調べる技術・書く技術 (講談社現代新書 1940)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062879408

作品紹介・あらすじ

テーマの選び方、資料収集法、取材の実際から原稿完成まで、丁寧に教える。これがプロの「知的生産術」だ!

感想・レビュー・書評

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  • あるテーマを設定し、それについて調べ、人に話を聞き、最後にまとめる技術を詳解するのが本書のねらいである。」という明確なメッセージで始まります。
    本書は、デーマを決めて、原稿を書くまでの前段と、ノンフィクションを人物、事件、テーマを3つに分けて、それぞれどう書くかを書くかを示す、後段の2つにわかれています。
    巻末に参照したノンフィクション作品が掲載されていてちょっとうれしかったです。

    気になったことは以下です。

    ■テーマを決める
    ・何かを書こうとするとき、誰もが一度は立ち止まり、しばし途方に暮れるのは、あらゆるテーマがすでに書き尽くされているのではないかと思えてくることだ。
    ・だが、ここで諦めるのは早すぎる。もはや書き尽くされたかに見えるテーマでも、全く新しい輝きを放つ可能性があるからだ。
    ・これを書かなければ、死んでも死にきれない。このことを書きさえすれば、いつ死んでもかまわない。そういう切実なテーマがある人は、書き手として幸せである。

    ■資料を集める
    ・取材のとき、絶対に避けたいのは、先方に「こいつは俺のことを何もしらないのだな」とか、「この人、まるで無知じゃないか」と思われることだ。
    ・資料収集に対する基本的な姿勢は、「貪欲に、幅広く」である。

    ■人に会う
    ・取材の始めから終わりまでで何が一番大切かと問われたならば、やはり、「誠実さ」と答える
    ・取材の準備 ①収集した資料にはすべて目を通しておく ②なぜその人物に会いたいのか、会って何を知りたいのかを、もう一度自分に問いかけて、明確な答えを出しておく ③質問を思いつくまま箇条書きにしておく
    ・取材当日、絶対にしてはいけないのは遅刻である。できれば30分前に、遅くとも15分前に約束の場所についていたい。

    ■話を聞く
    ・まず、この取材の目的を改めて説明する
    ・インタビューのコツ、相手と同じ大きさの声で話す。
    ・インタビューの序盤。初対面の相手の緊張をほぐし、気持ちよく話せるような雰囲気づくりを心掛ける。レコードも、ノートも持ち出すまでに注意をする。
    ・インタビューの中盤。原則として、相手が話しているときには、口をはさまない。わからないことがあったら、その場で訊く。沈黙を恐れない。
    ・インタビューの終盤。これは訊かないほうがいいのではという質問がある。でも必ず訊くことだ。むろん、相手の気持ちには充分に配慮して、慎重に言葉を選んでだが。
    ・ノート:A4の左だけをつかって、メモをとる。右はあけておく。

    ■原稿を書く
    ・原稿のよりどころは、あくまでも、自分の取材ノートである。あなた独自の作品はここからしか生まれない。
    ・索引を紙1枚でつくる
    ・チャートを紙1枚で作る 

    ■後段:ノンフィクション
    ・ノンフィクションは、3種。人物、事件、テーマである。
    ・テーマは必ず1つに絞る
    ・ポイントは3つ、構想段階で考えておく。これよりも多くても少なくてもいけない
    ・ノンフィクションを成功させるには、適切な人物を早くみつけること

    目次

    プロローグ
    第1章 テーマを決める
    第2章 資料を集める
    第3章 人に会う
    第4章 話を聞く
    第5章 原稿を書く
    第6章 人物を書く
    第7章 事件を書く
    第8章 体験を書く
    あとがき
    本文で紹介したノンフィクション作品および主な参考文献

    ISBN:9784062879408
    出版社:講談社
    判型:新書
    ページ数:254ページ
    定価:900円(本体)
    発行年月日:2008年04月20日

  • 1.ラジオパーソナリティになり、事前準備が必要だということを実感しました。ライターは記事で、パーソナリティは放送で伝えることになります。その下積みとして学ぶにはとっておきだと思ったので読むことにしました。

    2.ライターとして活躍されてきた著者がどのようなやり方で記事を書いてきたのかを述べています。人に伝えるためには調べることが前提となっていきます。調べ尽くしたことを凝縮し、書くという作業に移していきます。これをするためにはどのような手順を踏めばよいのかがこの本を読んでわかります。

