親子という病 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 48
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062879620

作品紹介・あらすじ

親が子の幸せを願う思いは無償なのか!?子が親を慕う気持ちに偽りはないのか!?すべての親子は、気持ちワルイ。

感想・レビュー・書評

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  • 現代の若者が叫ぶ
    「親サイコー!産んでくれてありがとー!」
    という日本社会のおかしな状況に対し、その原因と解法を分析した本。

    結論としては、
    「親子というのは、どの家族でも等しく病気なのだ。しかし、それがあたりまえなのだから、親への様々な罪悪感をある程度”大人になるための必要経費”だと割りきって、社会と関わろう。」
    ということだ。
    更に、現代の「親、最高」というのは、日本の政治にとっても都合のいい事なのだということが指摘されている点が面白かった。
    つまり、社会保障費を減らすためには一人で生きる人間よりも家族間で相互依存関係になりながら生きていく人間を作り上げてゆくほうが経済的な政府負担が少なくてすむ。だから、社会の風潮がそういうふうに作り上げられている、ということらしい。
    最もだと感じた。
    社会でむやみに持ち上げられているものに対し、自分の感情を認識しないまま巻き込まれるのは危険だ。

    以下、なるほどと思った点。
    ■母と娘:娘は常に「生まれてきてすみません」という気持ちに苛まれている。なぜなら、日本社会で娘より息子を望む傾向が強いから。にもかかわらず、「娘より息子」という志向は「男女平等」の元に抑圧される。その結果として、「娘であるあなたはすばらしい」と表面では言いながらも本心では「息子が欲しかった」という親の想いが、歪んだ形で娘に向いている。
    それに対して娘は反発したいのだが、表面上は愛されているので母を責め立てることができない。なので「生まれてきてすみません」そして親元を離れようとすると「母親をおいてきた」という罪悪感に苛まれる。
    という構造・・・らしい。
    ここらへんの構造を理解するのが難しかった。
    ■対症療法
    「社会に目をやり、身を置く」
    非常にわかり易かった。
    自分の置かれている立場は、別に特殊でもなんでもなく、普遍的なものなのだと理解することが、大人になるための一番の近道だ。
    きちんと「わかってる大人」になりたい。

  • 日本の親子間に見られがちな、病的とも言える関係性について考察した本。
    家族の重みに苦しんでいる人に対し、それにどう対応する方法があるのかを提示している。

    著者が女性精神科医ということもあり、女性視点からの考察が読めると言う点で興味深い。
    心理学関係の書籍では、よくエイディプス・コンプレックスが取り上げられるが、どうしても「息子と父母の関係性」が考察の基本となっているし(娘との関係性については深く書かれていない事が多いのでは?)、「母」も主体ではなく対象として扱われがちだと思う。
    一方、ここではエイディプス・コンプレックスについて触れはするものの、娘が親に持つ独特の感覚について丁寧に論じられていたり、「母」を主体として扱っていたりする。全面的に共感できるとは言わないまでも、「日本の女性達自身は、こう思いがちである」という、貴重な視座が得られる内容だったと思う。

  • 親子という関係を改めて考えさせられる本です。よく考えると親子って不思議な関係なんだというのが分かります。

    目次
    第1章 親を殺す子どもたち
    第2章「なぜ生まれたのか」と問い続ける子どもたち
    第3章 母に依存する娘、娘を支配する母親
    第4章 母の愛は無償なのか
    第5章 母性が加害性を持つとき
    第6章 理想の家族にひそむワナ
    第7章 「親子という致命的な病」への処方箋
    第8章 親子という病のために「まだできること」

    親から子へ、子から親へ、それぞれの思いは様々である。誰でも、親子関係で悩むことはあるはずです。著者もあとがきで、親の期待に答えられなかった自分に対して、自責の念をずっと抱いていたようです。

    親子って、関係が近過ぎて、ギクシャクしてしまいがちです。友人のような、もう少し距離が離れていると、他人だからって割り切れるが、親子だとそうはいきません。自分の血が流れているということもあり、過剰に関わろうとして、それが相手にとってはしんどい時もあります。

    それが、極端な例では、子供が親を殺害したりという悲劇を生んでしまうと著者は指摘しています。親としては、良かれと思って、子供に塾に行かせたり、いい学校に入学させたりしているのに、子供が応えきれずに、ストレスを溜めて、ついには爆発してしまうというのは、まさに悲劇的です。どちらが被害者なのか分かりません。

    著者は、「親子という病」の処方せんは無いと断言しています。それくらい親子関係は奥が深く、著者も「親子という病」に苦しんでいる状況なので、克服するのが難しいと感じているのだと思います。

    ただし、一歩踏み出すとして、まずは、親子関係から外に目を向けて、互いに独立した関係を構築するというアドバイスをしています。内に内に目を向けると、どうしても空気が濃くなりしんどくなります。

    成人した親子の場合、それぞれが独立した世界を持ち、そこで経済的にも生活的にも自立した環境を持っていれば、お互い干渉する必要もなくなってきます。親しき仲にも礼儀ありというように、親子でもある程度の「距離」が必要な気がします。親子という前に、それぞれが、一人の独立した人間という意識を持って、親子関係を築いていければと思います。

    思えば自分も家族に関してはいろいろとありました。なので、著書の内容が深く心に響きました。誰でも家族関係に悩みはあると思います。親子というのは、切っても切れない関係です。だからこそ、時にはしんどい存在になってしまいます。自分の場合は、親戚のおじおばの存在に救われました。

