ロボットとは何か-人の心を映す鏡 (講談社現代新書)

  • 講談社 (2009年11月19日発売)
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本 ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784062880237

作品紹介・あらすじ

「なぜ私は人型ロボットを作るのか」。自分がモデルのアンドロイド、ロボット演劇など、世界が注目する「人間酷似型ロボット」の第一人者が、その研究と「人間とは?」という問いの軌跡を綴る快著。


-出版社からの紹介-
この本のカバーの(超太帯の)写真をご覧ください。双子のようなペアの、右側が著者の石黒浩氏、左は、自身をモデルにした遠隔操作型のアンドロイド「ジェミノイド」です。
石黒氏は、これまでにほかにも、自分の幼い娘をモデルにした子供アンドロイドや女性アンドロイド、ロボットが役者と演じる「ロボット演劇」、介助されて立ち上がる「発達する子供ロボット」など、国内外を驚かせ、注目を集める研究を行ってきました。
「なぜ人間型ロボットにこだわるのか?」――それは、このような一連の研究は、著者にとって「人間とは何か」を問う自己探求の試みでもあるからです。
本書では、人間型ロボット第一人者である石黒氏が、これまで開発したロボットを紹介しながら、研究の過程で感じてきたことを、疑問や戸惑いも含めて率直に語ります。また、有名な「ロボット3原則」や、ロボットと人間の将来まで論じた、すぐれた情報社会論でもあります。

感想・レビュー・書評

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  • (2009/12/26)
    講談社新書はときおりとんでもないいい本を出す。
    この本を読んだ後の感動は、福岡伸一氏の「生物と無生物の間に」を読んだときの感動を思い出させた。

    何がそうさせたのか。読みどころ満載であるが、3つにしぼってみよう。

    1.著者はもともとの研究対象はコンピュータビジョン、つまり機械がどうやってものを認識するか、だったが、身体による体験が認識に有効であることを知り、ロボットへと研究対象をシフトしていったこと

    2.ロボットに究極のインタフェース機能を期待すること

    3.「ロボットに心があるか」というテーマを通じて、実は人間に心があるのか、心とは何なのかを追及していること

    だろうか。ちょっとまとまり切らないが、、。
    なんといっても3は圧巻。
    「ロボットの動きに心を感じる」のは当たり前と思う。
    我々は二次元の漫画、アニメの人物に心を感じることができる。文章の中の登場人物にも感じる。まして三次元、同じ空間にいるロボットが、人に近い形をすれば、当然心を感じると思う。
    相手の心は、相手にあるかどうかはどうでもよく、自分の中にあるのだ。

    ということは、人は人との関係の中でしか生きられないということになる。
    それが今、他人とコミュニケーションがうまく取れず、一人の世界に生きる人が増えているように思える。そのほうが過ごしやすい、というのであればまだいいが、そうしたくないのにそうせざるを得なくなり、悩み、自殺へと至る人も多いのではないか。その積み重ねが3万人につながっているといえるのではないか。先進国で群を抜く多さ。これは個人の問題ではない。社会の病気だ。
    自殺予備軍はその10倍、30万人といわれる。異常事態。なんとかしたい。

    ということまで考えさせられるほど刺激を受ける良書だ。

    著者は英国コンサルティング会社SYNECTICSの「生きている天才100人」調査で日本人最高位の26位に選出(2007年)されるような人らしい。
    自分の娘、自分自身もアンドロイドにしてしまう、すごい研究家。
    それでいてこの文章が書ける、、、すごい。

    今年自分で読んだ130冊の本の中で、間違いなくベスト3に入る本だ。

    副題 人の心を映す鏡

    プロローグ ロボットは人の心の鏡
    第1章 なぜ人間型ロボットを作るのか
    第2章 人間とロボットの基本問題
    第3章 子供と女性のアンドロイド――人間らしい見かけと仕草
    第4章 自分のアンドロイドを作る――<人間らしい存在>とは
    第5章 ジェミノイドに人々はどう反応し、適応したか――心と体の分離
    第6章 「ロボット演劇」――人間らしい心
    第7章 ロボットと情動
    第8章 発達する子供ロボットと生体の原理
    第9章 ロボットと人間の未来
    エピローグ ロボット研究者の悩み

