はじめての言語ゲーム (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 71
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062880046

作品紹介・あらすじ

世界のあらゆるふるまいを説明しつくそうとしたヴィトゲンシュタインの言語ゲーム論は、いかに生まれ、どんな思想なのか?きわめて平易で刺激的な哲学入門。

感想・レビュー・書評

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  • ヴィトゲンシュタインの生涯とその思想を追い、後期の「哲学探究」に現れる言語ゲームを紹介する。言語はそれ自体だけでは存立し得ず、言語を使用する人間のふるまいと共に一元化された言語ゲームとなる。言語ゲームがメタシステムであるならば、言語ゲームを語ることもまた言語ゲームとなる。著者は社会学者なので、前著「はじめての構造主義」と同じく、言語ゲームを社会システム解読の方法論として捉えている。このアプローチは大変判り易いのだが、人間存在を超えた世界認識には至らないように思う。拡張する言語ゲームと云えば、山田正紀の「神狩り」をちょっと思い出した。

  • 800円でおもしろくってためになる。素晴らしいじゃないですか。
    でもヴィトゲンシュタインが何を言っているかはまだよくわかりません。これは著者のせいでなく、私が阿呆なだけです。普通の人ならよく理解できると思います。次は野矢茂樹を読もうと思いました。

  • 主にウィトゲンシュタインの「論理哲学論考」、「哲学探究」についての紹介。
    言葉が意味や価値を持つのは「言葉と世界が一対一対応しているから」。言葉と世界が対応するのは「人々が言語ゲーム(人々のふるまいの一致)を行っているから」。
    「言語ゲーム」は人間の初源的な行動様式である・・・。
    構造主義や、小林秀雄・茂木健一郎の考え方にも通じていると思う。

    個人的には、集合論の応用から、「世界が、正しい言語の使い方(論理哲学論考のこと。)に押し込まれる。」という結論に至るところが面白いと思う。

  • 前半は快調。やっぱり橋爪大三郎はおもしろい。と思ったが、後半の宗教の話になると俄然眠くなった。夏の暑さのせいか?同じところを何度も繰り返す始末。読みだした動機が、野矢茂樹『ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む』を読む前に、軽くアウトラインを頭に入れておこうというものだったけれど、この本はタイトル通り、言語ゲームについての話で、私の期待と微妙にずれていた。ウィトゲンシュタインにまつわる話は興味深かった。数学の内容は…。久しぶりに「対角線論法」の文字が懐かしく、でもなんとなく自分の記憶と違って『解析概論』をみたらやっぱり少し違っていた。「論法」としては同じ。

  • なぜ言語は「言語」としての一般受容性を備えているのか。
    その疑問点を「言語は物事のふるまいをきじゅつするものである」という点によって解決したのがヴィトゲンシュタインの「言語ゲーム」という考え方である。
    言語を使って◯◯が◯◯であると分かる、というごくごくありふれて感じ取ることができる事自体が言語ゲームであるということを身近な例を用いて説明している良書。
    思想というものを少々敬遠していたが、本書はよき入門書となると信じている。

  • ウィトゲンシュタイン思想の入門書。彼の人生と思想と言語ゲームの考え方を述べている。後半部の言語ゲームを様々な場面に適用させることによって、思想をただ理解するのではなく、実際に現実に応用する手助けを与えてくれている。

  • ヴィトゲンシュタインの言語ゲームに関する入門書。前半は伝記になっており、彼の人生と思想の遍歴について説明されている。後半では具体的な例を引きながら、言語ゲーム、すなわち人々のふるまいが解説されている。一番感動したのは、逆スペクトル懐疑のくだり。かっこいいなあおい。2011年18冊目、読了。

  • 橋爪大三郎さんの「はじめての構造主義」が分かりやすかったのでこちらも読んでみることにした。
    現代思想を教養として知っておきたくて(だから特にウィトゲンシュタインについて知りたかったわけではない)、この本を読んだ。講談社現代新書は思想・哲学の分野の入門書に力を入れているようなので、色々読んでみたくて、まずこの本を手に取ったというわけだ。
    といっても、ウィトゲンシュタインについて全く知らなかったわけではない。岩波文庫の「論理哲学論考」を手に取ったことがあるのだが、全く理解できなかったからだ。(始まりからしてわからなかった。)
    しかし、そんな僕でもこの本を読めば大体理解出来た。(内容に関しては相変わらず分からないが。)

    ウィトゲンシュタインの思想を大きく分けると、前期と後期に分けることができる。
    前期:「論理哲学論考」。写像理論。
    後期:「哲学探究」。言語ゲーム。

    P.68
    世界が壊れようとする今、この世界を成り立たせる価値や意味の根拠を、確認しないでどうしよう。それでも世界が、存在できることを、証明しないでどうしよう。ウィトゲンシュタインは、数学・論理を基礎づけようとする自分の仕事に、世界の価値と意味を論証するという大きなテーマを重ね合わせた。

    P.74
    「論理哲学論考」のエッセンス
    (1)世界は、分析可能である。
    (2)言語も、分析可能である。
    (3)世界と言語とは、互いに写像関係にある
    (4)以上(1)~(3)の他は、言表不能=思考不能である。

