関係する女 所有する男 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062880084

作品紹介・あらすじ

男女の違いとは何か?どうして男女論にはトンデモ説が多いのか?難問を精神科医が明快に論じる。

感想・レビュー・書評

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  • 男と女の違いを関係と所有から説明してくれてます
    でも著者も完全にはわかっていないようでちょっともやもや
    それでもなるほどと思うところもありました
    同じ人間だけど違うんですよねやっぱり

  • 内容っていうよりも、立場とか言い回しとかを楽しめた感じ。
    流動的な個に着目するジェンダーセンシティブの立場をとり、脳の構造によって男女の在り方を固定化してしまうトンデモ論を否定し、わかりやすい言葉で読者をジェンダーに対し自覚的にさせるという感じ。途中これも男/女を固定化してない?って不安になったけど、程度の問題であることが最後に示されていた。
    何かを語るとき、わかりやすくしようと思えば雑にならざるを得ないし、二項対立や固定化を用いざるを得ない。人間を語るということは難しいなあと感じる。タイトルも人目につくし、人によっては筆者の否定しているトンデモ論と変わらぬ男女論の一つとしてとらえるのだろうな。
    もちろん内容も示唆的でおもしろかったんだけど、ずっと「関係」と「所有」って、雰囲気はわかるんだけど…なんだろうってずっとわからなくて(「所有」する/されるという「関係」もあるよなあって)、最終的にはわからないって結論になっていたから、そこから考え始めている。
    はっきりした定義をなされなくても、なぜか読みすすめられてしまう(実感としてわかってしまう)というのが、現実の事例が多く挙げられている本書の魅力であり、精神分析の魅力なのだろうな。
    もう一度読んでみたいと思わされた。

    ラカン・フロイトの思想についてもわかりやすく触れられていた。
    母は娘の人生を支配する でも同様のことを感じたけど、筆者は女ってものをうまく考えられている人だなという印象をうける。いわゆる女心が的確に言い当てられている感じ。女にかかわらずマイノリティに対する配慮を十分にするひとだなと思う。

  • この本を読むちょっと前に『ベストパートナーになるために』という本を読んで、男性の発想に驚愕していた。「なんでそんなに違うことを考えるの?」という私の疑問に、けっこうすっきり答えてくれた。
    恋愛(夫婦)関係にある男女のことのみならず、性差による精神疾患の違いや、マイノリティーやオタクや親子関係など、けっこう腑に落ちる説明で、面白かった。

    男性は所有原理→「単に欲望の対象を持ちたいと願うことばかりを意味しない。対象を視覚化し、言語化し、さらに概念化してこれを意のままに操作しようとする過程すべてが、本質的な『所有』の身振り」
    女性は関係原理→「まず対象をまるごと受け入れた後で、女は自らの欲望を発見する。しかし女は受け入れることで十分な満足を得られているので、欲望の対象をいまさら言語化したり概念化したりしようとは思わない」
    なのだとか。なるほどなるほど。

    女であることはめんどくさいと思っていたけれど、男で生きるのはなかなかに苦しそうだなあ。

  • 引用だけ読んでもらうと、嫌悪感を持つ人もいるかもしれない。
    でもそんな人にこそ、性やジェンダーや家庭やらを考えるのにとても役立つ本だと思います。

    女性と男性の異なる点、そもそも違いは本当にあるのか。なぜそう言われるのか。
    人としての目的についても考えているような気がします。「自分の役割・立場が欲しい」「キャラクター作り」
    自分のことを知り、安定が欲しいということは人の目的の一つだと思いました。

    まとまりのないレビューで申し訳ないです。
    いろいろな人に読んでほしい本です。

  • 「嫌われるのを覚悟で言えば、彼らの議論はいささか素朴すぎて、正面切って批判する気にもならないようなものではある。加えて、少しくらい叩いても、彼らは考えをあらためるどころか、いっそう自説に固執するだろうこともわかっている。ただちょっと困るのは、彼らの議論が、論理よりも感情に訴えるという点で力を持ってしまうことだ。ナイーブな人たちは、あっさり説得されてしまいかねない。」
    この指摘は、すごく色んなものに当てはまる気がする。