    ちょうど大学生の時、下宿先としておじおば家族の家で生活をしていました。おじとおばは、1年に1回たまに会うぐらいの関係でしたが、小さい頃からとても可愛がってもらっていました。おじは面白い人で、サラリーマンでありながら別の顔として小説を書いていました。歴史上の人物や政治家等の話をおじから聞くのが楽しみでした。照れくさくて自分の父親とは話せないような内容をなぜかおじには素直に話ができて、時には数時間お酒を交わしながら議論していました。おじとおばは非常に仲が良くて、とても温かい雰囲気の漂う家庭でした。おじとおばは我が子のように扱ってくれて、居心地はとても良かったです。

    おじとおばと生活するようになって、これまで主観的にしか見れなかった自分の家族を客観的に見ることができるようになり、自分に余裕ができました。今の家族はそれはそれとして、将来自分は新しく自分自身の家族を築いていけばいいのだと。ある意味、この時期に家族からの精神的な自立が果たせた気がします。

    悲しいことにおじは大学4回生の時にこの世を去りました。研究室生活が忙しくなり、その頃は大学近くで一人暮らしを始めていましたが、一報を聞いた時は頭が真っ白になりました。おじの家に駆けつけて抑えきれず涙したのを思い出します。

    おじがこの世を去って10年近くになります。先月に大阪出張のついでにおばの家に寄り、久しぶりにおばに会いました。今年生まれた第2子の写真を見せると、とても喜んでいました。帰りの新幹線の中で、おじとの生活を思い出し、なぜか感傷的になり涙が出てしまいました。あの時過ごした温かい家庭が、自分の家庭像の理想なのかもしれません。

    今、一人ブログを書きながらおじとおばとの生活を思い出しました。自分は高校生から一人暮らしをしていたので、おばとスーパーに買い物に行ったり、毎日夕食を家で一家団らんで食べるという日常生活が新鮮でした。そんな何でもない日常生活が、実はかけがえの無い大事なものと気付かせてくれたおじとおばには、感謝してもしきれないです。これからもっと恩返しができるよう、がんばろうと思います。

  • [ 内容 ]
    親が子の幸せを願う思いは無償なのか!?
    子が親を慕う気持ちに偽りはないのか!?
    すべての親子は、気持ちワルイ。

    [ 目次 ]
    第1章 親を殺す子どもたち
    第2章 「なぜ生まれたのか」と問い続ける子どもたち
    第3章 母に依存する娘、娘を支配する母親
    第4章 母の愛は無償なのか
    第5章 母性が加害性を持つとき
    第6章 理想の家族にひそむワナ
    第7章 「親子という致命的な病」への処方箋
    第8章 親子という病のために「まだできること」

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 読み進めていくと、「あらゆる親子関係は病的なのだ。」という文句も。
    なんか、思い切ったなぁ・・・。やるなぁ・・・。
    「病的」というと、なんだか不健康な感じ。
    でも、親子間のあの独特の距離感って、確かに不思議で不可解なことも多い。

    なんなんだろうなぁ・・・。

    息子と娘では、親との関係の築き方が違うらしい。特に母親との関係。
    息子は、母に愛されて当然だと確信していて、疑うことをしない。
    娘は、母と距離をとりながらも、母に支配されることに甘んじる。
    まぁ、一概にその通りだともいえないんだろうけど、こうやって比べてみるとなんだか興味深い。

    6年振りに、1年間だけという期限で親元で暮らすようになって、半年が過ぎた。
    親子の関係を改めて考えてたとこだったから、この本が余計にひっかかる。

  • 新書、題名に惹かれた中二病患者。
    恐らく此の名の病にもかかっているのだろうと言う予想から。

    アダルトチルドレン、気になっていて知りたい話題だったので嬉々。

    スピリチュアルや音楽、経済仕舞には社会に対するメッセージを発していて高一が読んでみても興味深いお話でした

    精神科医の方ですが、スピリチュアルについても余り否定的ではなく江原さんが紹介されていたり。

    親と言う、一番身近で一番理解し合える筈の、一番小さな家族と言う社会を共生する人間。

    依存だとか拘束だとか、
    自分の現状と将来について考えてしまう、
    多分結婚なんてしない、そんな自分が親とどう付き合っていくのか。

    そんな難しくメンドクサイことまで考えてしまったりします、

    文中にゴスロリ文化まで紹介、分析されていたのには驚いたな、
    サブカルチャーにも精通している方らしく。
    他の著書も読んでみたいと思った次第。

  • ゼミの課題に使うために読みました。
    それ以前から買っていたので読んだのですが、
    著者なりに客観視しているつもりなのでしょうが、その客観に固定観念が入っていたりで、私にはあまり納得のいく内容ではなかったように思います。
    いつだったか学校の教科書で著者の作品を見たので買ったのですが、ちょっとズレていました。
    あまり相性のいい作家さんではないのかもなと思いました。

  • 一番身近な「親子」の問題について、さまざまな事例をもとに考察した本。

    あらゆる人間関係の中で「親子」とは、一番濃密な関係であるがゆえにお互いの気持ちのすれ違いが起こりやすく、かなり難しい問題なのかもしれません。

  • (Mixiより, 2009年)
    導入が上手い。間口の広い話から、だんだんと心理学へと裾野を広げていって、 
わかりやすい解釈で結論を出している。「ああ、タメになったなぁ」という本じゃないけど、頭の良い人と話している感覚です。

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著者プロフィール

たくましいリベラルとして、右傾化する政治状況から現代社会の病理まで、メスをふるう行動派知識人。1960年生まれ。精神科医。立教大学現代心理学部教授。『若者の法則』『ぷちナショナリズム症候群 若者たちのニッポン主義』『生きてるだけでいいんです。』『弱者はもう救われないのか』『「悩み」の正体』『リベラルじゃダメですか?』ほか、著書多数。

「2017年 『憲法の裏側 明日の日本は……』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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