思考停止社会~「遵守」に蝕まれる日本 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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レビュー : 64
  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062879781

作品紹介・あらすじ

日本の経済と社会を覆う閉塞感の正体。相次ぐ食品企業の「不祥事」、メディアスクラム、年金記録「改ざん」問題、裁判員制度…コンプライアンス問題の第一人者が、あらゆる分野の問題に斬り込み再生への処方箋を示す。

感想・レビュー・書評

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  • 「はじめに」を読んで、法令遵守の何がいけないのかと思ったが、読み進めていくうちに著者の考えが理解できた。マスゴミの曲解による煽情的な報道、それに迎合する検察、裁判員制度の欠陥、法科大学院の問題など、著者の言うとおりだ。
     しかし残念ながら事態は何一つ良い方向に変わっていない。昨今の食品偽装問題でもシャケ弁をトラウト弁に言い換えるとか、大の大人がくだらない議論をしているのを見ると心底がっかりする。司法当局の認識の通り、90%以上の日本人は馬鹿か幼稚かのいずれかだ。これは間違いない。低俗なTVの報道を真実と思い込み、納豆が体にいいと聞けば納豆が棚から消え、バナナを食べれば痩せると聞けばスーパーでバナナを奪い合う。まさに思考停止だ。
     もう5年ほどTVを見るのをやめているが、この世からTVが無くなっても結局ほかの何かに騙されるだけで、日本人の馬鹿と幼稚はずっと変わらないんだろうな、と思う。

  • 2007年1月、『「法令遵守」が日本を滅ぼす』で、社会や経済の実態と乖離した法令の「遵守」による弊害に警鐘を鳴らし、大きな話題を呼んだ著者による待望の新書第2弾。
    あれから2年、日本社会の状況は一層深刻化、「遵守」がもたらす「思考停止」の弊害がさらに拡大。「法令違反」だけではなく、「偽装」「隠蔽」「捏造」「改ざん」などのレッテルを貼られると、一切の弁解・反論が許されず、実態の検証もないまま、強烈なバッシングが始まる。

    ○消費期限切れ原料使用を作為的に隠蔽しようとしたわけでもないのに、「隠蔽」と決めつけられ、存亡の危機に立たされた不二家
    ○健康被害とはまったく無関係なレベルのシアン化合物の食品製造用水への混入を公表させられ、大量の商品の自主回収に追い込まれた伊藤ハム
    ○「耐震偽装」を叩くことに関心が集中、偽装の再発防止のための建築基準法改正で住宅着工がストップ、深刻な不況に見舞われた建築業界
    ○刑事司法を崩壊させかねない大問題を抱えているのに、誰も止められない裁判員制度
    ○経済司法の貧困により、秩序の悪化に歯止めのかからない市場経済
    ○何を意味するのか不明確なまま「年金記録の改ざん」バッシングがエスカレート、厚労大臣にまで「組織ぐるみで改ざん」と決めつけられた社会保険庁

    調査委員会などで多くの「不祥事」に関わった著者が、問題の本質に斬り込み、「遵守」による「思考停止」で生じている誤解の中身を明らかにします。その上で、思考停止から脱却して「真の法治社会」を作るための方策を示します。
    是非ご一読ください。

  • 1

  • 社会
    思索

  • 先日、社内会議の席で「思考停止」というフレーズを
    連発するヒトがいて、なかなか面白い表現をするなぁ
    と思っていたところ、本書を書店で見つけた。
    そこで、すかさず購入。

    食品企業の不祥事や、年金記録の改ざん問題、裁判員
    制度などを取り上げて、「法令遵守」という「思考停止」
    に警笛を鳴らしている一冊。

    不二家の信頼回復対策会議の議長を務めた郷原さんの
    論理展開は実に明晰で、説得力も十分。
    (不二家のところは少し甘い気もするが。)
    法曹界の方には必読の書、と言ってもいいほどの内容と
    思う。

    ただ、マスメディアを斬った章はやや物足りなかった。
    本書で取り上げられている「思考停止」はどれも罪は
    深いが、中でももっとも罪深いと思うのはマスメディア
    だから。

