秀吉神話をくつがえす (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062879071

作品紹介・あらすじ

出自の秘密、大出世、本能寺の変、中国大返し、豊臣平和令-天下人の虚像を剥ぐ。

感想・レビュー・書評

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  • かなり秀吉批判で埋め尽くされた本書です(苦笑)
    初めの数ページで読むのをやめようと思ったのですがそこは歴史に対するさまざまな説を見ようと思いとどまりました(笑)
    たしかに表現は著書も書かれているように
    「秀吉ファンなら激怒する」
    モノでしたが内容は面白かったです。

    秀吉を堕とそうとするもののその業績を史実から裏付けてくれているように思います。
    本能寺の変のくだりは秀吉の神業を神話でなく実力で
    足利義昭
    毛利輝元
    長宗我部元親
    明智光秀
    を下したものと言えると思います。

    個人的にはグッと堪えて読み進めて良かったなと思っています(笑)

  • 2007年刊行。

     著者のライフワーク。それは藤木久志氏の主張する「豊臣惣無事令」解釈への批判であり、本書もその一。

     ただ、本書はそれのみならず、本能寺の変につき、義昭黒幕説(著者は嫌がる評のようだが)を展開。もちろん単純な内容ではなく、信長権力にて生まれつつあった構造的矛盾をついて義昭が光秀を謀反に引き込んだというものであり、変時の背景事情や義昭の将軍権力の内実も含めて叙述される。特に、義昭が従前展開してきた信長包囲網の一環として本能寺の変を理解。各文献引用も多く良叙述である。

     著者は三重大学教育学部教授。

  • 最高の一冊
    なんとなく腑に落ちなかった事が
    あきらかに!

  • 本書、前半から中盤にかけて、大変興味深かった。著者によれば、信長の天下取りが天皇の権威を上手に利用したものであり、本能寺の変直前には信長は将軍就任を受け入れ、安土遷都まで企図していた。信長が左大臣推任を断ったのも「右近衛大将に任じられながらすぐに辞任して征夷大将軍となった源頼朝の先例を習った」行為に過ぎない(朝廷のいわゆる官位打ちに乗らなかった、ということではなかった)。一方、信長の家臣団経営が苛烈を極めた為に信長政権内部は脆弱であり、一方足利義昭は諸大名や門徒衆等を動員できる隠然たる力を誇っていた。荒木村重や明智光秀の謀反は、信長家臣団内部の権力抗争に破れた重臣が将軍義昭と組んで起こしたもの(本能寺の変は光秀が怒りに任せて後先考えずに起こしてしまったことでは全くない)、となる。筋が通っていて、なるほど、と思わせる。ただし、信長は、軍事カリスマとして天下統一・統治体制の一新、更には東アジアの外交秩序の再編も睨んでおり、自らを神格化し、現世と来世を支配する超越者を目指していた、ということだから、この点では従来の信長像との違いはそれほどないようだ。
    一方、後半、天下統一にあたって秀吉の敷いた施策が平和を祈念した「惣無事令」だったのか、それとも権力を集中させて専制国家を築くための「停戦令」に過ぎなかったのか、というテーマを集中的に論じているが、両者はどうも同じ事を見方を変えて言っているように思えてしまって分かりにくい。また、本書のラストはかなりイデオロギー的になっていて、歴史書としてはどうもなぁ。その時々の国家指導者が歴史を都合よく解釈・利用してきたこと(それは戦後現在に至るまで続いていること)に警鐘をならしたい、という著者の思いはよくわかるんだけど…。

  • なまじ天下を取ると出生まで捏造しなければならない。
    一代で成り上がった大物である事に違いはないがどこまで人に腹を見せてたか。。

  • (2014.07.14読了)(2008.11.15購入)
    【黒田官兵衛とその周辺】
    秀吉に関する小説は、読んできたのですが、歴史上の秀吉については読んだことがなかったので、官兵衛関連ということで読んでみました。
    ちょっと新書本としては、わかりにくいような印象です。同じテーマの本は、三冊読めといわれるので、あと二冊ぐらい読まないと、なかなかわからないのかもしれません。
    元々地盤があって、地域を支配してきた武将の場合は、信長のやりたいことを理解できず、行商をしながら勤め先を探していた藤吉郎みたいな人間のほうが信長のやりたいことが分かったのではないか、というのは、その通りかもしれません。

    【目次】
    はじめに
    序章 「秀吉神話」の系譜
    第一章 戦国時代の「悪党」
    1 出自の謎に迫る
    2 織田信長の台頭
    3 異例な早さの出世
    第二章 本能寺の変
    1 西国支配をめぐる派閥抗争
    2 筆頭重臣への画策
    3 将軍推任・安土行幸
    4 「中国大返し」の真実
    第三章 関白の「平和」
    1 織田体制の破壊
    2 ヒエラルヒーの確立
    3 「天下静謐」の倫理
    4 「平和」のための侵略
    終章 軍国神話の現在
    おわりに
    参考文献
    関連略年表

