社会的な身体-振る舞い・運動・お笑い・ゲーム (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062879989

作品紹介・あらすじ

激変するメディアは私たちの「身体」をどう作り替えてきたのか。ケータイを巡る「不安」、マスコミとネット論壇の「共存関係」、一発芸人の「意義」、ポスト社会運動と「身体化の快楽」…気鋭の批評家が、私たちを取り巻く2000年代のメディア環境に鋭く迫る画期的評論。

感想・レビュー・書評

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  • 第1章 有害メディア論の歴史と社会的身体の構築
    有害メディア論十則
    第2章 社会的身体の現在―大きなメディアと小さなメディア
    ノート 「情報思想」の更新のために
    第3章 お笑い文化と「振る舞いモデル」
    第4章 ゲーム性と身体化の快楽

    著者:荻上チキ(1981-、兵庫県、評論家)

  •  ヒトの行動や思考の在り方(に対する期待)がいかに環境に影響されて変容されていくかが分析されている。新しいメディアが批判されながらも「教育」と結び付いて浸透していく過程、お笑い芸人が「キャラ分け」されて消費されていく過程、「社会運動が」が本来の目的と外れてその行為や反応自体を楽しむために参加する人が現れる様子、などが具体的な事例とともに考察されている。ネットの「サイバーカスケード現象」(雪崩のようにある言説が一気に流布していく現象)が印象的だった。「〇〇自体はどうか」というメタ的な視点が多い。

  • タイトルと序章がピンときたので読んだ本。
    1.2章は楽しく読めたのだけど、以降は例示が詳細すぎてなかなか読み進められず、ちょっと飽きてしまった……。
    私たちの身体観と、ニューメディアを内包した(させた)社会が私たちに身体として何を求めたか、についての話はすごく面白かった。
    そういう意味では、「お笑い」の例えはわかりやすかった。

    私はもう年老いていく身だけど
    社会は情報も科学技術も加速度的に成長して変化していくだろうし
    その中で、頭ごなしに「ニューメディアは悪」と言わない年寄りになりたいなと思った。それを軸に社会を生きていく後輩を、否定したくない。
    そして堅物だと思っていた人生の先輩に対して、この人たちを作ったオールドメディアに対して、ちゃんと理解できるようになりたい。

    今が絶対的ではなく、過渡期である。
    メディアを通して感じた。

  • 書名:『社会的な身体――振る舞い・運動・お笑い・ゲーム』
    著者:荻上チキ
    発売日:2009年06月17日
    価格:本体740円(税別)
    ISBN 978-4-06-287998-9
    判型:新書
    ページ数:216ページ
    シリーズ:講談社現代新書
    初出……次の3つの初出媒体に掲載された原稿を元に、大幅に加筆・修正を加えたもの。中央公論新社『中央公論』2008年10月号(<毎日新聞「WaiWai騒動」で見えたウェブ集合行動の力学>)、モバイル研究所『未来心理』2008年11号(「ケータイの『子ども』たち-領域を越える身体/文化を築く設計」)、So-net『So-netブログ みんなのテレビ』2008年4月~2009年3月(「荻上式!電網テレビ批評」)。

    著者紹介 荻上チキ(おぎうえ ちき)
    1981年、兵庫県生まれ。成城大学文芸学部卒業。東京大学大学院情報学環・学際情報学府修士課程修了。テクスト論、メディア論を中心に、評論、編集、メディアプロデュースなどの活動を行う。人文系ニュースサイト「トラカレ!」主宰。社会学者・芹沢一也氏と共に思想系メールマガジン「αシノドス」を創刊、監修。著書に、『ウェブ炎上』(ちくま新書)、『12歳からのインターネット』(ミシマ社)、『ネットいじめ』(PHP新書)、共著に『バックラッシュ!』(上野千鶴子、宮台真司ほか、双風舎)、『革命待望!』(邨棟G実、橋本努ほか、ポプラ社)など、編著に『日本を変える「知」』(本田由紀、吉田徹ほか、光文社)など
    http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062879989



    【目次】
    はじめに [003-006]
    目次 [007-010]

    第1章 有害メディア論の歴史と社会的身体の構築 011
    有害メディア論の構造/ソクラテスの文字批判/小説がバッシングされた時代/紙芝居批判と「教育紙芝居」の登場/テレビ批判に見る批判の二パターン/「自転車に乗る女子」批判と「野球害毒説」の共通性/「教育談義」に招き入れられるメディア/メディア浸透の四段階仮説/たまごっちとポケベルをめぐる議論はなんだったのか/ニューメディアの登場と社会的身体の組み替え/作り出された社会的身体をめぐる係争/メディアによる身体への要求

