思考停止社会~「遵守」に蝕まれる日本 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062879781

感想・レビュー・書評

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  • メディアが報じていることに騙されず、問題の本質をつかみ自分でしっかり考えよう、というのが本の趣旨。しかし、筆者は専門家であり、普通の人では入手できな情報を持っている。知る由がないことを判断することはできない。

  • 法令遵守の御旗の下で繰り返されるマスコミのバッシング、マスコミ自体の虚偽報道、その他。
    年金改ざんの問題の実態をきくと、じゃあどうすればいいのか、という気になる。役人が良心に基づき良かれと思ってやっていることなので、目をつぶるべきなのか。その前提で着服、使い込みをしたのがそもそものきっかけではなかったのか。
    賢者による善政が敷かれたのは、奴隷によって市民が労働から解放されていた古代ギリシャぐらいだろう。不信感の充満した現在の日本で、ガス抜きバッシングが頻発するのは当然とも思える。

  • 耐震偽装、賞味期限といった世間を賑わせた社会問題から、「法令遵守」の皮をかぶった「思考停止」に対する警鐘を鳴らす。実例が豊富でわかりやすい。思考停止は法律に限らず、学校や企業などどこでも起こりうることだと私は思う。問題なのは、「思考停止」自体ではなく、「思考停止」を自覚できているかということな気がする。

  • 全体的に、マスコミ批判、
    遵守がダメな理由は最後の最後に少しだけ、
    という印象。

  •  日本社会に蔓延る「法令遵守」そのものの自己目的化、絶対化の影響について論じた本。当書では不二家など食品会社の不祥事、耐震偽装、ライブドア事件などの経済司法、裁判員制度、社会保険庁の「宙に浮いた年金記録」、マスメディアの報道問題など多岐に渡ってこの問題を扱っている。

     全体的に言えるのは、「法令違反だから」という理由で猛烈にバッシングしておきながら、真相が明らかになる頃には皆無関心を決め込む、バッシングのみに関心が集中して本来の問題が忘れられるという傾向が日本に見られることである。

     それはマンションの耐震偽装については、1981年の建築基準法改正前に立てられた物件の中には、偽装物件より耐震性の低い物件が多くあったのに偽装叩きのみが盛り上がったことが例として挙げられる。

     また、裁判員制度は官・民(日弁連)の間でろくに議論されないうちに「司法に『市民感覚』を採り入れないより採り入れた方がいい」という理由で導入された。このように著者は思考停止的に事件が国民に受容されている問題点を的確に抉り出す。

     最も根深いと思ったのはマスメディアの問題。納豆ダイエット捏造による関西テレビの「あるある大事典」事件、みのもんた氏が不二家の単なる形式的会社基準違反(それでも社会的悪影響は大きいが)を執拗に(TBSでは1か月間、1日平均15分かけてこの事件を取り上げる)バッシングして経営困難に陥らせた「朝ズバッ」事件などが挙げられている。

     著者はこうした事件が起こる根底に、単なる放送事業の過剰な営利追求姿勢の他にも、マスメディアが自らの虚偽を認めることが隠蔽するままよりも評価されず、不利益になることを指摘する。特に「あるある」の場合は捏造そのものは追及されたのですが、それだけという感じが以前からしたので、なるほどと思った。

     このように「法令遵守」そのものが水戸黄門の印籠の如く扱われる日本の風潮について、著者は日本人にとって法令は「伝家の宝刀」であると説明(アメリカ人にとっての法令は「文化包丁」)しています。日本では法令が非日常的であり、社会の実態と法令の間にズレが生じているにも関わらず、単なる崇拝の対象として扱われる(アメリカでは、法令は日常的であり、社会的要請に答えるための道具、手段)。

     この状態から脱却するためには、法令の趣旨、目的、基本的解釈を各々が自分の頭で理解し、「印籠」に頭を上げて直視することが求められる。そのようにして法令を媒介として、上命下服ではなくルールとして互いに尊重する関係を築いていくべきであることを著者は主張する。

     単にルールに従うことを有り難がり、はみ出し者を親の仇の如くバッシングし、後は野となれ山となれという態度を決め込む日本社会の側面を炙り出した素晴らしい一冊だと思う。

