〈満洲〉の歴史 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062879668

作品紹介・あらすじ

17世紀以降の変遷、20世紀・傀儡国家の壮大な実験と挫折を、第一人者が解く。日本人のためのまったく新しい中国東北史。

感想・レビュー・書評

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  • 満州国が存続しても日本人は根付かなかったのではないかと思った。

  • 軍事政治だけでなく産業社会文化などについても概観しているのが特徴。半世紀だけ存在した近代満洲という社会はやがて中国にも日本にも忘れられていく。中国史上にはこのように完全に忘却された小国が無数にあるのだろう。

  • 図書館にて借りた。

    満州人に関して興味を持って読んだが、中身は日本人・日本軍の視点が多く、期待とは異なっていた。
    また地域上仕方がないが、第二次世界大戦前後の話が9割。

  • 聞いたことはあっても実情についてはまったく知らないものは多いが,満洲国もその一つであろう.
    ひとことで言えば清朝の最後の皇帝溥儀を擁した日本の傀儡国家といえるが,厳密に誰の傀儡かと言えば国策企業である満鉄とその警備を担当する日本軍である関東軍といったところか.満洲国では国籍について法制化がされておらず,日本国籍を持ちつつ満洲国民であることが可能であったという.現地に住む漢人も海千山千で移民してきた日本人をうまく扱うことも多かったようだ.

    満洲在住者が日本へ送った手紙とかエピソード的なお話がいろいろあるが,実態はよくわからない.ネットなどを調べると本書で出てくる手紙等の出処の怪しさも指摘されていて結局もやもやだけが残る.

  • 書店で見かけて。清朝末から第二次大戦後までの日本から見た満洲史。

  • 満州の歴史にフォーカスしているから仕方ないのだが、関東軍だけでなく、参謀本部や政府、宮中、国際関係の視点まで網羅しないと全体像はわからない。他著で補足・補強する必要はある。それにしても石原莞爾の修正能力の高さには感心するな。

  • 満洲の人口比を全く知らなかった。
    日本からの入植者が開墾したような印象を持っていたが、大間違い。
    日本民族は人口比で1%強、公務員・自由業では5.8%。つまり、日本民族の大部分は農業に従事していない。

    それでも、農業を試みた日本民族は、水田以外の農業知識を持たず、現地の農法を模倣して既存農家との競争関係に入って敗れる。
    北海道の農業知識を導入するまでにも時間がかかっているが、牛馬を使いこなせない入植民には高級過ぎた。
    相当に無茶で、ほとんど失敗。

    一方、検閲に遭って届かなかった手紙」がたくさん出てくる。それがなぜ入手できたのかわからない。
    現代の日本の政府と違い、文書を記録に残す意識はあったか?
    そして、本土のように、敗戦時に書類を焼却する余裕がなかった??


    金日成と全斗煥がそれぞれ出てくる。
    小澤開作の名前が出て来る。民意の汲み上げを企図する側だが、溥儀の対立勢力として出てきたので驚いた。
    表の職業は、歯科医だった! そうだった。

  • いろいろなものが絡みあり、うねり、今も続いている、それが満洲。
    一面からではとても捉える事が出来ないという難しさを知るための、分かりやすい本だと思う。

  • 清朝時代から太平洋戦争後までの満州地域の歴史史。特に、張作霖による奉天軍閥の時代→張学良との権力併存時代→満州国時代の説明が濃い。満州に漢民族が住み着き始めたのは、露清の国境紛争後の戦力増強からで、日本が日露戦争後に関東庁を置いた時はまだ一種の拓殖民に近い自治組織が多い状況だった。それを馬賊の張作霖がまとめあげ奉天軍閥を築き、日本軍のバックアップのもと中央への進出を伺う状況になる。張作霖と蒋介石の対立後、日本は張作霖爆殺を行い、張学良に近い幹部は中華民国側へ、土着が強い勢力は関東軍に接近。ここに日本が満州に権力を築く土壌があった。満州国の正統性を精神的に支えたのは、旧清朝幹部による清朝復興の願い、満州馬賊の中華民国からの距離感などがあり、そこに陸軍がつけこんで成立していた。五族協和を唱えた満州も、実質的には日本人は1%強ながら支配民族として君臨。形式的な満州国には企画官僚はおらず、それは満鉄調査部が代替していた。満洲事変後、日本は満州と一体での経済5カ年計画をつくり、戦争を支える鉱工業の中心を満州においていったことが統計からわかる。戦後、日資は中国に徴収され中華人民共和国初期の鉱工業を支えたが、改革開放後に経済の中心は南方及び沿岸部に移り、近年に大連などに外資が集まる前は、東北は経済低迷地域になっていた。

  • 中国東北地区、満州国の通史、満州国における政策、満州国に住む人々の生活文化等々、満州についての概観を学ぶことができる良書。

    「満州国」を単純に失政と評価するのは容易いが、満州国における産業育成政策、経済政策を立案した官僚等が戦後日本の高度成長時代に政策立案面を担っていたことを考えるとそこに歴史の面白さが見えてくる。

    「五族協和」の理想は脆く失敗に終わるのだが、当時の理念は現在でも学ぶべきところがあるのではないか。
    北朝鮮が何らかの形(崩壊後?)で国際社会に組み込まれれば、中国東北地区が経済圏としも重要度を増し、日本にとっても戦略的な地域になっていくのでないだろうか。

    以下引用~
    ・戦前の満州での五カ年計画は、戦中そして戦後の高度成長政策に人的に連動していく。満州で五カ年計画を担当したのは総務庁次長の岸信介であり、その部下の産業部の椎名悦三郎らであった。
    ・この官僚主導で金融、物流、生産を重点部門に集中し、経済を活性化させる「日本型生産システム」というべきものは、1957年に岸が総理大臣に、60年に椎名が池田内閣の通産大臣に就任するに及んで高度経済成長政策として本格的に開化する。

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著者プロフィール

1943年東京生まれ。東京都立大学法経学部卒。同大学大学院社会科学研究科博士課程修了。駒澤大学経済学部教授を経て、現在早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授。
著書に『「大東亜共栄圏」の形成と崩壊』(御茶の水書房)、『昭和ファシストの群像』(校倉書房)、『大東亜共栄圏』『日本軍政下のアジア』(以上、岩波書店)、『満州と自民党』(新潮新書)、『満鉄調査部―「元祖シンクタンク」の誕生と崩壊』『ノモンハン事件』(以上、平凡社新書)、『日本近代史を読み直す』(新人物往来社)、『日本の迷走はいつから始まったのか』(小学館)、共著に『満鉄調査部事件の真相』(小学館)、『一九三〇年代のアジア社会論』(社会評論社)など多数。

「2011年 『論戦「満洲国」・満鉄調査部事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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