予習という病 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062880244

感想・レビュー・書評

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  • 著者の高木幹夫氏というのは関東で小学生の子どものいる(かつて持ったことのある)親であればたいてい聞いたことがあるであろう日能研 = 中学受験に特化した私塾の代表。

    それにしても誤解を招く題名だ。書面だけ見ると「予習よりも復習が大切」みたいな内容をどうしても想定してしまうが、著者が言う「予習病」というのは、帯に説明があるように、
    「すでに知っている領域に固執し、進め方において予定調和を求め、未知の事柄に対して無視したり否定したりする精神の傾向」
    のことを指している。
    (この要約は私の理解が入っているので、著者の想いと100%正確ではないかもしれません)
    ※その病に罹っている人の特徴として「いっぱいいっぱいで…」という口癖がある、と著者の指摘。

    そういう意味で、この著者の指摘には大変に共感するところがある。
    もっと言えば、「生徒」の前に学校の先生たちが著者のいう「予習病」に罹っていると言えるのではないか。日本の、とくに公教育のの学校の多くでは。

    と、子どもの教育については、ほんとうに難しい問題で、私自身うまく出来ている自信は全く無いので、批判めいたことを書くことはこれ以上は控えておきますが、考えてみれば「学校」に限らず、日本社会全体が「予習病」に罹っているとも言えるやもしれません。

    最後に著者が書かれている、「予習病」の対義語にあたる精神の傾向、姿勢を引用しておきたく思います。

    【未知への準備】
    予測できないものに出会っても、しっかりと向き合い、必要な対応ができること。また、新しい未来をつくるために、自分ができること、今はできないことをいつも確認しておくこと。

    …御意。

  • 94円購入2013-10-18

  • 日能研の代表が書いた本。
    中味は意外に同感できる部分がたくさんあった。

    東京大学の山冨二郎教授の「学びのパラダイム・シフト」の紹介が引用されている。
    (1)TeachingからLearningへ
    (2)個人的学習から協調的学習へ
    (3)曖昧な社会契約から学習目標達成への契約へ
    (4)評価の軽視から教育方法・評価の確立へ
    (5)知識獲得偏重から知識運用重視へ

    これらのパラダイムシフトは、確かに今の学校教育の枠組みの中では困難な部分も多い。しかし、それを超える意思を持った教師もたくさんいるぞ!
    「学校教育というしくみ自体が制度疲労を起こしている。」のかもしれない。制度のメンテナスも必要かな。

    ゛進学準備学力”への警鐘と言ってもいかもしれない。

  • 学力の低下、応用力のきかない若者…(もはや若者ではないが応用力のない私は心苦しい)大学生の学力低下、もはや学究の場ではなくなった大学…現在の教育関連のもろもろが抱える諸問題の原因の1つに「予習病」を掲げるのが本書。

    予習病とは!学んできたことに固執し、未知の事柄は避けようとする精神状態、とか。現状に疑問を抱かず自己中心的な世界の中で満足する精神の傾向。らしいです。
    仕事でのミスを、担当は私じゃないし、聞いてないし、という理由で心の中で責任を他になすりつけたくなる気持ちは私の中にありますし、それが予習病の病状だといわれると、そうなの!?と思ってしまいましたが。
    ……でも私、学生時代に予習とかしたことないんだがな。私のこういう精神の傾向は、予習とは別の、他人に言われた言葉やら読んできた漫画、アニメに影響を受けているんだと自分では考えています。

    予習という病 このタイトル、目にした人の興味を惹くという点では秀逸だと思います。でも、本の内容のほとんどがこのタイトルに帰結するというものではない。予習病という言葉をつくり、定義も序章で提示されてこれが重要なんだ!と押しだしてはいるものの。著者の、現代社会人の仕事上の問題点、子供たちの学習態度や応用力の問題点をえぐりとる視点は鋭いと思います。しかし「予習病」という言葉は、それらの問題点を貫き通すほどのものではないなあ、と感じました。あれらの問題の要因はもっと、別の……なにかではないかと。

