確保した逃走ルートを暴き出し、それを使って亡命を図ろうとしていた反政府分子を検挙することが目的だった。
    イリヤへの愛、エリート官僚としての将来を失って海翔は深く絶望する。その心に宿ったのはイリヤへの強い憎しみだった。
    7年後、各国の日本大使館の不正を暴き出し秘密裏に処理するという裏のミッションを負った海翔は、ソビエト解体後独立した小国の政府高官となったイリヤに再会する。
    スパイ映画の洋画を観ているようなスリリングな展開。華藤さんお得意の目の前に浮かんでくるような微細な風景描写は美しい。
    前半の海翔視点、7年間イリヤへの復讐心だけを胸に生きてきた海翔の恨み節が炸裂。その割には再会して早々に誘われるままに体の関係のみ復活。
    後半のイリヤ視点、イリヤの複雑な過去ややむにやまれぬ事情を説明するには視点のスイッチは必須だったのだと思う。だけど、そのせいかあれだけ恨みつらみを垂れ流していた海翔がイリヤを信頼し再び愛するに至るまでの心理的プロセスが見えづらくて、あれっ?いつの間に?!と若干置いてけぼりに…
    7年前、海翔を裏切らざるをえなかったイリヤの言い分には十分筋は通っているし、今イリヤが成し遂げようとしてることも立派なことなのに、天使と悪魔が表裏一体みたいな喰えないイリヤのキャラクターに自分が全く感情移入できなかったせいで、ふたりのドラマティックな感情の盛り上がりもツルツルっと読み飛ばしてしまった感じ。
    国家がらみの陰謀に巻き込まれて絶体絶命の危機に陥った割には、案外とんとん拍子に切り抜けた気がします。
    全然褒めてないけど、ストーリー自体つまらなくはなかったです。

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