分類思考の世界-なぜヒトは万物を「種」に分けるのか (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 48
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062880145

作品紹介・あらすじ

生物の「種」って何? それは実在するか? 生物分類学の歴史は2000年に及ぶ。その知的格闘を平易に跡づけ、「種」をめぐる最も素朴で根本的な疑問を考える。前作『系統樹思考の世界』と対をなす怪著! (講談社現代新書)

感想・レビュー・書評

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  • この本は生物の分類だけではなく、分類一般について論じていますが、分類を集合論的に基礎付けしてみたり、分類の形而上学まで紹介がされていて、とても刺激的でした。考えてみると分類とは不思議な思考の様相です。

    身の回りにはいろんなモノ・コトに満ち溢れていますが、それらは酸素や直角三角形のようにキチンと定義できるモノから、民族やプランクトンのようにキチンと定義できないモノまで多種多様な在り方をしています。私たちはものごとを分類せずにはいられないのですが、分類されたモノが実在するのか、それともそう認識されるだけなのかは、哲学的にもおもしろい問題です。

    ところで、生物種の体系(構造)を集合論ではなく圏論に結び付けて考えてみるとおもしろいのではないかと思いました。集合論だと要素がキチンと定義しできるモノをあつかうイメージがあるけど、そもそも生物は変化(進化)しているし、個々の生物はそれが何であるかなんて定義デキマセン! 生物の体系を考えるということは、個々の種が何であるかではなく、種と種の関係のあり方を問うていることなので、個々の要素をそれほど気にしなくてもいい圏論と相性が合うのではないかと考えました。

    姉妹編の「系統樹思考の世界」、「進化思考の世界」と併せて読むことをお薦めします。

    図書館モニター ジロ

  • 「生物分類学」の本かと思ったら、「哲学」「心理学」「形而上学」の本だった、と言う感じの内容。”ホモ・サピエンス”に限らず、動物やら植物には「種」があって、リンネに始まる近代分類学によって、階層的に・・目・・科・・属・・種というような学術名で科学的に当然分類されている、ものだと思っていた。それで、今まで見たことない昆虫だとかがたまに見つかって、それが学術的に「新種」だと分かったりするのだと思っていた。本書を読んでみると、そもそも「種」とは何なのか、そんなものが”実在”するのか、という議論自体が分類学の学術界でしばしば起きているらしい。驚きだ。そして実在とか存在という問題に入り込むと、そこは哲学、形而上学、そして分類をする主体たる人間の本質が問題となっていく。物を”分類(カテゴライズ)”するということ自体、何か物に共通して存在する”本質”があると感じたい人間の本性を反映しているわけだし、この多様な無数の物であふれる世界を人間が認識するためには分類が必要であるという事情もあるようだ。
    本書は先にエピローグを読んでから本文に移った方がよさそうです。エピローグの一文を引用しておきます。

    「切り分けられた「種」が自然の中に実在するのか、それとも単にわれわれヒトが心理的にカテゴライズしているだけなのか、本書で一貫して論じてきたこのテーマは、結局のところヒトが外界(自然)の事物をどのように理解してきたのかといいうもっと大きな疑問をふたたび浮かび上がらせることになる。 ー 288ページ」

  • まさかモーニング娘。の話が出てくるとは。

  • 分類学の理論的系譜。生物分類についてだが、無機物である自然物の分類にも悩ましいものがいろいろとある。分類の基本は他と目立って区別がつく集団(まとまり)があるかどうかであろう。

  • NDC(9版) 461 : 理論生物学.生命論
    NDC(9版) 080 : 叢書.全集.選集

  • サイエンス

  • 756円購入2009-10-29

  • 生物分類学者である筆者が、分類するという行為がいかなるものかについて説明しています。分類学は生物を分類するに留まっていましたが、実はそこに根深い形而上学的な問題が潜んでおり中世から続く普遍戦争の代理戦争のような様相を呈しているとしています。確かにモノを分けるというのは連続的な有り様を離散的な群に分けるという行為なので難しそうです。知的好奇心をくすぐる本でした。

  • ある意味、大半の学問がしていることは分類作業なわけで。そういう人間(特に研究者)の本性を痛快に暴いた書物だと思います。

  •  分類学あるいは系統学という分野は一種のメタ学問であり、絶えず自らの存在意義を示し続けないとすぐに存亡の危機に至る。筆者はそんな立場から一般向けの啓蒙書を書いたものの、かなり自由奔放な筆になってしまったようだ。

     本書で考察されるテーマの一番の中心は「種」の定義だろう。種は生物分類の一番細かい単位であるが、果たしてその実体は何か? 普段漠然と捉えている概念に疑問を突き付けられると少なからずとまどうが、本書は疑問の意味と回答の困難さを丁寧に語っている。

     と同時にまた、学者としての経験から来る様々なエピソードが面白い。そういう部分がなかったら退屈になってしまうであろう、小難しい話をうまくこなしている。それでも、テーマに興味が持てなかったら体躯なのだが。

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著者プロフィール

農業・食品産業技術総合研究機構農業環境研究部門専門員

「2021年 『読む・打つ・書く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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