    有害メディア論十則 053

    第2章 社会的身体の現在──大きなメディアと小さなメディア 055
    環境と身体/「身体拡張キット」としてのケータイとパソコン/使い分けられる身体/ケータイを身体化する子どもたちをめぐる二重の不安/「小さなメディア」時代の過剰なリテラシー要求/マスコミを「強化」するマスコミ批判/「メディアに騙されない」ことをめぐる闘争/表徴からコピーへ/私たちはテレビを求め、加えてウェブを求めた

    ノート 「情報思想」の更新のために 094
    「形式/内容」の議論が見落としているもの/「社会的身体」の概念を導入して見えてくるもの/単純化された社会モデルの落とし穴/メディアは思想を作り出す

    第3章 お笑い文化と「振る舞い」 113
    「役割モデル」と「振る舞いモデル」/「キャラみせ」が主流になった〇〇年代の「お笑い」/「キャラ要素」と「バトル要素」の先鋭化/「お笑い」芸人の世代区分/視聴者と芸人の関係の時代変化/「どっきりのどっきり」に見るテレビ空間の成熟度/振る舞いモデルとしての「一発屋」/ワイプ画面で試みる「お約束の共有」/ニコニコ動画と振る舞いの連鎖

    第4章 ゲーム性と身体化の快楽 161
    メディアズ・ハイ/「ゲーム性」と快楽/身体化の快楽/「毎日WaiWai騒動」に見るカスケード現象/「祭り」に参加する三種類のプレイヤー/「国籍法騒動」とカスケードの政治力/グーグルSVと「操作性の快楽」の二面性/ポスト社会運動を担う「行為体」/ポスト社会運動と身体のゆくえ

    主要参考文献 [205-206]
    謝辞(二〇〇九年五月 荻上チキ) [207-209]

  • ニュー・メディア批判や、お笑い番組における芸能人の「キャラ見せ」についての分析を通して、新しいメディアの登場によって私たちの社会的な身体のありようにもたらされる変容について考察した本です。

    大部分は具体的な社会現象にそくした考察が展開されていますが、本書の中ほどに置かれている「ノート「情報思想」の更新のために」という論考では、ある程度まとまった形で著者の社会的身体論の概要が示されています。著者は、近代の「大きな物語」が有効性を失い、「小さな物語」が群生する状況に入ったといったような社会学的言説に対して距離を取っています。そして、旧来の社会的価値観を共有する者にとってはこれまでのモデルが通用しなくなったように見えたとしても、そこに新たに参入する者にとっては、つねに新しいコミュニティの構築に関与し続けていることに目を向けています。

    著者はアカデミズムの外部でアクチュアルな問題に積極的に取り組んでいるのですが、本書に展開されているような鋭い考察を読むと、できることならじっくり腰を据えた理論的な仕事に取り組んでほしいと思わされてしまいます。

  • 人は自ら欲望し、また、社会からの「このようにコミュニケーションしろ」という要請に応じて、つど新しいメディアを取り入れ身体機能を拡張する。社会における身体のありかたを「社会的身体」とし、その観点から「メディアとは何か」を観察・考察していく。新しいメディアが登場すると、必ずそのデメリットが取りざたされバッシングを受けるのは何故か、現在のお笑いがリアクションまでも内包しながら成立するようになるまでの変遷、ゲーム性を帯びたネット世論の構造などの指摘に興味が尽きない。コミュニケーションへの究極の欲望が、「相手が思っていることがすべて自分にわかる」なら、メディアはまだまだこの先進化していくのだなあ、と思ってしまった。

  • 250 文英堂

  • とっかかりの部分は非常に良かったのですが、身体とメディアとの連関の部分のお話を知りたかっただけに、お笑い芸人の変遷などについては少しくどい気がします。最終的にどういう身体への影響があるのかわかりませんでした。
    第二章はそこについて非常によくフォーカスしているので読み応えがありました。

  • 日本橋図書館で読む。お笑いの部分を読む。相変わらずかしこいです。もう少し深い洞察が必要です。お笑いには、多くの人は一家言持っています。

  • 087

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著者プロフィール

1981年生まれ。評論家。メディア論を中心に、政治経済、社会問題、文化現象まで幅広く論じる。NPO法人ストップいじめ!ナビ代表理事。ラジオ番組『荻上チキ・Session-22』(TBSラジオ)メインパーソナリティー。同番組にて2015年度、2016年度ギャラクシー賞を受賞(DJパーソナリティー賞およびラジオ部門大賞)。

「2019年 『ネットと差別扇動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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