    ●秀吉神話(4頁)
    「秀吉神話」とは、端的にいえば尾張中村の百姓の子として誕生した秀吉が、信長のもとで驚異的な出世を遂げ、本能寺の変後は亡き主君にかわって瞬く間に周囲の戦国大名を「征伐」して天下統一を実現し、晩年には「唐・天竺」をめざす「海外雄飛」つまり侵略戦争を断行し、死後は武神「豊国大明神」として祀られるまでの物語である。
    ●明治の秀吉(5頁)
    江戸幕府が倒れ、明治政府の世になると「庶民の英雄」は一転して、「軍国主義の象徴」としてもてはやされる。秀吉の朝鮮侵略は、大陸進出を目指す国策にかなうものとされ、その部分が巷間のみならず、教育現場などにおいても繰り返し称揚された。
    ●約束事(22頁)
    江戸時代の「秀吉物語」には約束事があった。秀吉の死とそれ以降の秀頼の運命を描くと、家康の露骨な天下簒奪過程が明らかになることから、必ず死の直前で完結しなくてはならなかったのだ。
    ●秀吉の子供(64頁)
    秀吉は寧との間に子供はなく、伝承では長浜時代に側室との間に秀勝を含む二人の子をもうけたが、いずれも夭折したらしい。
    ●付城戦(67頁)
    付城戦とは、敵城の周辺に攻略の拠点となる付城・陣城を築き、徹底して敵城の陥落、殲滅をめざす戦術である。戦国大名では信長が初めて、これを基本的な戦術として採用し、そのための組織的な体制を築いていったのである。信長の戦争は、あたかも大規模な土木工事となっていったのだ。
    ●光秀の国替え(108頁)
    「明智軍記」には、光秀が信長から出雲・石見への国替を命ぜられたとある。
    そして畿内からの転封は、永禄十一年(1568)に上洛して以来、常に政権中枢にあった光秀にとって、活躍の場を取り上げられること、つまり左遷を意味した。
    ●信長のめざしたもの(109頁)
    信長のめざしたのは、麾下の大名を、信長の命令ひとつで自由に転封できる鉢植え大名にすることだった。家臣個人の実力を査定し、その能力に応じて領地・領民・城郭を預ける体制の確立をめざしたのである。
    ●安土城(120頁)
    将軍相当者となった信長が築城した安土城は、「将軍の御館」と位置づけられていた。実際に築城の際には、京都の嘉昭御所から「西の御楯」や南門・東門などが解体されて城内に再建されている。これは、将軍御所が京都から安土に移ったことを視覚的に示すものだった。
    ●安土遷都(129頁)
    本能寺の変によって実現こそしなかったものの、西国出陣のため上洛した信長は将軍任官を表明するつもりだったこと、天下統一後は誠仁親王の即位を受けて正式に将軍に就任し、年来の懸案だった安土行幸を執行する予定だったことが推測され、さらには安土への遷都を構想していた可能性さえ考えられるのである。

    ☆関連図書(既読)
    「豊臣秀吉」北島春信著、ポプラ社文庫、1982.09.
    「秀吉 上」堺屋太一著、日本放送出版協会、1995.12.21
    「秀吉 中」堺屋太一著、日本放送出版協会、1996.04.30
    「秀吉 下」堺屋太一著、日本放送出版協会、1996.10.12
    「夢のまた夢 一」津本陽著、文春文庫、1996.01.10
    「夢のまた夢 二」津本陽著、文春文庫、1996.01.10
    「夢のまた夢 三」津本陽著、文春文庫、1996.01.10
    「夢のまた夢 四」津本陽著、文春文庫、1996.02.10
    「夢のまた夢 五」津本陽著、文春文庫、1996.02.10
    「軍師官兵衛(一)」前川洋一作・青木邦子著、NHK出版、2013.11.30
    「軍師官兵衛(二)」前川洋一作・青木邦子著、NHK出版、2014.03.20
    「軍師の境遇」松本清張著、角川文庫、1987.07.25
    「黒田如水」吉川英治著、講談社文庫、1989.11.11
    「信長の棺」加藤廣著、日本経済新聞社、2005.05.24
    「集中講義 織田信長」小和田哲男著、新潮文庫、2006.06.01
    (2014年8月5日・記)
    内容紹介(amazon)
    「神話」に隠された秀吉の暗い実像に迫る!日本史最大のヒーロー、豊臣秀吉の実像は、暗い策謀家だった!数々の「秀吉神話」を覆し、その奥に隠れた素顔を暴いて戦国時代の常識に挑む意欲作!

  • 地元の図書館で読む。著者は三重大学の先生です。読みやすい文章です。著者は、秀吉神話は捏造と主張しています。主張は間違っていないと思います。英雄伝説に、捏造はつきものと思っているので、どうでもいいです。

  • いささか大袈裟なタイトルである。著者によると秀吉神話なる物があるというが本当にあるのか?私は疑問であるが、なるほどと言う視点もあり結構、面白い。ただ神話うんぬんは別としても、歴史番組(ドラマも含む)により偏った歴史が語られているという自覚は必要である。某番組みたいにひどいものもあり、そこに著者と同様の危惧を覚えるのである。

  • [ 内容 ]
    出自の秘密、大出世、本能寺の変、中国大返し、豊臣平和令―天下人の虚像を剥ぐ。

    [ 目次 ]
    序章 「秀吉神話」の系譜
    第1章 戦国時代の「悪党」(出自の謎に迫る;織田信長の台頭;異例な早さの出世)
    第2章 本能寺の変(西国支配をめぐる派閥抗争;筆頭重臣への画策;将軍推任・安土行幸;「中国大返し」の真実)
    第3章 関白の「平和」(織田体制の破壊;ヒエラルヒーの確立;「天下静謐」の倫理;「平和」のための侵略)
    終章 軍国神話の現在

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    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • タイトルの通り、読了後は神話が覆された感じがする。

    とりわけ、本能寺の変のくだりは印象的だ。
    もちろん、陰謀説というわけではないけれども。

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著者プロフィール

1958年愛媛県生まれ
神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了
学術博士
三重大学教育学部・大学院地域イノベーション学研究科教授

「2023年 『近世武家政権成立史の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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