  • 前半は結構読みにくいと感じた
    後半は著者の得意分野的なものになっていったし読みやすくわかりやすい

    男 所有者、女 関係者というふうに捉えている

    母娘関係を題材とした著者の別の本で少し取り上げられていた女性の身体が「モビルスーツのように感じる」という感覚をもっと深掘りして書いてあってよかった、わたしはよく感じている

  • 面白かったです。
    ジェンダー論はあまりメインじゃないように感じました。
    最後はタイトルにある関係を思考する女と、所有を思考する男の論拠になるものを羅列したり自身の論をかなり強引に補強しているような印象があったのでそれはそんなに必要ないのではないかなと思いました。

    でも最後のほうはすごく面白いものばかりでした。

    「人は、自らのナルシシズムにかかわる『理想』については、けっして学習しない。理想については、誰もがいつでも『自分だけは例外』と考える。言い換えるなら、学習とは、それが自分の理想と抵触しない領域においてのみ起こりうる特異現象なのである」

    印象的でした。

    例外はあるにせよこれだけ両者に違いがあるのであれば、しかも根源的な部分での指向性の違いなのだから、これを応用してマーケティングとかやっちゃえばヒットするものガンガン出せるんじゃん?とか安易に思いました。
    それか、もっとこの斉藤さんの主張を深く理解して、今流行っているものを同じ切り口から見てみるとそれっぽく分類できる気がするんです。
    誰かそーゆーことやってくれないかな。

    そして斉藤さんがオタク論を語るとやっぱりなんかしっくりきますね。

  • くっそ面白かった。

    分かりやすくさくさく読めるのはいつものごとく斎藤環なんやけど、ジェンダー論について概説した部分が特に秀でてる。大学一回ん時に読みたかった本。

  • 著者は、「ジェンダー・センシティヴ」という立場に立って、社会の中に現に存在しているジェンダーの差異の「実地検分」をおこなっています。現実のジェンダーの差異は「イメージとしての男女の違い」であることを明らかにすることで、最終的には「男女の違い」というイメージを解体に導こうとしています。

    前半は、ジェンダーを男女の脳の解剖学的ないし生理学的な差異に還元しようとする疑似科学への批判が展開されます。「ジェンダーはセックスの上位概念であり、性差が決定づけられるうえで何が本質的で何が構成的であるか、という区別は簡単にはできない」というのが、著者の立場です。

    後半では、ジェンダー間での欲望の違いが、「所有原理」と「関係原理」という概念を用いて整理されることになります。男の「所有原理」はひたすらファルス的享楽をめざして突き進みます。著者はこうした欲望のあり方を、象徴界において対象を視覚化・言語化・概念化して意のままに操作することへの欲望として理解しています。他方、女の「関係原理」は、対象を観念として所有するのではなく、想像界における身体を受け入れたうえで、身体を包んで織りなされる関係においてみずからの欲望を発見するという特徴をもっていると論じられます。さらに、男性の「オタク」と女性の「腐女子」に見られるセクシュアリティの差異を具体例にとりあげながら、「所有原理」と「関係原理」の差異を具体的に解説しています。

    単なる印象論ではないのかという気もしますが、それなりにおもしろく読みました。

  • 恋愛において、男は対象を所有したがり、女は対象と関係したがる。この命題をめぐって、ジェンダー用語の解説、脳科学批判やフェミ批判をまじえながら、議論をつくしている。前半で批判に対する予防的な物言いをさんざんしていたわりに、後半は単純な男女論に陥っている感じ。著者も冒頭で「現代において精神分析は有効か?」という問いを投げていたが、読み終わってみると、「なぜそこまでしてフロイトーラカンにこだわる必要があるのか?」と著者の立場じたいを疑ってしまう。

  • 借りたもの。
    タイトル通り、男性原理が「所有原理」、女性原理が「関係原理」に基づいている事を指摘。
    ジェンダーとは何か?それは社会制度の中で出来た女性のみの問題で語ることは難しい事、社会での性と性別の関係は切っても切り離せない事
    など、男女両方の性と価値観の違いを互いに比較しているので、相互理解の第一歩になるのではないだろうか。
    性愛ですら、この原理の差で男女ともに苦しんだりする。
    哲学的な部分から、オタクカルチャーにも簡潔に言及してくれて面白い。