    P.124
    人間は誰でも、もう世界が始まっているところに、遅れてやってくる。はじめ、この世界がどんなルールに従っているのか、ちっとも理解できない。でも、それを見ているうちに、だんだんわかるようになる。

    P.130
    言語は、私的言語ではない。言語は、人々のあいだのふるまいの一致である。つまり、私の感覚を根拠に、私を中心に出来あがっているわけではない。この意味で、言語は公共のものである。

    P.148
    規則(ルール)に従ってふるまうかぎり、人間は人間である。

    P.164
    ウィトゲンシュタインは、それよりもっと根源的な「なにを懐疑するにせよ、懐疑するという言語ゲームを行っていることは決して疑えない」という原理を発見したのである。

    P.178
    ウィトゲンシュタインが、言語ゲームのアイデアを通じて言いたかったのは、この世界の意味や価値は、権力などに寄らなくても、人々のふるまいの一致によって、ちゃんと支えられているという事だ。

    P.241
    写像理論と、言語ゲームの違いはどこか。
    写像理論は、「言語と世界は対応している」と、最初から想定する。誰が何と言おうと、言語と世界は無条件に対応しているのだ。
    それに対して、言語ゲームの場合、言葉が世界を支持して意味を持つことが出来るのは、人々がそのようにふるまうから。人々がどうふるまうかは、事情による。したがって、言葉が意味を持つかどうかも、事情による。つまり、無条件ではなく、条件付きである。

    P.255
    そうした現代の課題を考えるのに役立つのが、言語ゲームである。
    まずやるべきなのは、異なった伝統、異なった文明に属する人々がどうやって生きているか、そのアウトラインをきじゅつすることである。…ルールと記述し、ルールとルールの関係を記述していく。…次にやるべきなのは、異なった伝統、異なった文明に属する人々の従うゲームのルールを互いに比較することである。そして、矛盾や衝突が無いか、調べることである。
    あるゲームが、ある文明から別の文明に移植されると、もととは違った性質を持つことがある。それは何故かも解明しなければならない。
    その次にやるべきなのは、それらをより良く作り変えていく提案をすることだ。そして、実際に、人々が新しいゲームを生き始める事だ。

    P.259
    意味や価値を、言語ゲームを通じて研究すること。これは、ウィトゲンシュタインが我々に残してくれた、最大の贈物である。

  • 本書は、社会学を専門とし、

    東京工業大学教授である著者が、

    ドイツの哲学者ウィトゲンシュタインと

    彼が提唱した言語ゲーム論について紹介する著作です。


    著者は、ウィトゲンシュタインの生涯を振り返り、

    その思想や言語ゲーム論の要点をコンパクトに解説。

    その上で、後の哲学者への影響や相違点を指摘。

    さらに、キリスト教、仏教、宣長などを例にとって、

    言語ゲーム論の射程の広さを論じます。


    言語ゲーム論に基づく『ゴドーを待ちながら』の分析

    トルストイの『要約福音書』の重要性など、

    どの記述も興味深いのですが、

    個人的には、クリプキとの相違や

    H・L・A・ハートの議論との類似性など

    なんとなくモヤモヤが残っていた事柄について

    疑問がスッキリしたのが、とても嬉しかったです。


    「わかりにくさ」の代名詞のようなウィトゲンシュタインについて

    そのエッセンスを平易に解説するとともに、

    実社会における応用の仕方をも示す本書。


    言語ゲームに興味がある方はもちろん、

    哲学に興味を持ち始めている方など、多くの方におススメしたい著作です☆

  •  哲学者ヴィトゲンシュタインの生い立ちから、前期『論理哲学論考』・後期「言語ゲーム」の思想、それらの思想を産み出した社会的背景などを一通り学ぶことができる。「言語ゲーム」の考え方を、資本主義・全体主義といった政治体制や、世界の宗教に応用して解説されている部分もある。
     講義を聴いている感覚で、読みやすく書かれているのが良かった。前半の数学、論理学の部分は難しい印象を持ったが、肝心の「言語ゲーム」の解説部分はとても刺激的で面白かった。特に印象的だった部分を列挙すると、まず前期『論考』の最後はまるで「自動的に消去される」スパイ映画に出てくるテープのようであること(p.93)、「机」を分からせるためには色んな机を持ってこればいい、という言語ゲームのアイデア(p.107あたり)、クリプキのクワス(p.152)、相対主義(p.249)など。人々が「言語ゲーム」をすることで社会が成り立つという考え方がよく分かった。(10/04/13)

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著者プロフィール

橋爪大三郎(はしづめ・だいさぶろう):1948年生まれ。社会学者。大学院大学至善館教授。東京大学大学院社会学部究科博士課程単位取得退学。1989-2013年、東京工業大学で勤務。著書に『はじめての構造主義』(講談社現代新書)、『教養としての聖書』(光文社新書)、『死の講義』(ダイヤモンド社)、『中国 vs アメリカ』(河出新書)、『人間にとって教養とはなにか』(SB新書)、『世界がわかる宗教社会学入門』(ちくま文庫)など、共著に『ふしぎなキリスト教』『おどろきの中国』『おどろきのウクライナ』(以上、講談社現代新書)、『中国共産党帝国とウイグル』(集英社新書)などがある。

「2023年 『核戦争、どうする日本?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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