    3.色々なことが学べる一冊でしたが、「対人であること」を忘れてはいけないということです。インタビューとなるとどうしても用意してきた原稿を書きがちですが、それではいみがありません。当日、会話を重ねることで新しく出てくる知見があります。それが意外と面白く、良い記事に繋がるのだと思うと、準備が大切なのはもちろんですが、アドリブの楽しさを伝えられるのも大切だと思いました。

  • ここに書いてあることはどんな人にも役立つことばかりである。
    この本を簡単に言ってしまうと『ノンフィクションライターになりたい人向けにその方法を著者が詳細に書いたハウツー本』となってしまう。
    しかし、ノンフィクションライターになりたいと思っていない人でもここに書いてある、対象に対する調査の方法やそれを発表する方法(話すなり、書くなりいずれでも)はどんな職業の人にとっても非常に役立つことだ。
    特に社会人1年生には、仕事の調べ方や進め方、人と会ったときの相手との会話や事前の準備方法など非常に役立つと思う。また、社会人のベテランの人であっても、「ああ、こんなやり方もあるのか」と参考になることも多々ある。
    社会人や大学生、高校生などすべての人におすすめ。

  • ノンフィクション作家のハウツー本である。体験に裏打ちされた知恵と、ノンフィクションの取材の仕方の本は少ないという希少性とで、大変興味深いものであった。

    ノンフィクションを書くときの絶対不可欠な条件があるという。「これを書かなければ、死んでも死に切れない。」というような切実なテーマは普通の人にはないが、しかしそれなりに突き詰めておく必要があるだろう。幸いにも、特別ノンフィクションではないが、私には三つのテーマがある。ところが、私の悪い癖で、もう30年くらい書く書くといいながら書いていないのが、大学のときの卒論で失敗した中江兆民論と社会人になってすぐに志した加藤周一論である。この15年の間に志した弥生時代を舞台にした小説も閑になったら直ぐ書けけるかというと、この半年の経過がそうではないと言う事を立証した。しばらくまた忙しくなるけど、このくらいが一番創作環境はいいのかもしれない。