    脳の性別差が無いというのは成程と思った。人間は未だ自分自身の事を知らない。

  • 今まで読んだ男女本の中で一番よかった。男と女は脳梁の太さが違い〜、という諸々の脳説はただの俗説なんだと知り、社会面とか文化面で構築されてきた日本の男女観という考え方がなるほどなー!という共感。
    オタクと腐女子のくだりも面白かった☆

  • 「思い出を男はフォルダー保存、女は上書き保存」と一青窈の発言から男と女の愛の形を論評する。男は多くの女性を所有したがり女は男と関係したいと思う。つまり、性愛をめぐる価値規範もまた、「男性の所有原理」と「女性の関係原理」を前提としている。

  • この本でジェンダーセンシティブの考え方を知った。
    ジェンダーによらず何ごともジェンダーセンシティブにするようになればいいのにと思った。

  • わかったようなわからないような。
    遺伝的な差異は事実として受け止められるけれど、精神分析の言葉は概念的すぎて、フィクションなのか何なのか。
    自分の物の考え方はなかなか変えられそうにない。

    ジェンダーの定義一つとっても、単純な話ではなさそうだ。

  • タイトルはよくある「男と女はこう違う」系のエセ科学本みたいだけど、その真逆を行く好著。
    第2章「男女格差本はなぜトンデモ化するのか」と、第5章「『おたく』のジェンダー格差」が特に面白かった。
    一時期流行った、「男脳 女脳」に疑問を持っている人には特にオススメ。
    「男性」「女性」という二項対立ではなく、多様なセクシュアリティのありようを肯定する著者の姿勢に同意。

  • 巷間よく言われる、女は上書き、男はフォルダ別に収集、ということが書かれています。
    ありがちな男女論。

    ありがちではあるけれどもわかりやすい例えです。
    それはもう、女性は、新しい恋愛が始まると、デフォルト(初期化)したのかと思うくらい全く別人に生まれ変わりますよね。
    履歴はキレイさっぱりとなくなっています。

    方や、男性は、自分自身は変えずに、どんどんフォルダを増やして収拾がつかなくなったりしませんか?
    同時に開いて重くなって、フリーズしたりwww
    男っていう生き物は、所有してコレクションして眺めてるのが楽しいんですよね。

    私も、本をコレクションしてるといっても過言ではないので、男らしいのかしら?w
    でも、本の集め方が作家買い・著者買いなので、関係性を重視ともいえます。

  • 面白かったので理解を深めるため二度読み。
    男女の違いを「脳の仕様がどーたらこーたら」と論じた本に
    トンデモ系が多いのはなんでかっ??
    という問題をバッサリ。
    擬似脳科学(って言っていいのか?)ではなく、
    精神分析的に男女の物の見方・考え方の違いを探る試み。
    で、男の欲望は所有原理に基づき、
    女のそれは関係原理に支配される、ということ。
    男は思い出(過去の異性との記憶)を徹頭徹尾、
    我が物としてコレクトしたい(=所有の欲求)ので、
    対象者ごとにフォルダを作って各データを残しておくが、
    女にとって重要なのは現在進行中の「関係」なので、
    新しい恋人ができたらデータを上書きして、
    古い話はどうでもいいことにしてしまう……
    っていう例えが物凄くわかりやすい(゚∀゚)!
    ♪別れたら~次の人~~(次の人~~♪←コーラス)だよね(笑)。

  • 男について女について間違った考え方をしていたことに気付かされた
    また、ジェンダーのベースとなるであろうことをたたきこまされた一冊

  • 前半の男脳女脳トンデモ理論批判はよく議論が整理されてて面白かった。
    最後の精神分析から解く結論部分は、前半とは違って根拠ベースの理論ではなく、論拠も「哲学者はほとんど男性だから理論的な話は男性が得意」程度のふわふわ感なのでガクッとなる。まあ考え方の提示、としてはアリか。

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著者プロフィール

斎藤環(さいとう・たまき) 精神科医。筑波大学医学医療系社会精神保健学・教授。オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン(ODNJP)共同代表。著書に『社会的ひきこもり』『生き延びるためのラカン』『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』『コロナ・アンビバレンスの憂鬱』ほか多数。

「2023年 『みんなの宗教2世問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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