  • "多くの人に読んでもらいたい本の一つだと感じた。たまたま私は、伊藤ハムの事件について、従業員の声も聞けたし、柏市の保健所の立場の声も聞けた。概ね本書に記載の通りである。中核市になった柏市が保健所を自主運営する最初の仕事が伊藤ハムの水質問題になった。本書に記載の通り、見誤った対応のすえ、何ら食品に問題がない商品の回収をせざるを得なくなった企業の風評被害は甚大であり、従業員たちの苦労も聞いているだけに、正しい報道をすることのないマスコミには憤りを感じる。
    同様に、本書のTBSと日テレの対応の違いとその後の処分の違いに、また怒りすら感じてきてしまう。
    いずれにしろ、風説に惑わされずにしっかり実態を把握できる教養なり、感覚を持ちたいものである。"

  • 読んでおいて損はない

  • ルールを盲目的に遵守することによる思考停止の危険性を訴える内容。
    本書で紹介されている事件について、当時はなんとなくニュースを見て、なんとなく悪いんだろうなあと思っていたのを思い出す。

  • 新書を読むのは久しぶり!
    2000年代に話題になった食の偽装/耐震強度偽装などのトピックをテーマに、報道によって拡張された言葉と実際の数字の間にあるギャップを検証することで、どれだけ人が情報を鵜呑みにしてしまうかということを前半で説いている。後半はメディアの不完全性についてが中心だが、大衆を「育てる」メディアの在り方まで説けたらなおよかった。時代は変化しているのだから過去に作られた「法令」の名のもとに、検討を放棄するのでなく、異なる立場の人々がそれぞれ検討を重ね納得のいく社会規範を形成していくことが必要と結論付けている。

    最後の結論は同意。
    でも、やっぱり食品も建築偽装も、一個曖昧にするとじゃあどこまでいいの?ってなるから、ある程度厳しく罰せられることは必要で…
    メディアは過熱し過ぎでも、注目されないと民意形成のための議論の対象にもならないからね。
    問題は、どの番組もほぼ横並びで同じことを言ってしまうことね。でもそれが正しかったかというと微妙だと。
    そして311以降メディアはある面では改善されて、ある面では改悪されたと思うのです。ということを私は語りたい。

  • ファンドの事件の教訓として、「今の法律は、反道徳的な事件には対応できても、急激に変化する経済社会で起きる犯罪には適切な判断の維持が困難」との指摘がありました。

    本書でも述べられているように、日本の法律は基本的に成文法なので、どうしても法律が時代に後れがちです。

    特許法でも時代にそぐわない点があります(クラウドコンピューティングの世界では誰を実施者、発明者と定義するのでしょうか。)。商品サイクルが早い製品の特許を取得しても、権利が成立した頃には世間から製品が消えているなんてことは頻繁にあります。ソフトウェアの世界では特に顕著かもしれません。スーパー早期審査の導入などで時代のニーズに適合しようとの姿勢は見られます。しかし、スピードが絶対的な価値である世界で権利を取得することに意味があるのか疑問を感じてなりません。

    著者は法令を遵守することが自己目的化してしまうことを危惧していますが、法曹の世界に身を置く自分としてもその傾向に縛られていると感じます。

    ある出願について、「特許性があるかないか」の判断を求められますが、条文や審査基準に基づいてのみ判断を行っている姿勢があります。基本的なスタンスとしては間違っていないとは思いますが、発明の内容によって千差万別であるように、そこに縛られていたのでは、画一的な判断しかできず、時代の流れ等を読みきれず、過った判断をしてしまうことにもなりかねません。そもそも、最終的には特許庁の人間が判断する特許性を「白か黒か」と判断することなどできないと思います。20年、30年の経験があれば話は違いますが、特許性の判断を求められることは余りにリスクが高いと思います。

    それに答えなければならないのならば、相応のリターンを求めますし、それがプロのパテントエンジニアに求められるものなのでしょうか。

  • 何が言いたいのかよくわからん。

  • 元検事の郷原信郎氏による、形だけ、言葉だけの「コンプライアンス」に警鐘を鳴らす本です。

    わたし自身を振り返ってみると、会社に勤めていた頃は毎年のように「コンプライアンスについて」というようなウェブ講座を受講させられ、ろくに内容を見ず、黙々とマウスのボタンを押し続けたことを思い出します。

