関係する女 所有する男 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 448
レビュー : 51
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062880084

作品紹介・あらすじ

男女の違いとは何か?どうして男女論にはトンデモ説が多いのか?難問を精神科医が明快に論じる。

感想・レビュー・書評

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  • 内容っていうよりも、立場とか言い回しとかを楽しめた感じ。
    流動的な個に着目するジェンダーセンシティブの立場をとり、脳の構造によって男女の在り方を固定化してしまうトンデモ論を否定し、わかりやすい言葉で読者をジェンダーに対し自覚的にさせるという感じ。途中これも男/女を固定化してない?って不安になったけど、程度の問題であることが最後に示されていた。
    何かを語るとき、わかりやすくしようと思えば雑にならざるを得ないし、二項対立や固定化を用いざるを得ない。人間を語るということは難しいなあと感じる。タイトルも人目につくし、人によっては筆者の否定しているトンデモ論と変わらぬ男女論の一つとしてとらえるのだろうな。
    もちろん内容も示唆的でおもしろかったんだけど、ずっと「関係」と「所有」って、雰囲気はわかるんだけど…なんだろうってずっとわからなくて(「所有」する/されるという「関係」もあるよなあって)、最終的にはわからないって結論になっていたから、そこから考え始めている。
    はっきりした定義をなされなくても、なぜか読みすすめられてしまう(実感としてわかってしまう)というのが、現実の事例が多く挙げられている本書の魅力であり、精神分析の魅力なのだろうな。
    もう一度読んでみたいと思わされた。

    ラカン・フロイトの思想についてもわかりやすく触れられていた。
    母は娘の人生を支配する でも同様のことを感じたけど、筆者は女ってものをうまく考えられている人だなという印象をうける。いわゆる女心が的確に言い当てられている感じ。女にかかわらずマイノリティに対する配慮を十分にするひとだなと思う。

  • この本を読むちょっと前に『ベストパートナーになるために』という本を読んで、男性の発想に驚愕していた。「なんでそんなに違うことを考えるの?」という私の疑問に、けっこうすっきり答えてくれた。
    恋愛(夫婦)関係にある男女のことのみならず、性差による精神疾患の違いや、マイノリティーやオタクや親子関係など、けっこう腑に落ちる説明で、面白かった。

    男性は所有原理→「単に欲望の対象を持ちたいと願うことばかりを意味しない。対象を視覚化し、言語化し、さらに概念化してこれを意のままに操作しようとする過程すべてが、本質的な『所有』の身振り」
    女性は関係原理→「まず対象をまるごと受け入れた後で、女は自らの欲望を発見する。しかし女は受け入れることで十分な満足を得られているので、欲望の対象をいまさら言語化したり概念化したりしようとは思わない」
    なのだとか。なるほどなるほど。

    女であることはめんどくさいと思っていたけれど、男で生きるのはなかなかに苦しそうだなあ。

  • 引用だけ読んでもらうと、嫌悪感を持つ人もいるかもしれない。
    でもそんな人にこそ、性やジェンダーや家庭やらを考えるのにとても役立つ本だと思います。

    女性と男性の異なる点、そもそも違いは本当にあるのか。なぜそう言われるのか。
    人としての目的についても考えているような気がします。「自分の役割・立場が欲しい」「キャラクター作り」
    自分のことを知り、安定が欲しいということは人の目的の一つだと思いました。

    まとまりのないレビューで申し訳ないです。
    いろいろな人に読んでほしい本です。

  • 「嫌われるのを覚悟で言えば、彼らの議論はいささか素朴すぎて、正面切って批判する気にもならないようなものではある。加えて、少しくらい叩いても、彼らは考えをあらためるどころか、いっそう自説に固執するだろうこともわかっている。ただちょっと困るのは、彼らの議論が、論理よりも感情に訴えるという点で力を持ってしまうことだ。ナイーブな人たちは、あっさり説得されてしまいかねない。」
    この指摘は、すごく色んなものに当てはまる気がする。

  • 面白かったです。
    ジェンダー論はあまりメインじゃないように感じました。
    最後はタイトルにある関係を思考する女と、所有を思考する男の論拠になるものを羅列したり自身の論をかなり強引に補強しているような印象があったのでそれはそんなに必要ないのではないかなと思いました。

    でも最後のほうはすごく面白いものばかりでした。

    「人は、自らのナルシシズムにかかわる『理想』については、けっして学習しない。理想については、誰もがいつでも『自分だけは例外』と考える。言い換えるなら、学習とは、それが自分の理想と抵触しない領域においてのみ起こりうる特異現象なのである」