    直ぐには役に立たないかもしれないが、重要だと思ったところをメモしておこうと思う。
    ●テーマ決定のチェックポイント
    1、時代を貫く普遍性を持っているか。
     海面下の氷山が、まったく思い寄らない場所に、その突端を突き出しており、調べれば調べるほど新たな突端が見つかるようならば、しめたものだ。あなたの選んだテーマは、時代を貫く普遍性を持っているのである。
    2、未来への方向性を指し示せるか。
    3、人間の欲望が色濃く現れているか。
     この視点は新鮮だった。「人間は論理ではなく感情で動く。その感情を突き動かしているのは、煎じ詰めれば欲望である。」
    4、TVなどの映像メディアでは表現できないか、もしくは表現不可能に近いか。
    5、そのテーマを聞いた第三者が身を乗り出してきたか。……
    プロの編集者に一度相談してみるのは必要かもしれない。
    ●ともかく動いてみる。……そうだよね、それが私には足りないところだ。
    ●情報収集の方法。
     資料を得るメディアは、その鮮度の順番から言うと、ネット、テレビおよびラジオ、新聞、週刊誌、月刊誌の順番。一方情報の確度からいうと、単行本と新聞が比較的高く、最下位にはネットが来る。
     森健が運営している「moriken.org」で各紙や各メディアのニュースを手軽に読むことが出来る。
     新聞をパラパラめくっていて、気がつく情報も多い。検索では分からないこと。
     プロの書き手を目指すなら、たとえ一食抜いても本にお金を注ぎ込むべきだ。……プロは目指さないんですけど。でも傾注に値する意見ではある。
    ●情報は袋ファイルに入れている。……私も一時期やったことがある。あのときの袋は20年ほど経過した今、もう一度見直す必要があるかも。
    ●単行本の読み方。
    1、インタビュー集や対談集を手始めに読む。
    2、入門書から出発し、徐々にレベルを上げていく。
    3、対象となる人物や出来事を様々な角度から論じている複数の本を読む。
    4、精読すべき本、通読する本、拾い読みでかまわない本を選別する。……気に入った本は2-3回読む。これもあまり出来てていないなあ。
    5、資料としての本は乱暴に扱う。……つまり書き込み等をたくさんしようということ。だから基本的に買わなくてはいけないのだが、貧乏金無し。つらいところではある。この本も図書館で借りた。(だからこんなに詳しくメモしている^^;)
    ●一次情報の質は作品の質を決める。つまり取材対象の人選は大切である。
     住んでいる地域が分かるならば、とりあえず104番で聞いてみる。公表していないならば、じかに現地を訪ねて家を探す。所属する会社や組織が分かっているならば、そこから辿っていける。
    ……加藤周一論ならば、矢島翠さんということになる。もしくは、別れたドイツの女性。そして、まだ存命ならば、詩にも出てくる妹さん。
    ……けれども、とってもそんな勇気はない。
    ●取材の申し込みの例文などやお礼状なども載せていて、いざというときには、もう一度読み返そう。
     相手が電話に出たならば、必ず「今お電話よろしいでしょうか」と相手の都合を聞く。「突然お電話差し上げまして、大変申し訳ございません」礼儀は丁寧すぎるぐらいでちょうどいい。「誠実」が最も大切。
    他のところでは「原稿をこちらが送稿したのに何の連絡もしてこない編集者の多いことと言ったらない。心配なので電話すると、ちゃんと届いている。」と書いている。
    ……私もこれに似た経験がつい最近あった。ある機関紙に原稿をメールで送った。これでいいのかどうなのか気になるので、何回か電話したのであるが、ちようど祝島に行くときと重なっており電波が届かない状況になっていた。そのこともあるから、私のほうからは何度も電話したのである。震災のばたばたしているときと重なっており、いつもすれ違いになっていた。結局機関紙を見ると、ちゃんと原稿が載っていた。電話が通じないのならば、せめてメールで返事するなりしておいて欲しかった。私は三回も電話したのである。彼のほうから、電話がかかったという形跡はなかった。期待していた編集者だけに非常に残念であった。
    ●取材を断られたときの食い下がり方が、たくさん載っていて、面白い。
    ●ここで肝要なのは、なぜその人物にあいたのか、あって何を知りたいのか、もう一度自分に問いかけて、明確な答を出しておくことだ。
    ●取材の事前メモの要点などもここに載っている。質問事項をノート一ページほどにメモしたら、質問の重要度に従って◎や○印をつける。そして、質問事項を大づかみに覚えてしまう。
    ●取材当日、絶対にしてはいけないのが、遅刻である。遅くとも15分前、出来れば30分前にいく。遠方ならば一時間前にいくぐらいがちょうどいい。中には入らない。もんの前で待っておく。余裕を持つ持たないでは、先方の印象が全然違う。
    ●インタビューの聞き方。
    しゃべることの倍を聞くつもりで。「相手と同じ大きさの声で話す」というのは黒田清の弁。
     メモをしない方法もある。数字などは小さいメモに書いて、あとは直後にファミリー・レストランに駆け込んで直ちに書く。案外出来るものである。……わたしも短いインタビューで何回かしたことがある。案外出来る。
    ●初対面の印象は重要。それこそがその人の本質に近いことがままある。だからその日のうちにノートに出来るだけ詳しく書く。
    1、顔つき、体つき。
    2、服装、ファッション。相手の靴。
    3、表情。とくに目と口の動き。
    4、しぐさ、癖。たとえば、腕を組む、こちらの目を正視しない等々。
    5、視覚以外の感覚で感じたこと、たとえば、声の調子、握手のときの手の暖かさ、握力の強弱、体臭、香水の匂い。
    ●最後にお勧めしたいもの。
    活字に限らない。映画でも芝居でも、絵画でも音楽でもあらゆる表現ジャンルでまず自分が関心を持ったものにどんどん接近していく。それから自分の関心と多少はずれていても、世評の高いものに触れてみる。最初は広く浅く、徐々に狭く深く、いずれは広く深く、方向性を変えながら、貪欲に吸収していく。するといつの間にか自分のなかに「貯水池」みたいなものが出来上がっているのに気がつくだろう。
    貯水池にだんだん水が溜まっていき、あふれ出たものが、自分のテーマなり、自分の表現なりになる、そういったイメージが私にはあるのだ。

  • 仕事の参考になればと読んでみたが、これは単なるライティング技術の参考書ではない。事実を追い求めること、それを他者に正確に伝えること、そして正確さの中に自分の思いを込めること、これらの大切さが筆者の経験と多くの名ノンフィクション作品に基づき解説されている。
    知の重みをあらためて感じる。