    法令の本質的な部分が見逃されて、無関心へと至るわたしのようなケースも問題ですが、逆に形式だけの「法令違反」に異様にこだわる社会やメディアの在り方を問うているのが本書です。

    著者の定番ネタ(?)である検察批判もしっかり盛り込んであります。ブルドッグソース事件の判決については、わたしも大いに疑問を感じており、このような奇妙な判断が規範としてまかり通るのは納得できません。また同じ章にあるアーバンコーポレーションとパリバが仕組んだ疑惑の社債引き受けについても、著者のおっしゃる通りと思います。

    本書に収録されている事件は、残念ながらどれも旬が過ぎたというか、いま読んでもピンとなかなか来ません。しかし本書が提起している「思考停止」問題は依然として残っており、引き続き問われていくべき問題だと思います。最近では、STAP細胞を巡る研究者に対しての個人攻撃に、「思考停止」のにおいを感じます。

    (2014/3/24)

  • 社会的要請にどうこたえるか
    1 社会的要請にこたえたいという個人の思いと姿勢
    2 社会的要請を正しく把握し、複数の要請にバランスよくこたえていこうとする基本的な方向性が定まっていること。めざすべき基本的な方向について共通認識を持ち合っていること
    3 状況の変化、環境の変化に鋭敏に反応し、臨機応変に動いていくこと。

    社会的要請にこたえることについての法律家の役割
    法令の趣旨・目的と基本的な解釈をベースに社会的要請という観点から法令適用の妥当性を判断し、問題があれば積極的に指摘していくこと。
    個人や組織が法令を使いこなすことをサポートしていくこと。法令と社会的規範の相互関係を把握し両者のインターフェースの機能を果たしていくこと。

  • 情報を見極める目を養う必要がある。

    iPS細胞の臨床応用問題の新聞報道もそうであるが、
    報道されると、ありえないことも、真実だと思わされてしまう。

  • 日本人が、本質、大局を見ずマスコミの指し示す方向に突っ走り、社会が悪い方へ悪い方へ行っていることを指摘する。社会のその性向は、太平洋開戦から何も進歩がないと。
    東京地検特捜部を経験した著者は、日本の裁判所、検察が、恐ろしい状態にあり、経済状態にも本質的な悪影響を及ぼしていることを指摘する。司法が閉じた世界で、他の分野の専門家を導き入れることもなく、他国とは比較できない悪制度の裁判員制度を導き入れ、その問題点を指摘する道も封じていることも。

    不二家「事件」、伊藤ハム「事件」、実情を伝えようとしないマスコミによって作られた虚像を信じこまされていたようだ、と感じることができた。
    不二家が TBS の捏造報道によって陥れられたことは、証明できていると言ってよさそうだ。
    伊藤ハムは、柏市保健所の誤った条例解釈により、本質に関係ない事実を公表させられ、マスコミによってバッシングを受けた経緯も、よくわかった。

    日本をまともな方向に導くためには、たとえば伊藤ハムが受けた行政指導の違法性について国家賠償請求訴訟を提起する道があるということも指摘している。
    四年前の本、残念ながらその時点から改善されたことは何もないようだが、著者には注目して行きたい。

  • コンプライアンスについて、誤った適用の事例が多く集められている。
    不二家の食品偽装や裁判員制度導入の問題など、著者が直接関わった事例も多く、内容に説得力がある。

    マスコミの一方的な報道、それによって作られるムードによって、社会がまさに「思考停止」しているとの指摘は、決して他人事ではない。

    コンプラ関連として、合わせて読んでみるべき1冊。

  • 情報弱者とか強者とかいうけど、真実を理解するには相当ニュースを読み込んで、客観性をもって考えないと強者にはなれないなと感じた。行き過ぎたコンプライアンスに陥らないために、マスコミもうまく使いこなせないと墓穴をほるのでしょうね。今まで「不二家のケーキは買わないぞ」と思ってましたが、考えを改めます<(_ _)>