    印象的でした。

    例外はあるにせよこれだけ両者に違いがあるのであれば、しかも根源的な部分での指向性の違いなのだから、これを応用してマーケティングとかやっちゃえばヒットするものガンガン出せるんじゃん?とか安易に思いました。
    それか、もっとこの斉藤さんの主張を深く理解して、今流行っているものを同じ切り口から見てみるとそれっぽく分類できる気がするんです。
    誰かそーゆーことやってくれないかな。

    そして斉藤さんがオタク論を語るとやっぱりなんかしっくりきますね。

  • くっそ面白かった。

    分かりやすくさくさく読めるのはいつものごとく斎藤環なんやけど、ジェンダー論について概説した部分が特に秀でてる。大学一回ん時に読みたかった本。

  • 著者は、「ジェンダー・センシティヴ」という立場に立って、社会の中に現に存在しているジェンダーの差異の「実地検分」をおこなっています。現実のジェンダーの差異は「イメージとしての男女の違い」であることを明らかにすることで、最終的には「男女の違い」というイメージを解体に導こうとしています。

    前半は、ジェンダーを男女の脳の解剖学的ないし生理学的な差異に還元しようとする疑似科学への批判が展開されます。「ジェンダーはセックスの上位概念であり、性差が決定づけられるうえで何が本質的で何が構成的であるか、という区別は簡単にはできない」というのが、著者の立場です。

    後半では、ジェンダー間での欲望の違いが、「所有原理」と「関係原理」という概念を用いて整理されることになります。男の「所有原理」はひたすらファルス的享楽をめざして突き進みます。著者はこうした欲望のあり方を、象徴界において対象を視覚化・言語化・概念化して意のままに操作することへの欲望として理解しています。他方、女の「関係原理」は、対象を観念として所有するのではなく、想像界における身体を受け入れたうえで、身体を包んで織りなされる関係においてみずからの欲望を発見するという特徴をもっていると論じられます。さらに、男性の「オタク」と女性の「腐女子」に見られるセクシュアリティの差異を具体例にとりあげながら、「所有原理」と「関係原理」の差異を具体的に解説しています。

    単なる印象論ではないのかという気もしますが、それなりにおもしろく読みました。

  • 恋愛において、男は対象を所有したがり、女は対象と関係したがる。この命題をめぐって、ジェンダー用語の解説、脳科学批判やフェミ批判をまじえながら、議論をつくしている。前半で批判に対する予防的な物言いをさんざんしていたわりに、後半は単純な男女論に陥っている感じ。著者も冒頭で「現代において精神分析は有効か?」という問いを投げていたが、読み終わってみると、「なぜそこまでしてフロイトーラカンにこだわる必要があるのか?」と著者の立場じたいを疑ってしまう。

  • 精神科医・斎藤環氏による「ジェンダー」論です。精神分析の知見を活用して、従来の性差論やジェンダーに関する言説にツッコミを入れながら、持論である「所有」と「関係」の仮説を説明する内容です。

    第2章は特定の論者や著作をかなり辛辣にこき下ろしているためちょっとアクが強いですが(「脳ブーム」に違和感を感じているわたしのような読者には痛快なところでもあります。"考えてみれば当たり前のことだが、脳梁の太さは、そこを通っている神経線維の数とは関係がない"というコメントには笑ってしまいました)、全体的に読みやすい本です。

    第4章は具体的な精神疾患や専門分野であるひきこもりを取り上げており、特に興味深く読めました。うつ病の罹患率と自殺率の男女差について、"男性は「立場(=所有原理のひとつの帰結)」の生き物であり、女性は「関係」の生き物である"という説明が印象に残っています。斎藤先生の得意技であるオタクや801系の話も後半で出てきます。

    ただ、特に「はじめに」をよく読んでおかないと、著者の言っていることと、その他の(本書で批判されている)言説のちがいが分かりにくくなります。またラカンやフロイトによる「珍説」の扱いに馴染みがないと、著者の主張も一種の決めつけのように、ミイラ取りがミイラになったかのようにみえてしまいます。いささか扱いの難しい本だと思いました。

  • 借りたもの。
    タイトル通り、男性原理が「所有原理」、女性原理が「関係原理」に基づいている事を指摘。
    ジェンダーとは何か?それは社会制度の中で出来た女性のみの問題で語ることは難しい事、社会での性と性別の関係は切っても切り離せない事
    など、男女両方の性と価値観の違いを互いに比較しているので、相互理解の第一歩になるのではないだろうか。
    性愛ですら、この原理の差で男女ともに苦しんだりする。
    哲学的な部分から、オタクカルチャーにも簡潔に言及してくれて面白い。

    脳の性別差が無いというのは成程と思った。人間は未だ自分自身の事を知らない。

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著者プロフィール

1961年岩手県生まれ。医学博士。筑波大学医学医療系社会精神保健学教授。専門は思春期・青年期の精神病理学、病跡学など。

「2016年 『ひとはなぜ戦争をするのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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