  • 簡潔で読みやすく、ノンフィクションとはこう書くのかと面白く読めた。私はノンフィクションに限らないが、綿密な取材に裏付けられた小説なども大好きなのだが、同じ人間の著者たちがどうやってこんな大作を、しかも一人で作れるのかといつも不思議だった。その一端を垣間見れた気がする。

  • 全文掲載されている3本のノンフィクション(人物、事件、体験)を何度も読みながら、迫り上がってくるような情景とその余韻に浸った。ノンフィクションに取り組む際のテーマの決め方や姿勢、ノートの取り方まで、精神的・技術的なノウハウをこれでもかと詰まっている。それでも単なるテクニック本ではなく、この本でノンフィクションライターの上質なノンフィクションになっているのは、興味関心を持つところから、取材をし、ノンフィクションを完成させるまでの、野村さん(著者)の一貫して真摯な姿勢が浮き上がってくるからだろう。タイトルにも「調べる技術・書く技術」とあるが、テクニックを十分に学べるだけでなく、調べ、書くことの意味や魅力を感じて自分も「叫ぶ男」(本文144頁参照)になりたい、と強烈に感じさせられる本だった。

  • ★巻末のノンフィクション一覧も参考に★この種のノウハウ本は定期的に出ており、たまに読む。インタビュー中の沈黙は恐れずに相手が口を開くまで待つ、ディティールを描く、第三者の目を持つ、など改めて参考になることも。本田勝一「日本語の作文技術」は30年近く前に読んで、修飾語の位置などいまも気にしている部分はある。ノンフィクションに限らず何かをまとめて誰かに伝える最初考え方には、人により細かい手法に違いはあるのだろうが根底は共通していると感じる。

  •  調べる、書くというと、私などは学術的なものを想像するのですが、この本は、いわゆるノンフィクションの文章を書こう、という方を対象にした本です。

     抽象的な理論の展開ではなく、実に具体的に、テーマを決めるには、資料を集めるには、人に話を聞くには、筆者の体験を元に、具体的な方法論が実に詳しく書かれています。

     後半は、筆者が実際に取材して書いたノンフィクションが3本紹介されています。この文章が実に面白い。それは、読み物としての面白さでもあり、前半の筆者の主張がどのように生かされているのか、その証というか、具体例としての面白さでもあります。

     ノンフィクションというと、ただ真実がそのまま書かれているだけという印象を持っていましたが、今回この本と出会って、書き手の文章力というか、表現が大きなウェイトを占めているなあと改めて考え直しました。

     つまり、筆者のフィルターを通して、真実によりリアリティを増して読者に伝える、それは誇張とか嘘ではなく、あくまでも筆者の文章力である、そんなこの筆者のプロとしての誇りが伝わってくる1冊です。

  • ざっくり言えば『ノンフィクションを書く人、これから書きたいと思っている人向けのハウツー本』。
    でも、私はノンフィクションに限らず、全ての物書きさんが一度は読んでも良いんじゃないかなーと感じた。この“全ての物書きさん”とは小説、ブログ、或いはレポートも含め……ジャンルや媒体は問わず、兎に角何かしらの文章を書いている人のことである。対象に関する資料を集めて整理したり、誰かから話を聞いたり聞き出したり、そうやって集まった情報から必要なものを取捨選択して文章化していく作業って案外やる機会があると思うので。

    まあ、全然そんな機会ないわー!という人もいるかもしれないけれど。それでも『書く』ではなく『喋る』機会はあるだろうから。誰かに何かを伝えたい時(特に事実を伝えたい場合)には、本書に記されている心構えやテクニックが役立つのではと思った。
    あと単純に、とても読み易い。少しでも興味を持った人は気軽に手に取って読んで欲しいです。

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著者プロフィール

野村/進
1956年、東京都生まれ。上智大学外国語学部英語学科中退。78~80年、フィリピン、アテネオ・デ・マニラ大学に留学。帰国後、『フィリピン新人民軍従軍記』で、ノンフィクションライターとしてデビュー。97年、『コリアン世界の旅』で大宅壮一ノンフィクション賞と講談社ノンフィクション賞をダブル受賞。99年、『アジア新しい物語』でアジア太平洋賞を受賞。現在、拓殖大学国際学部教授もつとめる。主著に『救急精神病棟』『日本領サイパン島の一万日』『千年、働いてきました――老舗大国企業ニッポン』。近著は『千年企業の大逆転』

「2015年 『解放老人 認知症の豊かな体験世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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