     ルールに従うことでマゾヒズム、はみ出し者を叩くことでサディズムを満たしているということだろうか。マスメディアの報道のやり方や、ネット上でのニュースの反応を見ていると、本書の内容に思い当たる節は枚挙に暇がない。

  • 食の安全の問題がまたとりあげられるようになったのでこの本を手に取ってみた。
    世間では食中毒事件と実際に食の安全を脅かす出来事が起きた。その被害が起きてしまったという点ではこの本に書かれている食の問題とは違うかもしれない。
    ただこの本にも書かれている重要なこととは本当にそれが消費者にとって利益になっているのか?ということである。隠蔽=悪、という図式がなりたっていては真実は見えてこない。公にしなかったのはそれが企業にとって利益が生じ、消費者にとって不利益が生じるからだったのだろうか。安全に関する情報をすべて提示していればそれは消費者にとって大きな誤解を生じさせ得ない。
    とかくそれが本当に消費者の利益になっているのか?この視点を忘れてはいけない。

  • 「検察の正義」の著者でもある、
    元東京地検特捜部検事の郷原信郎さんの本。

    最近の経済事件を題材に日本の司法が経済に弱い点と
    「遵守」する事が目的化する弊害を指摘。

    村上ファンド事件やブルドックの買収防衛策の事件で、
    司法の「起きることを想定してそれに対して規制をかける」というスタンスが、最早現状に即していない、かつそれが経済を阻害するにも関わらず、遵守することが目的になっている事を丁寧に解説。

    経済と司法用語という一見とっつきにくいジャンルであるにも関わらず、わかりやすい読ませ方だと感じた。

    確かに僕がバイトしてた法律事務所の先生も、経済事件は弁護士だけに扱わせるべきじゃないみたいなこと言ってた事を思い出した。
    「正しさ」の難しさを簡単伝えられるのは凄いと思う。

  • 事実を不公平なく伝えられないマスメディアへの批判
    ●不二家や伊東ハム・姉歯建築・消えた年金問題の真相 マスコミの報道との齟齬
    また「虚偽を正したものへのあまりに厳しい制裁」「うやむやなままにしておいた方が非難されない」という社会の有り様に言及。
    社会の風潮に多大な影響を与えるマスコミの問題点など。

    マスコミ(テレビ番組)の報道内容を批判しているが、すべての問題は「法」の問題に帰結する。
    (郷原さんは法律家なので。)

    社会問題とマスコミの関わりについて述べながら、法の望ましいあり方を論じています。

    日本の法令は実際の生活になじんでいない。徒に権力を振り回す法ではなく、より国民の生活を支える法を作ること、また国民と法との繋がりを助ける法律家が望ましい。法曹界も改善が必要。

  • [ 内容 ]
    日本の経済と社会を覆う閉塞感の正体。
    相次ぐ食品企業の「不祥事」、メディアスクラム、年金記録「改ざん」問題、裁判員制度…コンプライアンス問題の第一人者が、あらゆる分野の問題に斬り込み再生への処方箋を示す。

    [ 目次 ]
    第1章 食の「偽装」「隠蔽」に見る思考停止
    第2章 「強度偽装」「データ捏造」をめぐる思考停止
    第3章 市場経済の混乱を招く経済司法の思考停止
    第4章 司法への市民参加をめぐる思考停止
    第5章 厚生年金記録の「改ざん」問題をめぐる思考停止
    第6章 思考停止するマスメディア
    第7章 「遵守」はなぜ思考停止につながるのか
    終章 思考停止から脱却して真の法治社会を

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著者プロフィール

1955年生まれ。弁護士(郷原総合コンプライアンス法律事務所代表)。関西大学社会安全学部特任教授。総務省コンプイライアンス室長・年金業務監視委員会委員長。東京大学理学部卒業後、民間会社を経て、1983年検事任官。東京地検、長崎地検次席検事、法務総合研究所総括研究官等を経て、2006年退官。「法令遵守」からの脱却、「社会的要請への適応」としてのコンプライアンスの視点から、様々な分野の問題に斬り込む。

「2017年 『青年市長は“司法の闇”と闘った 美濃加茂市長事件における驚愕の展開』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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