  • ヒューマノイド研究で、自身そっくりのアンドロイドを作ったことで有名な石黒浩教授による、ロボットの存在を通して人間性というものを探る一冊。

    一貫して、「人間とは何か」に向き合っています。
    タブーを超えないように葛藤しつつ、心の実体、命の実体、「人間性」の正体などを、ロボット作りから探る石黒先生の文章に引き込まれます。
    そこに明確な解は出ないでしょうが、多くのヒントがあります。
    そして、「ロボットでなく自分にできることは何か?」という問いに対するヒントもあると思いました。
    今まで自分になかった疑問が多く生まれます。かなり面白いですし、読みやすいので、本当にオススメします。

  • 半分自伝的でさらっと流し読みしてしまった。ちょっと真理に対する理解が近似し過ぎな気もしたけど、結構同感。もっと深くまで考察した上での結論かも知れない。あと、「悪用できない技術は偽物である」ってのは名言だと思った。

  • 研究は、最も基本的問題を探ることである。

    最新の研究は、絶望と向き合うことである。


    研究は、自分に耐えることが必要である。


    石黒先生は天才ではなく、誰よりも探究心が強く、誰よりも考えている。


    ・そして彼は自分に正直で素直で矛盾を作らない。自分に妥協はしない。


    研究に没頭するだけでなく、研究者のあり方や位置付けをしっかりわきまえている。


    不可能と思う時点で、真の研究はできない。


    人は、人を知るために生きている。



    研究テーマ間の繋がりがはっきりしていて、まるでストーリーのようである。



    最終目的が明確であるからこそ、今必要なことを選択できる。






    『私は天才などではない。単に一つのことを誰より考えてただけだ。』

    アインシュタインの言葉が頭をよぎる。



    私は、本書から

    ・研究という営みはどういうことか?

    ・天才はいない。天才らしき人はそれなりの行動をしている。

    ・物事を考えることはもっともっとできる。突き詰めて考えることの本当の意味。


    以上3点を強く感じた。

  • 人間でないものを通じて人間を理解しようとする試みとしてのロボット研究のありようを,解説している。僕が院生の頃書いたレポートで展開した思考実験に似た記述を見つけた時は,失ってはいけない魂を再確認できた感があります。福岡伸一氏のような技巧的な文章は特に見当たらないですが,研究者の姿勢であるとか,その哲学を持つに至る来歴とか,学ぶことが多い一冊だと言えます。

  • 548-I
    閲覧新書

  • ロボットは何か?を考えるとどうしても人間とは何か?になってしまう哲学的なロボット(ジェミノイド)に関する話。
    もちろんその開発にあたっての話もふんだんに盛り込まれている。

  • ふむ

  • 「ロボットも心を持つことができる」と考えている石黒先生。
    心とは、自分でもどこにあるのかわからない、実体のないものである。だから、「人に心はなく、人は互いに心を持っていると信じているだけである」という言葉からこの本は始まる。
    でも私は、人間には心があると信じている。
    ロボットがどんなに人間に似ても、どれだけ精巧にプログラミングされても、心を持つことはないのだからそれが人間とロボットとの違いだと思ってきた。
    でもこの本を読むと、ロボットに心を持たせることができるのではないかと思わされる。
    心とは何か、それを突き詰めて考え、それが解明されれば、ロボットに心を持たせることはできるのかもしれない。

  • 外連味溢れる愛すべき教授。なにが素晴らしいといえば、専門外の部分での不用意な発言である。しかも、それが、最もらしくて、とても刺激になる。新書というフォーマットを熟知した著作と言える。新書は論文ではないから、自分の思い、思い込みを発表することは適しているし、みんな論文なんて別に楽しくないから読みはしないのだ。

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著者プロフィール

石黒 浩
ロボット学者、大阪大学大学院基礎工学研究科教授(栄誉教授)。1963年滋賀県生まれ。大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程修了(工学博士)後、京都大学大学院情報学研究科助教授、大阪大学大学院工学研究科教授を経て、2009年より現職。ATR石黒浩特別研究所客員所長(ATRフェロー)。オーフス大学(デンマーク)名誉博士。遠隔操作ロボットや知能ロボットの研究開発に従事。人間酷似型ロボット(アンドロイド)研究の第一人者。2011年大阪文化賞受賞、2015年文部科学大臣表彰及びシェイク・ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム知識賞受賞、2020年立石賞受賞。『ロボットとは何か 人の心を映す鏡』(講談社現代新書)、『どうすれば「人」 を創れるか アンドロイドになった私』(新潮文庫)、『ロボットと人間 人とは何か』(岩波新書)など著書多数。

「2022年 『ロボット学者が語る「いのち」と「こころ」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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