世界は分けてもわからない (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 2240
レビュー : 234
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062880008

作品紹介・あらすじ

顕微鏡をのぞいても生命の本質は見えてこない!?科学者たちはなぜ見誤るのか?世界最小の島・ランゲルハンス島から、ヴェネツィアの水路、そして、ニューヨーク州イサカへ-「治すすべのない病」をたどる。

感想・レビュー・書評

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  • 考えることについて考える
    分類することを統合すること
    一人の人間は 考えもずっと続いている どこかに区切りがあるわけではない

  • [塩見図書館長より]
    著者の福岡さんは青山学院大学教授の分子生物学者です。「科学者たちはなぜ見誤るのか?」が本書のテーマです。われわれの人生の本当のところは科学では分からない、と著者は言いたいのです。イタリアのヴェニスにある絵画を巡り、せき立てるようなミステリアスな筋立てです。研究室から旅へ、アメリカからイタリアへ、その大きなスイングがエキサイティングです。

  • 理系エッセイ。
    福岡伸一さんの著作は内容自体の知的な面白さだけでなく、文章自体もうまいので読み物として楽しめる。

    93〜の細胞は互いに空気を読んでいる、の章が特に面白かった。

    8〜12章はラッカーとスペクターのエピソード。STAP細胞以来話題の実験結果捏造の話。

    ---

    27
    誰もが経験的に知っているこの不思議な知覚について、意外なことに生物学は未だ何の説明もできていない。視線とは何か。それはどのように捉えられるのか。

    72
    つまりソルビン酸は、微生物にとってはその生命活動を止めてしまう毒として働きます。人間にとっては加工食品の消費期限を伸ばしてくれる便利な薬として働くことになります。とくと薬は表裏一体とはこういうことなのです。

    82
    私たちの大便は、だから単に消化しきれなかった食物の残りカスでは無いのです。大便の大半は腸内細菌の死骸と彼らが巣くって言った消化管上皮細胞の剝落物、そして私たち自身の体の分解産物の混合体です。ですから消化管を微視的に見ると、どこからが自分の体でどこからが微生物なのかは実は判然としません。ものすごく大量の分子がものすごい速度で刻一刻、交換されているその界面の境界は、実は曖昧なもの、極めて動的なものなのです。

    94
    「君が皮膚の細胞になるのなら、僕は内臓の細胞になるよ」

    98
    この細胞ここが世に名高いエンブリオニック・ステム・セル、すなわちES細胞である。(略)ES細胞は(略)ありとあらゆる細胞になることができる。

  • ベストセラー『生物と無生物のあいだ』に次ぐ、福岡ハカセの講談社現代新書第二弾。
    前作と同様、講談社の月刊誌『本』の連載(2008~2009年)を纏めたもの。
    今回は、「パワーズ・オブ・テン(10のn乗)」、「世界は分けないことにはわからない。しかし、世界は分けてもわからない」をテーマに綴っている。
    本書で詳細に語られる、1980年代初頭の米コーネル大学を舞台に起こった、がんの発生メカニズム発見に関わる捏造事件は、近時のSTAP細胞の事象に繋がる、科学の世界の「治すすべのない病」を象徴している。
    また、本書でも、話題は、村上春樹の『ランゲルハンス島の午後』、ヴィットーレ・カルパッチョの絵画、須賀敦子の作品と、生化学から次々と広がっては戻ってくる。
    様々なことを知る喜びを感じさせてくれる一冊である。
    (2013年1月了)

  • 「北斗七星は、しかしながら、視力が、ある程度悪い人にだけ見える星座である。もう少しだけ解像力のよい眼をもつ人が見れば、北斗七星の、柄の真ん中の星はひとつではなく、二つの星であることが見える。ミザールとアルコル」

    素人でも頭が爆発しない程度の理系的トリビアと、科学者というものの実態に迫るルポ、そしてそれらを装飾する文学的な表現を組み合わせると、本書のような飛ぶように売れる本になる(結論)。

    いや実際、著者の文学的センスはかなりのもので、思わずそれのネタを一本小説に書こうとしてしまったぐらい(ガン細胞についての記述)。こうやって、普段組み合わされない領域を組み合わせられる人、ちょっと陳腐に言い換えれば、文系と理系の才を組み合わせられる人ってやはりすごく貴重なのだなと思う。

  • 生物学には全く疎いのだけれど、専門的な部分も判りやすい。それ以上に随筆として楽しい本である。思いもよらぬところで、全く関連のなさそうな主題が繋がってくる。『生物と無生物のあいだ』も読んでみることにしよう。