  • 県図書館 四階
    335.15

  • 法令遵守の観点でしか物事を考えない、その背景、実態には目を向けずに単純化され、思考停止社会に陥っている。マスコミには視聴率のためなら事実を曲げて報道し、間違っていても逃げ続ける。マスコミの視聴者受けするための単純化優先の論理が社会の思考停止を助長する。
    これまでの報道、一般に認識されてきた事実はマスコミの都合、舛添元厚労相の無責任な発言などに起因することが指摘されている。
    普段感じるマスコミのレベルの低さを改めて認識させるものだか、その改善策は今ひとつハッキリしたものがなく、問題点指摘にとどまっている感がある。

  • 他者のつくった言葉やルールを「遵守」することが大切だ、とする今の教育の危険性を指摘する本。最近の「実学」志向の流れは、「遵守」の危険性という考えが世の中に浸透してきたからうまれたものなのかな…と思った。

  • 「思考停止社会」。特に、現代日本の問題点を象徴する言葉だと思う。
    思考停止に陥っていることさえ認識できず、ただただ一方的に流される情報に受身。本質を隠す隠蔽体質、それに対して懐疑心を持続するパワーに欠け、見抜く手段さえ麻痺してしまった国民。

    法律も時代に即応できるような組織体制ではなく、事なかれ主義。踏襲社会が歪みを生む悪循環システムのようだ。

  • 単に揚げ足を取るだけのようなことをもって「コンプライアンス」を論じる風潮に対して明確に否定しています。
    思考停止とは非常に的を得た表現だと思います。
    なぜ法令が守れないのか、守っていない方を単なる法令違反なのに重罪犯罪者の如く一方的な論調で「断罪」していくさま、またその行動を批判することになく受け入れる姿はまさに「思考停止」だと思います。

  • 読み終わって、タイトル通りだな、と実感した。膝も何回も打った。そんな当然のことも分からなかった、自身の不勉強と意識の欠如を恥じる。

  • 一部の情報だけですべてを知った気になり、
    批判や非難をしてしまう事によって
    どれだけの損失がうまれるのか。
    情報に踊らされちゃいけないな。
    今、みんな読んだ方がいいよ。うん。

  • 法令を守ることだけを主眼としてしまって、その奥にある真の目的を守れなくなっている現状を、元検事の視点から解き明かした本。

    具体例としては、食料品の偽装、建築の構造計算、経済司法の問題、裁判員制度の問題、厚生年金の問題、マスメディアの問題点を挙げている。

    思考停止になることの問題点を考えるならば、ぜひ一読すべき本だと思う。

  • 日本の経済と社会を覆う閉塞感の正体。相次ぐ食品企業の「不祥事」、メディアスクラム、年金記録「改ざん」問題、裁判員制度…コンプライアンス問題の第一人者が、あらゆる分野の問題に斬り込み再生への処方箋を示す。(「BOOK」データベースより)

  • 同じ著者の『「法令遵守」が日本を滅ぼす』と一緒に買ってしまい、同じ感想。

  • 思考停止社会か。本書に出てくる、事件は当時メディアでよく騒がれていた。年金の問題、食品偽装、livedoor事件等。自分も思考停止に陥っていて、「ああ、また悪いことしているよ」と思っていた。

    それは何故か。今、出た答えは、固定観念が強くて知ろうとしなかったことがデカイのかも。

    でも、そこから知ったきっかけは何だったんだろう。うーん。

  • 今まさに読むべき本。なぜ日本人が思考停止しているのかがよくわかる。

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著者プロフィール

1955年生まれ。弁護士(郷原総合コンプライアンス法律事務所代表)。関西大学社会安全学部特任教授。総務省コンプイライアンス室長・年金業務監視委員会委員長。東京大学理学部卒業後、民間会社を経て、1983年検事任官。東京地検、長崎地検次席検事、法務総合研究所総括研究官等を経て、2006年退官。「法令遵守」からの脱却、「社会的要請への適応」としてのコンプライアンスの視点から、様々な分野の問題に斬り込む。

「2017年 『青年市長は“司法の闇”と闘った 美濃加茂市長事件における驚愕の展開』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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