    こどもが自ら学ぶ方法をつかんでいく力をつけるための、アメリカの学校の取組みや、日能研でこらした工夫などがけっこうな幅をとっています。そのへん面白かったですし、教職を目指される方は読んでみるといいかも。

    金持ちだけがいい教育を受けられるのはよくない。人材を育成する教育とか、こんなの国防の一環だし、将来的には経済発展にもつながるんだから、文部科学省だけにまかせず、防衛省や経済産業省も奨学金ジャンジャンだせばよい。という旨のくだりはウンウン、とうなずきながら読みました。

  •  予習。予習しておくと、授業の理解度がまるで違う。しかし、突き進んで、病としての予習は、それはあらかじめ知らないと未知のことに対応できず、「いっぱいいっぱいで・・・」と言ってしまうそうだ。
     
     まぁただそういう主張をするのにあたって、日能研でこういう子がいて、というような話をしてくれたほうが、わかりやすかったし、それでも日能研が小学生を対象としている塾なので、19歳の僕とのちょっとしたずれがあったようにもやや感じた。

     なるほどと思ったこと。日能研が対応力をつけるためにやっている授業を紹介していた。 採点が書き込められていない解答用紙を徹底的に生徒に振り返らせて、友達同士でここはどうだ、あーだと答え合わせ会議をさせるというもの。 これで合ってた間違ってたという考えを変えさせることができるそうだ。 このやり方はある種のコミュニケーション能力を上げることもできるだろうし、まさに未知にたいする対応力を鍛えるのではないだろうか。 
     「僕はこの問題はこう考えたんだけど(予習)、でも君はどう考えたの(未知)?」僕自身あんまりこういうような、話し合いはしてこなかったし、授業でやるとなると時間がかかるということがあるからだが、自分の考え方も表明しつつ、相手の考え方を受け入れるというコミュニケーションが自然と行われるのだ。
     
     現在、新卒、大学生のコミュニケーション能力が非常に求められているような気がする。政府は脱ゆとり教育として確かな学力を身に着けさせるために教科書をより厚いものへとした。総合的な学習の時間がへったということだ。これではコミュニケーション能力を伸ばす機会がより科目の授業に分散したということだが、教科書のページが増えたことで、むしろその機会はなくなったのではないだろうか?
     
    このコミュニケーション能力ついてはまだ僕は意見がまとめ切れていない。また固まったら、いろいろ意見したい

  • 彼女が買ってきた本。

    予習や復習をやったことないので、イマイチピンと来なかった(爆)

  • 予習をする=そこから外れると何もできなくなってしまう=予定調和になってしまう。
    そんな人間が増えたのは予習のせいかもしれない。

  • 日能研の代表、高木さんの素晴らしい思想が凝縮されており、
    今の日本の教育のみならず、世界に目を向けた発想であるので
    予習という概念をもう一度考え直すいいきっかけとなるのではないかと読み終えて思った。

  • [ 内容 ]


    [ 目次 ]
    序章 予習病が日本を滅ぼす?
    第1章 学習指導要領と予習
    第2章 福澤諭吉は予習をしたか?
    第3章 変化のなかで
    第4章 答案はまっさらでいい
    第5章 ハナバツの思想
    終章 「いっぱいいっぱい」なんてない

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  • すごく勉強になった。

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著者プロフィール

1954年、横浜市生まれ。小学生のための学習塾「日能研」代表。子どもの進学後の成長を考え、「課題を見つけ、解決する力」を伸ばす学びを目指す。2005年より「親業訓練協会」会長として親と子、教師と生徒等の人間関係を作るコミュニュケーション方法の普及に力を入れる。またNPO法人「体験学習研究会」を通じて学校における「体験学習」の効果的な活用への働きかけに努めている。

「2014年 『「学び家」で行こう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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