見えないアメリカ-保守とリベラルのあいだ (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062879491

感想・レビュー・書評

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  • リベラルと保守というアメリカを二分している政治的立場について掘り下げた一冊。
    リベラルも保守も、居住地域、生活レベル、教育レベルなど様々な要因が複雑に絡み合っており、グラデーションのようにその意味する内容は幅広いということが解説されている。
    アメリカの政治の歴史と現代アメリカ人が親しんでいる政治的娯楽についての話がメイン。選挙事務所や大学などで出会った実際のアメリカ人の話など、著者の経験談も豊富で面白い。
    この本自体はトランプ大統領の誕生以前に書かれたものだが、そこに繋がる背景が少し見えたと思う。
    意味が取りにくい文章に不慣れな固有名詞やカタカナの政治用語、事実の羅列的な記述もあり、少し読みにくく感じるところもあった。

  • アメリカに駐在していた間に、アメリカ人となかなか
    できなかったのが政治と宗教の話。
    駐在する前に本書の内容を理解していれば、そうした
    話もできたかもしれない、と思えるような一冊。

    日本人が書いたアメリカ本としては秀逸。
    その大きな理由は、一般に外国人が入り込み難いような
    ところ(議員事務所や選挙本部、ラジオ局のアシスタント
    など)に著者が身を置いた経験があるから。
    ここから来る臨場感が、本書に大きな説得力を与えて
    いるのはまちがいない。

    これからアメリカに留学する人や駐在する人には強く
    オススメしたい一冊だ。

  •  日本人でありながらシカゴで政治を学んだあと、民主党の議員事務所で集票戦略を練る仕事をしたという著者ならではのアメリカ政治についての解説。「保守」と「リベラル」に単純に分けられない事情を、具体的なエピソードも交えて分かりやすく解説している。
     アメリカでの経験があるから書けることがたくさん載っており、単純な二項対立で終われない微妙な部分をうまく解説しているところがとても良かった。共和党=保守、民主党=リベラルには決してならず、保守とリベラルの中にスペクトラムがあって、さらに土着保守、土着リベラル、アカデミック保守、アカデミック・リベラルといった志向の違いがあり、様々なアジェンダについて賛成から反対、中立、無関心など多くのパラメーターが設定された結果、現実は多様で、その多様性が「保守」と「リベラル」というイデオロギーの陰に隠れてしまう「見えないアメリカ」ということがよく分かった。
     実社会での経験があるからこそ、という部分で言えば、まず「いちばんやってはいけないのが、黒人英語や黒人のラップを表面的に真似ること」(p.134)で、政治現場で「安易なリベラル思想で気楽に扱ってはならないアンタッチャブルな聖域」(同)らしい。人種問題は日本人が想像できない奥深い部分があることが分かった。あとこの本を読んで得るところが大きかった部分は「原理主義」についてだ。「何かひとつの原理に忠実にありたいという姿勢のこと」(p159)が原理主義で、「アメリカでは、なにかひとつのことを信仰することにかけては、特別な重きがおかれやすい」(p.178)ことと相まって、結果として色々なイシューをめぐって原理主義になってしまうということは納得できた。「アメリカでシングルイシューにのめり込むときに、はたしてどこまで原理主義とは無縁でいられるだろうか。」(p.177)、「宗教右派を軽蔑する人」も、「彼ら自身が別の原理主義にとらわれていることはないか。」(同)という疑問は納得だった。そして、「見えざる公共性」に目をみひらく(p.181)ことの意義まで述べてあって、一応の解決のための姿勢まで示されているのが良かった。他にも選挙のキャンペーンは内側に向けてのものであり、棄権させないためであるとか、銃規制が進まないのはハンティング文化の影響であるとか、今までにない視点が得られたのが有意義だった。(16/07/21)

  •  日本人が抱くアメリカに対するイメージは人に様々だ。ハリウッド映画、自由の国人種問題、軍事大国、覇権国家etc…。多種多様なイメージが錯綜して実態は容易には見えない。
     政治的にはよくリベラルと保守の二項対立が語られる。確かにアメリかは二大政党制で民主党と共和党はリベラルと保守掲げている面もある。しかし政治に関心のある層とない層、宗教に熱心な層、そうでもない層など党内の中にもさまざまな断裂がある。
     アメリカは複雑で見えないことが多いが見えないことを認識して見えるアメリカから推測することはアメリカを理解する上で確かに有効だ。

  • 『スターバックス』に行く人はリベラル、『クアーズビール』を飲む人は保守的という傾向があるのは確かだと思いますが、クアーズについては、その創始者のことについて知っている人はそれほどいないはずです。

  • 日本にいて外から見るだけでは知ることのできない「アメリカ」という国の持つ側面について,ちょっとだけでもうかがい知ることができた

  • 政治的な面でアメリカを語る上で欠かせない「保守」「リベラル」という2つの要素。

    『スターバックス』を好んで飲む人はリベラル、『クアーズビール』を好んで飲む人は保守的、という解り易くも大胆な喩えを引き出しつつ、
    著者が実際に身を賭したアメリカの政治システムの中で実際に体感した事実や、
    都市構造の変遷、南部の人種問題といった歴史的背景を紐解き、
    まさしく本書の副題である「保守とリベラルのあいだ」に横たわるアメリカの内実に迫ります。

    大学でメディア論に少々触れていた自分にとっては、
    第5章のメディアにおける政治の取扱い方は大変興味深いものでした。

  • [ 内容 ]
    アメリカ人はみんなワシントンが嫌いだ!
    日本からはわからないその意外な素顔。
    スタバ好きはリベラル!?
    知らないアメリカ発見の旅へ。

    [ 目次 ]
    第1章 「保守」と「リベラル」
    第2章 都市―移民のシェルター
    第3章 南部―怒りの独立王国
    第4章 信仰―共同体にひそむ原理主義
    第5章 メディア―大衆化の舞台装置
    終章 自由主義―アメリカ精神の奥底

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 09年9月26日開始
    09年9月26日読了

    アメリカの保守やリベラルなど、普段言葉は知っていてもなかなか実像がわからないアメリカを紹介している。個人的に一番興味深かったのはアメリカ南部の章。

  • これまで外からは薄ぼんやりとしか認識できていなかった、アメリカの分断を様々な事例でもって理解させてくれる本。
    保守、リベラル双方に存在する内部での分断だけでなく、その分断された層の双方が他極との通奏低音でもって意識を共有している事が更にアメリカを外部から理解する事を困難にしている。
    単純な二項対立に思われがちなアメリカという国を理解する端緒としては恰好の本である。

著者プロフィール

広告業やアグリテックの分野で活動する機械学習エンジニア。2017年10月に株式会社iMindを設立。PythonよりもJuliaの方が好きですがあまり使う機会に恵まれません。

「2020年 『数式をプログラムするってつまりこういうこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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