    また、科学史上名高いデータ捏造事件、通称スペクター事件に対する記述がある。
    「スペクターは、ラッカーが見たいと願った絵を切り取っただけなのだ」という文には、(ただの端くれだとしても)科学に携わる者として、はっとさせられるところがあった。

  • ヒトの不思議、地球の不思議、宇宙の不思議。この世は不思議でいっぱい。星がみえるのなら、潜在意識もあながちトンデモとはいえないのかなぁ。

  • 福岡ハカセのたくさんの著書の中で、本書は地味な部類に入ると思う。
    実際、わたしがこの本を手に取ったのはもちろん著者を敬愛していることもあるけれど「新しく買った新書用カバーに収めるのため」だった。

    ハカセの文才は随所で光り、いつも通りたくさんのため息をもらしながら読み進めるも
    化学の経験が少なからず必用で、サイエンスコミュニケーション本としてはいささか難しいかもしれないな
    と感じながらページをめくった。

    でも最後のぐいぐい感!
    そこからハカセの愛でる世界のほんとうについて結ばれる優しい線。
    読書の醍醐味はこの、共感を超えて得られる高揚感だな
    と改めて読後のぼんやりした頭で快感を噛み締めている。

    ハカセが言うことはいつもセンス・オブ・ワンダーと動的平衡。
    本書は動的平衡を切り取る愚かさ、にもかかわらず切り取って所蔵したいわたしたちの小ささ、その小ささ故の愛しさまで描かれている。

    いつも感じる。
    真摯に突き詰めた人は、本当に優しくなる。
    存在の問のゴールはその方向にありそうな気がしてならない。

  • どこからどこまでが鼻で、どこからどこまでが口か、その明確な区別は存在しない。便宜的に「鼻」、「口」と呼んでいるそれらのものは、すっぱりと切り分けられるものではない。一対一で部分と機能は対応しているように思いこみがちだが、現実には部分というものは存在しない。体は細胞のグラデーションである。受精卵がすこしずつ色を変えながら分裂し臓器はその色の違いによって区別されるが、起源はみな同じである。一つ一つの細胞を取ってみれば、隣り合った細胞はわずかに異なっている。そして細胞さえも、部分ではない。細胞の内外では常に物質が動き回り、いまここにあったものはあちらにあったり、あるいはなくなったりしている。また新しい物質がやってきたりもする。動的平衡。この流れを無視して、ついに世界はわからない。世界は流れている。でも一方で、分けないことには何もわからない。ほんのわずか知るために、生物学者は今日も偉大な努力を重ねている。彼らが見せるなにものかがたとえ幻であろうとも、僕はワクワクせずにはいられない。世界にとってみれば矮小で、しかし僕にとってみればそれほどまでに偉大な功績を、生物学は確かに残してきたと思う。

  • 俯瞰して全体像を眺めたり、細分化して分析してみたりするのが科学者の仕事っていうけどどのスケールが限界か? 

    家具デザイナーのイームズによって作成された短編映画「Powers of Ten」(10のn乗の意味)では、マクロを形作っているミクロ構造の中にマクロ構造と同じ構成原理が延々と入れ子構造として内包されていれることを示唆している。
    Powers of Ten - YouTube http://ow.ly/683pj

    スケールを上げ続けても不確実性が増して単純な構成要素に分解できない上、いくら要素間の関係性を明らかにしたと思い込んでももその積み重ねで世界を理解することはできない。

    世界のあらゆる分類・定義はあくまで物事の認識の1パターンに過ぎず、「部分と全体」「連続と不連続」に本質的に境界線は無い。

    人の死と生でさえもただの定義次第であり、寿命を長くも短くもすることができる。
    例えば脳の死を人の死と定義するなら、対称性と整合性から人の生は脳が活動を始める「脳始」となる。つまり脳波が現れ始める前(受精後24〜27週)の胎児は人ではないことになる。

    人は見たいようにしか世界を見ることができない、しかしそのことに対して自省的である必要がある。


    プロローグ パドヴァ、2002年6月
    第1章 ランゲルハンス島、1869年2月
    第2章 ヴェネツィア、2002年6月
    第3章 相模原、2008年6月
    第4章 ES細胞とガン細胞
    第5章 トランス・プランテーション
    第6章 細胞のなかの墓場
    第7章 脳のなかの古い水路
    第8章 ニューヨーク州イサカ、1980年1月
    第9章 細胞の指紋を求めて
    第10章 スペクターの神業
    第11章 天空の城に建築学のルールはいらない
    第12章 治すすべのない病
    エピローグ かすみゆく星座

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著者プロフィール

青山学院大学 理工学部 教授

「2019年 『マッキー生化学 問題の解き方 第6版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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